1 冒険のはじまり  王女と騎士が魔女に襲われたのは、七曲と呼ばれるうねうねと曲がった狭い谷あいだ。人目を忍んで逢うために2人が来る場所だ──人里からは離れている。  いつまでもここにとどまるわけにはいかない。ここから出て、龍を王女に戻す方法を探さなければ。そのためには、魔女の足どりを掴むのが手っ取り早いだろう。  騎士は魔女の住み家を知っている。「大釜の塔」と呼ばれる、荒野の真ん中に建つ古い廃墟だ。そこに向かおう。  どうやってたどり着くかが問題だ。まずは、七曲谷の終わりにある渓谷の吊り橋まで行くことになる──そこに至る道は3つある。  ひとつは、七曲峡谷の谷あいだ。もっとも一般的な道で、安全度も高い。だが、途中でシスール・メノール村という、中規模の村を通り抜けなければならない。  ひとつは、大ヤギ山地。谷の斜面を登る、急峻なルートだ。過酷だが道幅は広い。山地に生息する大ヤギは熊なみに大きく、つよい。これに出会う危険が懸念される。  最後のひとつは、リオーマの坑道。数百年前にドワーフによってさかんに採掘されていた坑道だが、すべての道が龍でも通れるほど大きく広いかどうかは分からない。  ルールを参照して、龍と騎士のどちらが先に移動するか決めること(2人一緒に移動してもいい。「先に移動する」といっても、手順としてどちらかの冒険を先に行うだけで、それほど大きな時間差があるわけではない)。  地図を確認する。先に移動する主人公の名前に、チェックを入れる。2人が一緒に移動する場合には、騎士と龍の両方にチェックを入れる。    ・シスール・メノール村を通る谷あいを選ぶなら20へ。    ・大ヤギ山地を選ぶなら30へ。    ・リオーマの坑道を選ぶなら10へ。        2  日が暮れる。吊り橋の手前にある山あいの窪地で、騎士と龍は身を寄せあって、焚き火に照らされながら眠りにつく。冒険記録紙の状態欄にある負傷からひとつずつ、チェックを外す。冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつずつ、チェックを入れる。  眠りにつきながら、騎士は思う。大釜の魔女という存在を、初めて知った。なんのために、王女にまじないをかけたのだろう? 旅を通じて、分かるのだろうか。  夜が明ける。  渓谷の向こう側にある短い洞窟を抜けて、尾根に出る。そこには絶景が広がっている。先ほどまたいだ川が足もとで湖をつくり、大平原を渡って海に流れ込んでいる様子が、一望できるのだ。左手を見れば、尾根づたいに歩いていける霧がかった山々の姿がある。  山を降りて入り江に向かうか、尾根を渡って山道を歩き続けるか。分岐点だ。  ふもとまで降りるなら、銀の入り江を通ることになる。湖に流れ込む赤錆川では銀が採れるため、その名前がついた。たくさんの人間が行き来している場所で、兵士も多い。  尾根づたいに歩いて行く道は、ドクロ山だ。山をふもとまで降りずに、つながった尾根を進むことでたどり着く。この道は人目にはつきづらいが、荒れている。龍の墓場と呼ばれる、不気味な洞窟を抜けることになるだろう。  さて、誰が移動するかを決める時間だ。地図を確認する。移動先の欄を見て、先に移動する主人公の名前に、チェックを入れる。2人が一緒に移動する場合には、騎士と龍の両方にチェックを入れる。    ・銀の入り江なら60へ。    ・ドクロ山なら50へ。        3  いま旅しているのは?    ・騎士なら78へ。    ・龍なら36へ。    ・騎士と龍なら45へ。        7  地図を確認する。移動先の欄を見て、次に移動する主人公の名前に、チェックを入れる。  次の選択肢からルートを選ぶ。ただし、もう1人の主人公が選び、向こう側にたどり着いたルートは選べない。    ・リオーマの坑道を選ぶなら10へ。    ・シスール・メノール村を通る谷あいを選ぶなら20へ。    ・大ヤギ山地を選ぶなら30へ。        8  龍の墓場は死の空気に満ちている。龍の骨がそこらじゅうに散らばっていて、不気味な雰囲気を放っているのだ。  カタカタと音を立てて、ひとそろいの龍の骨が組み上がる。アンデッドか! 骨龍が目の前に姿をあらわしたのだ。だが、それは襲いかかってはこない。なにかを伝えようと、身振り手振りを繰り返している。彼が指差した先はこちらの足もとだ。そこにはひすいの腕輪が落ちている。それを手に持つように、促しているように見える。    ・骨龍を攻撃するなら107へ。    ・腕輪をしてみるなら97へ。    ・素通りするなら70へ。        9  龍がいるなら、馬を食べはじめる。馬は死んでからそれほど時間が経っていないようだ。味が落ちておらず、うまい。龍の冒険記録紙の空腹欄にあるチェックをひとつ外す。  騎士がいるなら、馬につけられた荷物から、金貨5枚を発見する。望むなら、騎士の冒険記録紙にある装備欄に、金貨5枚を記入する。この荷物を奪うことは、騎士道精神に反してはいない。持ち主が生きていたなら、返せばいいだけだ。  なにかが、岩壁を降りてくる。気持ちが馬にいっていたこともあって、反応が遅れる。岩登りに長けた動物、ヤギだ。しかし、世に知られているヤギとは違う。熊ほどに大きくて、気性も荒い。  大ヤギの着地した場所にあった藪に隠れていたヘビが、驚いて飛び出す。そのまま大ヤギの脚に噛みつくが、ビクともしない。脚を振り上げて、ひづめで踏みつぶす。そいつはこちらをじっと見ながら頭を下げて、突進のポーズをとる。前脚のひづめで地面をかく動作をしながら、蒸気のような鼻息をほとばしらせる。縄張りに入ったことに、怒っているのだ。  いま旅しているのは?    ・騎士だけなら17へ。    ・それ以外なら35へ。        