「ローグライクハーフ」d33シナリオ『汝、獣となれ人となれ』"Be Thou Beast, Be Thou Mortal" 作:水波流 監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ ---------------------------------------------------------------------------------    1:「ローグライクハーフ」d33シナリオ『汝、獣となれ人となれ』 ---------------------------------------------------------------------------------  これは「ローグライクハーフ」のd33シナリオです。初級レベルの主人公1人と従者、または主人公2人での冒険に適しています。 ・ジャンル:ファンタジー ・難易度:普通 ・形式:シナリオ(d33) ・世界:共通世界(アランツァ) ・ゲームマスター:不要 ・プレイヤー数:1-2人 ・プレイ時間:20-40分 ・適正レベル:13- ・対象年齢:10-99歳 ---------------------------------------------------------------------------------    2:「ローグライクハーフ」を遊ぶにあたって(ライセンス表記その他) ---------------------------------------------------------------------------------  「ローグライクハーフ」はルールを確認した後に遊ぶゲームです。新ジャンルではありますが、区分するなら「1人用TRPG」にもっとも近いといえます。ルールは下記アドレスで確認することができます(無料)。 ライセンスロゴ https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_BasicRuleSet.txt  PDF版は下記アドレスで入手可能です(要BOOTH会員登録)。  また、紙の書籍でのルールを入手したい場合も、こちらから購入が可能です。紙の書籍には1stシナリオ『黄昏の騎士』が収録されています。 https://ftbooks.booth.pm/items/4671946 ---------------------------------------------------------------------------------    3:魔獣の視る夢 --------------------------------------------------------------------------------- 「その力があれば、あいつを守れると思った」  いつも我慢ばかりさせていた。それでもあいつは少し困った顔をしながら、ずっとついてきてくれた。  頭の奥にぞっとする声が呼びかけてくる。しかしそんなものに怯むわけにはいかない。  力を手に入れる。そうすればずっと守ってやれる。もうあんな顔をさせることはなくなるはずだ。  闇の底から響く声に従い、もう一歩踏み出す。そしてあいつを引き寄せるつもりで、手を差し伸べる。  だけど酷く怯えた顔が、随分遠くに見えた。どうしてだろう。なぜそんな顔をしているんだ。  混濁する意識の中で、いろいろな思いが脳裏をよぎりながら、俺は深い深い闇の中に堕ちて行った。 「もしかしたら、俺はまた間違ったのかもしれない」 ---------------------------------------------------------------------------------    4:プロローグ --------------------------------------------------------------------------------- 「どういう訳だかお前さんをご指名だとよ」  銀狼のまじない師ヴィドが、焚き火の傍で獣骨の賽を振りながら、そう君に告げた。  わっと歓声が上がり、賭博の輪は彼の出目に一喜一憂している。日暮れ前の蛮族都市フーウェイの広場は、今日もひと仕事終えた〈男〉たちで賑わっている。 「行ってこいよ。俺は御呼びじゃないようだしな」  用事はそれまでと言った風情で骰子賭博に集中し始めたヴィドにため息をつくと、君は輪をそっと離れた。  黒檀のメメコレオウス……〈太古の森〉に隠れ住む名高い賢人だ。何度か森に出入りするうちにやり取りをすることも増えた。しかしあの知識欲だけで生きているような闇の魔獣が、いったい自分に何の用があるというのだろう。 「ああ、1つ忘れてた」  背中から声が掛けられる。振り返るとヴィドは不可解な表情で君をじっと見つめている。 「奴さん、”必ず夜の間に来い”とさ」 ---------------------------------------------------------------------------------    5:ゲームの概要 ---------------------------------------------------------------------------------  「ローグライクハーフ」へようこそ。このゲームは1人(または2人)で遊べるTRPGのようであり、ゲームブックのようでもあり、ダンジョンハック系の電源ゲームをアナログゲーム化したようでもあり……。ゲームマスター(GM)はいてもいなくても遊べます。つまり、1人から3人までで遊ぶゲームです。  プレイヤーとしてゲームに参加する場合、あなたは自分の分身である「主人公」を作成します。これは「冒険者」とも呼ばれる、万能ではないが十分に強いキャラクターです。プレイヤーが(つまり主人公が)1人の場合、7人前後の従者とともに冒険を開始します。プレイヤーが2人の場合、従者なしで冒険を行います。  冒険はd33を振り、出目に対応したできごとを確認していくことで成立します。ある地点に到達すると中間イベントや最終イベントが発生して、物語が進行します。 ---------------------------------------------------------------------------------    6:ゲームの特徴 ---------------------------------------------------------------------------------  「ローグライクハーフ」のシナリオは、短い時間でTRPGを遊んだような満足感を与えてくれます。部屋を探索し、ワナをかいくぐり、敵を蹴散らして、最終的な目的へと臨みます。  しかし、気をつけてください。冒険の一部はランダムで形成されているため、必ずしも成功するとは限りません。判断を誤り、運に見放されたとき、あなたの大切なキャラクターは冷たい墓石の下で、永い眠りにつくことになるでしょう。 ---------------------------------------------------------------------------------    7:ゲームに必要なもの ---------------------------------------------------------------------------------  筆記用具と六面体サイコロ1個があれば、すぐにもゲームをはじめられます。「冒険記録紙」をプリントアウトしておくと、手もとで情報を管理できて遊びやすいでしょう。 ---------------------------------------------------------------------------------    8:ゲームの準備 ---------------------------------------------------------------------------------  「ローグライクハーフ」のd33シナリオである本作をはじめる前に、あなたは主人公(と、必要なら従者)を準備してください。  冒険を進めるためのルールを読むか、いつでも読めるように手もとに置いてからゲームを開始します。 ---------------------------------------------------------------------------------    9:ゲームの進行 ---------------------------------------------------------------------------------  本作は「一本道モード」で遊びます。  本文中に{斜体}このような斜体{/斜体}で書かれた文字がある場合、それは主人公たちが今いる場所の状況について語った文章です。読まなくとも物語の進行に影響はありませんが、読むとよりいっそう気持ちが入ることでしょう。 ---------------------------------------------------------------------------------    10:一本道モード ---------------------------------------------------------------------------------  一本道モードでは、あなたは分岐を気にすることなく、d33によってマップを決定していきます。このモードでは、あなたは〈できごと〉を一定回数体験する(マップをめくる)行動の後に、中間イベントや最終イベントにたどり着きます。  あなたの目的は、旧き神の遺跡の謎を解き、クリスティの仲間を助け出すことです。  探索の中で、〈手がかり〉を1つ見つける事ができれば、〈中間イベント〉が発生します。  その後、更にもう1つ〈手がかり〉を見つける事ができれば、〈最終イベント〉が発生します。  冒険の開始時は【昼】ですが、中間イベントを終えた後は【夜】となります。 ・1-13枚目……出目表に対応した〈できごと〉が発生 ・できごとを3つ以上通過し、〈手がかり〉を1つ見つける事ができたら……出目表の代わりに〈中間イベント〉 ・できごとを8つ以上通過し、〈手がかり〉を2つ見つける事ができたら……出目表の代わりに〈最終イベント〉  一本道モードで遊ぶ場合、【逃走】を行なったさいには、めくったマップタイルは枚数にカウントしません。プレイヤーは改めてマップタイルをめくり、次の〈できごと〉へと進んでください。  再び【逃走】したはずの〈できごと〉に出くわすこともあるでしょう。  このシナリオでは、同じ出目が出た場合には、重複が出なくなるまでひとつ先の項目が登場します。たとえば、あなたが12番と13番の〈できごと〉を体験した後で12番を再び出したときには、21番としてください。なお【昼】は33番の次は11番、【夜】は43番の次は21番としてください。 ---------------------------------------------------------------------------------    11:冒険とゲームの勝利 ---------------------------------------------------------------------------------  このゲームの勝利とは、シナリオにおける使命を達成することです。  この作品は1回の冒険に対応しています。「冒険」は〈最終イベント〉までひととおりの〈できごと〉を体験する(かゲームオーバーになる)ことを指します。 ---------------------------------------------------------------------------------    12:隊列について ---------------------------------------------------------------------------------  本作における戦闘には、隊列という概念はありません。主人公と「戦う従者」は、敵を好きなように攻撃できます。  敵側の攻撃は、主人公が2人の場合には均等に攻撃が分けられます。  主人公が1人の場合には、攻撃の半分を主人公が受けてください。残りの半分は従者が受けます。  いずれの場合でも、余った攻撃をどちらが受けるかは、プレイヤーが決めてください。 例:インプ7体が主人公と「戦う従者」である兵士3人を攻撃した。インプの攻撃は合計で7回である。プレイヤーは攻撃のうち3回分を主人公が、残りの4回分を従者が受けることに決める。従者である兵士は【防御ロール】に失敗するたびに1人ずつ死亡する。 ---------------------------------------------------------------------------------    13:ゲームの終了(冒険の成功と失敗) ---------------------------------------------------------------------------------  主人公が1人死亡したら、冒険は失敗で終了します。最終イベントを終えた場合にも、ゲームは終了します。そのときに条件を満たしていれば、冒険は成功に終わります。  冒険が成功した場合、主人公はそれぞれ1経験点を獲得します。冒険に失敗した場合には、これを得ることができません。死亡していない主人公は、改めて冒険に出ることができます。 ---------------------------------------------------------------------------------    14:冒険のはじまり --------------------------------------------------------------------------------- 「ようやくのお出ましかね」  深夜の〈太古の森〉を苦労して横断し、なんとか夜明け前に辿り着いた洞窟を前に、冥府の闇から語りかけてくるようなぞっとする声が響き渡る。  やがてのそりと姿を現したのは、醜い老人の顔に獅子の身体と蝙蝠の翼、尾には猛毒の針を持つ魔獣の姿だ。  君がヴィドからの伝言を受け取ったと告げると、闇の賢人は鷹揚に頷き奥の闇に呼び掛けた。 「こやつの口から直接語らせる方が良かろう」  おずおずと踏み出してきたのはコビットの女だ。 「ウチはクリスティ。冒険家や」  遺跡荒らしとも言うがな、と含み笑いをする魔獣を、彼女はきっと睨みつける。 「太古の森には、旧い神々を祀る遺跡が沢山あるのはアンタも知ってるやろ」  君は小さく頷く。ヴィンドランダ遺跡群……この地に蛮族が住まい、フーウェイの街を開くよりもはるか昔からこの森にあるのだという。その区域では、今でも手つかずの財宝が見つかる事があり、君たちのような冒険家の間ではよく名前が知られている。 「そのうちの1つを探索中に、呪いにやられたんよ」 「呪い……?」  クリスティは少し俯くと陰りを帯びた表情で語り始めた。  ウチとあの人はここいらじゃちょっとは名の知れたコンビでね。この遺跡に来るのは初めてやったけど、隠されたお宝だって直ぐに見つけてやるわと高を括ってた。そんなウチらが一月以上も森の奥をうろつき回る羽目になった。せやから、獣神セリオンを祀る古ぼけた祠に隠された隧道を見つけた時には、ウチもあの人もニヤニヤ笑いが止まらんかったもんや。  ウチはそこが最初から気にくわへんかった。吐き気がするほど空気が澱んでたし、一歩進むごとに頭もじくじくと痛んだ。  早いとこずらかりたかったから、あの人の掲げたランタンの灯りに照らされて、気味の悪い獣の神像を見た時にも、お宝を見つけた高揚感よりもむしろ、ああこれで帰れるんやとほっとした気持ちの方が強かった。  あの人は憑かれたように嬉々とした顔で、古文書を読み返しながらああでもないこうでもないと独り言を口にしてたけど、ウチにはどうせそんな難しいもんはわからへん。  あの人がその神像の口に手を入れろと言った時には正直ぞっとしたで。でもウチかて名うての冒険家や。そんなかっこ悪いこと言われへん。しれっとした顔で、あの人と二人で、あんぐりと開いた神像の口に手を差し込んだんや。  石のくせにねっとりとした感触がした気がして、背筋が寒うなった。でもこれが終わったら帰れるんやと言い聞かせて、あの人の言うとおりに口の奥まで手を差し込んだ。  その時や。頭の中に聞いたことのない言葉がわんわんと響き渡った。意味はわからへん。目の前が真っ白で意識が遠くなってきた。  ウチは怖くなって、もっと奥まで差し込めというあの人の言葉を聞かずに、慌てて手を引き抜いた。  覚えてるのはそこまでや。  どれくらい気を失ってたのかはわからへん。  目を覚ましたら、ウチの隣りには恐ろしい怪物が昏々と眠っとった。  ウチは飛び起きてあの人を探した。でも見つからんかった。  そのうちに怪物が目を覚ます気配がしたので、ウチは無我夢中で逃げ出した。  それからどこをどう通ったのかは何も覚えてへん。ただいつもと違ってまるで飛ぶような速さで森を駆け抜けられた。  気づいたら、この洞窟の前に倒れ込んでた。このおっさんがのっそりと姿を現した時、丁度夜明けやったのはよく覚えてる。  おっさんは言うたんよ。 「これは面白い」と……。  そこまで話した時、丁度、朝の光が洞窟に差し込む。  クリスティは呻き声を上げると、その場に崩れ落ちた。慌てて駆け寄る君の前で、彼女の姿はみるみると変化してゆく。  小さなミソサザイが、悲しそうな目で君を見つめていた。  ……なるほど、これが呪いという訳か。 「その遺跡へ赴き、旧き神の神像を調べてきてほしいのだ。そのついでにこやつの連れとやらも探してやればよかろう」  そんな依頼をなぜあんたが、という君の疑問に答えるように、闇の賢人はふんと鼻を鳴らして呟いた。 「ヴィンドランダに眠る旧き神の信仰には以前から興味があったのだ。だが儂自らがわざわざ出向くほどの事でもない。諸君らのような射倖心に溢れる輩には丁度良い稼ぎになろう」  いつの間にか君の肩に留まったミソサザイが、後押しするかのようにか細い声でさえずる。  やれやれ仕方あるまい。君は夜明けの洞窟を後にし、朝靄にけぶる遺跡探索へ向かう事を決める。  「15:出目表(d33)」に進み、冒険をはじめよう。 ---------------------------------------------------------------------------------    15:出目表(d33) ---------------------------------------------------------------------------------  この冒険における出目表は、十の位のために1d3を、一の位のために1d3を振って〈できごと〉を決定します。  冒険の開始時は【昼】ですが、中間イベントを終えた後は【夜】となるため、十の位の出目を「1d3+1」で決定します。   〈できごと〉 出目11 【昼】『蕃神の領域(The Other Gods' Domain)』 出目12 【昼】『旧き騎士と旧き剣(The Knight of The Elder Sword)』 出目13 【昼】『エルフの巡視隊(Elven Patrol)』 出目21 『かえる人の旅商人(Frog Man Merchant)』 出目22 『雨宿りの妖精(Fairy of Rain Shelter)』 出目23 『神の樹(Primeval Sacred Tree)』 出目31 『泥棒カササギ(The Thieving Magpie)』 出目32 『コビットの罠師(Cobit's Trap Master)』 出目33 『偽りの祭壇(The False Altar)』 出目41 【夜】『闇の咎人(The Dark Sinner)』 出目42 【夜】『墳墓の不寝番(The Grave Watcher)』 出目43 【夜】『旧き神の祭司(Priest of the Ancient Gods)』 --------------------------------------------------------------------------------- 出目11 『蕃神の領域(The Other Gods' Domain)』  主人公は【器用ロール】を行う(目標値:7)。  判定に成功した場合は「不意打ち」を避けることができるので、通常のように第0ラウンドから戦闘を開始してよい。  判定に失敗した場合は「不意打ち」を受けてしまうので、戦闘は第1ラウンドからはじまり、敵側が先に攻撃を行う。 〈ガーゴイル(Gargoyle)〉 レベル:4  生命点:6  攻撃数:4  宝物:なし ≪反応表≫ 常に【敵対的】  〈ガーゴイル〉は【悪魔】に属するクリーチャーである。  〈ガーゴイル〉は【打撃】の特性を持つ。  【斬撃】の特性を持った「飛び道具」で攻撃した場合は、このクリーチャーに対しては効果が薄いので【攻撃ロール】に-1の修正を受けてしまう。  【打撃】の特性を持った「接近戦の武器」で攻撃した場合は【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  生命点が半分以下になると、このクリーチャーは【逃走】せず、複数の小さな〈ガーゴイル〉に分裂する。  その場合、次の〈弱いクリーチャー〉となる。(属性や攻撃特性は変わらない)  新たに第0ラウンドは行わず、戦闘状態は継続される。 〈分裂後の小さなガーゴイル(Piece of Gargoyle)〉 出現数:分裂前に残っていた生命点に等しい  レベル:3  宝物:なし ≪反応表≫ 常に【死ぬまで戦う】  戦闘終了後、君は〈手がかり〉を1つ入手する。 {斜体}  そこは静謐な空気を湛えていた。  古びた石碑や彫像が建ち並び、壁面には古代語と文様が一面に描かれている。  何らかの神に関する宗教画のように見えるが、所々崩れたり摩耗しているせいで、詳しく読み解くには時間がかかりそうだ。  君の横でミソサザイの姿のクリスティがうるさく囀る。どうやらこの壁画に見覚えがあるようだ。  あいにく小鳥のままでは詳しく話を聞くこともままならない。君はため息をつく。  その時、視界の端の石像が身じろぎしたように思えた。 {/斜体} --------------------------------------------------------------------------------- 出目12 『旧き騎士と旧き剣(The Knight of The Elder Sword)』  主人公は【器用ロール】を行う(目標値:7)。  判定に成功した場合は「不意打ち」を避けることができるので、通常のように行動を選択する。  判定に失敗した場合は「不意打ち」を受けてしまうので、戦闘は第1ラウンドからはじまり、敵側が先に攻撃を行う。この奇襲で負傷した場合、主人公は生命点を2点減らさなければならない。  「不意打ち」のときを含めて、〈よろいの騎士〉は同一の主人公1人を選択して、優先的に攻撃し続ける。その対象となる主人公は、ランダムで決定する。 〈よろいの騎士(Armoured Knight)〉 レベル:5  生命点:4  攻撃数:1  宝物:通常(2回) ≪反応表≫ 常に【敵対的】  〈よろいの騎士〉は【ゴーレム】【人間型】に属するクリーチャーである。  〈よろいの騎士〉は【打撃】の特性を持つ。  各キャラクターが、生命点にダメージを与える攻撃(魔法を除く)を行った場合は、強靱な鎧によって攻撃がさえぎられるため【攻撃ロール】に、-1の修正を受けてしまう。  このクリーチャーは魔法の呪文に対する抵抗力を備えている。魔法の呪文を行使する場合の【魔術ロール】や【奇跡ロール】には-2の修正を受けてしまう。 〈おどる剣(Dancing Sword)〉 レベル:5  生命点:2  攻撃数:1  宝物:特殊 ≪反応表≫ 常に【死ぬまで戦う】  〈おどる剣〉は【ゴーレム】に属するクリーチャーである。  〈おどる剣〉は【斬撃】の特性を持つ。  〈おどる剣〉は、非常に素早く飛び回っているため、各キャラクターは【攻撃ロール】に、-1の修正を受けてしまう。  この〈おどる剣〉の攻撃数は1回に固定されている。  この〈おどる剣〉を倒したときは【幸運ロール】を行うこと(目標値:7)。判定に失敗した場合、クリーチャーは刀身の折れた剣そのものであり、何の役にも立たない。  判定に成功した場合、この〈おどる剣〉は自分の創作者を失った野良剣であり、主人公を新たな主人だと認識すると、今後は「戦う従者」として同行する。同行させるには、従者点が1点必要になる。  従者の〈おどる剣〉は、【ゴーレム】のタグを持つ「戦う従者(技量点0、生命点1)」として扱われ、【防御ロール】に+2の修正を持つ。また、トラップの対象とならない。攻撃特性は【斬撃】である。  またこの〈おどる剣〉は武器として装備することもできる。その場合は装備品(魔法の片手武器)として扱われる。装備品として使うか従者として使うかは遭遇ごとに選択することができる。 {斜体}  遺跡の他の場所と異なり、広間は綺麗でよく手入れされているように見える。  誰かここを拠点にでもしているのだろうか。君は疑念を抱きつつも紅い絨毯敷きの床に足を踏み入れる。  この地方ゆかりの貴族だろうか。奥の壁には年代物の肖像画が掛けられており、手前にはその人物の着用していたであろう板金鎧と、手の込んだ装飾をされた長剣が飾られている。  君は肖像画に描かれた人物を確認しようと、壁面に近づいていく。  ガチャリという金属音と共に、台座からゆっくりと完全鎧を身につけた重装の騎士が広間に降り立った。  そして驚いたことに、長剣はふわりと宙に浮き、君たち目がけて飛びかかってきたのだ。 {/斜体} --------------------------------------------------------------------------------- 出目13 『エルフの巡視隊(Elven Patrol)』 反応表:1-5は【中立】 6は【敵対的】  *ただし主人公が『名付けられるべきではないもの』の冒険を終えている場合は、自動的に【歓待】となる。  不意に風を切る音が響いた直後、目の前に投げナイフが突き立つ。 「止まれ」  鋭い声が背後からかけられる。いつの間にか多数の気配が君たちを取り囲んでいる。 「武器を捨てて、両手を上げろ」 ■反応が【中立】だった場合 「どうやら遺跡荒らしどもではないようだが……森の秩序を乱すようであれば容赦はせぬぞ」  油断のない様子で武器に手をかけながら、君たちを値踏みするように見つめているのは、〈太古の森〉の秩序を守るエルフの巡視隊だ。彼らは森の統治者である偉大なるエルフ王、カセル・ケリスリオン・フィスティリオンに忠誠を誓っている。  彼らと事を構えるのは得策ではない。  君は慌ててヴィンドランダ遺跡の調査をしている旨を伝え、エルフの領域には立ち入らないことを約束する。  主人公は【幸運ロール】を行う(目標値:4)。  成功した場合は、それ以上の追及はされず、次のできごとへ向かう。  失敗した場合は、金貨5枚か食料1個を支払って見逃して貰う事になる。もし支払うべき金貨や食料すらも不足しているならば、エルフたちは蔑んだせせら笑いを浮かべてそのまま立ち去る。 ■反応が【敵対的】だった場合 「ふん。遺跡荒らしどもか。命まで取ろうとは思わぬ。……そのまま立ち去れ」  油断のない様子で君たちに弓を向けているのは、〈太古の森〉の秩序を守るエルフの巡視隊だ。