━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ アランツァ設定資料集 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ◆大陸南西部: 地形:森、沼地、湖、山地 気候:温暖(-1から+1) 主な舞台:商業都市ナゴール、水上都市聖フランチェスコ、闇の森、桜森、かえる沼、アリクララ湖 ◇商業都市ナゴール 主なクリーチャー:人間、コビット、エルフ、ノーム、ゴーレム、オーク、トロール  ナゴールはこの大陸で最も重要な流通の中心地です。治安は「ややいい」程度で、街の中でトラブルが起こることはあまりありません。東西の流通のみならず、海運業も盛んです。商業に関わる冒険を見つけることは容易でしょう。  ナゴールには冒険者の宿として最も有名な「剣竜亭」の本店があります。この宿を設立したのはドルチ家。ドルチ親子(冒険者サウル・ドルチとその娘ソーニャ)には人を惹きつける風貌と家柄があると言われています。サウルは中年期にあり、もう冒険に出たいとは思っていないようです。娘のソーニャは人脈を広げて続けており、冒険者が有望であれば仲良くなろうとするでしょう。  商業に関する話なら、この街ではダビデ家の存在が頭ひとつ抜けています。ナゴールで最も盛んな商売のひとつが骨董品売買で、これは古い時代の魔法の装備品を取り扱っています。ダビデ家はナゴールにおけるこの商売の第一人者であり、今の時代では珍しい魔法の装備品をどこからか見つけては市場で売り抜けます。  街の有名人ではありませんが、冒険者に関わりがありそうなココフ家についても触れておきましょう。北方都市サン・サレン出身で、サウル・ドルチを頼ってナゴールを訪れたと言われています。一族のはじまりになったのはサウルとともに世界を旅した冒険者でした。ビジョンと呼ばれる、未来を見通す力を持った者が不定期に現れる血筋だと言われています。その力を持っているかどうかは1人1人の資質によるものの、総じて魔法の才に長けています。未来を見通す力を持っているため、騙して協力させるのは至難の業ですが、ココフ家に利益をもたらす者や、性根の曲がっていない冒険者には親切です。 ◇水上都市聖フランチェスコ 主なクリーチャー:人間、エルフ、ドワーフ、ゴーレム、末裔  聖フランチェスコはこの大陸でもっとも治安がいい街のひとつです。街が半分水没しているため、水路による移動と足を使った移動の両方が使われます。この街には優れた軍人や冒険者を養成する「オレニアックス剣術学校」があります。ナゴールにつながる街道沿いに現れた「ガルアーダの塔」を制圧した冒険者たちの大半が、この街の出身者です(レム家、ヌヴェール家、ダーク家、ガーデンハート家など)。  この街の貴族たちもさまざまで、豊かな顔を見せてくれます。大貴族で、異国魔法の使い手を抱えるウォルドーフ家。かつて空に都市を浮かべるほどの魔法を駆使したホラドリウス家。宮廷魔術師の家系であるクラフトマルト家。優秀な冒険者の家系でありながら武勲に恵まれないディストール家。貴族以外にも、富豪の商家であり、芸術家たちのパトロンとして知られるヴィトリッチ家。ゴーレムの集団であるクイーンハート家など。  ロア・スペイダー著『水上都市の祭日』で、祭りの日の聖フランチェスコ市の様子が描かれています。 ◇闇の森 主なクリーチャー:コボルト、ホブゴブリン、黒森猿、ガツガツ、野犬  闇の森は正式名称を黒森と言い、聖フランチェスコ市のほとりにある中規模の森です。湿地帯を好むホブゴブリンが、森のぬかるんだ地域に住んでいます。彼らは人間と交易しながら生活しているため、無条件に襲ってくることはありません。  森には人間の言葉を話す黒森猿が住んでいて、簡単な言葉を使って森の樹の上から話しかけて、ガツガツのような危険へと誘導します(ガツガツは森の湿地帯に住む魚の一種ですが、闇の森のガツガツは巨大化が進み、人を丸呑みできるほどの危険な怪物と化しています)。 ◇桜森 主なクリーチャー:樹人、草花人、刃花草、魔犬獣、猫人、アラネア、ジグリ・ザグリ、殺人バチ、大カタツムリ、鉄サソリ、マナ・ワーム、お化け花  春になると美しい桜の花が見られるこの桜森は、非常にたくさんのクリーチャーが生息します。貴重な花や資源も多く、冒険の中心地と言えるでしょう。  桜森にはいくつかの知的種族が住んでいます。もっとも勢力が大きいのは魔犬獣でしょう。この種族の外見は人間よりもひとまわり大きな、黒い精悍な犬です。しかし、高い知能があり、お互いに通じる独自の言語と種族意識を持っています。彼らは冒険者とその種族を憎んでいて、有利な状況では攻撃的です。人間よりも移動速度が速いため、関わると厄介な相手です。  2番目の勢力はアラネアです。クモに似た少数種族で、総じて陰気で無口です。アラネア絹糸と呼ばれるクモの系に似た素材を使って製造業を営み、細々とした生活を送る種族です。