「ベテルギウスの残光」 ローグライクハーフd66シナリオ 作:紫隠ねこ 原案・協力:ロア・スペイダー 監修:杉本=ヨハネ ---------------------------------------------------------------------------------    1:「ローグライクハーフ」d66シナリオ『ベテルギウスの残光』 ---------------------------------------------------------------------------------  これは「ローグライクハーフ」のd66シナリオです。少し経験を積んだレベルの主人公1人と従者、または主人公2人での冒険に適しています。 ・ジャンル:ファンタジー ・難易度:普通 ・形式:シナリオ(d66) ・世界:共通世界(アランツァ) ・ゲームマスター:不要 ・プレイヤー数:1-2人 ・プレイ時間:10-15分 ・適正レベル:13-15 ・対象年齢:10-99歳 ---------------------------------------------------------------------------------    2:「ローグライクハーフ」を遊ぶにあたって(ライセンス表記その他) ---------------------------------------------------------------------------------  「ローグライクハーフ」はルールを確認した後に遊ぶゲームです。新ジャンルではありますが、区分するなら「1人用TRPG」にもっとも近いといえます。ルールは下記アドレスで確認することができます(無料)。 ライセンスロゴ https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_BasicRuleSet.txt  PDF版は下記アドレスで入手可能です(要BOOTH会員登録)。  また、紙の書籍でのルールを入手したい場合も、こちらから購入が可能です。紙の書籍には1stシナリオ『黄昏の騎士』が収録されています。 https://ftbooks.booth.pm/items/4671946 ---------------------------------------------------------------------------------    3:背景 ---------------------------------------------------------------------------------  なにか頭の中で声が響くような感じがして、温泉施設ベテルギウスの受付を担当しているステラはエントランスホールを見回した。  大きな水色のキューブ状の物体が、のろのろとした動きで受付に近付いてくる。あれは確か、プレオープン中であるベテルギウスからの招待を受けた客の1人だ。  肉食キューブという、ラドリド大陸でも珍しい種族のひとつだが、同僚のアーノルドがそのことを教えてくれなかったら、ステラは慌てて警備員を呼んでいたに違いない。 『あの……ここにある温泉なんですが、≪鹿の湯≫って、利用できるんでしょうか? 施設の奥の方に行ったら、立入禁止の看板も見かけたし、なんだか良く分からなくなって……』  ふたたび念話が送り込まれてくる。どうにも慣れない感覚だが、ステラは軽く微笑みながら返答した。 「申し訳ございません、お客様。温泉施設ベテルギウスは、まだ建設中の区画がありまして、一部はご利用できない場所になっているんです。でも、ご安心ください。別館の≪鹿の湯≫まで、私がご案内しますよ。……アーノルド、私が戻るまで受付を頼みます」  ステラは同僚に声をかけた後、自分の腰の高さほどの大きさがある奇妙な種族を引き連れて、ベテルギウスの別館の方へと向かった。  脇に見える談話室では、モフージャ商業組合の重役であるハウザーが、盗賊都市ネグラレーナの名家であるグレゴリア家の伯爵夫人と話しているのが見えた。  セエラ伯爵夫人は20代のように若く、ふんわりした感じの人物だが、ベテルギウスが提供するサービスの質や、従業員の接客態度などを細かくチェックしているらしい。  施設のグランドオープンも間近となっている。できれば5つ星の評価を与えて欲しいとステラは願った。みんな、それだけの働きをしっかりとこなしている。  廊下を進む途中で、真紅のドレスを着た少女とすれ違う。唇から僅かに牙が見えている……吸血鬼だ。ステラは思わず自分の首元を片手でかばおうとするが、すぐに思い直して、営業スマイルで会釈をする。  招待客の1人で、アムニスという名の娘だ。少女の護衛を務める男が、ステラが露骨に首をかばったことに面白くない表情を浮かべるが、アムニスはそれを制した。幸いにも、この貴族の娘とのトラブルは起きなかった。  展示室では、エルフ型のゴーレムであるリコチェットが、部屋に展示された美術品に関する歴史を、客に説明している姿が見えた。  あの線の細そうな見た目で、屈強な男ですら簡単に組み伏せるほどの力を持っているのだから、ゴーレムとは恐ろしいものだ、とステラは思った。  リコチェットは仕立て屋に飾られた精巧なマネキンのような印象で、心も作り物だそうだし、彼女が普段は何を考えているのかよく分からない。ステラとしては、あまり会話を交わしたくない相手だった。  その次に、ドワーフの母娘を見かけた。親子はどの料理を注文するのか、食堂の入口付近に立てかけたメニューの看板を眺めていた。  娘の方は、客室に置いてきたヌイグルミのことを気にかけているようだった。自分にもあんな頃があったな……とステラはドワーフの少女を見て、懐かしい記憶に思いをはせた。 「ここの角を右に曲がって、少し進むと、そこが≪鹿の湯≫になります」  目的の場所に到達したステラは、肉食キューブのモチョチョに声をかける。鮮やかな水色の立方体は、ステラに『どうも、ありがとうございます』と念話を送りながら、ブルブルと小刻みに身体を揺らしていた。  モチョチョへの案内を済ませた後、ステラはエントランスホールへと引き返すさいにクレイド神父と出会った。補充分の聖水が搬入されたとカーマインから連絡を受けた彼は、それを受け取りに向かうところだという。  プレオープンで目立った問題が起きなかったことを確認したステラは、アムニスについて神父に尋ねることにした。 「……あの子、吸血鬼でしょう? どうして、ベテルギウスに招待されているんですか」 「あの娘はネルドの情報屋だ。商業組合が各都市での流行を知るために、彼女の情報を頼りにしていたそうだ。アムニスも、低いリスクで確実な利益が見込める情報の方が扱いやすいのだろう。誰かが血を吸われて干物になった、という騒ぎを起こさない限りは、招待客である彼女の頭を戦槌で殴りつけるわけにもいくまい」    クレイドは苦笑しながら言った。剣神エスパダの信者である彼も、アムニスのことはよく思っていないようだが、彼女が一線を越えないという確信を持っているようだ。 「それ以前に、施設内で戦槌を振り回したらダメですよ、クレイド神父」  ステラの指摘に対して、クレイドは「それもそうだ」と軽く笑った。自分でも、おかしな発言であることに気付き、ステラも静かに笑う。  クレイド神父と別れを告げた後、ステラはふたたび廊下を歩き始める。少し進んだ先で、ベテルギウスの本館に通じる渡り廊下が見えてきた、そのときだった。  誰かが施設内に響き渡るほどの大声で「地下からアンデッドが現れたぞ!」と叫んだ。声がした方向は、まだ工事中の区画からだ。  何が起きたのか状況を把握するために、ステラが付近にいる同僚を探そうとしたとき、壁と床がグラグラと大きく揺れ始めた。地下から強烈な震動を感じる。  廊下を飾っていたヤーパンの陶磁器が横倒しになり、ガチャンと派手な音を立てて砕け散る。少し離れた場所で崩落が発生したらしく、施設を支える建材が崩れる音も聞こえた。  あまりにも突然の出来事で、ステラは自分が悪い夢を見ているような錯覚に陥っていた。 ---------------------------------------------------------------------------------    4:プロローグ --------------------------------------------------------------------------------- 「至急、クリーチャーの排除と原因究明をして欲しい」  君を優秀な冒険者として招いた商業組合長ハッドが、そう口を開く。 「前金も払うし、解決すれば報酬も色を付ける。モフージャの町の未来のためにお願いしたい。 ……できることなら、領主であるクラウス様の耳に入る前に片をつけて欲しいのだ!」  モフージャの町に新たな施設が建設された。領主・神殿・商業組合などが共同で建設した公衆浴場だ。龍脈の霊験あらたかな水を豊かな木材で沸かし、町を訪れる人々をターゲットにした事業だ。最初は普通の公共浴場だったが、建設途中で温度の高い源泉が新たに見つかったことで、公共浴場に野外浴場もくっつけた大規模な施設へと計画が変更された。元々、もふもふ獣により危険なクリーチャーが近づかない場所であるうえ、さらにもふもふ龍の抜け毛を使ってクリーチャー除けのアイテムを設置することで、自然の中で安全に入浴できる唯一無二の場が実現可能となった。この〈ベテルギウス〉と名付けられた温泉施設は、これからのモフージャの町の新たなランドマークとなる。施設の大部分は完成しており、もうすぐ公開することができる……モフージャの町の上層部は期待に満ちていた。  しかし、その希望に水を差す報告が届いた。施設の一部でアンデッドの目撃例が報告されたのだ。早急に解決しなければ、大問題に発展してしまう。  本来なら領主や神殿にも報告して事態を解決するべきなのだが、地下からクリーチャーが現れた場所は、森の奥まで拡張した部分。神殿や町の議会は、元から予定していた規模以上に施設を拡大することには乗り気ではなかったのだが、商業組合長ハッドは「クリーチャー除けのからくり仕掛けがあるから大丈夫」と言って、彼らを半ば強引に説得したのだ。そうした経緯がある以上、ここまで事業を進めておきながら「失策だった」と頭を下げるのは、商業組合の面目にも関わる。現在施設はプレオープン中で、建設費の大部分を出資した商業組合の身内と、限られた招待客だけが利用していたので、大きな騒ぎにはなっていない。  商業組合に所属する戦士たちが、クリーチャーが施設の外にあふれ出すのを抑え込み、逃げ遅れた者たちの救出にあたっているが、いかんせん人手が足りない。事態が大きくなる前に解決したいと考えた組合長ハッドは、君に依頼したのだ。  それだけ君の腕が見込まれていることに、冒険者としての自信がつくが、組合所属の戦士団だけで解決できないとすれば、思った以上に事態は深刻のようだ。  まずは現地の下調べをしてから……という雰囲気ではない。すぐにでも施設の探索を始めた方がよいだろう。 ---------------------------------------------------------------------------------    5:ゲームの概要 ---------------------------------------------------------------------------------  「ローグライクハーフ」へようこそ。このゲームは1人(または2人)で遊べるTRPGのようであり、ゲームブックのようでもあり、ダンジョンハック系の電源ゲームをアナログゲーム化したようでもあり……。ゲームマスター(GM)はいてもいなくても遊べます。つまり、1人から3人までで遊ぶゲームです。  プレイヤーとしてゲームに参加する場合、あなたは自分の分身である「主人公」を作成します。これは「冒険者」とも呼ばれる、万能ではないが十分に強いキャラクターです。プレイヤーが(つまり主人公が)1人の場合、7人前後の従者とともに冒険を開始します。プレイヤーが2人の場合、従者が少なくなり、従者なしで冒険を行うこともあります。  本シナリオは「一本道モード」でお届けします。 ---------------------------------------------------------------------------------    6:ゲームの特徴 ---------------------------------------------------------------------------------  「ローグライクハーフ」のシナリオは、短い時間でTRPGを遊んだような満足感を与えてくれます。部屋を探索し、ワナをかいくぐり、敵を蹴散らして、最終的な目的へと臨みます。  しかし、気をつけてください。冒険の一部はランダムで形成されているため、必ずしも成功するとは限りません。判断を誤り、運に見放されたとき、あなたの大切なキャラクターは冷たい墓石の下で、永い眠りにつくことになるでしょう。 ---------------------------------------------------------------------------------    7:ゲームに必要なもの ---------------------------------------------------------------------------------  筆記用具と六面体サイコロ1個があれば、すぐにもゲームをはじめられます。「冒険記録紙」をプリントアウトしておくと、手もとで情報を管理できて遊びやすいでしょう。 ---------------------------------------------------------------------------------    8:ゲームの準備 ---------------------------------------------------------------------------------  本作『ベテルギウスの残光』をはじめる前に、あなたは主人公(と、必要なら従者)を準備してください。冒険を進めるためのルールを読むか、いつでも読めるように手もとに置いてからゲームを開始します。 ---------------------------------------------------------------------------------    9:ゲームの進行 ---------------------------------------------------------------------------------  『ベテルギウスの残光』は地図を作らない「一本道モード」で遊びます。  本文中に{斜体}このような斜体{/斜体}で書かれた文字がある場合、それは主人公たちが今いる場所の状況について語った文章です。読まなくとも物語の進行に影響はありませんが、読むとよりいっそう気持ちが入ることでしょう。 ---------------------------------------------------------------------------------    10:マップタイルについて ---------------------------------------------------------------------------------  『ベテルギウスの残光』は、マップタイルをめくることでゲームが進行します。タイルはd66によって決められます。同じタイルが出た場合には、重複が出なくなるまで番号をひとつずつ増やします。たとえば、あなたが25番と26番のタイルをめくった後で25番を再び出したときには、31番のタイルをめくります。66番の次のタイルは11番としてください。 ---------------------------------------------------------------------------------    11:一本道モード ---------------------------------------------------------------------------------  一本道モードでは、あなたは分岐を気にすることなく、d66によってマップを決定していきます。このモードでは、あなたはマップタイルを一定枚数めくることで次のイベントへと進みます。  『ベテルギウスの残光』では、1枚目から3枚目のタイルをめくり、マップタイルに付随するできごとを体験した後に、4枚目の中間イベントのタイル(固定)に進みます。