彼らは森の統治者である偉大なるエルフ王、カセル・ケリスリオン・フィスティリオンに忠誠を誓っている。  彼らと事を構えるのは得策ではない。 ・言葉に従うならば、装備していた武器を所持品から消し、次のできごとへ向かうこと。 ・もし抵抗するのであれば、武器を拾い戦闘を行う。  〈エルフの巡視隊(Elven Patrol)〉 出現数:1d3+3  レベル:5  宝物:修正+1  エルフの巡視隊は【人間型】【善の種族】に属するクリーチャーである。  エルフの巡視隊は第0ラウンドに、弓矢を使った射撃で攻撃を行う。  第1ラウンドには弓矢を接近戦武器に持ち替えるため、主人公たちは【防御ロール】をする必要がない。  弓矢、接近戦武器のどちらも【斬撃】の特性を持つ。  ■反応が【歓待】だった場合 「また厄介事に首を突っ込んでいるようだな、外なる者よ」  聞き覚えのある声にはっとして振り返ると、武器を構えたエルフの巡視隊の後方から、部隊長である王族ギルサリオンが姿を現す。  君は目の前のナイフに見覚えがある。彼の弟だったファラサールが使っていたものだ。ナイフを引き抜いて無言で手渡すと、ギルサリオンは寂しそうな笑みを口の端に浮かべる。  君は改めてヴィンドランダ遺跡の調査をしている旨を伝え、エルフの領域には立ち入らないことを約束する。 「よかろう……しかし森の秩序を乱すような真似をしたならば、如何に貴様といえども部下たちに容赦はさせぬからな」 (なんやの、いけ好かん奴!)  君たちの周りで、小鳥の姿のクリスティが不満げに鳴きながら飛び回る。 (大丈夫、こいつはこんな事は言ってるが、本当はいい奴なんだ)と君はクリスティに小声で伝える。 「黙れ」  ギルサリオンは顔をしかめながら吐き捨てる。  エルフたちが立ち去る際に、ギルサリオンが君に意味有りげに目配せをする。  君はその目線の先に、トレント果実〈テュルニ〉が2個、実っているのを発見する。 (もしこれまでの冒険で『トレント果実〈テュルニ〉』の情報を得ていない場合でも今回は収穫できる)  礼を言おうと振り返ると、既にエルフは姿を消していた。  ■トレント果実〈テュルニ〉  〈テュルニ〉と呼ばれるオレンジ色の小さなトレント果実は、生命の果実とも言われ栄養豊富で体力回復に役立つ。  1個食べるごとに食べたキャラクターは生命点を2点回復する。食料と同じく、戦闘中には食べる事はできない。 --------------------------------------------------------------------------------- 出目21 『かえる人の旅商人(Frog Man Merchant)』 出現数:1d6+2  レベル:4  宝物:通常の宝物3個 反応表:1は【歓待】 2-5は【交易】 6は【中立】  〈かえる人〉は【少数種族】【人間型】に属するクリーチャーである。  〈かえる人〉は【打撃】の特性を持つ。 「やぁやぁ、コンニチハ! それともグッドイブニング?」  ひどく陽気な挨拶が遙か頭上から投げかけられる。大がえるの背に跨がっているのは、商人風のかえる人の一団だ。後ろには、荷物を満載にした大がえるがのっそりと何匹も続いている。 「こんな荒れ果てた遺跡の中でも、ワタクシドモはお客様に便利なものをたーくさんご提供デキマスヨ!」  反応が【歓待】【交易】だった場合は、ここで装備品を整えることができる。  街と同様の条件で取引すること。  もし従者を雇いたいと言うと、彼らはロープで縛られた人間の捕虜を連れてくる。通常の価格+金貨1枚で引き取ることができる。 「ハハハ、丁度いい人材がたーっぷりいますヨ!」  もしも〈エール酒の大瓶〉や〈フィザック〉などの酒類を所持していれば、酒好きの彼らは1回分あたり金貨10枚で買い取ろうと申し出てくる。 {斜体} (アランツァクリーチャー事典より抜粋) かえる人はかえるから発達した種族である。かえる人は温厚で、比較的積極的に他種族に関わる傾向が見られる。熱帯地方などの沼地では、しばしば商人として活動する彼らの姿を見ることができる。 かえる人は水になじみが深く、泳ぎに長けている。さらに、淡水地域においては活動が活発になる。 かえる人の背中にある模様が同じ者はおらず、彼らは背中を見れば個人が識別できるだけでなく、それぞれがどの一族にあるのかだいたいの見当がつくという。この模様はキオレと呼ばれ、自己紹介のさいに見せ合うこともある。 一部のかえる人は酒をよく好む。酒豪のかえる人はかえる沼出身者にときどき見られる。 大がえるはかえる人が、沼地などで育てることでなりわいのひとつとする家畜である。かえる人はこの大がえるを大切な資産として育て、肉や皮など全身を活用する。 大がえるは戦闘向きの生物ではなく、その戦闘能力は低い。育て方を知っているのはかえる人のみである。 {/斜体} --------------------------------------------------------------------------------- 出目22 『雨宿りの妖精(Fairy of Rain Shelter)』  周囲に漂う草いきれが強く鼻をつくなと思っていると、やがて雨が降り始める。君たちは慌てて崩れかかった遺跡の庇の下に逃げ込む。  どうしたものかと空を眺めていると、絶え間ない雨足のなかにぼんやりと光るものが目に留まる。  その光はふわふわと不安定に君に向かって漂ってくると、顔の真ん前で甲高い声を発する。 「ひゃー、ひどい目に遭ったよ」  その小さい姿は、淡いピンクの花をつけるリンネソウの妖精だ。  小妖精は身体をぶるぶると震って雨水を振り落とすと、きょろきょろと何かを探し始めた。  主人公は【幸運ロール】を行う(目標値:5)。  失敗した場合、小妖精は雨が上がるとどこかへ飛び去って行く。  成功した場合、小妖精は君の荷物入れの中に身体をねじ込み、荷物をどけて自分の居場所を確保すると、あくびをして寝入ってしまう。  どうやら気に入られてしまったようだ。  〈リンネソウの妖精〉が同行する間、暗い場所ではその身体はうっすらとした光に包まれ、光源を持っているのと同じ効果となる。  従者点は不要だが、【装備品欄】を1つ確保しておく必要がある。(装備品欄に空きがなくなった場合、去って行く) --------------------------------------------------------------------------------- 出目23 『神の樹(Primeval Sacred Tree)』  ここには澄んだ水が湧き出ている泉がある。この水を飲んで少し休息する事で、各主人公の生命点と副能力値が1点ずつ回復する。(もし行動不能の従者がいる場合は、それも回復する)  主人公もしくはキャラクターを選択して【幸運ロール】を行う(目標値:5)。  成功した場合、森木の絡まった根元に1本の古めかしい槍を見つける。木製の槍は複雑な文様が隙間無く刻み込まれていたが、まるで森木からいま削り出されでもしたかのように、瑞々しくしなやかだった。 『古代の神槍(Primeval Sacred Spear)』 【斬撃】の特性を持つ魔法の両手武器。 飛び道具として扱うこともでき、その場合は【攻撃ロール】+2、命中時には2点のダメージを与える。ただし、クリティカルが発生しても連続攻撃は行えない。 投擲しても戦闘に勝利すれば回収してまた使用する事ができる。(ただし命中した敵が逃走したり、自分が逃走した場合は回収できず失われてしまう) {斜体}  石段を登り切った先にそれは不意に姿を現した。  苔むし風化した遺跡の石塔に絡みつくように、巨大な樹木の蔦や根が張り巡らされている。  〈アシャラの森木〉……太古の森で生命の象徴として崇められる存在だ。  自然神ヴェルディアが宿る樹とも言われ、甘い匂いのする小さな果実は野生動物の食料源にもなっている。  長い長い歳月を経て、強靱な生命力を持つ巨木の根は遺跡を覆い、広がった枝は天を覆う。  忘れ去られた悠久の記憶を抱いて、神の樹は静かに佇んでいる。  自然と信仰が共存しているその光景に、敬虔な気持ちが心の底から湧いてくる。 {/斜体} --------------------------------------------------------------------------------- 出目31 『泥棒カササギ(The Thieving Magpie)』 難易度:4  対象:主人公  休憩を取ろうと荷物を不用意に広げたのが迂闊だった。  上空から獲物を狙って急降下してきたカササギが、目ざとく食料を見つけ出し、嘴でくわえて飛び去ろうとする。  主人公は【器用ロール】を行う(目標値:4)。  ■成功した場合  君は石を投げつけ、見事カササギに命中させる。不意打ちを食らった泥棒は咥えていた食料を落として飛び去っていく。  ■失敗した場合  君の投げた石は、見事に的を外してしまう。食料を1つ失う。    ■もし今が【昼】であれば  ミソサザイの姿のクリスティが泥棒の後を追い、周囲を旋回して素早く食料を取り返してくれる。  君の前に食料を投げ落としたクリスティは、(この間抜けめ!)とでも嘲るようにチュンチュンとさえずる。 --------------------------------------------------------------------------------- 出目32 『コビットの罠師(Cobbit's Trap Master)』 難易度:3  対象:全員  各キャラクターは【幸運ロール】を行う(目標値:3)。  成功したキャラクターは、紙一重のところで罠を回避する。  失敗したキャラクターは、罠にかかり生命点に1点のダメージを受ける。なおこれによって生命点が0以下になったキャラクターは、死亡することは無いが、食料を1個消費するまで一時的に行動不能となる。  崩れた遺跡の死角をうまく使って仕掛けられた罠にまんまと引っかかってしまった。  木立の影から、張本人が姿を現す。 「ちぇっ、なんでえ。間抜けなオークかと思ったのによ」  1人でもキャラクターが罠に引っ掛かった場合、  コビットの罠師は、罠を外して欲しければ金貨を支払えと要求する。  君は所持金から金貨5枚(もし足りなければアイテムを1つ)を支払って、全員の罠を外して貰うことになる。  ■もし今が【夜】であれば、  「フェルディ! あんた、フェルディブランド・バターカップやないの」  「なんだ、クリスティじゃねえか。この抜け作ども、お前の連れかよ?」   同じくらいの背丈のコビット男女が探り合うような視線を交わす。どうやら顔見知りのようではあるが、親しげというわけでも無さそうだ。   クリスティは罠を外すように要求する。  「金貨5枚だ。それ以上はまからねえぜ」  「”仕込み骰子の”フェルディ。サンドヒーバー村の連中にあんたの居場所を話したって構わんねんで」   コビットの罠師はちっと舌打ちすると、手早く君たちがかかった罠を解除する。  「覚えてろよ、クリスティ」  「ウチは物覚えが悪うてな」 --------------------------------------------------------------------------------- 出目33 『偽りの祭壇(The False Altar)』 難易度:5  対象:主人公  この遺跡ではそこかしこに神々の像が祀られているのを何度も目にしている。いずれもこれまで見たこともないような異形の神像だ。  しかしこの薄暗い祭壇でふと目にしたのは、フーウェイでもよく信仰されている獣神セリオンの神像だった。君は安堵し、たまには敬虔なところでもみせておこうと、神像に向かってこうべを垂れる。  この冒険に加護を与えて貰おうと君はセリオンに祈りを捧げる。  主人公は【魔術ロール】を行う(目標値:5)。  失敗した場合、各主人公は【副能力値】を1点失う。また【奇跡】や神の加護によって発動する技能は、この次のできごとが終わるまで一時的に使用できなくなる。  君は目の前のセリオンの像が、不意にニタリと邪悪な笑みを浮かべた気がして、ハッと見返す。  違う! これはセリオンでは無い。君の知っている獣神とは似ても似つかぬ歪んだ笑みを浮かべている。  いったい君は、何の神に祈りを捧げてしまったというのだろうか。  君は気分が優れなくなり、そそくさとその場を後にする。 --------------------------------------------------------------------------------- 出目41 『闇の咎人(The Dark Sinner)』 難易度:5  対象:主人公  森木の蔦や根が絡みついた遺跡のアーチをくぐり抜けた奥で、広い空間に出くわした。  祭祀場として使われていた場所なのか、壁面には見慣れぬ神を讃える壁画や歪な文様が刻まれているが、歳月が流れたいまや数々の神像も朽ち果て、無造作になぎ倒されている。  じゃらり、と鎖の鳴る音を耳にして、君は外光の差し込まぬ奥を灯りで照らし、あっと小さな声を上げる。  虚ろな目をした人々が、壁に打ち込まれた手枷足枷で囚われているのだ。  人間の男女だけではなく、かえる人やコビットまでいるようだ。皆一様に無言で俯いており、果たして生きているのか死んでいるのかもわからない。君はふとその中に見知った顔がいるように思えた。  こい こい こい  こい こい こい  こい こい こい  不意に頭の中に、不気味な掠れ声が滑り込んできた。  囚人の1人が、焦点の定まらぬまま立ち上がると、枷が解けるように外れて床に転がる。囚人はそのまま唯一残されている異形の神像へふらふらと歩み寄ると、像の前に大きく口を開けている底なしの闇の中に、躊躇することなく身を投げだそうとする。  主人公は【魔術ロール】を行う(目標値:5)。 ■成功した場合  目が霞むように視界がぼやけたかと思うと、次に焦点が定まった時には、祭祀場は無人になっていた。  まるで最初から囚人などいなかったかのように。 「あれは……覚えがある」  クリスティが絞り出すように小さく呟いた。  君は〈手がかり〉を1つ入手する。 ■失敗した場合  どさり。  鈍い音を立てて囚人は暗闇に飲み込まれる。  そしてまた次の者が立ち上がり、先ほどと同じことが繰り返される。  どさり。  どさり。  どさり。 「もうやめてや!」  クリスティがたまらず叫び声を上げる。  祭祀場は無人になっていた。  まるで最初から囚人などいなかったかのように。  各主人公は【副能力値】を1点失う。また【奇跡】や神の加護によって発動する技能は、この次のできごとが終わるまで一時的に使用できなくなる。 --------------------------------------------------------------------------------- 出目42 『墳墓の不寝番(The Grave Watcher)』 〈魔狼(Demon Wolf)〉 レベル:5  生命点:4  攻撃数:2  宝物:通常(2回) ≪反応表≫ 常に【死ぬまで戦う】  〈魔狼〉は【悪魔】に属するクリーチャーである。  〈魔狼〉は【斬撃】の特性を持つ。  〈魔狼〉は、殺気に対する反射神経が優れているため、生命点にダメージを与える攻撃(魔法を除く)をするさい、【攻撃ロール】に-1の修正を受けてしまう。  〈魔狼〉と遭遇した場合、相手は1d3体の〈黒狼〉を従えている。  〈魔狼〉の生死に関わらず、〈黒狼〉は常に【死ぬまで戦う】。  また〈黒狼〉が全滅するまでの間は、各キャラクターが〈魔狼〉を攻撃しようとするなら、それぞれの〈黒狼〉に対して、1人のキャラクターを攻撃に向かわせなければならない。  この場合〈黒狼〉に割り当てられるキャラクターが足りなければ、〈魔狼〉を攻撃対象に選ぶことはできない。 〈黒狼(Black Wolf)〉 出現数:1d3  レベル:5  宝物:なし ≪反応表≫ 常に【死ぬまで戦う】  〈黒狼〉は【動物】に属するクリーチャーである。  〈黒狼〉は【斬撃】の特性を持つ。  〈魔狼〉が倒された場合でも、このクリーチャーは、その命が尽きるまで戦闘を継続する。  ■戦闘に勝利した場合  玄室の片隅で恐怖でがたがた震えている三人組の探索者を発見する。どうやら不用意にここに踏み込み、魔狼どもに引き裂かれる寸前だったようだ。彼らは助けに入ってくれた君たちに大げさな身振り手振りで感謝の意を述べる。  もし君たちが従者を必要としているなら、彼らはこの冒険が終わるまで【兵士】(最大3人)として同行を申し出る。 {斜体}  いくつもの角を曲がるうちに、君はとある玄室に妙に気を取られた。  旧い墳墓か霊廟だろうか。名も知らぬ神々の石像が立ち並ぶ奥に、冷やりとした暗がりが口を開けている。  何かあるかもしれない……そんな欲を出したのがまずかったのだろう。  暗がりに一歩足を踏み入れると、紅い双眼が爛々と君たちを睨みつける。  遺跡の何かを守るその獣どもは、恐るべき素早さで襲いかかってきた。 {/斜体} --------------------------------------------------------------------------------- 出目43 『旧き神の祭司(Priest of the Ancient Gods)』  ぎいぃと耳障りな音を立てて扉が開くと、長い時を経て堆積した埃が舞い、鼻腔を刺激する。  先がまるで見通せぬ薄暗い広間に、小さな篝火が点々と焚かれ、独特な香木の匂いが微かに漂っている。  揺らめく灯りに照らされ、奥に祭壇となにかの偶像が置かれているのが目に入った。  ぺた、ぺたと石畳を歩く足音が不気味に響く。  暗闇の中からゆったりとした祭服に身を包んだ何者かが、ぬっと姿を現した。  手にしたランタンの灯りで、フードを深く被ったその顔に陰影が落ちる。 'Twas brillig, and the slithy toves Did gyre and gimble in the wabe; All mimsy were the borogoves, And the mome raths outgrabe. ぶりりぐどきに ぬるりとーぶが わぶのに くるくる ねじれまい みむずの ぼろごうぶ ふるえてて もーむらす ぐらぐら なくばかり  まったく理解できない言葉の羅列が、君の耳元に近づいてくる。  ぺた、ぺたと奇妙に響く湿った足音とともに、やがてフードの奥から細長い首と魚めいた頭がのぞく。  