━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ 『銀鼠の微睡』  著:森梟夫  監修:水波流 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■ ■序章 大正十五年、秋。 帝都・東京は、奇妙な色の霧に包まれていた。 浅草十二階……凌雲閣が、まるでもぎ取られた指先のように霧の海から突き出している。君──書生風の身なりをした青年──は、ミルクホールを出たところで、自分がどこを歩いているのか分からなくなった。 カツン、カツンと自分の下駄の音だけが、不自然なほど明瞭に響く。 ふと見れば、路地の角に一軒の古書店が佇んでいた。看板には『星辰堂』と掠れた文字で書かれている。店主と思わしき、顔に深い皺を刻んだ老人が、店先で一冊の黒い装丁の書物を広げていた。表紙には忌まわしい星のような紋章が焼き付けられている。 老人は顔を上げず、掠れた声で呟いた。 「……お若いのは、夢を探しておられるのかな。それとも、目覚めを……」 君が歩み寄り、その書物について問うと、老人はニタリと不気味な笑みを浮かべた。 「これは、海の底に沈んだ都市の詩集さ。あるいは、星々が正しき位置に並んだ時にのみ読める地図、とも言える」 差し出された頁には、文字とも図形ともつかぬ、のたうつ触手のような紋様が蠢いている。それを見た瞬間、君の脳裏に、水死体のような青白い肌を持つ巨大な異形が、深海で微睡む光景がフラッシュバックした。 強烈な眩暈が君を襲う。 君は心を削られるような思いをしながらも、その書物に強い好奇心を抱いてしまった。 君が書物に手を伸ばすと、老人の姿は霧のように掻き消えた。 手元に残されたのは、冷たく湿った革表紙の感触だけだ。表紙には、銀色の糸で『ルルイエ異本』と刺繍されている。 耳鳴りのような、あるいは無数の羽虫が這い回るような低い声が聞こえる。 「……開け……門を……」 君がその頁をめくると、周囲の景色が激変した。浅草の街並みは崩れ去り、垂直にそびえ立つ巨大な石柱と、非ユークリッド幾何学に基づいた歪な建築物が並ぶ、太古の都市へと変貌を遂げる。 空には、本来あるはずのない「二つの月」が浮かんでいた。 君は理解した。ここは帝都であって帝都ではない場所なのだ。 君は背筋に冷たいものを感じる。 背後で老人の低い笑い声が聞こえた気がしたが、振り返る勇気はなかった。 霧はますます濃くなり、ついには数歩先も見えなくなる。ふと、足元に違和感を覚えた。石畳だったはずの地面が、じっとりと湿り、まるで巨大な生物の舌の上を歩いているような、厭な弾力を帯び始めている。 どこからか、笛のような、しかし生き物の鳴き声のような、不協和音が聞こえてくる。 「テケリ・リ、テケリ・リ……」 1へ 1. 異界の洋館 意識が覚醒した瞬間、私の肺を突いたのは、沈殿した時間と微かな腐敗臭が混ざり合う、かの忌まわしき洋館の空気であった。大正建築の粋を極めたはずのその広間は、しかし柱の角度がどこか狂っており、視神経を苛む非ユークリッド的な歪みを帯びている。壁に掛けられた古時計は、心臓の鼓動を嘲笑うかのように逆行し、硝子窓の向こうには、この地上のものではない、悍ましき紫色の星辰が脈動していた。 * 血のような赤の絨毯が暗い奥底へと続く、廊下を凝視する:2へ * 階下から響く、粘り気のある湿った水音の正体を探る:3へ * 塵に埋もれた書棚から、禁忌の知識が漏れ出す古書を手に取る:4へ 2. 晩餐の円卓 広大な食堂には、蝋燭の火が青白く揺らめいている。