そこから先のマップタイルでは最終イベントが登場する確率が上がっていきます。d66の出目によって、通常のマップタイルの代わりに最終イベントが出現します。次の表を参照してください。 ・5枚目……通常どおり(最終イベントは出現しない) ・6枚目……出目が11〜16なら最終イベントが出現 ・7枚目……出目が11〜26なら最終イベントが出現 ・8枚目……出目が11〜36なら最終イベントが出現 ・9枚目……出目が11〜46なら最終イベントが出現 ・10枚目……出目が11〜56なら最終イベントが出現 ・11枚目……必ず最終イベントが出現  一本道モードで遊ぶ場合、基本ルールの「42:逃走」を行なったさいには、めくったマップタイルは枚数にカウントしません。主人公たちはその部屋には進まず、ひとつ手前の部屋に戻り、別の扉を開けたことになります。プレイヤーは改めてマップタイルをめくり、別の部屋へと進んでください。 ※中間イベントおよび最終イベントでは、逃走を行うことができません。 ---------------------------------------------------------------------------------    12:冒険とゲームの勝利 ---------------------------------------------------------------------------------  このゲームの勝利とは、シナリオにおける使命を達成することです。『ベテルギウスの残光』では、温泉施設に現れたアンデッドの掃討、および事件の原因を突き止めることが使命です。  『ベテルギウスの残光』は3回までの冒険を遊べるようにデザインされています。1回の「冒険」は地下迷宮に1回潜って帰ってくる(かゲームオーバーになる)ことを指します。 ---------------------------------------------------------------------------------    13:地下迷宮と隊列 ---------------------------------------------------------------------------------  『ベテルギウスの残光』における戦闘には、隊列という概念はありません。主人公と「戦う従者」は、敵を好きなように攻撃できます。  敵側の攻撃は、主人公が2人の場合には均等に攻撃が分けられます。  主人公が1人の場合には、攻撃の半分を主人公が受けてください。残りの半分は従者が受けます。  いずれの場合でも、余った攻撃をどちらが受けるかは、プレイヤーが決めてください。 例:インプ7体が主人公と「戦う従者」である兵士3人を攻撃した。インプの攻撃は合計で7回である。プレイヤーは攻撃のうち3回分を主人公が、残りの4回分を従者が受けることに決める。従者である兵士は【防御ロール】に失敗するたびに1人ずつ死亡する。 ---------------------------------------------------------------------------------    14:明かりについて ---------------------------------------------------------------------------------  この冒険の舞台となる温泉施設は、自然光を取り入れやすい構造になっているため、基本的にはランタンのような明かり(光源)は不要です。しかし、ときどき「薄暗い場所」であることが書かれた〈できごと〉が登場します。このような場所ではパーティ全員が【判定ロール】に-1の修正を得てしまいます。  〈ランタン持ち〉のような、光源を持つ従者を連れていくことで、このペナルティを避けることができます。また、主人公がランタンを持つこともできます(ランタンは初期装備に含まれます)。主人公は「薄暗い場所」に来てから手にランタンを持ち替えることで、暗さに対応することができます。 ---------------------------------------------------------------------------------    15:『手がかり』について(『ベテルギウスの残光』の場合) ---------------------------------------------------------------------------------  『ベテルギウスの残光』では、手がかりはマップタイルをめくるさいに消費して使用します。そのさいに振るサイコロの十の位は1に固定されます。また、いくつかの場所では『手がかり』を消費することで、冒険を有利に進めることが可能になります。  この作品内で手に入れた『手がかり』は、この作品の冒険が終わるとなくなります。複数所持することができ、重さがないので装備品欄を占めることがありません。 ---------------------------------------------------------------------------------    16:要救助者について(『ベテルギウスの残光』特殊ルール) ---------------------------------------------------------------------------------  温泉施設の中では、「要救助者」と扱われるキャラクターを発見することがあります。彼らは自力で脱出するのが困難な状況に陥っており、誰かの助けを待ち望んでいます。  発見された「要救助者」はパーティに同行することはなく、〈できごと〉の合間に、主人公が施設の外に避難させたものとして処理されます。救出したキャラクターの名前は、メモしておいてください。  そのときの冒険を達成した後、救出した「要救助者」ごとに報酬を獲得できます。報酬の金額については「24:要救助者の一覧」を参照してください。 ---------------------------------------------------------------------------------    17:ゲームの終了(冒険の成功と失敗) ---------------------------------------------------------------------------------  主人公が1人死亡したら、冒険は失敗で終了します。最終イベントを終えた場合にも、ゲームは終了します。そのときに条件を満たしていれば、冒険は成功に終わります。  冒険が成功した場合、主人公はそれぞれ1経験点を獲得します。冒険に失敗した場合には、これを得ることができません。死亡していない主人公は、改めて冒険に出ることができます。 ---------------------------------------------------------------------------------    18:繰り返し遊ぶ ---------------------------------------------------------------------------------  『ベテルギウスの残光』は、同じキャラクターで複数回遊ぶことができるゲームです。ただし、1人の主人公が挑戦できる回数には上限があります。d66マップの場合には、同じ主人公で挑戦できる回数は3回までです。別の主人公に変更した場合には、この回数はリセットされます。  あまりないことですが、2回目以降(おそらくは3回目)の冒険ですべてのマップタイルがめくられて、次にめくるマップタイルがなくなってしまった場合、その冒険中に登場していないマップタイルをリセットして、次以降で再登場させてください。 ---------------------------------------------------------------------------------    19:冒険のはじまり ≪1回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  君は、報酬の前金として金貨20枚を受け取る。今回の冒険を開始する前に、この前金を使って、必要な装備品や従者を購入してもよい。  組合長ハッドの話によれば、温泉施設ベテルギウスの中には、まだ取り残された者たちがいるらしい。 「……もし、施設内でベロデアとハウザーを見かけたら、何としても連れ帰って欲しい。その2人は商業組合の幹部なのだ。特にベロデアは拡張工事の指揮をとっていた。事件の責任をとりたくないから街に戻りたくない、と彼は思っているのかも知れないが、今は温泉施設のあらゆる場所にクリーチャーが潜んでいるような状態だ。組合員を見殺しにしたくはない」  責任逃れのスケープゴートが欲しいだけではないか、と君が考えているとでも思ったのだろうか。ハッドは言葉を続ける。 「ベロデアは、モフージャの町を築いた開拓者たちの血統だった。その一方で、私は街の外からやってきた人間だ。私が商業組合長であることを、よく思わない者たちもいる。施設の拡張工事を提案したのは、ベロデアだった。彼が私の鼻を明かしたいことは察していたが、モフージャの発展計画に対する熱意は本物だ。だからこそ、私は彼にチャンスを与えることにした。しかし、地中から化け物が飛び出すとは、誰も想定してはいなかった。工事を承認した私も、何かしらの責任を取らなければならないだろう」  君は事態を収束させるために、温泉施設に向かった。いざ調査を開始しようとしたとき、ベテルギウス別館の外観を目にした君は、その酷い有様に思わず顔をしかめる。建造物の至る所が崩れ落ち、そこからまがまがしい気配が漂ってくる。施設を建てるには地盤が緩かった……という推論では片付けられない「何か」が、あの奥に潜んでいる。ベテルギウスは局地的な攻撃を受けたのだ。  「22:マップ表(d66)」に進み、1回目の冒険をはじめよう。 ---------------------------------------------------------------------------------    20:冒険のはじまり ≪2回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  君は出発の準備を整えると、組合長ハッドと面会する。  昨日は、事件が半分解決したことを嬉しそうにしていたハッドだが、ふたたび曇った表情に戻っている。 「温泉施設を監視していた斥候の報告によれば、戦闘用の鎌を携えたローブ姿の集団が、崩れかけた別館に入っていったそうだ。連中の後を追うように、私たちの戦士団を送り込んだが、どうやら施設の中でアンデッドが出現したらしい。大事をとって、戦士団を外に帰還させることにした。これまでとは異なる、ただならぬ事態が起きているようだ。厳しい状況だとは思うが、脅威の排除をお願いしたい」  君は先日の調査の中で倒した、前腕が鎌になった司祭のミイラを思い出す。  鎌はベルドゥー教団のシンボルとされている。死神ベルドゥーに仕える信者たちがアンデッドを召喚したのだろうか? いや、それは彼らの教義に反する行いだ。ベルドゥー教は「死は救済である」と考える。アンデッドは「不死」であり、救済とは正反対の存在だ。ベルドゥー教徒ならむしろ、アンデッドを土に還そうとさえするだろう。  ベルドゥー教団の目的も、アンデッドが絶えず現れる理由も、今はまだ分からない。その真相をつかむために、君はふたたびベテルギウスの中へと踏み込む……。  「22:マップ表(d66)」に進み、2回目の冒険をはじめよう。 ---------------------------------------------------------------------------------    21:冒険のはじまり ≪3回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  組合長ハッドに、ベロデアがオスクリードの信徒であったことを伝える。  この報告にショックを受け、何度もかぶりを振っていたハッドだが、相手が強硬手段もいとわない過激派であれば看過することはできない。これ以上は状況を悪化させないためにも、ベロデアを討つことを君に依頼する。  モフージャにオスクリード教団が潜んでいた事実を、町の住人に知らせるわけにはいかないだろう。そうなれば、不安は野火のように近隣の都市へと広がり、観光業に痛手を負うことになる。  たとえ計画を台無しにされたとしても、オスクリード教団はモフージャに「寄生」することで、勢力を徐々に伸ばしていくつもりなのだ。   「それにしても、本当に彼女たちは信頼できるのか? 黒エルフとはいえ、闇エルフの親戚のようなものじゃないか」  組合長ハッドは、ベルドゥーの巫女ラウレルに聞き取られないように、声を潜めて言った。  戦いに傷ついた黒エルフたちは、すでに適切な治療を受け、オスクリード教団に立ち向かえるだけの準備ができている。逆に言えば、モフージャに反抗するだけの余力があるとも考えられる。  君はハッドにラウレルの首飾りを見せると、彼女がそれを預けた経緯について話す。 「なるほど、な……。巫女という立場にあるなら、神への誓いを破ることは禁忌だ。共闘する分には、問題がないかも知れない。だが、オスクリード教団の方はどうなんだ? もしかしたら、町のどこかにベロデアに共感する信者が潜んでいるのかも知れない……」 「それはない。ベルドゥー教団が介入したことで、奴らの計画に狂いが生じた」  いつでも決戦の場に出発できる状態になったラウレルが、君たちの会話に口を挟んだ。 「ベロデアは、次に我らと対峙したときが総力戦だと考えているはずだ。こちらが態勢を整えている間に、連中も別のルートを使って、町に散らばっていた仲間を召集しているに違いない」 「だが、頭数ではモフージャの兵士の方が勝っているぞ」 「地の利は向こうにある。そして敵が呪術師であることを忘れるな。殺された兵士は、すぐに相手の戦力に置き換わる。施設の中を徘徊している草食のもふもふ獣も、殺してしまえば忠実な番犬に早変わりだ。時間が経つほど、こちらが不利になる。たった1度きりの襲撃で、ベロデアを討たなければならない」  そう言うと、ラウレルは君の顔を見る。命がけの戦いになるのは覚悟のうえだ。君は彼女に頷き返すと、今回の事件を終息させるために、崩れかけたベテルギウスへと向かう。  「22:マップ表(d66)」に進み、3回目の冒険をはじめよう。 ---------------------------------------------------------------------------------    22:マップ表(d66) ---------------------------------------------------------------------------------  「ローグライクハーフ」は物語の部分とランダムの部分が存在する、何度も遊べる1人用TRPGです。プレイヤーの1人がサイコロ1個を2回振り、1回目の出目を十の位、2回目の出目を一の位として扱います(これを「d66を振る」といいます)。このようにして決められたマップに応じて、〈できごと〉が起こります。  出目10番台を振った場合、今いる場所の近くに「隠された場所」が存在します。施設の各所が崩落しているため、普段よりも気付くのが難しくなっています。この場所にたどり着くには、【器用ロール】に成功しなければなりません(目標値:4)。判定に成功したなら、その「隠された場所」のマップタイルに入ることができます。  もし、マップタイルをめくるさいに『手がかり』を1個消費していた場合、このときの【器用ロール】は自動的に成功します。 