奇怪な姿の怪物は司教杖を片手に、舌をしるしると伸ばしてきた。 〈ジャバウォック(Jabberwock)〉 レベル:4  生命点:6  攻撃数:2  宝物:通常 ≪反応表≫ 常に【友好的(後述)】  〈ジャバウォック〉は【怪物】に属するクリーチャーである。  〈ジャバウォック〉は【斬撃】の特性を持つ。  このクリーチャーに遭遇したとき、すべてのキャラクターは【対魔法ロール】を行う(目標値はこのクリーチャーのレベルに等しい)。【アンデッド】【家畜】【ゴーレム】【植物】【兵器】【建造物】のいずれかのタグを持つクリーチャーは、この判定に自動的に成功する。  全員が成功した場合、このクリーチャーと戦闘を開始するか、逃走を試みることができる。  1人以上が失敗した場合、失敗したのが〈主人公/強いクリーチャー〉の場合、精神と霊性を損なわれ、【副能力値】を2点失う。失敗したのが〈従者/弱いクリーチャー〉の場合、精神に異常を来してしまい、理解不能だった聖句を悟りはじめ、旧き神の狂信者となるべく祭司と共にどこへともなく去って行ってしまう(従者から取り除く)。  その後、この遭遇を終了する。  君が正気を取り戻すと、広間には誰一人おらず無音が支配していた。  いずれにせよ君は〈手がかり〉を1つ入手する。 {斜体} (アランツァクリーチャー事典より抜粋) ジャバウォックは森林地帯に住む正体不明の怪物である。世界を破滅に導く力を持っているため、怪物狩猟者などによって優先的に駆除される。 大きさは人間の2倍から3倍、魚の頭と細長い首、ウロコのある胴体とかぎ爪のある細い手足、長い尾とコウモリのような翼を持つ。特徴的なのは腰〜尻あたりから翼が生えていることで、このため吊り下げられたような不自然な姿で低空飛行する。4本の触手めいたヒゲが顔にあり、鋭い門歯が口から生えている。 ジャバウォックは意味不明の言葉をしゃべりながら人間に近づき、通常は引き裂いて食らう。だが、「見込みのある」者に対しては耳もとで混乱した言葉を吹き込んで頭を狂わせる。発狂した犠牲者は自分が世界の真理に至った「覚醒者」だと感じるようになり、正気を取り戻すまでは自分が住む村や街に戻って、以降ずっとジャバウォックと同じ言葉をしゃべり続けるようになる。 調査するリスクが大きいため、ジャバウォックの生態については分からないことが多い。 {/斜体} ---------------------------------------------------------------------------------    16:○宝物表(Treasure Table) ≪1d6で決定≫ ---------------------------------------------------------------------------------   【宝物表】 出目【1以下】 金貨1枚 出目【2】   1d6枚の金貨 出目【3】   2d6枚の金貨(下限は金貨5枚) 出目【4】   1個のアクセサリー(1d6×1d6枚の金貨と同等の価値) 出目【5】   1個の宝石・小(1d6×5枚の金貨と同等の価値。下限は金貨15枚の価値) 出目【6】   1個の宝石・大(2d6×5枚の金貨と同等の価値。下限は金貨30枚の価値) 出目【7以上】 【魔法の宝物表】でダイスロールを行う。   【魔法の宝物表】 出目【1】 〈奇妙に捻れたナイフ(Kris Knife)〉 出目【2】 〈身代わりの依代(Talisman of Sacrifice)〉 出目【3】 〈ナナカマドの若木(The Young Tree of Rowan)〉 ---------------------------------------------------------------------------------    ●魔法の宝物表(Magic Treasure Table) ≪1d3で決定≫ --------------------------------------------------------------------------------- ●【1】 〈奇妙に捻れたナイフ(Kris Knife)〉  隕鉄から作られたこのナイフは周囲の魔力を封じる力を持つ。  鞘から抜くことで敵味方全ての【魔術】がかかりづらくなり、難易度を+2する。(自分がかける時は【魔術ロール】目標値に+2、かけられる時は【対魔法ロール】目標値に-2)  武器として使用する場合は、【斬撃】の特性を持った「軽い武器」として扱う。 ------------------------------------------------------------ ●【2】 〈身代わりの依代(Talisman of Sacrifice)〉  〈フーウェイのまじない師〉の祈祷が込められたお守り。  3つの輝石が埋め込まれており、主人公か従者が生命点にダメージを受ける事になった場合、身代わりとして砕け散る。  3回まで使用可能。このアイテムはダメージが確定してから使用する事ができる。 ------------------------------------------------------------ ●【3】 〈ナナカマドの若木(The Young Tree of Rowan)〉  ナナカマドのトレントの枝。大地に指して接ぎ木する事で、みるみる成長し、ナナカマドの若武者たちが現れる。  いつでも使用する事ができ、即座に「ナナカマドの若武者」を3体まで従者とすることができる。 ・ナナカマドの若武者(技1:戦う従者):「剣士」に準ずる。武器特性は【打撃】 ---------------------------------------------------------------------------------    17:中間イベント ---------------------------------------------------------------------------------  君の目の前には、巨大な壁画が広がっている。いにしえより無窮の時を経て、装飾や石造りの床や壁も崩れ果てている。〈アシャラの森木〉と呼ばれる樹が、辺り一面に纏わりつくようにびっしりと根を張り、遺跡を覆っている。人の手によるものは全て朽ちていき、最後にはまた自然だけが残るのだろう。  壁面は古代語と異様な文様で埋め尽くされており、意味ありげな石碑が鎮座している。  これを読み解くにはさすがに時間がかかりそうだ。君が壁画を前に首を捻っている間に他の連中は野営の支度を始める。石壁のかたわらには都合よく泉も湧いている。そろそろ日も暮れることだし、今日はここで休息を取るのが良いだろう。 主人公は【魔術ロール】を行う(目標値:4)。 ■成功  ここに描かれているのは獣神セリオンに関する宗教画のようだ。しかしその信仰は君が知るものとは随分懸け離れている。一般に知られるセリオン信仰は自然のなかで暮らすたくさんの少数種族に崇拝されており、決して邪悪なものではない。しかしここに描かれているのは、獣の生皮を生きながら剥ぎ、それを纏うことで獣の力を身に宿すことが出来るというものや、自らの肉を獣神に捧げることで永遠の獣の力を得る儀式など、獣神セリオンの"力"の側面だけを歪に拡大解釈したかのような内容だ。  《偉大なる新しき王への祈祷》石碑にはそう刻まれていた。 ■失敗  ここに描かれているのは獣神セリオンに関する宗教画のようだ。何らかの儀式について記されているようだが、詳細については君の知識では解読することが出来なかった。  ただ、全体を通じてなにか禍々しい奇怪な執着心のようなものは伝わってくる。 ***  やがて日が完全に落ちると、君の肩に止まっていたミソサザイは女コビットの姿を取り戻す。  野営の焚き火を囲みながら、君たちはようやく話せるようになったクリスティから探索時の情報を聞き出そうとする。  だが彼女の口から新たに語られることは、ここと同じような壁画を何度も見たという話だけだった。  彼女は残念そうに肩を落とす。それきり、無言の食事が続く。 〈……忌まわしき祭祀が再び行われたか〉 「誰だ」  君たちは弾かれたように立ち上がり辺りを見回す。 〈彼奴は贄を欲しておるのだ〉  微かな水音にクリスティが反応し、君たちも遅れて振り返る。  水辺に奇妙な影が頭を覗かせている。  つるりとした頭に長い首。巨大な甲羅。大亀だ。しかしどうやら人語を解するらしい。  亀の声は不思議なことに君たちの頭の中に直接響きわたる。  年古りた亀は焚き火の灯りに照らされた壁画をまじろぎもせず見つめながら、静かに語る。  ……もう何時何時のことか、すっかり忘れてしもうたよ。あれはまだ旧い旧い時代、昔々の国がここいらにあった頃だ。  我が部族は森で神を奉じながら静かに暮らしておった。  偉大なる獣の神。獅子の顔に人の身体……獣の王であり、我ら人の子の王でもあった偉大なるセリオン。  静かな暮らしが長く続いたある時、外の世界から武器を持ち血に塗れた蛮族どもがやって来た。奴らは森を穢し、人も獣も殺し、何もかも奪おうとした。  儂らは何もできなかった。村を追われ、森の奥深くへ、聖域へと逃げ延びた。  生き残った若者たちは我らが神を呪った。何が獣の王だ。