10 リオーマの坑道  渓谷を離れて、急な坂道を歩く。小一時間ほど歩くと、山の斜面に穿たれた穴が見えてくる。リオーマの坑道だ。かつて赤錆川の上流に住むドワーフたちが、金銀を求めて採掘を続けた廃坑。足を踏み入れる。道は暗いが、目が慣れればいちおう見える。枝道が交差するなかで、もっとも大きな坑道を歩き続ける。この場にいる者すべての、冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつ(ずつ)チェックを入れること。  砂利混じりの道は肌寒い。しばらく歩くうちに不安になってくる。この道を進んだとして、山の反対側に出られるのだろうか?  不安になって、振り返る。大小の入り混じった道を見て、戻ることも容易でないと気づく。長い年月をかけて縦横に掘り進められた坑道は、脱出困難な迷路そのものだ。  不安が増して、少しのあいだ息が止まる。静寂のなか、遠くから、硬いものどうしをぶつけ合うような、カツカツという音がする。音のするほうに慎重に近づくと、4人のドワーフの背中が見える。一心不乱に採掘をしている……今もなお。ここに住んでいるのだろうか? それは分からない。    ・ドワーフに話しかけるために近づくなら29へ。    ・ドワーフを避けて別の坑道を歩くなら71へ。    ・ドワーフを襲撃するなら12へ。        11  この数週間、ロング・ナリクでは雨が続いていた。赤錆川の上流には天然の貯水池があって、そこに作った水門が、今はギリギリまで水を貯めているという。  溜まった水を放流するために、兵士は水門に向かっているそうだ。門はナリクの国境にあるが、今回はいったん帰るつもりだという。昨日まで降っていた雨が止んで急務でもなくなったし、彼自身がケガを負ったからだ。  大ヤギには気をつけろ、と兵士は言う。雨の影響で豊富になった木の芽や草を食べに、山の奥地にある寝ぐらから頻繁に出ているそうだ。ヘビやイノシシと出会ったら、即座に踏みつぶすほど凶暴らしい。兵士は大ヤギの寝どこを把握していて、そこを避けるようにアドバイスしてくれる。  兵士と別れる。アドバイスに従って大ヤギを避ける道を行くこともできるし、大ヤギとの対決を選ぶこともできる。    ・大ヤギを避けるなら23へ。    ・大ヤギを襲撃したいなら95へ。        12  いま旅しているのは?    ・騎士だけなら33へ。    ・それ以外なら46へ。        13  騎士が弓を持っていて、ここで使うなら77へ。そうでないなら読み続ける。  軽やかな足取りで、大ヤギが吊り橋に足をかける。メキメキと音を立てて、その足もとの木板が壊れる。重すぎたのだ!  大ヤギは慌てるが、もう遅い。板を踏み抜き落ちかけた身体に、吊り橋のロープが巻きつく。どうにか抜けようともがくのがなお悪い。騎士、大ヤギ、龍の重みに耐えかねて、ロープが根もとの木杭からほどけてしまう。  1人の叫び声と2頭の鳴き声が、渓谷に響く。騎士と龍の冒険記録紙の負傷欄にひとつずつ、チェックを入れること。  冷たい水のなかに落ちた。流されないよう必死で泳ぐ。大ヤギの姿は見えなくなる。立ち上がった龍が、流れのなか騎士をくわえる。そのまま岸辺までたどり着く。危なかった……! 69へ。        16  龍は無言でこちらを見つめる。正確には、がらんどうに窪んだ「かつて瞳のあった場所」を、こちらに向けている。 「気高き者よ。私から貴殿に助言しよう。大釜の魔女とつながりのある者が、大平原のどこかにいる。かの者は『はじまりの魔女』と呼ばれている。彼女に会い、謝罪して、助力を乞うのだ。大釜の魔女の弱点を知っているのは、彼女だけなのだから」  この骨龍は、こちらの事情をすべて知っているとでも言わんばかりにそう告げる。骨龍はそれきり静かになる。冒険記録紙の軌跡欄にある、骨龍の助言にチェックを入れる。70へ。        17  騎士は長剣を抜き放って、大ヤギと切り結ぶ。次の瞬間、騎士の身体は宙に舞っていた。騎士の冒険記録紙にある負傷欄に、チェックをひとつつける。  圧倒的だ。騎士は武器を構えて大ヤギをにらみつけながら、思う。武勇に名高い偉大なるナリクの騎士団長、憂国の騎士と呼ばれる自分が、いとも軽々とはじき飛ばされる。  剣竜にも匹敵する力の持ち主だ。  自分の力では、この猛獣に勝てない。  幾千もの刃の下をくぐり抜けて来た歴戦の騎士の心に、動揺はない。剣の柄を握りしめて、大ヤギの動きを観ながら、次に取るべき行動を思い描いている。大ヤギはその優位のためか、こちらの出方を伺っている。    ・逃げるなら76へ。    ・さらに戦うなら104へ。        18  騎士だけで移動中なら、こちらに気を留める者はいない。騎士と龍なら、龍は注目を集めるが、騎士が同行していることで、騒ぎにはならない。同じ龍でも、もっと凶暴そうな外見だったなら、話は違っただろう。薄紅色に輝くウロコと、ネコ科を思わせるしなやかな動き。初めて見るこの美しい龍を、もっと見たいとどこかで思っているのだ。  向こう岸から箱舟がやってくるのが遠目に見える。人々はあれに乗って、ここを渡るのだ。  屋台を開いている男がいる。格好からすると兵士だが、武器を売っている。舟に乗るとしても、まだ、並んでいるものを見る時間はありそうだ。    ・箱舟に近づくなら84へ。    ・屋台を開く兵士に近づくなら64へ。        19  村外れにある柵に囲まれた牧場に、踊るように飛び込む。メエメエと鳴きながら逃げる羊たちから1匹を選んで、覆いかぶさるように牙を突き立てる。うまい!  背後で牧場主が、両手を顔の高さまであげながら、なにごとか叫んでいる。龍の冒険記録紙の状態欄にある空腹から、ひとつチェックを外すこと。  せいせいした気持ちで、シスール・メノール村をあとにする。