出目の十の位が1……空き部屋(隠された何か) 出目の十の位が2……中立または友好的な弱いクリーチャー 出目の十の位が3……イベント 出目の十の位が4……トラップ 出目の十の位が5……弱いクリーチャー 出目の十の位が6……強いクリーチャー   ○隠された場所 出目11 〈談話室(Common Room)〉 出目12 〈建設中の部屋(Under construction)〉 出目13 〈食料庫(Food Storage)〉 出目14 〈酒蔵(Wine cellar)〉 出目15 〈礼拝堂(Chapel)〉 出目16 〈地下祭壇(Crypt)〉   ◇中立または友好的なクリーチャー 出目21 〈受付嬢ステラ('Stella' the Receptionist)〉 出目22 〈ローダ夫人('Mrs.Rauda' the Dwarf Civilian)〉 出目23 〈フージャくん('Fuja' the Mascot Golem)〉 出目24 〈クレイド神父('Clade' the Cleric)〉 出目25 〈怯えた作業員(Frightened Workmen〉 出目26 〈ノームの技師ナグガン('Nagugan' the Gnome Artificer)〉   □イベント 出目31 〈救護室(Medical Office)〉 出目32 〈鹿の湯(Fluffy Beast in Hot Spring)〉 出目33 〈あふれる水流(Overflow Water)〉 出目34 〈展示室(Exhibition Room)〉 出目35 〈保管室(Storage Room)〉 出目36 〈古代の祠(Ancient Shrine)〉   ■トラップ 出目41 〈崩落に巻き込まれた人(Buried Survivor)〉 出目42 〈熱湯噴出(Hydrothermal Vent)〉 出目43 (岩盤崩落(Collapse Bedrock)〉 出目44 〈オイルまみれの床(Oily Floor)〉 出目45 〈消えていく声(Vanishing Voice)〉 出目46 〈骨のスパイク(Bone Spike)〉   ◇弱いクリーチャー 出目51 〈見捨てられた遺体(Abandoned Bodies〉) 出目52 〈ゾンビ・ウォリアー(Zombie Warriors)〉 出目53 〈もふもふ野犬(Fluffy Dogs)〉 出目54 〈納骨グモ(Crypt Spider)〉 出目55 〈大モウセンゴケ(Giant Sundew)〉 出目56 〈施設内の火災(Fire in Facility)〉   ◆強いクリーチャー 出目61 〈灰衣の司祭(Gray Robed Bishop)〉 出目62 〈古代のスケルトン戦士(Ancient Skeleton Warrior)〉 出目63 〈暴走楽器ゴーレム(Run-Wildly Instrument Golem)〉 出目64 〈ガレキの壁(Rabble Wall)〉 出目65 〈レイス(Wraith)〉 出目66 〈もふもふ龍のミイラ(Fluffy Dragon Mummy)〉 ☆中間イベント ≪1回目の冒険≫ 〈激昂するもふもふ熊(Rage of the Fluffy Bear)〉 ≪2回目の冒険≫ 〈作業員のゾンビ(Workmen Zombies)〉 ≪3回目の冒険≫ 〈オスクリード教団との決戦(Total War)〉 ★最終イベント ≪1回目の冒険≫ 〈ベルドゥーの司祭(Bishop of Verdoux)〉 ≪2回目の冒険≫ 〈ベロデアの正体(Imitated Undead Ogre)〉 ≪3回目の冒険≫ 〈聖虫ラクシャ('Raksha' the Celestial Mantis)〉 ------------------------------------------------------------ ○出目11 〈談話室(Common Room)〉  施設の装飾として、壁に1本の剣が飾られている。崩壊に巻き込まれたことで、他の装飾品は潰されてしまったが、これだけは無事に残っていたようだ。  この『装飾剣』はレプリカであるため、武器として使えるだけの強度はないが、1d6×5枚の金貨5枚に価値がある。  これが3回目の冒険ではない場合、この部屋の隅には、真紅のドレスを着た少女が立っている。崩落に巻き込まれて死んだ従者を、ぼんやりと眺めている。主人公は施設に取り残された者を助けに来たことを告げるが、アムニスは救助を断わる。唇から僅かに突き出した2本の牙を指差し、私が騒動の犯人だと決め付けられてしまう、と言う。  それでも説得をしたいなら、主人公1人が代表して【幸運ロール】を行うこと(目標値:9)。これは【交渉】である。もし、ここで「奏楽」に属する特殊技能を行使した場合は、この判定に+5の修正が得られる。判定に成功したなら、吸血鬼アムニスは「要救助者」として扱われる。判定に失敗するか、またはアムニスを放っておくなら、彼女は主人公に関心を示さず、この〈できごと〉は終了する。 {斜線}  アムニスの視線は、ガレキの下に埋もれてしまった従者に注がれていた。 「可哀想なフューリィ。あと少しでも離れた場所に立っていれば、私の護衛を引き受けたりしなければ、こんな目には合わなかったのに。人生って、いつ何が起こるのか、誰にも分からないものなのね」 {/斜線} ------------------------------------------------------------ ○出目12 〈建設中の部屋(Under construction)〉  この部屋は、作っている途中だ。作業に使われていた道具が、無造作に床に転がっている。  作業道具の中で役立ちそうなのは、1本の『魔法のつるはし』ぐらいだ。望むなら、これを持っていってもよい。  〈魔法のつるはし(Magical Pickaxe)〉  これは魔法がかけられた採掘道具である。  『魔法のつるはし』は、採掘や壁を掘り抜くさいに用いることができる。1回分を消費することで、そのような状況においての【判定ロール】に自動的成功する。  1本の『魔法のつるはし』につき、3回分だけ使用できる。売却する場合は、未使用分1回につき、金貨20枚の価値を持つ。  主人公はこれを、間に合わせの武器として使用していい。  『魔法のつるはし』は【斬撃】の特性を持つ「両手武器」として扱われるが、武器としてのバランスが悪いため【攻撃ロール】のボーナスは得られない。  武器として用いたときは、例外的に使用回数を減らさなくてもいい。 ------------------------------------------------------------ ○出目13 〈食料庫(Food Storage)〉  この部屋は、施設で食事を提供するために設置されていた食料庫だ。各主人公は、この倉庫から『保存食』を1個ずつ持ち出してもよい。  これは1食分の『食料』として扱われ、装備品欄を占めることはない。使用しなければ、別の冒険に引き継いで所持することができる。  奥にある樽から微かな物音が聞こえる。中を確認するとシェフのラズが隠れていた。アンデッドに見つからないように身を潜めていたのだ。  ラズは「要救助者」として扱われる。 ------------------------------------------------------------ ○出目14 〈酒蔵(Wine cellar)〉  この地下室は、特産品である『モフージャワイン』を保管している酒蔵だ。  まだ瓶が割れていない『モフージャワイン』を1個見つける。望むなら、これを持っていってもよい。  〈モフージャワイン〉  この大瓶にはモフージャ特産のワインが入っており、【善の種族】【悪の種族】【少数種族】【人間型】のクリーチャーに対して使用できる。その量は1d6回分(下限は3回分)である。  相手が金貨での【ワイロ】を要求したさい、それが〈弱いクリーチャー〉なら、ワインを1回分消費するごとに、クリーチャー1人分のワイロを無視していい。  また金貨を要求したのが〈強いクリーチャー〉なら、ワインを1回分消費するごとに、必要な金貨を5枚ずつ減らしてよい。  ただし【友情】の魔法によるワイロの金額を減らす効果と併用することはできない。  酒蔵では、バーテンダーのジャンが避難している。  もし、これが3回目の冒険だった場合、ジャンはアンデッドから受けた負傷が元で死んでいるため、救助することができない。そうでなければ、ジャンは「要救助者」として扱われる。 {斜線} 「ここを離れる前に、ひとつだけやっておかねばならないことがある」  襲撃によって負傷したジャンは、君に身体を支えてもらいながら、酒蔵の扉を施錠する。そして扉の表面に手をあてがうと、寝かせた酒に語りかけるように言った。 「……今しばらくの別れだ、友よ。ここには必ず戻ってくる」 {/斜線} ------------------------------------------------------------ ○出目15 〈礼拝堂(Chapel)〉  崩れかけた礼拝堂を調べたとき、『悪霊退散の札』1個を見つける。望むなら、これを持っていってもよい。  〈悪霊退散の札(Amulet of Exorcise Evil-Spirits)〉  戦闘で【アンデッド】のタグを持つクリーチャー1体を対象にし、技量点0の【魔術ロール】を行う。判定に成功したなら、対象の生命点に1点のダメージを与える。『悪霊退散の札』を使用するさい、1ラウンドの行動を消費する必要はない。  また、戦闘以外の場面においては、1体のキャラクターの【呪い】を解除することができる。『悪霊退散の札』は、1回だけ使用することができる。  もし、これが3回目の冒険だった場合、この場所にセエラ伯爵夫人がいる。  官能的な印象のする女性である。彼女は床に両膝をつき、目を閉じたまま、懸命に祈りの言葉を呟いている。セエラは「要救助者」として扱われる。 ------------------------------------------------------------ ○出目16 〈地下祭壇(Crypt)〉  床が崩れた箇所から、古い地下祭壇が見える。祭壇の上には『祭祀の鎌』が突き刺さっている。望むなら、これを持っていってもよい。 〈祭祀の鎌(Sickle of Ritual)〉   この禍々しい装飾が施された鎌は、戦闘用として作られているため、【斬撃】の特性を持つ「魔法の片手武器」として扱われる。各戦闘において、接近戦での最初の【攻撃ロール】に+1の修正を得る。【アンデッド】のタグを持つクリーチャーに対して攻撃を行うさい、装備者は【攻撃ロール】に+1の修正を得る。  この場所には、ドワーフの少女キャナルが隠れている。アンデッドから逃げる途中、客室に大切なヌイグルミを置き忘れたので、母親のローダがそれを取りに行ったと言う。キャナルは、母親から「戻るまで、ここに隠れていて」と言いつけられたので、主人公に同行しようとしない。少女を説得する場合は、主人公で【幸運ロール】を行う(目標値:6)。これは【交渉】である。もし、ここで「奏楽」に属する特殊技能を行使するか、またはローダを救助しているなら、この判定は自動的に成功する。判定に成功したなら、キャナルは「要救助者」として扱われる。  判定に失敗したなら、彼女はこの場所から動こうとしない。強引に「要救助者」として外に連れ出すこともできるが、そのときは大声で母親に呼びかけるため、次に振るd66の十の位は、1d2+4で決定される。その結果に対して【察知】の技能を行使することはできない。 {斜線} 「お母さんが戻ってくるまで、ここで静かに隠れているって約束したの! お母さんは必ず戻ってくるわ。そのときに私がいなくなったら、また心配かけちゃう!」  ここにいるのは危険だ、と君は辛抱強く説得するが、キャナルはテコでも動こうとしない。 {/斜線} ------------------------------------------------------------ ◇出目21 〈受付嬢ステラ('Stella' the Receptionist)〉 出現数:1  レベル:2  宝物:なし ≪反応表≫ 1-5【情報】 6【友好的】  このクリーチャーは【善の種族】【人間型】に属する。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  もし、これが2回目以降の冒険だった場合、ステラはアンデッドに殺されているため、救助することができない。そうでなければ、ステラは「要救助者」として扱われる。  ステラが生存しているときに限り、彼女の反応表を振ること。もし、結果が【情報】だった場合、彼女はアンデッドから逃げるさい、施設内と地下遺跡をどのように通ったのかを教えてくれるため、『手がかり』を1個入手する。 {斜線} 「明日、自分がどうなっているかなんて考えるだけ無駄でしょ。そんなことで悩んでいたら、まったく仕事に手がつかないじゃない。今はただ、何事もなくベテルギウスがグランドオープンできるようにベストを尽くせばいいの。この話は、これでおしまい」  −事件の前日、ステラが同僚のアーノルドに伝えた言葉− {/斜線} ------------------------------------------------------------ ◇出目22 〈ローダ夫人('Mrs.Rauda' the Dwarf Civilian)〉 出現数:1  レベル:2  宝物:なし ≪反応表≫ 1-6【友好的】  このクリーチャーは【善の種族】【人間型】に属する。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  もし、これが3回目の冒険だった場合、このドワーフの女性はアンデッドに殺されているため、救助することができない。そうでなければ、ローダは「要救助者」として扱われる。このとき、まだ出目16の〈できごと〉が登場していないなら、次に振るd66の結果は、出目16〈地下祭壇〉を選ぶことができる。この場合、「隠された場所」を見つけるための【器用ロール】は自動的に成功する。 {斜線}  ローダ夫人は、ヌイグルミを大切そうに両腕で抱えていた。君たちの姿を見て、安堵の表情を浮かべるが、すぐに心配そうな様子に変わる。 「これはあの子の……娘の宝物なの。逃げるときに客室に置き忘れてしまって、それを取りに行ったんだけど、今思えば、あの子も一緒に連れて来るべきだったわ……」 {/斜線} ------------------------------------------------------------ ◇出目23 〈フージャくん('Fuja' the Mascot Golem)〉 出現数:1  レベル:2  宝物:なし ≪反応表≫ 1-6【破損】(後述を参照)  このクリーチャーは【ゴーレム】に属する。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  温泉施設ベテルギウスのマスコットである〈フージャくん〉は、半壊した状態で床に転がっている。  もし、主人公の職業が【からくり術師】なら、修理を試みてもよい。その場合は【魔術ロール】を行うこと(目標値:4)。判定に失敗するか、主人公が【からくり術師】以外の職業(または種族)の場合は、修理のしようがないため、壊れかけの小型ゴーレムを施設の外へと運び、この〈できごと〉は終了する。  判定に成功したなら、このゴーレムは再起動する。〈フージャくん〉は【ゴーレム】のタグを持つ「戦わない従者(技量点0、生命点1)として扱われる。また、〈ランタン持ち〉と〈斥候〉の特殊能力を行使することができる。同行させるには、従者点を1点必要とする。〈フージャくん〉は、『ベテルギウスの残光』のシナリオが終わるまでの間、パーティに同行する。 {斜線}  もふもふ龍を子犬サイズにしたような〈フージャくん〉は、横倒しの状態になったまま、両目の探照灯を繰り返し明滅させている。高性能のゴーレムのように会話を交わすことはできないが、まるで誰かに助けを求めているかのようだ。 {/斜線} ------------------------------------------------------------ ◇出目24 〈クレイド神父('Clade' the Cleric)〉 出現数:1  レベル:4  宝物:なし ≪反応表≫ 1-3【友好的】 4-6【中立】  このクリーチャーは【善の種族】【人間型】に属する。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  反応表の結果が【友好的】だった場合、この場において〈クレイド神父〉は【祝福】の奇跡を1回だけ行使してくれる。クレイドは「要救助者」として扱われる。 {斜線} 「この施設は地獄のようになってしまった。多くの人がクリーチャーに殺されていくのを目撃した。ああ、エスパダ神よ、無力な私を鞭打ちたまえ! ……それよりも、私の他にも、襲撃から生き延びた人はいるのでしょうか?」  クレイド神父は、君に保護してもらったことよりも、まだ施設に取り残された人たちのことを気にかけていた。 {/斜線} ------------------------------------------------------------ ◇出目25 〈怯えた作業員(Frightened Workmen)〉 出現数:2  レベル:3  宝物:なし ≪反応表≫ 1-4【友好的】 5-6【敵対的】  このクリーチャーは【善の種族】【人間型】に属する。