何もしてくれぬではないかと。  我ら年寄りはそうした若者を言葉で諫めはしたが、無力さに変わりは無かった。そのうちに若者たちは我らを軽蔑するようになり、その溝は深くなるばかりだった。  ある日、若者の誰かが奇妙な神像を聖域に持ち込んだ。見たこともない異形の神だった。  それから若者たちは変わっていった。聖域に鎮座する異形の神像を〈新しき獣の王〉と呼び、共存すべき森の獣たちを生け贄に捧げ、狂態を晒し始めたのだ。  これではもはや異教だ。我らが礎としてきたセリオン信仰ではない。  見かねた年寄りたちが苦言を呈したが、もはや誰も聞く耳は持たなかった。それどころか、若者たちは目障りな年寄りを捕まえ生け贄に捧げ始めた。  信仰は歪められてしまった。  連日連夜、血生臭い儀式が執り行われた。部族の者は順番に強大な獣の力を身に宿していった。怖じ気づく者や反対する者らもいたが、血気にはやった若者たちによって強制的に儀式にかけられ獣の姿に変えられた。  獣血や刺青などとは訳が違う、もっと深いところで、あれは、そう……魂が食いちぎられているとでも言えばよいか。  そうして力を得た者たちは、蛮族どもと血で血を洗う戦いに身を投じていった。戦いの果てに、我らは散り散りとなった。もはや誰が生き残れたかもわからぬ。  愚かなことだ。  だが儂ごときが今更何を言えるだろうか。  若者たちを諫めることも咎めることもできず、ましてや我が身可愛さに彼らの言いなりに異形の力をこの身に宿した儂に。  このように醜い身体を晒して、今でも生き長らえておるこの儂に、何の資格があるだろうか。  辺りはしんと静まりかえっていた。  老いた亀は静かにすすり泣いていた。そして恥じ入ったようにゆっくりと泉の中に沈み込んでゆく。  君たちの耳に亀の最後の嘆息が聞こえる。 〈我らが獣の王と呼んでいた"あれ"は、果たして本当は"なに"であったのだろうか……〉 *** 各主人公の生命点と副能力値が1点ずつ回復する。(もし行動不能の従者がいる場合は、それも回復する) これ以降は【夜】となり、本来の姿に戻ったクリスティが従者として同行する。 「18:女の視る夢」へ進め。 ★特別な従者: コビットの女盗賊・クリスティ(技量点1点、生命点2点) 戦闘に参加する「戦う従者」。主武器は小剣二刀流(攻撃特性は【斬撃】。ゲーム的には通常の片手武器だけを持っているように扱う)。 彼女は【斥候】としての能力を持ち合わせており、冒険中に一度だけ【察知】の【器用ロール】が可能。 また彼女は冒険中に一度だけ〈宝物表〉を振るとき、その出目に1を足すことができる。この能力はサイコロを振る前でも、振った後でも使うことができる。 生命点が0点になった場合、行動不能となるが死亡はせず、引続き同行する。 今回の冒険に限っては同行する際の従者点は不要とする。彼女は〈強いクリーチャー〉として扱う。 ---------------------------------------------------------------------------------    18:女の視る夢 --------------------------------------------------------------------------------- {/斜体} スヴァーンベルィ 遠くからあの人が手を差し伸べる。 でも私はその手を素直に取る事が出来ない。私はいつもそうだ。 スヴァーンベルィ 汗びっしょりで眠りから目覚める。 行かなければ。 もういちど、あの場所へ。 やり直さなければ。 スヴァーンベルィ いま行く。待っていて。 {/斜体} 「15:出目表(d33)」へ進み、冒険を再開せよ。 なお【夜】となったため、十の位の出目は「1d3+1」で決定すること。 ---------------------------------------------------------------------------------    19:最終イベント ---------------------------------------------------------------------------------  ねっとりと澱んだ黴臭い空気がそこには漂っていた。  不気味な獣の神像が祀られている祭壇がぽつりと目に留まる。辺り一帯は沈黙が支配しており、生き物の気配一つ感じない。 「ここや」  クリスティが小声で呟く。君たちは誰とはなく頷き返す。  君は辺りを窺いながら、慎重に一歩踏み出す。そのまま数歩。  祭壇の周りには引き裂かれたような衣服や荷物が散らばっている。   〈……こい〉  頭の中に低い唸り声が木霊する。神像が微かな光を発し始める。急に空気が重くなり、息苦しさを感じる。  君は小さく舌打ちする。このままここに居るのはまずい。理由はないがそう直感する。  クリスティは焦りを隠せない様子で、辺りを探し回っている。 〈……こい〉 「うるさいっ」  クリスティが苛立たしげに吐き捨てる。  生臭い匂いが辺りに漂い始め、頭に響く声がやや力を増した気がする。 主人公は【魔術ロール】を行う(目標値:4)。 (もし主人公2人で冒険をしている場合はいずれか1人が判定を行う。なおこの判定を行う主人公は途中で変更することはできない) ・成功 1−1へ ・失敗 2−1へ ■1−1(成功)  君は声を振り切って、クリスティとともに辺りを探し回る。  しかし人影はおろか、彼女が見たというような怪物すら姿はない。クリスティは深く嘆息する。 「……ほんまは薄々わかっとったんよ……ウチのように、あの人もきっと……」 〈こい〉 〈こい〉 〈こい〉 主人公は再び【魔術ロール】を行う(目標値:4)。 ・成功 1−2へ ・失敗、もしくは敢えて言葉に従う 2−1へ ■1−2(2度目の成功)  頭の奥に直接響くような喧しい声をなんとか振り切るが、むっとする獣の臭気と目眩に耐えられずそのまま膝を突く。  「20:最終イベント2」へ進め ■2−1(失敗)  君は脳裏に響く声に抗うことができず、祭壇の神像に引き寄せられるようにふらふらと近づいてゆく。 〈来い〉  声がはっとする明瞭さを帯びた。低く唸るように耳のすぐそばで何度も何度も木霊する。  神像の浮かべている笑みは、はじめこそ不気味に思えたが、惹き付けられるように見つめるうちに、柔和な微笑みと感じるようになってきた。  不意にその口が、なにかを迎え入れるかのようにあんぐりと開き、君を待ち受ける。君は自分でも驚くほど従順に、神像の口腔に利き手をそっと差し入れる。  ひんやりとした感触。やがてじっとりと湿った感触。脳裏に霞がかかり、何もかもがぼやけてくる。  神像の舌が、君の手を舐める感触。 〈いとし子や……我が御許へ近う寄れ〉 主人公は再び【魔術ロール】を行う(目標値:5)。 ・成功 1−2へ ・失敗、もしくは敢えて言葉に従う 2−2へ ■2−2(失敗)  君は霞のかかった頭で言葉に従い、利き手を肘まで差し込む。  舌が君の手から腕に絡みつき、もっと奥へと引き摺り込むように誘う。  生暖かい吐息が君の鼻をかすめるが、やがてそれは優しい、甘い香りとして匂いはじめる。 〈深淵へ身を委ねよ〉 主人公は再び【魔術ロール】を行う(目標値:5)。 ・成功 3−1 ・失敗、もしくは敢えて言葉に従う 2−3へ ■2−3(失敗)  快楽的な言葉に身を任せると、そのまま君の身体はずるりと神像の胎内に転がり込む。 〈汝を差し出せ〉  羊水に浸かるような、身体が、肉体が内側から裏返るような奇妙で、それでいて心地好い感覚。  原初の神の生臭い匂いが近づいてくる。  激しい肉を裂く痛み。ゴリゴリと骨ごと貪り食われる感覚。自分が失われてゆく。  分解され、溶け、どろどろの原初の塊に戻ってゆく。神の御許へ還るのか。  いや、違う。これは。  光。そして新しい自分に生まれ変わる感覚。  >異形の獣神の祝福を受け、君の身体は人ならざる姿に変化する。  「21:冒険の達成4」へ進め   ■3−1(成功)  すんでのところで、君は冷静さを取り戻す。必死の形相のクリスティが君の残された腕を全力で引っ張っていた。 「アンタまで行かせへん! そこは行ったらあかんところなんや!」  冷水を浴びせられたように意思を取り戻した君は、慌てて利き手を神像から抜き去る。  しかしぬるぬるとした液汁がまとわりつくそれは、異形の姿へと変化していた。  >異形の獣神の祝福を受け、君の利き手は人ならざる姿に変化する。   鋭い爪を攻撃に使えるが、もはやその手は武器を握ることはできない。   (【斬撃】特性の片手武器を常に装備しているものとして扱う)  「20:最終イベント2」へ進め ---------------------------------------------------------------------------------    20:最終イベント2 ---------------------------------------------------------------------------------  荒い息づかいで君とクリスティは祭壇に倒れ込む。  ひんやりとした石が身体に心地よい。  しかし伏した君たちの耳に、獣の唸り声が聞こえてくる。  