余談ですが、アラネアは料理に関する天性の才があり、6本の腕を用いて効率的に行うため、ドラッツェン地方では料理人として重宝されています。  ジグリ・ザグリは巨大なカボチャ状の頭を持ち、そこから生えた無数の触手で移動と行動を行う奇妙な種族です。トレントの一種で、人間に対して友好的です。仲間になってくれることが多い貴重な種族ですが、恥ずかしがり屋なので心を上手に開いてあげないといけません。  猫人は猫の気質を多分に受け継いだ種族です。身体的には優秀ですが仲間とつるむことが少なく、勤勉さから縁遠く誰かのために働くこともありません。冒険者と敵対する要素が少ないため、情報を持った中立的な存在として登場させやすいでしょう。  ジグリ・ザグリの他にも、多くの植物型クリーチャーがいます。彼らはトレントの一種です。樹人がもっとも代表的ですが、お化け花や刃花草(はばなそう)のような、花状のものもいます。冒険者が彼らの縄張りに対して注意深く行動していれば、彼らと対立することはあまりないでしょう。彼らの生息する地域に踏み込む必要があるときには、なるべく見つからないように速やかに振る舞わなければ攻撃を受けます。  昆虫型のクリーチャーも数多くいます。ハチとマナ・ワームはその代表です。殺人バチはハチミツだけでなく、女王蜂とその子どものために肉も集めます。繁殖期(春)の彼らは凶暴です。しかし、それ以外の時期には、大した危険はありません。彼らの蜜を求めて近づく、といった行動を取らないかぎりは。  マナ・ワームは魔力を吸収するクリーチャーです。危険度はそれほどでもありませんが、身体に触れると皮膚がかぶれるため、長時間関わるのは危険です。特に、冒険者が魔法の装備品を持っているときには、そこから溢れる魔力を求めて群れが殺到することがあります。飛行する昆虫はどう考えても冒険者よりも速く移動できるため、魔法の装備品をひとつあきらめるか、水場を見つけて早々に飛び込むか、密閉された部屋のある家屋を見つけて隠れるかしなければなりません。マナ・ワームにはもうひとつ危険があります。桜森に魔力だまり(ノード)が発生したときには、マナ・ワームは完全な個体(成虫)になります。成虫の群れは魔法使いが体内に持つ魔力を求めて、魔法使いを狙うことがあります。少数のマナ・ワームであれば倒してしまえばいいでしょう。しかし、大きな個体を相手にすることになった場合、先に挙げた対処で逃げきれなければ待っているのは死です。 ◇かえる沼 主なクリーチャー:かえる人、ガツガツ魚、大ヤドカリ、樹人、グレムリン、コエエア  かえる沼は桜森の一部ですが、広い地域を占めているため別に扱います。森の中を流れる川や湿地帯がある地域で、かえる人をはじめとしたさまざまな種族が住んでいます。この地域の生きものは多様化が進んでいて、かえる人はその最たるものといえるでしょう。個体ごとに色や体型が異なり、さまざまな個性を持ちます。  かえる沼には2本の足を使って歩ける地面のある場所と、カヌーやいかだを使って移動する水場が混在しています。水場にはガツガツ魚や大ヤドカリのような淡水のクリーチャーが生息します。人間型種族を襲う巨鳥、コエエアも住んでいます。  冒険者に影響がある可能性があるグレムリンも、かえる沼にいます。このクリーチャーは付近にあるからくりを動作させなくさせる性質があります。生きている間はからくり術とクロックワークマジック(時の魔法)が使えないため、冒険者によっては嫌うことでしょう(クロックワークマジックが普及するのは、第3期以降の冒険時代になります)。そのいっぽうで、仲間がそれらを使わない場合、グレムリンをどうにかして生け捕りにして、仲間に加えようと思う可能性もあります。シナリオでこれが許されていれば、ですが。  かえる人がかつて住んでいた城には、かえる沼を旅した交易商人が今では住んでいます。交易商人はかえる王から貴族の称号を名字をもらい、今ではフロッグ家としてかえる沼に住み、旅する冒険者を城に泊めては楽しい冒険話を聞きたがります。冒険者がフロッグ卿のもとを訪れたなら、心強い支援者となってくれるかもしれません。  かえる沼についてより詳しく知りたい場合には、杉本=ヨハネ著『かえる沼を抜けて』をお読みください。 ◇アリクララ湖 主なクリーチャー:人間、コボルト、ダトツ、クラーケン  アリクララの湖は、かつて「天空都市ジョルク」があった場所の凹みに、水が流れ込んでできたものだと言われています。百年単位の話ですがクラーケンが現れて、討伐に力を貸してくれる冒険者が募られます。クラーケンが見つかるとき、そのサイズはまちまちで、それほど大きくないことも、非常に大きいこともあります。  湖に住むダトツという魚はダツの仲間で、飛び魚のように飛んで人間型生物の肉体に突き刺さります。大規模なダトツの群れと遭遇したときは、命を落とす危険すらあります。  湖畔にはコボルトが小さな集落を形成しています。彼らは湖畔にある町イルフムの市民には手を出さず、町と交易もします。人間たちと積極的に関わろうとはしませんが、幾枚かの金貨を手渡せば情報交換はできるでしょう。