数時間歩いて、渓谷への吊り橋まで無事にたどり着く。40へ。        20 シスール・メノール村へ  村に続く谷あいの道には、ゴツゴツした大岩がそこかしこに落ちている。しかし、それ以外にはなんの変哲もなく、その道をしばらく歩き続ける。この場にいる者すべての、冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつ(ずつ)チェックを入れること。  村までそう遠くない地点まで来たときのことだ。道の途中に、大柄な生き物がいる。トロールが3体、岩陰でひそひそと話し合っている。その様子をさらに、別の岩陰に隠れて観察する。どうも、シスール・メノール村への襲撃をたくらんでいるようだ。    ・トロールを襲うなら3へ。    ・村まで先まわりして、村人に警告するなら32へ。    ・関わらないなら27へ。        21 「これはこれは。このようなところに、こんな美しい姫君が来られるとは。私は骨龍バーレイ。かつては黒いウロコを持ち、ドラッツェン山脈の一角を統治していた者だ」  骨でできた龍は、龍の王女に対して話しかける。敬意をもって接しているが、かえる人の話がたしかなら、こちらを出し抜こうとしているに違いない。  骨龍は、龍の王女の出方を伺っている。王女がまるで本物の龍であるかのように振る舞うこともできるし、正直に自分が人間であることを打ち明けて、助力を乞うこともできる。    ・龍として、骨龍に威厳ある態度を示すなら103へ。    ・王女として、正直に話をするなら16へ。        22  騎士の冒険記録紙の装備品欄から、食料をひとつ消す。  ノームは複雑な坑道をためらいなく選んで歩く。長い距離をトコトコと歩き続けた末に、冷たい風が吹きつける吊り橋までやってくる。40へ。        23  大ヤギ山地を抜けて、渓谷への吊り橋へと歩を進める。40へ。        27  シスール・メノール村を離れた、迂回するルートを歩く。数時間後、渓谷への吊り橋まで無事にたどり着く。40へ。        28  彼らは口をへの字に曲げて、首を横に振る。そうとうな頑固者たちだ。ピッタリとこちらに貼りついて、もと来た道を戻るまで離れないつもりだ。 「それで、どこから入ってきたんだ?」  彼らの1人が尋ねる。    ・七曲谷の谷あいからだと答えるなら7へ。    ・渓谷への吊り橋からだと答えるなら53へ。    ・武力で彼らを黙らせたいなら33へ。        29  いま旅しているのは?    ・騎士だけなら62へ。    ・それ以外なら46へ。        30 大ヤギ山地  ほとんど整備されていない、古い道を歩く。急峻な山道だが、危険ではない。ただ、体力を使う。吊り橋を目指して歩き続ける。この場にいる者すべての、冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつ(ずつ)チェックを入れること。  山沿いの道を歩いていると、道に横たわるようにして、馬が寝そべっている。死んでいる。腹部に空いた、刺したような穴が致命傷になったようだ。馬の脇に、こすったような跡が地面についている。滑落跡だ。馬の主が下に落ちたのだろうか?  ここにいるのが騎士なら、馬の荷物を調べてもいい。龍であれば、馬を食べることができる。    ・馬を食べる、あるいは荷物を調べるなら9へ。    ・滑落跡のある場所の下に降りて、誰かいないか調べるなら86へ。    ・立ち去るなら23へ。        32  いま旅しているのは?    ・龍だけなら83へ。    ・それ以外なら51へ。        33  つるはしを手に、彼らは応戦する。ドワーフたちは頑丈な荒くれ者だが、騎士のほうがつよい。  ドワーフを倒すが、4人の鉱夫たちを相手に無傷で終わることはできなかった。1人が振るったつるはしが当たって、負傷する。冒険記録紙の負傷欄にひとつチェックを入れること。  彼らの荷物から、金貨4枚と銀塊が見つかる。持っていくなら冒険記録紙の装備品欄に書き込む。37へ。        34  騎士はここまで来た道と、先の道を交互に眺める。こんなときでなければ、このすばらしい景色を満喫できただろう。  ここから先は、自分の国ではない。荒野に挑む危険を、ひしひしと感じる。  龍は騎士の肩をこづく。見やると龍はその真紅の瞳で、騎士をじっと見つめている。恋人である騎士にはすぐに、彼女の言いたいことが伝わる。 「私がついている。心配は要りません」  言葉が話せるなら、そう言っていることだろう。  吊り橋を渡る。風に揺れていささか恐ろしい気持ちになるが、龍が足をかけても、壊れそうな気配はない。ただ、幅はギリギリだ。人間3人が渡れるぐらいの幅だが、龍にはちょうど1体分だ。  冒険記録紙の軌跡欄にある、大ヤギ討伐にチェックが入っているだろうか?    ・記入があるなら54へ。    ・ないなら73へ。        35  龍が鋭い爪を出して、大ヤギをけん制する。木の枝のように四方に伸びた角が、その手を払う。龍が負傷をひとつ負う。龍の冒険記録紙にある負傷欄にひとつチェックを入れる。怒りを覚えた龍が、カッとなって口を開く。66へ。        36  屈強のトロールたちといえど、龍の前には敵ではない。炎で、牙とかぎ爪で、硬いウロコの生えた尻尾で、彼らをなぎ払い、打ち倒す。  とはいえ、3体のトロールを倒すまでに、こちらも無傷では済まなかった。龍の冒険記録紙の状態欄にある負傷にひとつチェックを入れること。戦いに勝利する。望むなら、龍の状態欄にある空腹欄のチェックを、3つまで外してもいい。67へ。        37  それからしばらく、大きな坑道を歩き続ける。