起き上がった君の目に、遺跡の暗がりからのそりと這い出てきた奇怪な魔獣の姿が映る。獅子と山羊と毒蛇の三つの頭を持つ邪悪な巨体が身じろぎする。  クリスティは魔獣の左前足に嵌められている意匠を凝らした銀の腕輪をじっと見つめながら囁いた。 「……せめて言葉が通じれば、なんて思ってるウチは……甘すぎるんやろな」   異教の導き手・キマイラ レベル:5 生命点:6 攻撃回数:3 宝物:修正+1 ≪反応表≫ 常に【死ぬまで戦う】 これは【怪物】に属するクリーチャーである。 このクリーチャーは第1ラウンド以降は、〈獅子頭〉〈山羊頭〉〈蛇頭〉でそれぞれ1回ずつ攻撃する。攻撃特性はすべて【斬撃】である。 〈獅子頭〉は、噛みつきによって攻撃する。 〈山羊頭〉は、鋭い角による突進によって攻撃する。キャラクターが負傷を受けた場合、ただちに【器用ロール】を行うこと(目標値:5)。判定に失敗したなら、生命点に通常の1点ではなく2点のダメージを受けなければならない。ただし対象が従者(弱いクリーチャー)なら、ダメージを受けるのは1人だけでよい。 〈蛇頭〉は、毒牙によって攻撃する。キャラクターが負傷を受けた場合、ただちに【生命ロール】を行うこと(目標値:5)。 判定に失敗したなら、【毒】によって、生命点に通常の1点ではなく2点のダメージを受けなければならない。ただし対象が従者(弱いクリーチャー)なら、ダメージを受けるのは1人だけでよい。 ■キマイラの生命点が4点になった場合  クリスティが集中を欠いた様子でチラチラと魔獣の後方に視線をやっている。 「危ない!」  獅子頭の噛みつきが間一髪のところで彼女の肩をかすめる。 「……試させてくれへんか」  慌てて駆け寄った君に、クリスティは毅然とした表情で提案する。あの神像を破壊する、と。 「きっとあの神像に操られとるだけなんや」  君は咄嗟に判断が付かず口ごもる。 「せやけどもし……もしそれでもあかんかったら、その時は……」  クリスティの目に強い覚悟の意思が宿っている。 君は…… ・あくまで戦闘を継続する 1へ ・クリスティの提案を試す 2へ 1:  首を振る君に、クリスティは絶望的な表情を浮かべる。  戦闘を継続せよ。 2:  これ以降、各ラウンドでクリスティは戦闘に参加せず、神像の破壊を試みる。  クリスティの技量点を用いて【筋力ロール】を行う(目標値:4)。  成功した場合、神像に損傷を与える。成功回数が累積3回になった場合、神像は破壊される。  なおこのロールは、主人公が手伝うこともできる。(従者は手伝うことはできない)ただし、キマイラと戦闘する者を0人にすることはできない。  主人公が手伝う場合、各ラウンドにクリスティと各主人公はそれぞれロールを行うことができる。  ロールを行っている者は他の行動を行う事はできないし、敵の攻撃の対象になることもない。  またこの行動中は、キマイラと戦闘するキャラクターは攻撃を行わずに防御に徹してもよい(各ラウンドに【防御ロール】だけ行う) ■キマイラの生命点が1点になった場合  血みどろになった魔獣の前で、クリスティが小剣を投げ捨て、悲痛な叫びを上げる。 「お願いや、殺さんといて」  魔獣を庇うように立ち塞がる彼女に、君は逡巡する。  その瞬間、魔獣の山羊角が背後から彼女の身体を刺し貫く。  ごぼりと血の塊を吐き出し、彼女は力を失う。  君は怒りにまかせて魔獣に飛びかかり、その首を跳ね飛ばす。  「21:冒険の達成1」へ進め ■キマイラの生命点が0点になった場合  「21:冒険の達成2」へ進め ■神像を破壊した場合  「21:冒険の達成3」へ進め ---------------------------------------------------------------------------------    21:冒険の達成 --------------------------------------------------------------------------------- 1:  君の前には一つに繋がった男女の遺体が転がっている。  魔獣を胸に抱いて事切れているクリスティの顔は不思議と安らかだ。そのことが君の心の重荷を少しだけ軽くする。  君は無言で辺りに散らばっていたものをかき集める。  帰ろう。もはやここには何の用もない。  (金貨45枚を得る)  「22:エンディング2」へ進め 2: 「殺さなくたって……殺さなくたってよかったやろ……」  クリスティは魔獣の死骸の前に崩れ落ち、胸にその頭を抱いている。 「手加減できる相手じゃ無かった」  君の言葉は君自身が考えている以上に冷淡に響く。クリスティは下唇を噛みしめ、涙が零れる前に君に背を向ける。そして金貨の袋をその場に投げ捨てると、もう一言も発すること無くそのまま姿を消す。  君は小さくため息をつく。他に何かやりようがあったのかもしれない。だが今更そんなことを考えてどうなるというのだ。  帰ろう。もはやここには何の用もない。  (金貨60枚を得る)  「22:エンディング2」へ進め 3:  痛烈な一撃が加わると、乾いた音とともに神像の全身を細かいひびが埋め尽くす。  割れ目からどろりと濁った汚らしい液体がじくじくと染み出し、腐ったような不快な臭いが立ちこめる。 「もどってきて、スヴァーンベルィ!」  クリスティが叫びと共に、ひび割れた神像を更に打ち据える。  液体がまるで逃げ込むように地面に吸い込まれると、神像は獣の咆哮のような音とともに粉々に破裂する。  魔獣もそれに呼応するように辺り一帯に轟くような叫び声を上げ、そのまま倒れ伏す。  静寂が辺りを支配した。誰も一言も発することは無かった。  やがて朝日がゆっくりと祭壇に差し込んでくる。 「アンタには世話になったな」  クリスティは朝日をまぶしそうに見つめながら、君に金貨の袋を差し出した。 「これがウチに出せる全部や。少なくて申し訳ないんやけど……」  君は黙って半分だけ受け取ると、残りを押し返す。彼女は驚いた顔で君を見返すが、すぐに深く頭を下げる。 「優しいんやな。せやけどその優しさが通じる相手ばかりやない。特にウチらみたいな悪党には気をつけるんや」  そう言ってクリスティは傍らの魔獣の背を撫ぜる。魔獣は気持ちよさそうに低いうなり声を上げている。 「ほな元気でやりや。また会うこともあるかも知れんけど、そんときまで借りとくわ」  そう言って笑うと、もはや鳥の姿と化すことのなくなったコビットの女は、相棒の身体にそっと手を添え、森の奥へ消えてゆく。  (金貨30枚を得る)  「22:エンディング1」へ進め 4:  君は身も心も人ならざるものと化した。人だった頃の記憶が残っているかは君次第だ。  もしヒーローズオブダークネスでサポートされている種族を選ぶか、GMが独自に能力を決定すれば、君は新たな身体で別の冒険を続けることができる。(1人用プレイではあなたがGMです)  でなくば君の冒険はここで終わりだ。   END ---------------------------------------------------------------------------------    22:エンディング --------------------------------------------------------------------------------- 1: 「……一度闇を受け入れ、魂を委ねたものに真の救済は訪れぬということか。しかしあの娘だけでも救われたならよかったではないか」  君たちの話を聞き終わると、闇の賢人は穏やかにそう答えた。この知識だけにしか興味を持たぬ魔獣にしては珍しい事を言うものだ。 「ふん……旧き神どもの遺跡など、ヴィンドランダにはまだいくらでも眠っておる。いずれまた諸君らに調査を命ずることになるやもしれん……その時に備えておくがよい」  そう言い残すと彼は遠くを見るような表情で微かな笑みを浮かべると、洞穴に向き直る。 〈……儂もいつかあの夢を見なくなる日が来るのだろうか〉  後ろ姿を見送る君の耳に、かの魔獣の独白が聞こえた気がした。  メメコレオウス、もしかしてお前は……君はそう問いかけようとしたが、口の端にのぼらせることすら拒絶する孤独な背中に、そっと口をつぐむ。  洞窟の闇は何も語らない。 〈それまではまたこの闇の中で微睡むとしよう〉  これで今回の冒険はおしまいだ。おめでとう。  各主人公は1点ずつ経験点を獲得する。  メメコレオウスからの報酬として宝物表を2回振って良い。 2: 「……一度闇を受け入れ、魂を委ねたものに真の救済は訪れぬということか」  君たちの話を聞き終わると、闇の賢人は不思議と穏やかな様子でそう答えた。 「ふん……旧き神どもの遺跡など、ヴィンドランダにはまだいくらでも眠っておる。いずれまた諸君らに調査を命ずることになるやもしれん……その時に備えておくがよい」  そう言い残すと彼は遠くを見るような表情で微かな笑みを浮かべると、洞穴に向き直る。  これで今回の冒険はおしまいだ。おめでとう。  各主人公は1点ずつ経験点を獲得する。  メメコレオウスからの報酬として宝物表を2回振って良い。 ---------------------------------------------------------------------------------