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  反応表の結果が【敵対的】だった場合、各ラウンドで主人公側の行動を放棄する代わりに、作業員の説得を試みてもよい。そうするなら、主人公1人が代表して【幸運ロール】を行う(目標値:3)。これは【交渉】である。判定に成功したなら、作業員の反応は【友好的】に置き換わり、戦闘は終了する。失敗したなら、戦闘を継続すること。  反応表の結果が【友好的】だった場合、このコビットの兄弟は、主人公が助けに来たことに感謝を述べる。ボナンザとリオネーゼは「要救助者」として扱われる。 {斜線}  工具を手にした2人のコビットの作業員はパニックに陥っているらしく、薄暗闇の中にいる君たちのことを、アンデッドだと勘違いしているようだ。 {/斜線} ------------------------------------------------------------ ◇出目26 〈ノームの技師ナグガン('Nagugan' the Gnome Artificer)〉 出現数:1  レベル:5  宝物:なし ≪反応表≫ 1-4【情報】 5-6【友好的】  このクリーチャーは【善の種族】【人間型】に属する。  このクリーチャーの攻撃特性は【雷】である。  周囲の様子を警戒しながら、小走りで移動するノームの技師ナグガンと顔を合わせる。救援が来たことに、彼は安堵しているようだ。ナグガンは「要救助者」として扱われる。  ただちに反応表を振り、その結果が【情報】だった場合は、彼は地下遺跡の構造について、知っている限りのことを教えてくれるため、『手がかり』を1個入手してよい。 {斜線} 「床の亀裂から地下に滑り落ちたとき、納骨堂みたいな感じの広間を目にしたんだ。この施設を建てる前に、何かヤバいものが封印されていたんじゃないのか?」  様々な部品が詰め込まれた工匠カバンを背負ったノームは、ゴーグルについた泥を指で拭いながら、自分が見たものを語る。 {/斜線} ------------------------------------------------------------ □出目31 〈救護室(Medical Office)〉  この部屋は、施設の救護室だ。休憩をとることで、各キャラクターは生命点1点回復させてよい。  また、薬棚から『聖水』1個を見つける。望むなら、これを持っていくことができる。  薬棚の脇に隠れるように、エルフの医師カーマインがいる。  相手がアンデッドの襲撃者ではないことが分かり、彼は安堵する。カーマインは「要救助者」として扱われる。 {斜線} 「仕事道具を自衛の武器にしちゃいけないことぐらい分かっているさ。しかし……こちらはそういう状況じゃなかった」  君が救助に来た勇士だと分かると、エルフの医師は手に持っていた執刀用のメスを下ろし、安堵のため息をつく。 {/斜線} ------------------------------------------------------------ □出目32 〈鹿の湯(Fluffy Beast in Hot Spring)〉  この場所は、露天風呂が設置されている。温泉施設の崩れた外壁から入り込んだのか、毛むくじゃらの〈もふもふカピバラ〉が湯船に浸かって、くつろいでいる。今回の事件が解決されたら、落ち着いて眺めることができるだろう。  幸せそうな光景に心が安らいだので、各キャラクターは副能力値を1点回復させてよい。  もし、これが2回目以降の冒険だった場合、岩場の陰に従業員のマイルズがいる。  アンデッドから逃げてきたばかりで、ぜえぜえと喘いでいる。マイルズは「要救助者」として扱われる。 ------------------------------------------------------------ □出目33 〈あふれる水流(Overflow Water)〉  ここは「薄暗い場所」である。  断裂した配管から水が噴出している。固い配管のバルブを締めなければ、他の場所も水浸しになってしまう。  各主人公は【筋力ロール】を行うこと(目標値:5)。従者に〈荷物持ち〉がいれば、その人数だけ判定にプラスの修正が得られる。また、魔術の【氷槍】を行使することで、この判定は自動的に成功する。  成功したなら、無事に水流を止めることができた。改めて部屋を調べたさいに、誰かが落としたアクセサリ(金貨10枚の価値)を拾い、この〈できごと〉は終了する。失敗したなら、水流は止めようがない。この場合は、d66を振り、十の位を1d3で求めること。その結果はめくったマップタイルに含まれず、すでに登場した〈できごと〉としてd66表にチェックを記さなければならない。  主人公が水流を止めることに成功したときに限り、肉食キューブのモチョチョを発見する。  アンデッドが怖くて、水があふれ出たこの場所に身を潜めていたようだ。モチョチョは「要救助者」として扱われる。 {斜体} 『ボク、助かるの? ここから出られるの?』  不安に満ちた少年の声が、君の頭の中に響いてくる。君は穏やかに微笑むと、「もう大丈夫だよ」と声をかけながら、彼のゼリー状の身体を優しく撫でた。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ □出目34 〈展示室(Exhibition Room)〉  この展示室では、豪華な装飾が施された金管楽器が展示されている。天井の一部が崩れたことでケースは破損しているが、その中に収められた楽器は無事だ。望むなら、この『魅惑のトランペット』を持っていくこともできる。  楽器を持っていく場合は、それを手にした主人公で【対魔法ロール】を行うこと(目標値:5)。判定に成功したなら、特に何も起きない。判定に失敗したなら、急に楽器を手放すのが惜しくなる。手に武器を持っているなら、それを外してでも両手に持ち続けなければならない。これは【呪い】の状態に近く、【祝福】の奇跡を行使すればペナルティは解除されるが、そうでなければ今回の冒険が終わるまでペナルティは持続する。  〈魅惑のトランペット〉(Trumpet of Fascination)   これは両手で扱う武器であり、【攻撃ロール】の修正はない。攻撃特性は【打撃】である。  【吟遊詩人】の主人公が身につけているときに限り、【奏楽:パストゥレル】の特殊技能は、【動物】のタグを持つクリーチャーに対しても効果を発揮する。  この楽器は、金貨40枚で売却することができる。  また、破壊された数多くのアンデッドの中に、金属製の翼を持つエルフの女性が仰向けで倒れている。片腕の肘から先がない。よく見ればエルフ型のゴーレムで、アンデッドとの戦いで損傷を受けたことで、一時的に機能停止していたらしい。  リコチェットは「要救助者」として扱われる。 {斜体} 「私の武装はモフージャの役所に預けています。それを携行していれば、何人かの命を守ることができました。……いえ、武装がなかったとしても、それだけの結果は出せたはずです」  片腕が破損したゴーレムは涙を流すことはない。彼女の言葉は淡々としているが、そこから自分の無力さに対する憤りが感じられた。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ □出目35 〈保管室(Storage Room)〉  ガレキが散乱する保管室では、どこから温泉施設に入り込んだのか、1体の巨大な〈もふもふ羊〉が眠っている。ふかふかした体毛を見れば、そこに引っ掛かった小型の金庫が見え隠れしている。近寄らないのであれば、この〈できごと〉は終了する。  金庫を取りたいなら、キャラクター1人が代表して【器用ロール】を行うこと(目標値:5)。従者に〈荷物持ち〉がいれば、その人数だけ判定にプラスの修正が得られる。また、判定を行うキャラクターの職業が【吟遊詩人】であれば、いずれかの【奏楽】を行使することで、この判定は自動的に成功する。  成功したなら、金庫の中身を取り出せるので、サイコロの出目に+1の修正で【宝物表】を1回振ってよい。失敗したなら、寝返りをうった〈もふもふ羊〉の下敷きになってしまうので、対象のキャラクターの生命点を2点減らさなければならない。 ------------------------------------------------------------ □出目36 〈古代の祠(Ancient Shrine)〉  古い祠が築かれた場所に出る。死神ベルドゥーを祀っていたらしく、コケの生えた荒削りの岩壁を見れば、元から温泉施設に設置したものではなさそうだ。  死神への供物として、金貨5枚以上の価値を持つ装備品ひとつと、主人公の生命点2点を消費してもよい(主人公2人なら、生命点の消費をそれぞれ1点ずつに分配してもよい)。そうするなら、キャラクターが持っている武器ひとつを対象に、ベルドゥーの祝福を授かる。ベルドゥーの祝福を受けた武器は、【アンデッド】のタグを持つクリーチャーに対する【攻撃ロール】に+1の修正を得る。この効果は、3回目の冒険が終わるまで持続する。  もし、主人公が【アンデッド】のタグを持っている場合、死神ベルドゥーが祝福を授けることはない。 ------------------------------------------------------------ ■出目41 〈崩落に巻き込まれた人(Buried Survivor)〉 難易度:5  対象:主人公  ここは「薄暗い場所」である。  ガレキの山の中から男の呻き声が聞こえた。よく見れば、ガレキから人間の手が突き出ている。どのような理由であれ、関わるつもりがなければ、この〈できごと〉は終了する。  救出するつもりなら、主人公で【筋力ロール】を行うこと(目標値:5)。従者に〈荷物持ち〉がいれば、その人数だけ判定にプラスの修正が得られる。成功したなら、男性の上半身が見えるぐらいまでガレキをどかすことができる。彼は商業組合のハウザーと名乗り、主人公にロケットを手渡すが、直後に大きな破片が落下して、完全に生き埋めになる。ハウザーはもう助からない。ロケットの蓋を開くと、そこには幸せそうな夫婦の肖像画が描かれている。  判定に成功した者が1人もいなければ、天井から降ったガレキが直撃するため、対象の生命点を2点減らさなければならない(主人公2人なら、どちらか1人を選ぶこと)。この場合も、ハウザーは生き埋めになり、救助することはできない。  もし、判定を行う前に『魔法のつるはし』か、岩を掘るための手段(装備品や特殊技能など)を使った場合は、天井が崩落する前に、商業組合の幹部ハウザーを救出することができる。ハウザーは「要救助者」として扱われる。 {斜体} 「……これを妻のマリーシアに渡して欲しい。彼女には、私が『愛している』と言ったことを伝えてくれ……」  ハウザーは胴着のポケットからロケットを取り出すと、それを震える手で君に手渡した。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ■出目42 〈熱湯噴出(Hydrothermal Vent)〉 難易度:5  対象:ランダムで2人のキャラクター  前触れもなく、床の亀裂から熱湯が噴き出した。  対象のキャラクターは【防御ロール】を行うこと(目標値:5)。成功したなら、熱湯の直撃を避けることができたので、被害は受けない。失敗したなら、熱湯を浴びたことで火傷を負うため、対象の生命点を1点減らさなければならない。ただし、このトラップに対しては、【かばう】【騎馬防御】【地龍の守り】などの「主人公が従者を守る」特殊技能を1回だけ行使できる(目標値:5)。 ------------------------------------------------------------ ■出目43 (岩盤崩落(Collapse Bedrock)〉 難易度:4  対象:〈弱いクリーチャー〉の従者1人  ここは「薄暗い場所」である。  突然、足元の岩盤が崩れ始める。対象のキャラクターは【幸運ロール】を行うこと(目標値:4)。該当する従者がいなければ、主人公1人が対象となる。ただし、ここで『ロープ』を使用すれば、判定に+1の修正が得られる。成功したなら、これによる被害を受けることはない。さらに崩れた場所に、カマキリとそれを崇める人々の壁画が刻まれているのが見えた。『手がかり』を1個入手する。判定に失敗したなら、対象のキャラクターは、生命点を2点減らさなければならない。 ------------------------------------------------------------ ■出目44 〈オイルまみれの床(Oily Floor)〉 難易度:4  対象:ランダムで3人のキャラクター  リラクゼーション室は、施設の崩壊の影響を受けていた。棚から多くのオイルが落ちたことで、床は油まみれになっている。  対象のキャラクターは、【器用ロール】を行うこと(目標値:4)。ここで『ロープ』を使用すれば、誰か1人でも判定に成功した場合は、対象全員が成功したものとして扱ってよい。判定に成功したなら、その場に踏みとどまることができたので、被害を受けることはない。失敗したなら、オイルで滑ったことで転倒するため、対象のキャラクターの生命点を1点減らさなければならない。もし、失敗したキャラクターがランタンや松明などを持っていた場合、オイルに火が燃え移って火傷するため、さらに生命点に1d2点の追加ダメージを受けなければならない。 ------------------------------------------------------------ ■出目45 〈消えていく声(Vanishing Voice)〉 難易度:6  対象:主人公  離れた場所から、生存者が助けを求める声が聞こえたような気がした。  主人公1人が代表して【幸運ロール】を行うこと(目標値:6)。もし、ここで「奏楽」に属する特殊技能を行使した場合は、この判定は自動的に成功する。判定に成功したなら、次にd66を振るさい、十の位を2として扱ってもよい。判定に失敗したなら、ただちにd66を振り、十の位は2が出たものとして扱うこと。もし、出目26が重複していた場合は、次に出目21を参照する。その〈できごと〉は、すでに登場したものとしてd66表にチェックを記すこと。ただし、出目20番台がすべて登場していた場合は、何も起きない。 {斜体}  誰かが助けを求める声は、次第に弱々しくなっていき、ついには完全に聞こえなくなった。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ■出目46 〈骨のスパイク(Bone Spike)〉 難易度:3  対象:戦闘に参加できるキャラクターすべて  ここは「薄暗い場所」である。  湿った空気が漂う部屋の中央に、死神ベルドゥーに供物を捧げるための祭壇が鎮座している。少し部屋に踏み込んだとき、周囲の暗がりから、先端を尖らせた骨製のスパイクが発射される。  対象のキャラクターは【器用ロール】を行うこと(目標値:3)。ただし、ここで『手がかり』を1個消費した場合は、対象全員が成功したものとして扱ってよい。判定に成功したなら、スパイクを避けられるので、被害は受けない。失敗したなら、スパイクに身体を貫かれるため、対象の生命点を1点減らさなければならない。ただし、このトラップに対しては、【かばう】【騎馬防御】【地龍の守り】などの「主人公が従者を守る」特殊技能を1回だけ行使できる(目標値:3)。 {斜体}  骨製のスパイクは、君の身体をかすめていくと、向い側の壁にぶつかって砕け散る。トラップに用いられた仕掛けは真新しく、君のような勇士が祭壇に近付くことを想定して、誰かが悪意をもって設置したに違いない。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◇出目51 〈見捨てられた遺体(Abandoned Bodies〉) 出現数:2d6+3(下限は10体)  レベル:2  宝物:なし ≪反応表≫ 1-6【死亡している】(後述を参照)  このクリーチャーは【善の種族】【人間型】である。  このクリーチャーは攻撃を行わない。  この〈できごと〉が登場したさい、【察知】や【逃走】を行うことはできない。  アンデッドに殺された者たちの遺体の回収をする。これは戦闘ではないが、戦闘の手順で処理をする。