だが、数時間後、その大きな道が途絶えてしまう。もし、どこかでこの坑道の抜け方を教わっているなら、どうしたらいいか分かるはずだ。  そうでなければ、この複雑に入り組んだ坑道を歩き続けて、力尽きる。        38  兵士たちは長槍を手に手に、わらわらと1ヶ所に集結する。敵だと思われたらしい。集団で龍に立ち向かおうというのだろう。隊列を組んで攻撃を仕掛けられたら、強靭なウロコと肉体をもっていても、さすがに危ないかもしれない。  さっさと先に進んで抜けたいが、彼らは追ってくる可能性がある。そうなったら、河を渡るところあたりで追いつかれてしまうだろう。  となると、やはり、交戦して皆殺しにするべきだろうか。    ・皆殺しにするなら43へ。    ・さっさと先に進みたいなら105へ。        40 渓谷の吊り橋  ふたつの山のあいだにかかった、長い吊り橋までやってくる。谷底までの距離は15メートルほどだ。足もとを流れる川を見る。赤錆川が谷底を流れている。ここはナリクの国境でもある。  地図を確認する。渓谷の吊り橋の欄を見て、これまで移動してきた主人公の名前に、チェックを入れる。  ここに騎士と龍の両方がそろっているなら、先へと向かおう。    ・片方しかいないなら7へ。    ・両方がそろっているなら34へ。        41  龍が大きく息を吸い込んで、大ヤギに狙いを定める。だが、龍が火を吐く前に、軽やかな足取りで、大ヤギが吊り橋に足をかける。メキメキと音を立てて、その足もとの木板が壊れる。  大ヤギは慌てるが、もう遅い。板を踏み抜き落ちかけた身体に、吊り橋のロープが巻きつく。どうにか抜けようともがくのがなお悪い。騎士、大ヤギ、龍の重みに耐えかねて、ロープが根もとの木杭からほどけてしまう。  1人の叫び声と2頭の鳴き声が、渓谷に響く。騎士と龍の冒険記録紙の負傷欄にひとつずつ、チェックを入れること。  冷たい水のなかに落ちて、大ヤギの姿が見えなくなる。騎士は流されないよう、必死に泳ぐ。泳ぐなかで、王女の安否だけがその心を占めていた。流れのなか、龍が立ち上がって、溺れかかった騎士をくわえて拾い、そのまま岸辺までたどり着く。  危なかった……! 69へ。        42  彼らは口をへの字に曲げて、首を横に振る。そうとうな頑固者たちだ。こちらにピッタリと貼りついて、もと来た道を戻るまで離れないつもりだ。    ・戦って道を切り開くなら33へ。    ・入り口まで戻るなら7へ。        43  兵士たちが龍に追いつく。龍は恐ろしい雄叫びをあげて、立ち向かう。炎と爪、噛みつきで対抗するのだ。長槍に囲まれて突かれ、暴れれば距離を取られる。さすがの龍も、負傷する。龍の冒険記録紙の負傷欄にひとつチェックを入れること。  6人目の兵士をなぎ倒したところで、敵が逃げていく。望むなら、龍の状態欄にある空腹欄のチェックを、6つまで外してもいい。70へ。        45  3体ものトロールを相手に戦うなど、通常なら無謀な行為だ。だが、百戦錬磨の騎士と一騎当千の強者たる龍がそろっていれば、トロールといえど敵ではない。彼らを倒して、その場を立ち去る。望むなら、龍の状態欄にある空腹欄のチェックを、3つまで外してもいい。67へ。        46  ドワーフたちはいかつい龍の足音に気づいて、振り返る。そして、驚いた表情でつるはしを取り落としたあと、顔を見合わせてきびすを返す。坑道の奥へと、全速力で逃げていく。    ・追いかけるなら58へ。    ・炎を吐くなら88へ。    ・捨て置くなら37へ。        49  気絶している兵士の服を噛んで、木陰に引っ張る。直射日光にさらされないぶん、いくぶんかマシだろう。  しばらく経って、兵士が目を覚ます。龍の姿を見て息もできないほどに驚くが、その場に硬直したまま、状況を正しく理解したらしい。助けてくれたのか、とつぶやく。  人間の言葉が分かるのか? と問いかける。龍はうなずく。11へ。        50 ドクロ山   天に向けて暗く口を開けた、火口のような形状の入口から洞窟に降りる。内部は鍾乳洞めいた洞窟で、気温は低いがわずかに明かりが入ってくる。  グネグネと曲がった洞窟内部を、しばらく歩く。この場にいる者すべての、冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつ(ずつ)チェックを入れること。冒険記録紙の軌跡欄にある、開門にチェックが入っているだろうか?    ・開門と書かれているなら75へ。    ・記入がないなら55へ。        51  村人たちはとても警戒していて、つっけんどんな態度で対応する。だが、トロールの襲撃を告げると、その瞳には明らかな恐怖が浮かぶ。わざわざやってきた騎士が言うのだ。村人たちは話を信じるが、とても不安そうだ。  男たちが集まって、武器を準備しはじめる。騎士が前に一歩出て、ともに戦うと告げることもできる。ロング・ナリク国内の村を守ることにためらいはない、ふだんなら。  だが、いまは、王女のために旅をしているのだ。  名乗りを上げるか、村を離れて目的地への旅を再開するか。どちらかを選ぶ。    ・ともに戦うなら65へ。    ・村を去るなら40へ。        52  ノームは焚き火を焚いて、簡単な食事をこしらえてくれる。龍には足りないが、騎士の冒険記録紙にある空腹の欄のチェックをひとつ外してもいい。食事をしながらノームは、この坑道の成り立ちを教えてくれる。数百年前には金を中心にさまざまな鉱物が採れたが、現在では銀が少し手に入るていどだ、という。ノームは手のひらに銀塊を乗せて、こちらに見せる。望むなら、これをもらってもいい。そうするなら、騎士の装備品欄に銀塊を記入する。  