食卓を囲むのは、燕尾服に身を包みながらも、その襟元から覗く首筋が鱗に覆われた、名もなき「モノ」たちであった。彼らの前の皿には、煮えたぎる胆汁のような液体の中で、死んだ魚の眼球に似た何かが、不気味に明滅しながら蠢いている。 * 感情を失った給仕に、この屋敷の理を問う:5へ * 胃の腑を焼くような、冒涜的な芳香を放つ料理を口にする:6へ * 鈍く光る銀のナイフを、護身のために懐へ忍ばせる:7へ 3. 湿った地下牢 石造りの階段を降りるにつれ、空気は重く、そして耐え難い魚臭さに満たされていく。壁面は青光りする粘液で濡れ、そこには人類以前の種族が刻んだと思われる、おぞましい象形文字がひしめいていた。暗闇の奥底からは、管楽器を吹き鳴らすような不快な音と、あの「テケリ・リ! テケリ・リ!」という嘲笑が響き渡る。 * 暗黒に潜む、原初の恐怖の根源へと歩み寄る:8へ * 壁に刻まれた、正気を削り取るような「古の印」をなぞる:9へ * 崩壊した石壁の隙間、辛うじて身を隠せる闇へ滑り込む:10へ 4. 禁断の書庫 そこは知性が絶望へと変貌する祭壇であった。天井まで届く書棚には、皮肉にも大正の文豪たちの著作に混じり、羊皮紙ならぬ「何か」の皮で綴じられた禁書が並んでいる。その中に、銀色の鍵の紋章が刻まれた一冊の書物──読む者に死以上の狂気をもたらす魔導書があった。 * 極北の彼方、ルルイエの眠りを記した『エイボンの書』を開く:11へ * 狂えるアラブ人の血で記された『ネクロノミコン』の写本をめくる:12へ * 背後に感じる視線に耐えかね、一刻も早くこの場を去る:13へ 5. 給仕の囁き 給仕が振り返る。その顔には目も鼻もなく、ただ一つの巨大な亀裂のような口が、粘つく糸を引きながら開いた。「あるじは……星が正しい位置に揃うのを……海底の揺り籠で待っておられる……」。その声は直接脳内に響き、貴方の耳から黒い血が滴り落ちた。 * 冒涜的な主の正体を知るべく、さらに言葉を重ねる:14へ * 恐怖のあまり、給仕の偽りの皮を剥ぎ取ろうと組み伏せる:15へ * 限界を超えた精神が叫びを上げ、闇雲に広間へと逃げ出す:13へ 6. 冒摂的な味覚 その肉片を噛み締めた瞬間、貴方の脳髄は宇宙の深淵に投げ出された。時空の壁が崩壊し、数億年前の地球を支配していた多頭の怪物の記憶が流れ込んでくる。喉元からは人間のものではない咆哮が漏れ、指先は急速に水掻きを伴う鉤爪へと変貌していった。 * 沸き上がる破壊衝動に身を任せ、獣として覚醒する:16へ * わずかに残った正気で、自らの喉を掻き切り、不浄を吐き出す:17へ * 激痛の中に自己を繋ぎ止めるべく、自身の肉を深く噛み切る:18へ 7. 銀の護符 鈍く光る銀のナイフの刃紋には、確かに「古の印(エルダーサイン)」が施されていた。それを手にした瞬間、部屋を埋め尽くしていた不定形の影たちが、物理的な苦痛を感じたかのように震え、退散していく。しかし、それは同時に、より巨大な「何か」の注意を引くことでもあった。 * 退却する影を追い、この迷宮の最深部を暴き立てる:19へ * 印の力を信じ、己の心臓の鼓動を鎮めるための儀式を行う:20へ * ナイフの冷たさに縋りながら、再び狂気の廊下へと戻る:1へ 8. 原初の恐怖 暗闇から溢れ出したのは、虹色の光沢を放つ黒い原形質──ショゴスであった。それは決まった形を持たず、数千の目が表面に浮かんでは消え、そのたびに貴方の名を呼ぶような、不快な擬態音を繰り返している。物理法則を無視した巨大な肉塊が、貴方を吸収せんとうねりを見せた。 * 絶望的な足掻きとして、本能のままに背後へ逃走する:3へ * 禁書で得た知識を絞り出し、不完全な呪文を唱える:21へ * 宇宙的な無慈悲さを悟り、泥濘の中へと立ち尽くす:22へ 9. 壁画の啓示 壁画には、蛇の如き身体を持つ種族が、星々から飛来し、この地球に文明を築く様が克明に描かれていた。それは進化論という欺瞞を粉砕し、人類がいかに矮小な、単なる「実験の残り滓」に過ぎないかを冷酷に物語っている。 * 知識という毒を求め、さらに記録の深奥を読み解く:23へ * この世に存在してはならない真実を、炎で焼き尽くそうと試みる:24へ * 溢れ出す狂気を防ぐため、強く目を閉じ、その場を離れる:13へ 10. 潜伏 壁の隙間に身を隠すと、背後の暗闇から氷のように冷たく、そして粘つく触手が貴方の首筋を愛撫した。それは生物的な温もりを一切持たず、ただ純粋な悪意と、食欲に近い好奇心だけを伝えてくる。 * 振り向きざまに、手近な瓦礫を振るって抵抗する:15へ * 呼吸を止め、心臓が止まるのを待つように身を硬くする:14へ * 隙間のさらに奥、より深い闇の裂け目へと潜り込む:25へ 11. 氷の真理 『エイボンの書』の頁からは、数光年先の極寒の惑星から吹き付ける風が漏れ出していた。貴方の視界は白く染まり、指先は凍傷で黒ずんでいく。頁の中では、大いなるクトゥルフの従者たちが、海鳴りのような祈祷を捧げていた。 * 凍てつく真理に触れ、肉体の感覚を失う:26へ * 恐怖に震える手で本を閉じ、呪われた知識を拒絶する:13へ * これは帝都の冬が見せる幻覚だと、自分を欺き続ける:4へ 12. 狂気の扉 『ネクロノミコン』の行間から、実体を持たない「色」が滲み出し、部屋を浸食し始めた。その色は既存の虹には存在せず、ただ見る者の魂を腐らせ、不毛な灰へと変えていく。聞こえるだろうか? 星々の彼方から届く、不協和音のフルートの音が。 * 宇宙の旋律に魂を委ね、狂乱の舞踏を始める:27へ * 鼓膜が破れるほど耳を塞ぎ、胎児のように丸まる:4へ * 魔導書を抱えたまま、この異次元の歪みから脱出を図る:13へ 13. 迷いし廊下 一歩外へ出た瞬間、空間の連続性は失われた。そこには重力も方向もなく、ただ幾何学的にあり得ない角度で交差する廊下が無限に続き、各々の扉からは、異なる次元の絶望が溜息のように漏れ出している。 * 意志を失い、最も近くにある黒い扉へと滑り込む:28へ * 崩壊していく理性の残り火で、出口なき回廊を疾走する:29へ * もはや現実を繋ぎ止めることのできない、虚無の天井を仰ぐ:30へ 14. 屋敷の執事 暗闇からゆっくりと歩み寄るのは、完璧な夜会服を着こなした男であった。だが、その頭部は、何百もの複眼が蠢き、巨大な口吻が粘液を滴らせる「ハエ」のそれであった。彼は優雅に一礼し、貴方に「供物」としての役割を告げる。 * 礼儀正しく返礼し、自らの運命を静かに受け入れる:6へ * 銀の印(ナイフ)を、その醜悪な頭部へと突き立てる(所持時):7へ * 武器を持たぬまま、本能に突き動かされて背を向ける:13へ 15. 剥き出しの真実 彼の服を剥ぎ取った貴方が目にしたのは、人肉を模した皮の下で、歯車と、脈動する内臓、そして真鍮のパイプが複雑に絡み合う「冒涜的な機械」であった。それは死者を動かし続けるための、異星の技術の結晶であったのだ。 * 機械の心臓部を破壊し、火を放ってこの虚飾の生命を終わらせる:24へ * 機械から剥き出しになった、不可解な銀の部品を奪う:7へ * 自身の身体もまた、同様の機械ではないかと疑念を抱いて逃げ出す:13へ 16. 