主人公たちは〈見捨てられた遺体〉を施設の外まで運ばなければならない。通常の戦闘と手順は似ているが、武器や特殊技能は使用できない。また、第1ラウンドから開始する。  キャラクターは攻撃の代わりに【筋力ロール】を行う(目標値はこのクリーチャーのレベルに等しい)。クリティカルが発生した場合は、サイコロをもう一度振って、達成値に加えること。もし、〈荷物持ち〉が同行しているなら、その人数だけ主人公1人の【筋力ロール】にプラスの修正が得られる。判定に成功すれば、1体の遺体を倒した(外に運んだ)ことになる。判定の達成値が〈見捨てられた遺体〉のレベルを2点上回るごとに、さらに1体の遺体を運んだことになる。  〈見捨てられた遺体〉は攻撃を行わないが、各ラウンドが終了するたびに、主人公は副能力値を1点減らさなければならない。もし、このとき副能力値を持っていない(または0点の状態)であれば、対象の主人公は気が滅入ってしまうので、今回の冒険が終わるまでの間、あらゆる【判定ロール】に-1の修正を得てしまう(このペナルティは重複しない)。なお、【アンデッド】【兵器】【建造物】いずれかのタグを持つキャラクターは、これによる【判定ロール】のペナルティを受けることはない。 {斜体}  君が施設の中を移動するさい、従業員や招待客の死体をいくつも目にすることになった。彼らも、自分の家族の元に帰りたいことだろう。君は死体のひとつを肩に担ぐと、施設のエントランスホールを目指す。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◇出目52 〈ゾンビ・ウォリアー(Zombie Warriors)〉 出現数:1d6+1  レベル:3 宝物:なし ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【アンデッド】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  各ラウンドで、このクリーチャーを1体でも倒した場合は、そのラウンドの終了時に、主人公1人が代表して【幸運ロール】を行うこと(目標値:2)。判定に成功したなら、何も起きない。失敗したなら、倒した〈ゾンビ・ウォリアー〉は2体復活し、ふたたび戦闘に参加する(ただし、敵の頭数は、最初に決めた出現数を越えることはない)。なお、主人公側が敵をすべて倒した場合は、この判定を行う必要はない。  このクリーチャーに対して【奏楽:プラーニュ】が成功しているなら、主人公側の行動が終わった後、〈ゾンビ・ウォリアー〉を通常の1体ではなく、2体倒すことができる。 {斜体}  ゾンビたちが着ている衣服は、すっかり退色して、あちこちが裂けているが、どれも僧侶の法衣のような面影がある。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◇出目53 〈もふもふ野犬(Fluffy Dogs)〉 出現数:1d6  レベル:4  宝物:後述 ≪反応表≫ 1-2【友好的】 3-5【ワイロ】(2体につき1食分の食料) 6【敵対的】  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【動物】に属する。  このクリーチャーの攻撃特性は【斬撃】である。  反応表の結果が【友好的】か、または〈もふもふ野犬〉との戦闘に勝利した場合、床に散乱している『もふもふの毛玉』を1個拾うことができる。この毛玉は金貨10枚の価値を持っている。 {斜線}  どこから施設に入り込んだのか、もふもふの毛に覆われた野犬の群れが、食堂の机に置かれたままの料理をガツガツと貪っている。食事を横取りされたくないと思ったのか、君に視線を向けると、威嚇するように唸り声をあげる。 {/斜線} ------------------------------------------------------------ ◇出目54 〈納骨グモ(Crypt Spider)〉 出現数:1d6+2  レベル:3 宝物:なし ≪反応表≫ 1-3【ワイロ】(2食分の食料) 4-6【敵対的】  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【虫類】に属する。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘の各ラウンドにおいて、〈納骨グモ〉の攻撃数は7回を上限とする。  このクリーチャーに遭遇したさい、主人公は【器用ロール】を行うこと(目標値:4)。判定に成功したなら、通常どおりに戦うか反応表を振るかを選ぶことができる。失敗したなら、敵の「不意打ち」を受けてしまうため、戦闘は第1ラウンドから開始され、敵側が先に攻撃を行う。  このクリーチャーに対する【防御ロール】に失敗したキャラクターは、ただちに【筋力ロール】を行うこと(目標値はクリーチャーのレベル+2に等しい)。ただし、【ゴーレム】【建造物】【兵器】いずれかのタグを持っている者は、この判定は自動的に成功する。判定に成功すれば、その攻撃は通常どおりのダメージしか与えない。判定に失敗したなら、【麻痺】の状態異常を受けてしまうため、あらゆる【判定ロール】に-1の修正を得てしまう(効果は重複しない)。このペナルティは、今回の冒険が終わるか、または1食分の食料を消費する(生命点は通常のように回復する)ことによって回復する。  もし、主人公が『ハチコロリ』を使用した場合、このクモは香木を焚いた煙を嫌がって【逃走】するため、戦闘に勝利したことになる。 {斜線}  薄暗い廊下を進んでいるとき、なにか粘着性のある糸が顔に張り付いたと思った瞬間、天井の暗がりから大グモが襲いかかってきた。胴体と肢に白い縞模様を持つ〈納骨グモ〉……こいつは殺人バチのような攻撃性の高さでよく知られている! {/斜線} ------------------------------------------------------------ ◇出目55 〈大モウセンゴケ(Giant Sundew)〉 出現数:1d3+2  レベル:5  宝物:なし ≪反応表≫ 1【無視】(※逃走と同様) 2-4【ワイロ】(2食分の食料) 5-6【敵対的】  このクリーチャーは【植物】に属する。  このクリーチャーは【酸】の攻撃特性を持つ。  このクリーチャーは火を恐れるため、【炎】の特性を持つ攻撃を行ったさい、【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  【斬撃】の特性を持つ接近戦武器で攻撃を行った場合は、植物の茎を切り裂けるため、【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  各キャラクターが接近戦攻撃を行うさい、【攻撃ロール】でファンブルが発生した場合は、粘着性のある葉に武器がくっついてしまうため、戦闘に勝利するまでの間、その武器を使用することはできなくなってしまう(予備の武器を準備する場合は、パーティに〈太刀持ち〉が同行していなければ、1ラウンドの行動を消費する必要がある)。なお、この特殊能力の対象となるのは、装備品としての武器を扱えるキャラクター(主人公、人間型の相棒、ホムンクルスなど)である。 {斜体}  施設内で崩落が起きたことで、他の部屋にも龍脈の成分を含んだ温泉が流れ込んでいる。  始末が悪いことに、観賞植物の中にまぎれ込んでいたであろう食虫植物が、温泉を浴びて巨大化したようだ。〈大モウセンゴケ〉は粘液まみれの葉を振り回しながら、餌になりそうなものを探し回っていた。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◇出目56 〈施設内の火災(Fire in Facility)〉 出現数:1d3+1  レベル:7  宝物:なし ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】(後述を参照)  このクリーチャーは【建造物】である。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーの攻撃特性は【炎】である。  このクリーチャーは、【斬撃】【打撃】【炎】いずれかの特性を持つ攻撃を無効化する。  もし、この〈できごと〉に【水場】がある場合は、〈施設内の火災〉のレベルを3減らしてよい。  各キャラクターは、通常の攻撃を行う代わりに、消火用の道具として施設に備え付けられた『水龍筒』を使用してもよい。ただし、この場所にある『水龍筒』は3人分である。これは【水】の攻撃特性を持つ接近戦の武器で、現在持っている装備品と交換することなく使用できる(同行している「戦う従者」に使わせてもよい)。なお『水龍筒』は、この〈できごと〉でのみ使用可能である。  各キャラクターが【氷】または【水】の特性を持つ攻撃を行ったさい、そのときの【判定ロール】でクリティカルが発生した場合は、連続攻撃を行う代わりに〈施設内の火災〉のレベルを1減らしてもよい。  〈施設内の火災〉を消火した(すべて倒した)場合、この場所を経由することで移動が楽になるため、『手がかり』1個を入手する。 {斜体}  この部屋では、炎がごうごうと燃え盛っている。崩落の影響をまともに受けたらしく、火災時に作動する消火からくりが損傷しており、本来の半分ぐらいの性能しか発揮していない。君は廊下に備え付けられた『水龍筒』を手に取ると、従者たちとともに消火活動にあたる。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◆出目61 〈灰衣の僧侶(Gray Robed Cleric)〉 レベル:4  生命点:4  攻撃数:2  宝物:通常 ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【アンデッド】【人間型】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  このクリーチャーは鎖鎧を着用しているため、【斬撃】の特性を持った攻撃を行うさい、【攻撃ロール】に-1の修正を得てしまう。  戦闘の第0ラウンドでは、〈灰衣の司祭〉は【防衛】の奇跡を行使する。第1ラウンド以降では、各キャラクターは【攻撃ロール】に-1の修正を得てしまう。  もし、パーティに【アンデッド】のタグを持つ者がいる場合、それに該当するキャラクター1体に対して、〈灰衣の司祭〉は自らの生命点を1点減らしてから、【招天】の奇跡を行使する。これは1回分の攻撃として扱われる。攻撃特性は【光】である。【招天】による攻撃を受けた者は【対魔法ロール】を2回行うこと(目標値はクリーチャーのレベル+2)。判定に失敗するたびに、対象の生命点を1点減らさなければならない。  〈灰衣の僧侶〉に勝利した場合、『手がかり』を1個入手する。 {斜体}  刺繍が施された、灰色のローブを着た僧侶のアンデッドが立ち塞がる。得体の知れない僧侶が、生前と変わらぬ祈りの言葉を詠唱すると、君が従者として同行させていたスケルトンが木っ端微塵に砕け散った。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◆出目62 〈古代のスケルトン戦士(Ancient Skeleton Warrior)〉 レベル:5  生命点:5  攻撃数:1  宝物:修正+1 ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【アンデッド】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  【斬撃】の特性を持つ「飛び道具」で攻撃した場合は、硬い骨には効果が薄いので【攻撃ロール】に-1の修正を得てしまう。  【打撃】の特性を持った「接近戦の武器」で攻撃した場合は、【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  接近戦武器による【攻撃ロール】でファンブルが発生した場合、このクリーチャーは即座にカウンター攻撃を行うため、ファンブルを出したキャラクターは生命点を1点減らさなければならない。  このクリーチャーに対して【奏楽:プラーニュ】が成功しているなら、主人公側の行動が終わった後、〈古代のスケルトン戦士〉の生命点に与えるダメージは2点になる。  〈古代のスケルトン戦士〉に勝利した場合、『手がかり』を1個入手する。 {斜体}  ひどく傷んだ革鎧を身に付けたスケルトンは、君の姿を見るなり、装飾が施された大鎌を構えた。その刃は錆びついているが、すぐには攻撃を仕掛けず、こちらの出方をうかがっている。生前は腕に覚えのある戦士だったのかも知れない。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◆出目63 〈暴走楽器ゴーレム(Run-Wildly Instrument Golem)〉 レベル:4  生命点:8  攻撃数:2  宝物:通常 ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【ゴーレム】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  このクリーチャーは、「楽器」の類を持っているキャラクターを優先的な攻撃対象に選ぶ。  このクリーチャーは、自壊しながら戦闘を継続するため、第1ラウンド以降から各ラウンドが終了するたびに、〈暴走楽器ゴーレム〉の生命点が1点減少する。  主人公が「奏楽」に属する特殊技能を行使した場合は、【幸運ロール】を行うこと(目標値はクリーチャーのレベルに等しい)。判定に成功したなら、そのときの「奏楽」を行使し続けている限り、各ラウンドが終わるたびに、〈暴走楽器ゴーレム〉の攻撃数は1減少する(攻撃数が0回以下になった場合は、相手の反応は【友好的】に置き換わるため、戦闘は終了する。ただし、倒したわけではないので【宝物表】を振ることはできない)。 {斜体}  温泉施設の劇場にいたゴーレムが暴走している。様々な楽器を組み合わせて作られた〈楽器ゴーレム〉だ。アンデッドから身を守るためか、見境なく暴れ回っており、その行為で自らの機体が破損していくことにも気付いていないらしい。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◆出目64 〈ガレキの壁(Rabble Wall)〉 レベル:3  生命点:8  攻撃数:3(後述)  宝物:通常 ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【建造物】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  このクリーチャーは、スリング、弓矢、石弓による攻撃を無効化する。  この〈できごと〉が登場したさい、【逃走】を行うことはできない。  このクリーチャーの攻撃は、「戦わない従者」も含める3体のキャラクターに対して、それぞれ1回ずつ割り当てられる。攻撃が余った場合は、主人公に割り当てること。  【打撃】の特性を持つ接近戦武器による【攻撃ロール】に成功した場合、そのキャラクターが敵の生命点に与えるダメージの合計は、通常よりも1点大きくなる。    もし、『魔法のつるはし』か、岩を掘るための手段(装備品や特殊技能など)を使った場合は、自動的に戦闘に勝利したことになる。 {斜体}  近くで連続的な崩落が発生したらしく、君たちのいる区画が大きく揺れた。ガレキが降り注ぎ、進路が塞がれたことによって、現在地から移動できなくなる。早くガレキを取り除かなければ……君が焦っている間も、天井から破損した建材の破片がパラパラと落ちている。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◆出目65 〈レイス(Wraith)〉 レベル:5  生命点:6  攻撃数:後述  宝物:修正+1 ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【アンデッド】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーは呪文以外の攻撃手段を持たない。  このクリーチャーは主人公1人、または「戦う従者」のグループひとつのどちらかを攻撃する。  攻撃対象に主人公を選んだ場合、〈レイス〉は【氷槍】の魔術を行使する。これは【氷】の攻撃特性を持つ。対象の主人公は【対魔法ロール】を行うこと(目標値:5)。