食事を終えると、ノームは出口までの複雑な道の進み方を教えてくれる。その情報によると、まず、先ほどまで歩いていた、メインの坑道に戻らなければならない。  歩き続けて、大きな道が途絶えるところまで来たら、あっちを選び、こっちを選んで……。その場所に来たら、そのときにいる番号に50を加えた番号へと進むこと。  ノームに礼を言って、別れる。大きな坑道に戻ってくると、ドワーフは相変わらず、一心不乱に採掘をしている。道が1本しかないため、気づかれないように背後を抜けることは、できそうにない。    ・ドワーフに話しかけるために近づくなら29へ。    ・ドワーフを襲撃するなら12へ。        53  彼らはこちらの腕を掴んだまま、押し黙って坑道を歩く。やがて、強い風が吹きつける、渓谷への吊り橋にたどり着く! 「それじゃあな。もう、迷い込んでくるなよ」  ドワーフはそう言って、坑道へと戻っていく。40へ。        54  何事もなく、吊り橋を渡る。そのまま去るつもりでいた龍と騎士の目に、あるものが飛び込んでくる。水辺にあの大ヤギが倒れているではないか! 以前与えた傷が、致命傷となったのだ。ここまで歩いてきたが、力尽きてしまったのだろう。    ・大ヤギのところまで降りていくなら82へ。    ・そのまま旅を続けるなら2へ。        55  途中、洞窟が大きく開けた場所に出る。下に向けて深くえぐれたその場所を、上からの明かりが照らしている。月明かりだ……いつの間にか日が暮れて、満月の光が降りてきているのだ。  水没しているその場所には、巨大な生物の骨がいくつにも折り重なって沈んでいる。龍骨だ……龍が致命傷を負ったとき、最期を迎えるために訪れる場所。興味深いが、ここ数週間続いていた雨のためか、すべてが水のなかだ。  他に道がないので、よく滑る危険な道を歩かざるをえない。騎士がいるなら、気をつけて歩くものの、数時間のうちにいちど、足を滑らせてケガを負う。騎士の冒険記録紙の状態欄にある負傷にひとつチェックを入れること。70へ。        57  長年放置されていてガチガチに硬いが、龍と騎士が力を合わせて門を開く。どこか遠いところ、山の内側から、轟くような音が響く。どこにどうつながっているのか分からないが、赤錆川の上流から、大量の水が流れ出る。川を流れて、下流にある湖へ。後に通るかもしれない銀の入り江へと、流れ込んでいく。冒険記録紙にある軌跡欄にある、開門にチェックを入れる。  ひと仕事を終えて、吊り橋まで戻ってくる。邪魔者もなく、橋を渡る。2へ。        58  洞窟が大きく広がって、広間めいた場所にたどり着く。ドワーフたちは散り散りになって、小さな穴に身を隠す。暗闇のなか、何かが放たれる音がする。スピアトラップだ! この場にいる者(龍、あるいは龍と騎士の両方)は、負傷を負う。冒険記録紙の負傷欄にひとつ(ずつ)チェックを入れること。  ドワーフたちは自分たちの身とこのリオーマの坑道を守るために、襲撃者に対する備えをしていたのだ。手傷を負った龍は怒り狂って、かぎ爪を振るい、ドワーフたちの頭にかぶりつく。あっという間に、4人のドワーフは引き倒されてしまう。  騎士がいるなら、ドワーフの荷物から金貨4枚と銀塊を取り、装備品に加えてもいい。また、望むなら、龍の状態欄にある空腹欄のチェックを、4つまで外してもいい。37へ。        59  開門によって、水流が増加している。スタミナと体高のある龍は河を渡りきるのに問題ないが、徒歩で追ってきた兵士たちはそうはいかない。つよい流れの前に、兵士長は兵士を舟に乗せるために、いったんもどることに決める。龍はそのあいだに向こう岸へと渡って、大平原へと走り去る。  兵士長は龍が自国の街に向かわないのを見て、追うのをやめる。70へ。        60 銀の入り江  銀の入り江は美しい湖の入り江だ。昔ここで銀が採れたからその名がついたとも、水面に反射する陽の光が美しいためにそう呼ばれるようになったとも言われている。この場にいる者すべての、冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつ(ずつ)チェックを入れること。  入り江に近づくにつれて、人影がいくつか見える。兵士たちが、武装して陣を張っているのだ。数は6人ほどだろうか?   いま旅しているのは?    ・龍だけなら38へ。    ・それ以外なら18へ。        62  振り返ったドワーフたちは、つるはしを手に持ったまま、しかしその先端は下げて、こちらに声をかける。 「ここは俺たちの土地だ。勝手に入ってもらっちゃ困るな、兄さん」      ・武力で彼らを黙らせたいなら33へ。    ・道に迷ったのだと言い訳したいなら28へ。    ・正直に経緯を話した後に謝罪して、通り抜けさせてくれと頼むなら42へ。        63  日が暮れる。大平原の入口近くに、騎士と龍はやって来た。大きな木の下で、騎士と龍は身を寄せあって、焚き火に照らされながら眠りにつく。冒険記録紙の状態欄にある負傷からひとつずつ、チェックを外す。冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつずつ、チェックを入れる。  眠りにつきながら、騎士はこの平原について、知っていることを思い返す。平原は都市国家であるネグラレーナとビストフがそれぞれ領有を主張しているが、どちらも実質的には支配できていない。巨大な怪物や死者の霊がさまよっていて、人間が住める場所ではないのだ。 (☆以降次回)        64  兵士は簡素な木製の台のうえに、簡易製の武器や手製の矢を置いている。兵士は騎士を見て、商人のような笑顔を見せる。ここでの名産物は銀の矢なのだと言う。