覚醒の獣 もはや貴方の骨格は人間の形状を保てなかった。背中を突き破って生えたのは、膜状の巨大な翼。視界は三基の色層を捉え、思考は人類の言語を捨て去り、外なる神々の意志を直接受容し始めた。 * 星辰が正しい位置に揃うまで、宇宙の深淵を回遊する:26へ * 地球という塵のような惑星を、永遠の冷笑で見下ろす:30へ * かつて「人間」であった自分の、消えゆく残影を追い求める:28へ 17. 拒絶の末路 吐き出した不浄と共に、貴方の生命そのものが漏れ出していく。床に広がった血溜まりは、まるで意志を持っているかのように、館の亀裂へと吸い込まれていく。意識の灯火が消える間際、貴方は自分がこの館の「糧」に過ぎなかったことを悟る。 * 存在しない神の名を呼び、虚しい祈りを捧げる:29へ * 全宇宙を覆う絶対的な暗黒を、最期の言葉で呪う:30へ * 死の淵で輝く、抗いがたいほど美しい「外界の光」を追う:28へ 18. 正気の境界 腕を噛み切った激痛が、一時的に貴方の視界を現実に引き戻す。しかし、戻った先の世界は、以前よりも彩度が失われ、あらゆる物質が死を待つ死骸のように見えた。もう、二度と元の世界へは戻れないのだ。 * 狂気から逃れるため、血を流しながら階段を駆け上がる:13へ * 鏡に映る、自分の顔から人間性が剥落していく様を見届ける:28へ * 崩れゆく壁の向こうに、別の「地獄」があることを期待して殴る:25へ 19. 影の狩人 影を追ううちに、貴方の実体は希薄になり、二次元の「汚れ」へと成り果てた。貴方は館の壁を這う、言葉を持たぬ恐怖の一部となり、永遠に飢えを満たせぬ渇望の中に閉じ込められる。 * 次に訪れるであろう「新たな生け贄」を闇で待つ:終幕(あるいは1へ) * 館を構成する沈黙に溶け込み、自己という概念を消去する:29へ * わずかな隙間から差し込む、冷たい月の光を求めて悶える:30へ 20. 儀式の完遂 銀のナイフで己の掌を切り、その血を「古の印」に注いだ瞬間、館全体が苦悶の叫びを上げた。空間の歪みが修正され、一時的に「門」が開く。それは生還への道か、あるいはさらなる地獄への入口か。 * 浄化を願い、手に持った火を館の調度品へと放つ:24へ * 門の向こうに広がる、輝く星々の海へと身を投じる:26へ * 館の崩壊を、意識が途絶えるまで静かに見つめ続ける:28へ 21. 拙い呪文 不完全な発音で唱えられた呪文は、時空を捻じ曲げ、貴方の脚をショゴスの原形質へと置換した。粘つく肉塊と化した下半身を引きずりながら、貴方はもはや歩くこともできず、ただ異形の声を上げる。 * 怪物と化した自身の身体を使い、暗闇の中を這い進む:25へ * 刃物で異形の肉を切り裂き、人間としての死を懇願する:17へ * ショゴスと精神を同調させ、宇宙的な真理を共有する:22へ 22. 泥濘の同化 ショゴスの冷たい肉に取り込まれた貴方の意識は、一滴の水が海に溶けるように消滅した。そこにあるのは、億兆の歳月を経て蓄積された、悍ましき神々の歴史と、決して癒えることのない飢えの記憶であった。 * 無限の知識に溺れ、自我が崩壊する快楽に身を任せる:26へ * 溶けゆく意識の中で、己の名を最期の一閃まで叫び続ける:29へ * 完全に無へと至り、宇宙の冷酷な一部として眠る:30へ 23. 狂った預言 記録の終端。そこには、血を流し、眼窩を抉られた男が、呆然と壁を見つめる姿が描かれていた。それが自分であることを、貴方は直感する。運命は既に数千万年前に決定されており、抗う余地など微塵もないのだ。 * 定められた運命を書き換えるべく、記録を自身の血で汚す:20へ * 宇宙的な決定論の前に、膝をつく:10へ * 記録から溢れ出す「真実」を、獣のような咆哮と共に貪り食う:16へ 24. 浄化の炎 館を包む炎は、この世の物理法則を無視した青緑色の輝きを放っていた。それは熱くはなく、むしろ魂を凍らせるような冷徹な波動を伴っている。火の粉の一つ一つが、不快な笑い声を上げながら、貴方の記憶を焼き切っていく。 * 炎の浄化の中で、すべての狂気から解放される悦びに浸る:26へ * 燃え盛る回廊を、出口という名の幻想を求めて彷徨う:13へ * 崩壊する宇宙の縮図として、館の最期を看取る:30へ 25. 次元のはざま 裂け目の先は、幾何学的極限を超えた「外なる領域」であった。そこでは時間は砂のように流れ、空間は波のようにうねる。貴方の五感は意味をなさず、ただ魂が、名もなき神々の呼吸に曝されている。 * 未知の力に身を委ね、高次元の意識へと上昇を試みる:30へ * 時間の糸を掴み、かつて存在したはずの「現在」へ戻ろうとする:28へ * 永遠の漂流者として、意味なき色彩の渦に身を投じる:27へ 26. 星々の呼び声 肉体の感覚が消失した先で、貴方は宇宙の真理そのものと対峙する。そこは「大いなる者ども」が遊ぶ星辰の海。帝都の喧騒も、人の理も、ここでは塵芥に過ぎない。冷たい星の光が貴方の魂を射抜き、選別を始める。 * 真理の核心──銀色の門の番人として生きる決意をする:31へ * わずかに残った人間性で、禁忌の知識から目を背ける:4へ * すべてを虚無へ帰すべく、死の深淵へと沈む:30へ 27. 狂気の見本市 色彩の渦を抜けた先には、大正の浅草を歪に模した「異界の市場」が広がっていた。行き交うのは、外套を羽織った不定形の怪物や、顔のない紳士たち。彼らは貴方の正気をチップ代わりに、宇宙の絶望を売り買いしている。 * 市場の喧騒に混じり、永遠の悪夢の一部となる:32へ * 異形の隙間を縫い、冷たく光る「出口」の裂け目を目指す:25へ * 店先に並ぶ、自身の過去が記された「記録」を手に取る:23へ 28. 鏡像の帝都 気がつくと、貴方は雨に濡れた浅草の路地に立っていた。だが、そこにあるのは馴染み深い帝都ではない。鏡合わせのように左右が反転し、人々の顔は溶け落ち、ガス燈からは黒い煙が立ち昇っている。これは貴方の脳が作り出した、最後の「現実の残骸」だ。 * 鏡の街の深奥へ、自己の正体を確かめに向かう:33へ * 唯一、色彩を保っている場所を探す:27へ * 反転した現実の苦痛に耐えかね、自らの意識を断絶させる:18へ 29. 沈黙の司祭 幾多の回廊を経て、貴方は館の中枢──巨大な石扉の前に辿り着いた。そこには、灰色の法衣を纏った「沈黙の司祭」が待ち構えている。彼は何も語らないが、その存在自体が貴方に究極の問いを突きつけている。「汝は、偉大なる神の糧となるか、それとも鏡の中の幻となるか」。 * 司祭に導かれ、永遠の彫像としての安らぎを得る:34へ * 司祭の法衣を剥ぎ、その真の姿を暴こうと試みる:15へ * 問いから逃れるように、再び混沌の回廊へと疾走する:13へ 30. 零の空間 もはや形あるものは何一つ残っていない。時間の砂時計は砕け、空間の糸は解けた。貴方は、万物の王アザトースが微睡む中心地の、すぐ傍らに立っている。不気味な笛の音が、貴方の存在そのものを分解し、宇宙の背景放射へと変えようとしている。 * 無の快楽を受け入れ、完全に消滅する:35へ * 理性の最後の欠片を燃やし、この特異点から脱出を試みる:20へ * 崩壊する意識の中で、もう一度だけ星の配置を見上げる:26へ 【結末の章:審判の刻】 31. 