失敗した場合は、生命点を2点減らさなければならない。  攻撃対象に「戦う従者」を選んだ場合、〈レイス〉は【炎球】の魔術を行使する(対象グループはプレイヤーが選ぶことができる)。これは【炎】の攻撃特性を持つ。この場合、攻撃対象となった「戦う従者」1体が代表して【対魔法ロール】を行うこと(目標値:5)。判定に成功した場合は、魔術による被害は受けない。判定に失敗した場合は、達成値が4であれば1体、2から3であれば最大2体、1以下またはファンブルであれば最大3体の従者が、生命点を1点減らさなければならない。  〈レイス〉に勝利した場合、『手がかり』を1個入手する。 {斜体}  黒い霧が立ち込めたかと思うと、それがひとつの場所に集まり、ローブを身にまとった魔術師の形をとる。もっと正確に言えば、人の影にも似た「なにか」だ。そいつが低い声で詠唱すると、目の前に魔力の光が収束していく。こいつは憎悪の念だけで動く〈レイス〉だ。敵の正体を察した直後、君が身構えるよりも早く、影の手から炎球が放たれた。 {/斜体} ------------------------------------------------------------ ◆出目66 〈もふもふ龍のミイラ(Fluffy Dragon Mummy)〉 〈もふもふ龍〉 レベル:6  生命点:10  攻撃数:1  宝物:修正+2 ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【巨大生物】【龍族】【アンデッド】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  このクリーチャーに対する【防御ロール】に失敗した場合、対象のキャラクターは生命点に2点のダメージを受ける。  このクリーチャーに【炎】の特性を持つ攻撃が命中した場合、敵の生命点に与えるダメージの合計は、通常よりも1点大きくなる。  主人公が「奏楽」に属する特殊技能を行使した場合は、【幸運ロール】を行うこと(目標値はクリーチャーのレベルに等しい)。判定に成功したなら、そのラウンドでの〈もふもふ龍のミイラ〉のレベルは2減少する。「奏楽」を継続している場合も、各ラウンドが開始されたさいに、この判定を行うこと。  もし、これが3回目の冒険だった場合、〈もふもふ龍のミイラ〉は息絶えているため、戦闘は発生しない(この場合、プレイヤーは【宝物表】を振ることはできない)。  その巨体のいたる所が、鋭利な刃によって引き裂かれている。つい最近に、何者かの手で討たれたようだ。 {斜体}  古びた石室の中で、もふもふの毛に覆われた龍のミイラが暴れ回っている。壁に巨体をぶつけるたびに、その衝撃で施設がぐらぐらと揺れる。施設が崩落した原因は分かったが、いったい誰が地下に龍を弔ったのだろうか? {/斜体} ---------------------------------------------------------------------------   ○宝物表(Treasure Table) ≪1d6で決定≫ --------------------------------------------------------------------------- 出目【1以下】 金貨1枚 出目【2】   1d6枚の金貨 出目【3】   2d6枚の金貨(下限は金貨5枚) 出目【4】   1個のアクセサリー(1d6×1d6枚の金貨と同等の価値) 出目【5】   1個の宝石・小(1d6×5枚の金貨と同等の価値。下限は金貨15枚の価値) 出目【6】   1個の宝石・大(2d6×5枚の金貨と同等の価値。下限は金貨30枚の価値) 出目【7以上】 【魔法の宝物表】でダイスロールを行う。   ●魔法の宝物表(Magic Treasure Table) ≪1d6で決定≫ 出目【1】 〈魔法の豚の貯金箱(Magical Piggy-Bank)〉 出目【2】 〈聖鳥の盾(Shield of Sacred Bird)〉 出目【3】 〈鎮魂のチェロ(Cello of Requiem)〉 出目【4】 〈聖棍(Sacred Mace)〉 出目【5】 〈司祭の魂(Bishop's Soul)〉 出目【6】 〈ミンストレル・ドール(Minstrel Doll)〉 ---------------------------------------------------------------------------------    23:●魔法の宝物表(Magic Treasure Table) ≪1d6で決定≫ --------------------------------------------------------------------------------- ●【1】 〈魔法の豚の貯金箱(Magical Piggy-Bank)〉  陶器でできた豚の貯金箱。  冒険の合間に1回だけ、望めば1d6を振った出目に等しい枚数の金貨を入手できる。ただし、そのときの出目が1だった場合、『魔法の豚の貯金箱』は砕け散ってしまう(装備品欄から消すこと)。 ------------------------------------------------------------ ●【2】 〈聖鳥の盾(Shield of Sacred Bird)〉  鳥の装飾が施された丸盾。この防具は「盾」として扱われる。  装備者は、生命点の最大値に+2の修正を得る。また、各戦闘で【アンデッド】のタグを持つクリーチャーから攻撃を受けたさい、装備者の生命点が3点以下の状態であれば、敵の攻撃に対する【防御ロール】に+1の修正を得る。 ------------------------------------------------------------ ●【3】 〈鎮魂のチェロ(Cello of Requiem)〉  『鎮魂のチェロ』は、追加ルールの職業【吟遊詩人】だけが装備できる「楽器」である。扱うには、両手を必要とする。  戦闘では【攻撃ロール】に修正のない武器として使用できる。攻撃特性は【斬撃】で、魔法がかけられた武器として機能する。  また、装備者が【奏楽:プラーニュ】が成功しているなら、主人公側の行動が終わった後、敵の生命点に与えるダメージは1点大きくなる(対象が〈弱いクリーチャー〉なら、追加で1体の敵を倒すことができる)。  これらのボーナスは、『鎮魂のチェロ』を装備しているときに限り、得ることができる。 ------------------------------------------------------------ ●【4】 〈聖棍(Sacred Mace)〉  これは「片手武器」として扱われる。攻撃特性は【打撃】である。  【アンデッド】のタグを持つクリーチャーに対して、装備者は【攻撃ロール】に+1の修正を得る。 ------------------------------------------------------------ ●【5】 〈司祭の魂(Bishop's Soul)〉  この小瓶には、司祭の魂が封印されている。  使用者は【魔術ロール】または【対魔法ロール】に+2の修正を得る。戦闘中では、1ラウンドの行動を消費することなく使用できる。  『司祭の魂』は、1回だけ使用可能である。 ------------------------------------------------------------ ●【6】 〈ミンストレル・ドール(Minstrel Doll)〉  〈ミンストレル・ドール〉は、主人の命令に忠実な魔法の人形であり、主人公の経験点を1点消費することによって起動する(起動してからは装備品欄から従者欄に移動する)。  これは【ゴーレム】のタグを持つ「戦う従者(技量点1、生命点1、幸運点1)」として扱われる。攻撃特性は【斬撃】である。同行させるには、従者点を1点必要とする。  また、1回の冒険につき1回だけ、生命点に受けたダメージを無視できる。  各ラウンドにおいて、ドールを戦闘に参加させるかどうかは、君が自由に選択することができる。  〈ミンストレル・ドール〉は、【奏楽:パストゥレル】を行使することができる(効果は後述を参照すること)。ただし、〈ミンストレル・ドール〉の幸運点が0点の状態では、【奏楽:パストゥレル】を行使することはできない。  〈ミンストレル・ドール〉は、戦闘で破壊される恐れはあるが、トラップの対象にはならない。なお、一度破壊されてしまった〈ミンストレル・ドール〉は、二度と起動させることはできない。 ▼特殊技能:【奏楽:パストゥレル】  これは「奏楽」に属する特殊技能である。この特殊技能は、【善の種族】【悪の種族】【少数種族】【悪魔】いずれかのタグを持つクリーチャーに対して効果を発揮する。  【反応表】のさいに振ったサイコロの出目を1点増減することができる。この奏楽は、≪反応表≫を振った後で、行使するかどうかを選ぶことができる。  また、クリーチャーが【ワイロ】として〈弱いクリーチャー〉を要求した場合、その人数を1体分だけ減らすことができる。この効果で〈弱いクリーチャー〉を差し出す必要がなくなった場合は、相手の反応は【友好的】に置き換わる。    この特殊技能を使うと【幸運点】を1点消費する。   {斜体}  羽根つき帽子と色鮮やかなクロークが特徴的な、吟遊詩人の装いをしたドール。手にしたリュートから美しい曲が奏でられると、先ほどまで君たちを殺したがっていた〈深海の姫君〉が、波間に揺られながら、うっとりとした表情で音楽に聞き惚れる。 「ああ……なんて心が洗われるような曲なの。そのドールは、あなたの〈物〉なのね。それが未登録だったら、あなたから奪って私のコレクションに加えたいのに……」  ミンストレル・ドールの魔力の虜になっている今こそが、この悪魔を出し抜くチャンスだ。君が「ドールなら、マドレーン諸島のどこかの島の浜辺にたくさん転がっていた」とでまかせを言うと、その言葉を本気にした女悪魔は、君たちに礼を述べる時間も惜しかったのか、全力で泳ぎ去っていった。 {/斜体} ---------------------------------------------------------------------------------    24:要救助者の一覧(Survivors in Need of Help) ---------------------------------------------------------------------------------  以下に記すのは、温泉施設ベテルギウスで助けを待っている「要救助者」の一覧である。  1回の冒険が終わったとき、そのときの冒険で救出した「要救助者」に対応する報酬(金貨)を獲得できる。  『ベテルギウスの残光』3回目の冒険が終わったさい、主人公が救出した「要救助者」の合計が8人以上なら、特別報酬が与えられる(「25:特別報酬」を参照)。 ◆アムニス(吸血鬼/女性 39歳)【金貨10枚】  本名はアムニス・シャーウッド。ネルドで情報屋を営んでおり、プレオープン中の温泉施設に招待されていた。 ◆カーマイン(エルフ/男性 29歳)【金貨10枚】  本名はカーマイン・ゼッド。施設に勤務する医師。患者の診療を済ませた後、救護室にある薬品の在庫を確認していた。 ◆キャナル(ドワーフ/女性 10歳)【金貨10枚】  本名はキャナル・スワンリップ。ローダの娘。いつも、お気に入りのヌイグルミを手放さない。 ◆クレイド(人間/男性 45歳)【金貨10枚】  本名はクレイド・ブローネン。剣神エスパダを信仰する僧侶。施設に搬入された備品を受け取るために、カーマインと会う予定だった。 ◆ジャン(人間/男性 55歳)【金貨10枚】  本名はジャン・ウェルマーク。施設に設営された酒場でバーテンダーを務める。地下の酒蔵で、店に並べる酒を思案していた。 ◆ステラ(人間/女性 24歳)【金貨10枚】  本名はステラ・ハイネマン。施設のフロントで受付を担当していた。半年後に婚約者との結婚式を控えている。 ◆セエラ(人間/女性)【金貨30枚】  本名はセエラ・フォン・グレゴリア。グレゴリア家の伯爵夫人。招待客の1人。施設の評価について、商業組合の幹部と話している最中だった。 ◆ナグガン(ノーム/男性 58歳)【金貨10枚】  本名はナグガン・ラバルトン。施設に設置されたからくりの管理を任されており、空調設備の点検をしていた。 ◆ハウザー(人間/男性 41歳)【金貨30枚】  本名はハウザー・ミリアルド。モフージャ商業組合の幹部。セエラ伯爵夫人から、施設の評価を聞いている最中だった。 ◆ベロデア(人間/男性 48歳)【金貨30枚】  本名はベロデア・トールケイン。モフージャ商業組合の幹部であり、事件が起きる直前まで、施設の拡張工事の指揮をとっていた。 ◆ボナンザ(コビット/男性 31歳)【金貨10枚】  本名はボナンザ・アンドリュー。温泉施設の建造に関わっていた作業員の1人。作業中にアンデッドに襲撃された。 ◆マイルズ(人間/男性 27歳)【金貨10枚】  本名はマイルズ・トルーディ。施設の従業員。事件が起きる直前は、客室のベッドメイキングをしていた。 ◆モチョチョ(肉食キューブ/中性 17歳)【金貨10枚】  本名は桜森のモチョチョ。招待客の1人。温泉成分を身体に取り込むことを楽しみにしていた。ギザギザ魚が大好物。 ◆ラズ(人間/男性 22歳)【金貨10枚】  本名はラズ・ベリーニ。施設に勤務するシェフ。昨年まで、モフージャで有名な食堂で働いていた。 ◆リオネーゼ(コビット/男性 31歳)【金貨10枚】  本名はリオネーゼ・アンドリュー。温泉施設の建造に関わっていた作業員の1人。ボナンザの弟。 ◆リコチェット(ゴーレム/女性 6歳)【金貨3枚】  正式名称は偽翼自律人形七号リコチェット・クロージュ。過去にチャマイの偽翼聖歌隊に所属。展示室でのガイドを務めていた。 ◆ローダ(ドワーフ/女性 52歳)【金貨10枚】  本名はローダ・スワンリップ。夫が商業組合の幹部であり、娘のキャナルと一緒に温泉施設を訪れていた。 ---------------------------------------------------------------------------------    25:特別報酬(Reward of Honors) ---------------------------------------------------------------------------------  『ベテルギウスの残光』のシナリオが終了したさい、主人公が救出した「要救助者」が8人以上の場合は、ひとつだけ特別報酬が与えられる。  これは「魔法の宝物」として扱われるため、金貨60枚の価値を持つ。 ◆救出した人数の合計が、8人以上の場合  君には、モフージャの商業組合から『もふもふ龍の盾』が授与される。  もふもふ龍の革から作られた盾で、所持している者に幸運をもたらすと伝えられている。 〈もふもふ龍の盾(Fluffy Dragon Shield)〉  これは「盾」として扱われる防具で、装備者の生命点の最大値に+2の修正を与える。  これとは別に、装備者は【幸運ロール】に+1の修正を得るが、このボーナスは特殊技能の行使、または【交渉】を行う場面には適用することができない。 ◆セエラとハウザーを含めて、救出した人数の合計が、12人以上の場合  君には、モフージャの領主クラウス・シェダールから、至高のバイオリン『暁の凱歌』が授与される。  これはチャマイの職人によって、からくりが仕込まれた楽器で、それが奏でる音色は、雷鳴が轟くような衝撃を人の心に与えると伝えられている。 〈暁の凱歌(The Dawn of Victory)〉  これは、追加ルールの職業【吟遊詩人】だけが装備できる「楽器」である。扱うには、両手を必要とする。  戦闘では【攻撃ロール】に+1の修正を与える。攻撃特性は【雷】で、魔法がかけられた接近戦武器として機能する。  主人公の職業が【吟遊詩人】である場合、【奏楽:ギャップ】の特殊技能を行使したさい、従者に与える【対魔法ロール】の修正は通常の+1ではなく、+2にすることを選んでもよい。このボーナスを得る場合、技能の行使者は追加で【幸運点】を1点消費する必要がある。  これらのボーナスは、『暁の凱歌』を装備しているときに限り、得ることができる。 ---------------------------------------------------------------------------------    26:中間イベント:激昂するもふもふ熊 ≪1回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  施設の奥に向かう部屋から、騒々しい物音が聞こえてきた。見れば、野生の〈もふもふ熊〉が暴れ回っているようだ。この熊を何とかしない限り、先の区画には進めそうにない。 〈激昂するもふもふ熊(Rage of the Fluffy Bear)〉 レベル:4  生命点:6  攻撃数:1d3  宝物:通常 ≪反応表≫ 1-2【ワイロ】(3食分の食料、または〈弱いクリーチャー〉1体) 3-6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【アンデッド】【動物】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーの攻撃特性は【斬撃】である。  このクリーチャーの攻撃数は、戦闘開始時に1d3で決定される(戦闘が終わるまで変化はない)。 {斜体}  施設の崩落に巻き込まれた腹いせなのか、激しい怒りに満ちた〈もふもふ熊〉が、手当たり次第に調度品を破壊している。よく見れば、鋭く尖ったガレキが獣の胸を貫通している。それにも関わらず、こいつは平然と動き回っているのだ。施設内に現れたアンデッドと関連があるのだろうか? {/斜体} ---------------------------------------------------------------------------------    27:最終イベント:ベルドゥーの司祭 ≪1回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  ベテルギウスの施設内は、思っていたよりも酷い状態だった。  事前に温泉施設の館内地図に目を通していたとは言え、ガレキで塞がれた通路もあれば、壁の崩れた場所や地下の遺跡を経由しなければ調査できない区画もある。ベテルギウス自体が、崩壊の危険を秘めた迷宮と化しているのだ。  ある部屋に踏み入ったとき、崩れ落ちた床から、強烈な殺気を感じた。  ガレキの斜面を慎重に下った先は、すでに見慣れた地下の納骨堂のひとつだ。だが、並べられた石棺の蓋はことごとく開いており、奥に見える棺の中から、刺繍が施されたローブに身を包んだミイラがすっと立ち上がる。ミイラの前腕は、鋭い鎌に付け替えられている。その刃は曇ってはいるものの、錆びついてはいない。そのカマキリを思い起こさせる印象から、死神ベルドゥーに仕える高僧ではないか、と君は推測する。   〈ベルドゥーの司祭(Bishop of Verdoux)〉 レベル:5  生命点:4  攻撃数:2  宝物:修正+1 ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【アンデッド】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーの攻撃特性は【斬撃】である。  このクリーチャーに【炎】の特性を持つ攻撃が命中した場合、敵の生命点に与えるダメージの合計は、通常よりも1点大きくなる。  戦闘の第0ラウンドでは、このクリーチャーは【聖打】の奇跡を行使する。この呪文が唱えられた場合、戦闘が終わるまで、各キャラクターは【防御ロール】に-1の修正を得てしまう。  このクリーチャーに対して『司祭の魂』を使用した場合、〈ベルドゥーの司祭〉の身体は塵と化してしまうため、戦闘に勝利したことになる。 ---------------------------------------------------------------------------------    28:冒険の達成:≪1回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  各主人公は1点の経験点を獲得する。  司祭のミイラを倒すと、施設の中に漂っていた邪悪な気配が薄らいでいく。道を引き返すさいも、アンデッドと遭遇することはなかった。外に出た頃には、すっかり日が暮れようとしていた。  君は組合長ハッドに、元凶と思わしきクリーチャーを討伐したことを報告する。 「……つまり、封鎖されたベルドゥー教団の地下聖堂を掘り当てたことが原因だったというわけか。しかし、妙だな。ベルドゥー教は【死】を神聖視している。弔った同志がアンデッド化したことを恥じて、あの地下聖堂を封鎖したのか? ……とにかく、クリーチャー騒ぎが落ち着いたのは良かった。私たちの戦士団も、今日の調査は切り上げることにした。彼らは取り残された者たちを幾人か救助したが、ベロデアは見つからなかったそうだ。彼の身が心配だ。君さえ望むなら、引き続き、施設内部の調査をお願いしたい」  温泉施設の調査を続けるかどうかは、君の自由だ。  後のことは他の者に任せるなら、組合長ハッドから金貨20枚を依頼の報酬として受け取り、『ベテルギウスの残光』のシナリオはこれで終了する。  翌日、ふたたび温泉施設を調査することに決めたなら、「20:冒険のはじまり(2回目の冒険)」へと進む。 ---------------------------------------------------------------------------------    29:中間イベント:作業員のゾンビ ≪2回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  掘削作業を行っていた区画で、松明を手にしたゾンビたちと遭遇する。  施設の崩壊に巻き込まれた作業員たちと思われるが、何者かの手によって、彼らの遺体はゾンビに作り変えられてしまったようだ。  地面には、岩盤を破壊するための火薬箱が転がっている。ゾンビの振り回す松明の炎が、火薬箱に燃え移れば大変なことになる。 〈作業員のゾンビ(Workmen Zombies)〉 出現数:1d6(下限は4体)  レベル:4  宝物:なし ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【アンデッド】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーの攻撃特性は【火】である。  第1ラウンド以降、主人公側の行動が終わるたびに、主人公1人が代表して【幸運ロール】を行うこと(目標値:3)。判定に成功したなら、何も起きない。判定に失敗したなら、ゾンビが振り回している松明の炎が、火薬箱に着火されたことで爆発を起こす。その場合は「戦わない従者」を含んだすべてのキャラクターが【防御ロール】を行う(目標値:4)。この【防御ロール】に失敗した者は、生命点を2点減らさなければならない。ただし、爆発によって〈作業員のゾンビ〉は全滅するため、戦闘は終了する。  もし、何らかの手段によって、この〈できごと〉に【水場】を作成していた場合、火薬箱が着火されることはないので、主人公側が行動した後に【幸運ロール】を行う必要はない。 ---------------------------------------------------------------------------------    30:最終イベント:ベロデアの正体 ≪2回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  広間のひとつに踏み込むと、そこでは大鎌を携えた黒エルフの一団と、アンデッドたちが戦いを繰り広げている。  どのような理由で戦っているのかまでは分からないが、黒エルフの側が劣勢で、彼らのリーダーである女司祭は、残り少なくなった仲間とともにアンデッドの群れに追い詰められていく。  アンデッドたちの後ろに陣取っている人物に、主人公は驚かされる。あれは……組合員のベロデアではないか!  ベロデアに呼びかけると、彼は攻撃の手を止める。戦いで疲弊した黒エルフたちのことは後回しにすると、ベロデアは遺体からアンデッドの戦士を作成し、主人公を攻撃するように指示を出した。 〈模造オウガのアンデッド(Imitated Undead Ogre)〉 レベル:4  生命点:7  攻撃数:2  宝物:修正+1 ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【アンデッド】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  このクリーチャーは動きが鈍いため、各キャラクターが「飛び道具」で攻撃を行う場合、追加で1回の【攻撃ロール】を行ってよい。  戦闘の第0ラウンドにおいて、このクリーチャーは凄まじい咆哮をあげるため、各キャラクターは【生命ロール】を行うこと(目標値はクリーチャーのレベルに等しい)。これは【精神】に影響を与える特殊能力である。判定に失敗したなら、呪文(魔術、奇跡など)が行使できず、さらに【攻撃ロール】に-1の修正を受ける。この効果は、第1ラウンドが終わるまで持続する。ただし、【ゴーレム】【アンデッド】【兵器】【建造物】いずれかのタグを持つキャラクターは、この咆哮による効果を受けない。 {斜線} 「俺が責任逃れのために施設にとどまっていた……だって? まったく、笑わせる話だ」  ベロデアは冷淡に笑う。 「モフージャの町が築かれるよりも遥か昔の時代、この地に死神ベルドゥーの神殿があった。おそらく生命の循環の中心となる【龍脈】の存在を知り、そこに神聖さを見出したのだろうな。だが、何らかの理由で彼らはこの地を去り、後には朽ち果てた地下聖堂が残るだけとなった。闇神オスクリードを信仰する者たちは、それに目をつけた。あの場所に弔われた数えきれないほどの遺体は、アンデッドの兵士を作るのに役立つ」  ベロデアは、かつてオスクリード教団が隠れ潜んでいたという、町の人々が忘れかけていた事実を、饒舌に話し始めた。  モフージャの町は、人々が巨大生物から身を守るための盾となる。だからこそ、教団は巨大生物の存在を恐れることはなかった。  彼らが恐れるのは、秩序を尊ぶ者たちの監視の目。モフージャでオスクリード教団が勢力を伸ばしていくには、自由に行動できる拠点が不可欠だった。  町に潜伏する闇神の信者たちは、地下聖堂を自分たちの新たな拠点とするために計画を準備していたが、その企みは初代の開拓者たちによって暴かれ、彼らはモフージャより追放されることになった。  何故、ベロデアがこのような話を切り出すのか? 彼の不敵な表情を目にしたとき、君はその答えを察する。 「そう、俺は町からの追放を逃れたオスクリード信者の子孫だよ。だが、まだ表舞台に出るのは早過ぎる。商業組合の幹部という地位は、今しばらくキープしなければならない。この地下聖堂が掘り返された後、永久に封鎖されたという事実があればそれでいい。ここを安全な拠点とするために、正式な人払いの口実が欲しかったのさ。今更になって、ベルドゥー教団の連中が戻ってこなければ、事は上手く運んだんだがな」  目的を果たすためなら、無関係の者たちを巻き込んでも構わない……そんな口振りだった。 「お前たちがくたばったら、出来のよいグールが作れそうだ。花をたむけるよりも、その方がよっぽどいい。来いよ、相手をするのは俺じゃないがな」  周辺に転がった遺体に向けてベロデアが手をかざすと、それらの肉が融合し、大型のクリーチャーへと変異していく。 {/斜線} ---------------------------------------------------------------------------------    31:冒険の達成:≪2回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  各主人公は1点の経験点を獲得する。  大型クリーチャーを倒され、苦境に立たされたベロデアは、残された遺体から数体のグールを作成すると、施設の奥に向かって駆け出す。  激しい戦いが終わった直後ということもあり、君は足止めされ、ベロデアの逃走を許してしまう。  不意をつかれて、死角から飛びかかってきたグールに君が噛みつかれそうになったとき、刃のついた円盤がいくつも飛んできたかと思うと、次々とグールを倒していく。  態勢を立て直した黒エルフたちが、君を助けたのだ。リーダーである黒エルフの女司祭は、自分たちが死神ベルドゥーの信徒であることを打ち明ける。 「我らの祖先が封印した地下聖堂を、オスクリード教団が穢そうとしている事実を突き止めた。あの男は、自らの計画が上手くいかなかったときには、我らベルドゥー教団が今回の騒ぎを引き起こしたことにする腹積もりだったようだ」  女司祭はベルドゥー教団の巫女、ラウレルと名乗った。 「助力してくれたことには感謝する。だが、その顔つきだと、我らが今回の件をきっかけにモフージャを乗っ取ろうと画策していないか疑っているようだな」  ラウレルは、自分の首飾りを外すと、それを君に見せる。 「これは祖母から母へ、母から私へと受け継がれたベルドゥーの巫女であることを示す証だ。私にとっては、この命と同じぐらいの価値を持つ首飾りだ。死神ベルドゥーに誓って、私はベロデアを討ち、異教徒によって穢された聖域を浄化する。その使命が果たされるまでの間、これをお前に預ける」  君に首飾りを渡す直前になって、ラウレルの右手が震える。  見ず知らずの者に、代々受け継がれてきた家宝を預けてもよいのか、ラウレルはためらっていたが、左手で右手首をつかんで震えを止めると、それをようやく君に手渡す。  死を神聖なものとして扱うベルドゥー教団たちにとって、死を捻じ曲げるオスクリード教団は、対抗するべき宿敵といってもよい。  事件を解決するという点においては、君とラウレルの目的は一致していると言っても差し支えはない。そして、そのためにも本性を現したベロデアの企みを阻止しなければならない。  君が使命を達成したとき、この首飾りは必ず返すとラウレルに告げると、君は生き残ったベルドゥー教団の僧侶たちとともにベテルギウスを後にする。    3回目の冒険では、「要救助者」の一覧からベロデアを除外すること。  「21:冒険のはじまり(3回目の冒険)」へと進む。 ---------------------------------------------------------------------------------    32:中間イベント:オスクリード教団との決戦 ≪3回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  主人公は別行動をとっていたラウレルたちと合流する。  地下聖堂の大広間に踏み込むと、闇神オスクリードの信者たちが待ち構えている。その中にベロデアの姿も見える。彼らを守るように、無数の骨から作られた棘壁が進み出た。急いで造ったらしく、棘壁は隙間が目立っている。   〈骨の棘壁(Spiked Seltal Wall)〉 レベル:4  生命点:4  攻撃数:特殊  宝物:なし ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【アンデッド】【建造物】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  戦闘が開始されるさい、主人公が『手がかり』を1個消費するたびに、このクリーチャーの生命点の初期値を2点減らしてよい(生命点の初期値が0点になった場合、このクリーチャーは戦闘に参加しない)。  このクリーチャーの攻撃特性は【斬撃】だが、自分から攻撃を行うことはない。  このクリーチャーが死亡するまで、主人公側は〈オスクリードの信者〉を攻撃対象に選ぶことはできない。  このクリーチャーに対して【斬撃】による攻撃を行うさい、【攻撃ロール】に-1の修正を得てしまう。  このクリーチャーに対して接近戦攻撃を行ったキャラクターは、その攻撃によって〈骨の棘壁〉の生命点が0点以下になっていなければ、主人公側の攻撃番であっても【防御ロール】を行わなければならない(目標値:3)。 〈オスクリードの信者〉 出現数:1d6+10  レベル:2  宝物:なし ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【善の種族】【人間型】に属する。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーの攻撃特性は【斬撃】である。  戦闘の各ラウンドにおいて、〈オスクリードの信者〉の攻撃数は3回を上限とする。  