いま払底しているため作れないが、材料があれば同じ値段で銀の矢をつくることもできるのだそうだ。  他の武器は見る価値のないものだが、矢の質はいい。騎士の装備欄に銀塊があるなら、銀塊と金貨2枚を消費して銀の矢を記入してもいい。銀塊がないなら、金貨2枚だけを消費して(ふつうの)矢を記入することもできる。どうするか決めたら、必要に応じて冒険記録紙を書きかえて84へ。        65  トロール3体との戦闘を行う。村人たちはつよい戦士ではないが、それでも大人の男たちだ。それが20人以上集まっている。そのうえ、準備を整えて応戦するのだ。加勢があれば、勝利は難しくない。いま、騎士だけで移動中なら、負傷をひとつ負って勝利する。騎士の冒険記録紙にある負傷欄にひとつチェックを入れること。そうでないなら、無傷で勝利する。  トロールたちは死んだ。村人たちは大喜びだ。宴に招待されて、羊肉が振る舞われる。この場にいる者(騎士、あるいは騎士と龍の両方)は、冒険記録紙の空腹欄にあるチェックをひとつ(ずつ)外すこと。 「ほう、ほう」  シスール・メノールの村長は、黒ひげを生やした若い男だ。旅の行程を聞いて、協力を申し出てくれる。 「それなら、私たちから騎士どのに贈り物をせねばなりませんな」  羊の肉を力づよく噛み締めながら、大きな弓を渡してくれる。 「吊り橋の渓谷には、怪物が出ます。大きなヤギが、あなたを突き殺そうとするでしょうな。そんなとき、この弓の弦をはじきなされ。この弓は普通に使っても強力だが、その弦の音をあの怪物は嫌がるはずだ」  この贈り物を受取るなら、音鳴りの弓を騎士の装備欄に記入する。  村人に惜しまれながら、シスール・メノール村を去る。数時間後、渓谷への吊り橋まで無事にたどり着く。40へ。        66  龍が大きく息を吸い込んで、激しい炎を大ヤギに向けて吐きつける。大ヤギはメラメラと燃えながら走りまわって、崖から落ちて姿を消す。  龍の冒険記録紙にある軌跡欄にある、大ヤギ討伐にチェックを入れる。23へ。        67  シスール・メノール村が見えてくる。村は谷のなかにあって、遺跡がある以外には、取り立てて特徴はない。村人たちは警戒心に満ちた瞳を、こちらに向ける。こちらの身体には、先ほどトロールと戦ったさいに血が、いたるところについている。村人たちの視線は、そんな様子に対する猜疑心に満ちている。  これほど疑われては、村に入ることすらできない。仮に村人のために戦ったことを主張しても、信じてもらうのは難しいだろう。信じてもらえたとしても、恩を売っているとみなされるのがオチだ。致し方ない。彼らはよわく、龍がこわいのだ。  村人を救ったのは正しい行いだったが、今回は報われなかった。シスール・メノール村を迂回して、道を歩く。数時間後、渓谷への吊り橋まで無事にたどり着く。40へ。        68  騎士が兵士の服を引っ張って、木陰に運ぶ。直射日光にさらされないぶん、いくぶんかマシだろう。  しばらく経って、兵士が目を覚ます。助けてくれたのか、とつぶやいて、それから礼を言う。11へ。        69  渓谷の底に流れている川の向こう側から、岩壁を登って反対側にたどり着く。体力を消耗したため、騎士と龍それぞれの冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつずつチェックを入れること。  2へ。        70 大平原入口  長い道を歩いて、大平原の端までやってくる。  見渡すかぎりの平野が続いている。まばらに生える植物の他には、ところどころに落ちている人型の骨。それ以外に目に入るものといえば、下流に向かって流れる赤錆川とその途中の中洲に建つ城ぐらいのものだ。ここは荒野、怪物の地。人が足を踏み入れない危険地帯だ。  地図を確認する。大平原入口の欄を見て、これまで移動してきた主人公の名前に、チェックを入れる。  ここに騎士と龍の両方がそろっているなら、先へと向かおう。    ・片方しかいないなら100へ。    ・両方がそろっているなら63へ。        71  坑道を歩く。歩けども歩けども、区別のつかない坑道が続く。どのぐらい歩いただろう? 坑道の真ん中に、ボロっちい布切れめいた塊が落ちている。いや……よく見ればそれは生き物だ。半分寝たような状態でうずくまっている、汚らしい身なりの小人、ノームだ。  ノームは目を開いて、不思議そうな表情で見ている。逃げようともしない。こちらも、その敵意のない雰囲気に気を取られて、しばらく顔を見合わせている。 「ああ、道に迷ったの?」  急に腑に落ちたらしく、ノームはそう尋ねる。言葉が通じるらしい! 自分よりもずっと大きな生き物を相手に、身じろぎひとつしない。この場に騎士がいるなら、食料を渡すこともできる。    ・そうだと答えて、助力を乞うなら52へ。    ・食料を渡して、出口までの案内を頼むなら22へ。    ・ノームをやっつけたいなら85へ。        73  吊り橋を半ばまで渡ったときのことだ。背後から気配を感じて、振り返る。そこにはヤギが立っている。世に知られているヤギとは違う。熊ほどに大きくて、気性も荒そうだ。そいつはこちらをじっと見ながら頭を下げて、突進のポーズをとる。前脚のひづめで地面をかく動作をしながら、蒸気のような鼻息をほとばしらせる。すぐにでも、襲ってきそうだ!    ・龍が火を吐くなら41へ。    ・騎士が武器を構えるなら13へ。    ・橋にしがみつくなら99へ。        75   途中、洞窟が大きく開けた場所に出る。下に向けて深くえぐれたその場所を、上からの明かりが照らしている。月明かりだ……いつの間にか日が暮れて、月の光が降りてきているのだ。  巨大な生物の骨がいくつにも折り重なっている。