星の眷属 貴方は「大いなる者ども」の代行者となった。大正という儚い夢の時代を見下ろし、星辰が再び正しき位置に来るその日まで、銀色の門の番人として、新たな「探索者」をこの狂気へと誘い続けるのだ。 * 「星の彼方で、永遠の安息に就く」:終幕 * 「新しい遊戯を始めよう、迷いし子羊よ」……別の宇宙から、さらなる生け贄を召喚する:1へ戻る 32. 無限の狂気 貴方の理性は、クトゥルフの微睡みが見せる悪夢の中に、永遠に幽閉された。そこでは時間は円環をなし、同じ絶望を何度も味わい続ける。貴方の肉体は神田の街角で発見されるだろうが、その心はもはや、この次元には存在しない。 * 「極彩色の悪夢の中で、永遠に踊り狂う」……やがて貴方はただ、冷たい星々の配置を数え続ける:終幕 * 「届かぬ助けを求め、闇の中で名前を呼び続ける」:1へ戻る 33. 生還、あるいは…… 気がつくと、貴方は神田の古本屋の前で、手にしていたはずのない一冊の古書を抱えて立っていた。帝都のガス燈の光は相変わらず優しく、すべては幻覚だったかのように思える。だが、不意に鏡を覗き込めば、そこには貴方の皮を被った「何か」が、爛爛とした眼光でこちらを嘲笑っていた。 * 「恐怖を秘し、沈黙の中で余生を過ごす」:エピローグへ * 「もはや自分ではない自分を、鏡ごと砕き割る」:終幕 * 「失われた真実を求め、再び書物の中へ潜る」:1へ戻る 34. 奈落の蒐集品 貴方は館の一部──壁を飾る生きた彫像となった。意識は明晰だが、指一本動かすことは叶わない。貴方の眼球は、次に訪れる犠牲者が狂気に陥る様を、瞬きすることなく永遠に目撃し続けるための呪われたレンズとなったのだ。 * 「意識の深奥で、神々に呪いの言葉を吐き続ける」……貴方は永劫の歳月の中で、完全に精神を摩耗させる:終幕 * 「新たな犠牲者が扉を叩くのを、心待ちにする」:1へ戻る 35. 虚無への帰還 すべてが消滅した。館も、大正という時代も、貴方自身の記憶さえも。残されたのは、絶対零度の宇宙空間を吹き抜ける、不気味な笛の音と、アザトースの玉座の周りで踊る、名もなき神々の笑い声だけである。貴方はただ、永遠の無という名の「平穏」に飲み込まれていく。 * 「すべての恐怖を、静寂の中に埋葬する」……貴方は風の音に紛れ、完全に無へと還元される:終幕 * 「無の中から、新たな狂気の宇宙を夢想する」:1へ戻る ■エピローグ 君が正気を保とうと足掻くほど、銀鼠の霧は深く、重く、君の肺を満たしていく。 どの道を選ぼうとも、この帝都に蔓延る「這い寄る混沌」からは逃れられない。 ……やがて、朝が来る。 浅草の路地裏で、一人の青年が倒れているのが発見された。 体には外傷一つなかったが、その髪は一夜にして銀鼠色に染まり、瞳からは光が失われていた。彼はうわ言のように、誰も知らない神の名を呼び続けているという。 『銀鼠の微睡』── 完 ☆★====================================================★☆ ■あとがき ……おや、顔色が優れませんな。私の描写が少々、貴方の脳を刺激しすぎたでしょうか。 しかし、これこそが真の恐怖。大正の美しき表皮の下で、脈動し続けている「真実」なのです。もし、まだその魂が「あちら側」に囚われていないのであれば、再び第一段落から、異なる運命を紡ぎ出すのも一興。 私はいつでも、この薄暗い書斎で、貴方が「正気を失う瞬間」を待っていますよ。 (森梟夫)