龍骨だ……龍が致命傷を負ったとき、最期を迎えるために訪れる場所。  いま旅しているのは?    ・騎士だけなら8へ。    ・それ以外なら79へ。        76  武器をしまって、大ヤギから遠ざかる。追ってくるかと思いきや、興味を失くしたように、プイとそっぽを向いて行ってしまう。縄張りから出て行く敵をわざわざ追うのは、ムダのある行為だ。大ヤギは合理的な行動をしたにすぎない。  だが、理由はどうあれ助かった。23へ。        77  弓を取り出して、構える。矢がない。しかし、構わない。指先で弦をはじくと、スズメバチの羽音のような、独特の音が出る。身体が震えるような不思議な音。突進の構えを見せていた大ヤギが動きを止めて、不愉快そうにウロウロと動く。  少しして、大ヤギが立ち去っていく。音をきらったのだろうか。2へ。        78  戦闘のプロたる騎士であっても、自分よりもずっと大きなトロール3体を同時に相手しては勝てない。1体を相手にすれば、残りの2体が飛びついてくる。組み伏せようと足を掴んできたり、腕を掴もうと手を伸ばしたり。そして、それぞれに天然の武器──かぎ爪と牙が備わっているのだ。  負傷を負う。騎士の冒険記録紙の負傷欄にひとつチェックを入れること。このままでは殺されてしまうと感じて、逃げ出すことに決める。彼らは素早いが、スタミナがそれほどあるわけではない。少しのあいだ追いかけてくるが、すぐにあきらめる。    ・村に危険を知らせに行くなら51へ。    ・もう関わらないことに決めるなら27へ。        79  湿った洞窟の陰で、いくつかの影が動く。しっとりとした肌をした生き物がペタペタと、吸盤特有の足音を立てながら、近づき、龍に話しかける。かえる人だ! 「こんなところで、生きた神さまに会えるなんて光栄です。しかも、ああ、なんてキレイなんでしょう!」  もっとも老いたかえる人が、龍の言葉でそう言う。    ・かえる人を食べるなら101へ。    ・話をもっと聞くなら89へ。    ・無視して墓場に降りるなら8へ。    ・無視して道を急ぐなら70へ。        82   ヤギを解体して、持っていくことができる。そうするなら騎士の装備欄に大ヤギの肉3個を記入すること。大ヤギの肉1個は食料1個と同じように、冒険記録紙にある空腹欄のチェックをひとつ外すことができる。  大ヤギのそばにある、見慣れないものが目に入る。馬車の車輪に似た形状の、石製のなにか。ツタが絡みついた、古い水門だ。    ・水門を開くなら57へ。    ・放って旅を続けるなら2へ。        83  村人が総出で、槍や農機具を手にして、こちらに向けて構える。全員で立ち向かう覚悟があるようだ。状況を説明しようと、口を開く。だが、そこから漏れてくるのは、獣の咆哮にも似た鋭い声だけだ。龍になってしまったため、村人と言葉を交わすこともできないのだ。  村人はこちらの顔の高さまで槍をあげて、威嚇を繰り返す。その様子を見て、だんだん腹が立ちはじめる。向こうの気持ちはどうあれ、王女がみずから村の危機を教えに来たのだ。それを、暖かい暖炉ではなく槍をもって迎えるとは!  ちょうど小腹も空いている。望むなら、村にいる羊を1匹、腹立ちまぎれにむさぼり食らってから立ち去ってもいい。    ・羊のひとつでも食べてから去るなら19へ。    ・おとなしく立ち去るなら40へ。        84  直前の項目番号で買物をしていたなら、屋台の兵士がチーズとハムをはさんだパンを、昼食として分け合ってくれる。この場にいる者すべての、冒険記録紙の状態欄にある空腹からひとつ(ずつ)チェックを外すこと。  箱舟が向こう岸からやってくる。大きな箱を、舟の上に載せたような外見だ。これに乗るには、1人につき金貨1枚を支払わなければならない。ここにいるのが騎士だけなら金貨1枚、龍の王女も同行しているなら金貨2枚を支払う必要がある。そうするなら、騎士の冒険記録紙の装備欄を変更する。    ・金を支払うなら93へ。    ・そうでないなら106へ。        85  ノームをやっつけた。目ぼしい持ち物はないが、望むなら、龍の状態欄にある空腹欄のチェックをひとつ外してもいい。  先の道に確信が持てないため、もとの大きな坑道へと戻ることに決める。ドワーフは相変わらず、一心不乱に採掘をしている。    ・ドワーフに話しかけるために近づくなら29へ。    ・ドワーフを襲撃するなら12へ。        86  滑落跡はかなり下まで続いていて、その先で兵士が気絶している。近づくと、その気配に反応してか、身体を少し動かす。  いま旅しているのは?    ・龍だけなら49へ。    ・それ以外なら68へ。        87  坑道を脱出する。40へ。        88  炎にまかれてドワーフが死亡する。騎士が一緒なら、騎士も炎で肺をやられてしまう。騎士の冒険記録紙にある負傷欄にひとつチェクを入れること。  騎士がいるなら、ドワーフの荷物から金貨4枚と銀塊を取り、装備品に加えてもいい。また、望むなら、龍の状態欄にある空腹欄のチェックを、4つまで外してもいい。  37へ。        89  かえる人は龍の王女を「神さま」と呼ぶ。かえる人には龍を崇める風習があるのだと、年配のかえる人が言う。 「悪い魔女が来て、水のなかに入っていきました。墓場にいる死んだ神さまをだまして、生きた神さまをどうにかしようと、計略を練っていたんです」  彼らの話をまとめると、墓場にいる龍の死体に魔女が術をかけて、なにごとかを吹き込んで去ったのだという。  いいことを聞いた。龍の冒険記録紙にある軌跡欄にある、かえる人にチェックを入れて8へ。        93  箱舟に乗って、向こう岸までたどり着く。70へ。        95  教わった場所に近づくにつれて、人が足を踏み入れた痕跡がない、荒れた山奥になっていく。地面が急に低くなって、大きな窪地があらわれる。その底に、わらを集めてつくられた、大ヤギの巣穴がある。その真んなかでヤギが寝ている……ヤギというよりは、ほとんど熊に近いサイズだ。  いま旅しているのは?    ・騎士だけなら98へ。    ・それ以外なら66へ。        97  冒険記録紙の軌跡欄にある、死者の腕輪にチェックを入れる。軌跡欄にあるかえる人に、チェックが入っているだろうか?    ・記入があるなら21へ。    ・記入がないなら16へ。        98  騎士は長剣を抜き払って、できるかぎり静かに、大ヤギに近づく。やぶに引っかからないよう気をつけながら、巣穴へと入る。好機だ!  長剣を振り上げた瞬間に、大ヤギが目を覚ます。振り下ろした剣はその野放図に伸びた角に激突して、火花を散らす。致命傷を避けられた! 返す刀でもういちど斬りつける。大ヤギの顔面に当たって、したたかに顔を斬り裂いた。さらに、一撃。今度は胸に。獣毛が剣戟の威力を削ぐが、それでも無事には済まないはずだ。  大ヤギは怒り狂って、騎士に体当たりをかます。騎士の冒険記録紙の負傷欄にひとつチェックを入れること。ぶ厚い板金鎧に守られているおかげで、致命傷はまぬがれる。  ヨロヨロとよろめきながら、大ヤギは猛スピードで巣穴から飛び出して、逃げていく。騎士はそれを追う。おぼつかない足取りの大ヤギは、崖から落ちて姿を消す。  冒険記録紙にある軌跡の欄にある、大ヤギ討伐にチェックを入れる。23へ。        99  軽やかな足取りで、大ヤギが吊り橋に足をかける。メキメキと音を立てて、その足もとの木板が壊れる。重すぎたのだ!  大ヤギは慌てるが、もう遅い。板を踏み抜き落ちかけた身体に、吊り橋のロープが巻きつく。どうにか抜けようともがくのがなお悪い。騎士、大ヤギ、龍の重みに耐えかねて、ロープが根もとの木杭からほどけてしまう。  騎士と龍は吊り橋のロープにしがみつく。騎士は落下をまぬがれるが、龍は自分自身の重みに耐えかねて、結局落ちてしまう。龍の冒険記録紙の負傷欄にひとつ、チェックを入れること。  冷たい水のなかに落ちた龍は、立ち上がって岸辺までたどり着く。それから、岩壁を登って吊り橋の反対側までやってきて、騎士と合流する。体力を消耗したため、龍の冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつチェックを入れること。2へ。        100  次に移動する者にチェックを入れる。次の選択肢から、先に挑戦して踏破していないほうを選ぶこと。    ・銀の入り江なら60へ。    ・ドクロ山なら50へ。        101  龍の冒険記録紙の状態欄にある空腹のチェックをひとつ外す。 「わあっ」  かえる人たちはバラバラに逃げていく。なかなかうまい。  さて、かえる人はいなくなった。    ・墓場に降りるなら8へ。    ・道を急ぐなら70へ。        103 「聞いているぞ、バーレイよ」  龍の王女は凛とした姿勢で目を見開き、骨龍を見据える。 「人間ごときに取り入って、私を騙そうとしているそうではないか。人の浅知恵に振りまわされているとはな。龍の誇りはないのか!」  骨龍はしばらく黙った後、立ち上がる。 「まさにな。私が失ったものを、お前が照らしてくれたぞ。美しき紅の龍よ」  龍の王女は無言のまま、骨龍を見つめる。 「だが、もう遅いかもしれぬ。魔女はその大釜に、この墓場から龍の骨を持ち去った。龍の骨こそ、龍を倒す最適の武器。ドラゴンスレイヤーを編成する心づもりだろう」  ドラゴンスレイヤー! 龍の王女はその言葉に衝撃を受けて、よろめく。なんと恐ろしい……! その様子を見て、骨龍が口を開く。 「ドラゴンスレイヤーのリーダーは、不死の怪物だ。銀の武器による攻撃が、やつへの致命傷となるだろう。気をつけろ。俺も、お前に死なれたくはない……。」  龍の世界にも、恋愛に似た感情があるのだろうか。本来は人間である龍の王女には、本当のところは分からない。70へ。        104  勝ち目がなくとも、騎士は武器を手に前進する。だが、それは賢い選択ではなかった。野放図に生えた大ヤギの角が剣をはじく。がら空きになった騎士の身体に、素早くもどってきた角が突き刺さる。厚い板金鎧が致命傷を防いでくれるが、それが勝利につながるわけではなかった。吹き飛ばされた騎士が転がった先へと、大ヤギはそのままの勢いで追いかけてくる。騎士が起き上がるよりも速く、大ヤギは下げた角で騎士の身体をもう一度捉えて、持ち上げる。  叫び声が響き渡る。騎士は山道の斜面を転がり落ちて、見えなくなる。冒険は失敗に終わったのだ。        105  冒険記録紙の軌跡欄にある、開門にチェックはあるだろうか?    ・あるなら59へ。    ・ないなら43へ。        106  舟に乗らないなら、自力で渡るしかない。河のなかへと足を踏み入れる。冒険記録紙を確認する。軌跡欄の開門にチェックがついているなら、水量は多いため、渡りきるまでに人間は疲弊してしまう。騎士の冒険記録紙の状態欄にある空腹にひとつチェックを入れること。チェックがないなら関係ない。70へ。        107  骨龍バーレイは荒れ狂う暴風雨のように、骨だけの翼を広げて突進してくる。今ここにいるのが騎士だけなら、負傷をふたつ負う。龍だけなら、ひとつ負う。両方がいるなら、無傷で骨龍を倒す。  後に残るのは、バラバラになった龍の骨と、最初に見かけたひすいの腕輪だけだ。望むなら、地面に落ちた腕輪を手に入れてもいい。そうするなら、冒険記録紙の軌跡欄にある、死者の腕輪にチェックを入れる。70へ。