〈オスクリードの信者〉を攻撃対象に選べる状況に限り、主人公側の行動が終わるたびに、ラウレルたちの攻撃によって〈オスクリードの信者〉の頭数は1d6体ずつ減っていく。  戦闘の第0ラウンドに、主人公が「奏楽」に属する特殊技能を行使した場合、1d6体の〈オスクリードの信者〉は、その場に武器を捨てて投降する(倒したことになる)。 {斜線}  オスクリード信者のほとんどは人間だが、小柄なドワーフやコビットといった、他の人間型種族の姿も確認できる。  ベロデアから召集されたとは言え、武器を手に戦った経験が少ないのか、そのうちの幾人かは真っ青な表情を浮かべながら、〈骨の棘壁〉が戦闘配置につく様子を見守っている。 {/斜線} {斜線}  激戦の中、君の一撃がベロデアに深手を負わせる。しかし、完全なとどめを刺す前に、オスクリード信者の生き残りが彼を広間の外へと連れ出す。  ラウレルが「奴を逃がすな!」と叫ぶ。君はベロデアの後を追うが、半壊した〈骨の棘壁〉に行く手を阻まれてしまう。この死にぞこないのアンデッドを破壊したときには、すでに彼の姿は見えなくなっていた。 「死体さえあれば、呪術師はしぶとく生き延びることができる。まだ戦いが終わったわけではない」  焦燥した表情でラウレルが言う。この町にいたオスクリード教団に壊滅的な打撃を与えたが、ベロデアが生きている限り、ベルドゥーの地下聖堂が解放されたとは言えない。  敵が退路として使った回廊は途中で分岐しているため、君とベルドゥー教団は二手に分かれることにする。急いでベロデアを追わなければ……! {/斜線} ---------------------------------------------------------------------------------    33:最終イベント:聖虫ラクシャ ≪3回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  ふたたびラウレルたちと合流した主人公が、地下聖堂の最深部に踏み込むと、骨の状態から修復された異形の大カマキリと対峙する。  かつてベルドゥー教団によって弔われた聖遺骸。それは主人公とラウレルたちを迎え討つために、ベロデアが準備した「切り札」となっていた。  〈聖虫ラクシャ〉の肉体を我が物としたベロデアが、主人公の前に立ち塞がる。 〈聖虫ラクシャ('Raksha' the Celestial Mantis)〉 レベル:6  生命点:7  攻撃数:4  宝物:修正+2  ここは「薄暗い場所」である。  このクリーチャーは【アンデッド】【虫類】に属する。  このクリーチャーの攻撃特性は【斬撃】である。  戦闘が開始されるさい、主人公が『手がかり』を1個消費したなら、このクリーチャーのレベルを1減らしてよい(この効果は重複しない)。  戦闘の第3ラウンドが終わるまでの間、ラウレルたちがベロデアの注意を引きつけるため、〈聖虫ラクシャ〉の攻撃数は2減らしてよい。ただし、それ以降のラウンドでは、ベロデアに圧倒されたラウレルたちが負傷を受けるため、このボーナスは消滅する。  各キャラクターが【攻撃ロール】でクリティカルを発生させるか、または【攻撃ロール】の達成値が8以上だった場合、〈聖虫ラクシャ〉の身体を覆っている甲殻の一部を削り取ることができる。その場合は〈聖虫ラクシャ〉のレベルを1減らしてよい。ただし、敵のレベルの下限は3とする。  各キャラクターが【招天】の奇跡でクリティカルを発生させるか、または「飛び道具」として投げた『聖水』が命中した場合、〈聖虫ラクシャ〉に効果的な一撃を与える。その場合は〈聖虫ラクシャ〉のレベルを1減らしてよい。ただし、敵のレベルの下限は3とする。 {斜線}  地下聖堂の最深部にある祭壇には、青銅色の大カマキリが鎮座している。それは4本の前腕を持ち、骨を肉片で覆ったような異質な印象を与える。  通常の小さな虫たちは、硬い殻によって外側から身体が形づくられている。だが、祭壇の大型昆虫は、動物たちと同じように、身体の内側に骨格を持っているのだ。しかし、その形はカマキリとしか言いようがない。  カマキリの胸部にはベロデアの上半身が浮き出ており、数人のオスクリード信者がカマキリを生前の姿に戻すために、広間に並ぶ石棺から引っ張り出した遺体を素材に、試行錯誤しながら呪術を行使している。  君の存在に気付いたベロデアが動こうとするが、「今の状態では、本来の運動性を発揮できません!」と信者たちに止められる。だが、彼は試みを強行する。 「不足している分は、お前たちの肉で補わせてもらう!」  凄まじい悲鳴があがる。ベロデアが、調整を行っていたオスクリードの信者を吸収したのだ。  それまで骨が露出していた部位は新たな肉によって修復され、複眼が得体の知れない紫色の光を帯びるようになったかと思うと、異形のカマキリが動き始める。  2人の人間が手を合わせて祈るように、すべての前腕を折り畳む。カマキリの攻撃姿勢だ。ベロデアの「切り札」を目の当たりにしたラウレルの表情が、険しいものへと変わる。  その反応に、ベロデアは愉悦に歪んだ表情を浮かべた。 「……こいつはベルドゥー教団が安置していた聖虫ラクシャの聖遺骸だ。動かして間もないが、戦闘用の肉体としては悪くない。お前が使命に失敗したとなれば、モフージャの警備兵も迂闊に踏み込んではこれまい。その間に、こちらは新たな軍団を整えるとしよう」  ベロデアは着実に君との間合いを詰めてくる。この戦いで、どちらかが確実に死ぬ。死の気配が、祭壇の部屋に満ちていた。 {/斜線} ---------------------------------------------------------------------------------    34:冒険の達成 ≪3回目の冒険≫ ---------------------------------------------------------------------------------  各主人公は1点の経験点を獲得する。  聖虫ラクシャが致命傷を負ったことを悟ったベロデアは、新しい肉体を見限った。蛇が脱皮をするように、カマキリの胴体から人間の身体が分離する。ベロデアは血塗れの身体でよろめきながら、まだ遺体が眠る石棺へと向かった。 「この傷さえ癒せば、まだチャンスは……!」  それが彼の最期の言葉となった。突如、虚空に紫色の光が発生したかと思うと、巨大なカマキリの幻影が浮かび上がる。先ほどよりも圧倒的に濃い死の気配。それが鎌を振り上げ、ベロデアの頭上へと振り下ろされる。その幻影のイメージは、彼を傷つけることはない。しかし、カマキリの鎌が振り下ろされた瞬間、天井に大きな亀裂が走り、上から岩盤が落下する。断末魔の悲鳴をあげることもなく、ベロデアの身体はガレキに押し潰された。  野心のために無関係の者を巻き込むだけでなく、ベルドゥーの地下聖堂を穢し、安置されていた聖遺骸をも冒涜した。死神ベルドゥーは、死を欺き続けるオスクリードの信徒に「本当の死」を与えたのだ。  頭上の穴から水が流れ落ちてくると同時に清らかな太陽の光が注がれる。先ほどまで漂っていた死の気配はすっかり消え失せ、静寂が辺りを包んでいた。  最初の約束どおり、ラウレルに巫女の証を返す。彼女はそれを首から下げると、少しの間だけ部屋の端まで下がってほしい、と君に声をかける。  君がその言葉に従った後、ラウレルが大鎌の石突きで床を強く叩く。キィンと音叉を鳴らしたような音が響き渡る。他の黒エルフたちも、彼女に続くように調和された動きで演舞を始め、最後に虚空を大鎌を薙ぐ。 「聖遺骸に宿る力を借りて、清めの儀式を行った。完全に浄化するには、まだやらねばならぬことはあるが、ベロデアの手で永遠の安息を妨げられた者たちは、ふたたび眠りにつくことになる」  ラウレルはそう言うと、「……さすがに地下は冷える。外に出たら、暖かい紅茶を飲みたい」と言葉を付け加え、軽く笑った。  この死力を尽くした戦いに、君とラウレルたちはすっかり疲れきっていた。しかし、地下聖堂に清浄さが戻ったとき、君たちはようやく勝利を実感することができた。  今回の事件は、モフージャより追放されたはずのオスクリード教団が関わっているため、領主クラウスに報告されることになり、表向きは岩盤の崩落によって起きた大災害として伝えられることになった。  商業組合の戦士団からの報告と照らし合わせると、君が発見することができなかった要救助者たちは、彼らが無事に保護したようだ。  温泉施設については、当初の計画にあった、公共浴場としての設備を備える本館のみが利用されることに決まった。  野外浴場の案が白紙となったのは、崩落の影響により、温度が高い水が出なくなったことも理由のひとつだが、ベルドゥー教団の聖域を荒らさぬための配慮もあった。  施設の建設中に起きた事故で、君は救助活動を支援した功労者として、褒賞と賞賛を受けることになる。  後日、今回の事故で無くなった犠牲者の葬儀が行われることになった。ただし、その中にベロデアの名前は含まれてはいなかった。いや、そもそも彼の名前自体が町の記録から消えていた……。  葬儀が終わると、商業組合長ハッドが君に声をかけてくる。彼は何か伝えたいことがあるようだ。  ・ハッドは、ラウレルたちの今後について話した(→エンディングAへ)  ・ハッドは、商業組合長を辞任することを告げた(→エンディングBへ) ---------------------------------------------------------------------------------    35:エンディングA --------------------------------------------------------------------------------- 「ベルドゥー教団の黒エルフたちは、特例としてモフージャの滞在が許可されることになった。クラウス様は難色を示していたようだが、君がラウレルから預かった首飾りの話が決め手となったんだ。彼女たちはオスクリード教団に対する抑止力となる。それに、ちょっとだけ興味深い話を教えてもらったよ」  ハッドは、ラウレルから教えられた龍脈の秘密を明かす。  龍脈が生み出すエネルギーは無限ではない。この地域に生息する、もふもふ獣の生と死の循環から生み出される生命エネルギーによって、龍脈は成り立っているというのだ。  モフージャの町が築かれた当初、人が死ぬと恩恵を与えてくれた森に自らの肉体を返して感謝し、子孫のためにさらなる森の繁栄を願う風習があった。  何らかの理由でベルドゥー教団がこの地を去った後、初代の開拓者たちは彼らの風習を引き継いで、亡くなった者たちの遺体を「もふもふ獣の墓場」と呼ばれる辺境に弔った。  それにより、龍脈の維持に必要な死のエネルギーが供給されるからだ。  しかし、ある程度町が発展してくると、もふもふ獣が徘徊する荒野に出向くのは危険だと人々は考え始めるようになった。  やがて伝統的な風習はすたれていき、髪などの遺体の一部や遺品を共同墓地に埋葬し、他の部分は灰にして森の地面と混ぜるという簡易的な方法に変わっていった。  ラウレルの意見によれば、それはモフージャに繁栄をもたらす龍脈を、次第に弱らせていくことにつながるのだという。 「今はまだ、龍脈が弱まる気配はない。だが、もふもふ獣……昔よりも生息数が増えてきた〈もふもふ龍〉を、定期的に間引く必要があるようだ。モフージャが築かれる以前のベルドゥー教団は、その非常に厄介な仕事をこなしていた。この地に人が定住するには、生のエネルギーに見合うだけの、死のエネルギーを蓄えなければならんのだ」  モフージャの至宝とされる「真銀の竪琴」の魔力でおとなしくさせた〈もふもふ龍〉を狩ったとしても、そこから得られる死のエネルギーは減衰されてしまう。それは生命の循環の「自然な流れ」ではないからだ。  そのため、モフージャの未来のことを考えれば、巨大生物を狩る技術の習得が求められていた。  遥か南方のカラメールから腕利きの怪物狩猟者たちを雇うには、コストが計り知れないことは容易に想像がつく。  今回の事件の責任をとって、商業組合長を辞めるつもりでいたハッドだったが、この新しい目標を達成するためには彼の手腕が必要である、と町の上層部の意見がまとまったことで、現役を続投することになった。  そしてラウレルたちベルドゥー教団も、生命の死が関わるという教義に沿う仕事には協力的であり、〈もふもふ龍〉の狩猟にはぜひ参加させてくれと願い出ているそうだ。  町の者との関わりを避けようとしていたラウレルが、こうもあっさり力を貸してくれるのは、君にとっては意外だった。ハッドがその理由を教えてくれる。 「まだ森の方で作業を続けているが、あれは損壊した地下聖堂の補修を行っているんだ。これはクラウス様が提案されたことで、私たちの方も誠意を見せておけば、ラウレルたちの態度が軟化するだろうと、あの方はお考えのようだ。この先もベルドゥー教団との友好関係を維持していくなら、これも必要な出費となるだろう」 「亡くなった者たちのために、私は一体何ができるのか……と考えてはみたのだが、私の取り柄と言えば、損得勘定のコツが上手く分かっているぐらいだ。罪滅ぼしにはならないのかも知れない。だが、この心臓が止まるまで、私はモフージャのために全力を尽くすつもりだよ」  ハッドは事件を解決した報酬として、君に金貨20枚を手渡す。  君の活躍によって、モフージャを見舞ったアンデッド騒ぎは解決された。  これで今回の冒険は終わりだ。おめでとう! ---------------------------------------------------------------------------------    36:エンディングB --------------------------------------------------------------------------------- 「組合の幹部たちの中で、私が最も信頼していた者に、商業組合長の座を委任することを決めたよ。温泉施設の規模は縮小したものの、当初の計画に沿った形でベテルギウスの建設が進んでいる。あれが私の関わった最後の事業だった。欲をかいたばかりに、犠牲者を出してしまったことだけが、心残りだ」  ハッドは寂しそうに言う。ベロデアの策略に利用されていただけなのだから、そこまで気に悩む必要はない、と君は彼を励ます。 「彼の邪な企みを見抜けなかったこともあるが、目先の利益だけにとらわれてリスクを考慮しなかったのは、私自身のミスだ。物語の中では、英雄が事件を解決すれば、すべてが丸く治まる。だが、現実はそう簡単なものではない。亡くなった者たちのために、私は一体何ができるのか……。今後は一線から退いた身で商業組合を支援していく傍ら、そのことを考えながら生きようと思う」 「ラウレルたちのことだが、特例としてモフージャへの滞在が認められたよ。オスクリード教団に対する抑止力として、ベルドゥー教団の力は必要になる。首飾りの話を聞く限りでは、見た目ほど悪い娘ではなさそうだ。彼女はエルフとしても若いが、責任感があり、しっかりと仲間をまとめている。私のような過ちをして欲しくはないものだ」  ハッドの話によれば、今回の事件が起きた場所では、損壊したベルドゥーの地下聖堂の補修工事が行われているのだという。  それは、モフージャの住人の方から誠意を見せることで、ラウレルたちの態度を軟化させようという、領主クラウスの計らいであった。  犠牲者の葬儀が執り行われたのは、夕方になってからだったので、すっかり日が暮れていた。商業組合が宿を手配してくれたので、君がモフージャで一晩を明かすには問題がない。  星空に目を向ければ、赤い星がひときわ強く輝いている。ハッドが、その星について説明をしてくれる。 「あれはベテルギウス……〈龍の心臓〉という意味を持つ星だ。七賢者の誰かが提唱した学説によれば、星が死を迎えるとき、美しく強烈な輝きを放つらしい。……ということは、だ。あそこで輝いているベテルギウスも、すでにこの世の存在ではなくなっているということになる。しかし、その輝きを、今もこうして見ることができる。吟遊詩人の歌として伝説が語り継がれるように、残された光が、時代を越えて生き続ける……」 「新しく建てられた温泉施設に〈ベテルギウス〉と名付けたのは、私だ。私や他の者たちがいなくなった後の時代も、モフージャを象徴とする建造物となるように願いを込めた。もし、その願いが叶うのであれば、ベテルギウスの未来を見届けることができなかった者たちも、報われるかも知れない。君は、消え失せてしまう運命にあったベテルギウスの輝きを守ってくれた。本当に、ありがとう」  ハッドは事件を解決した報酬として、君に金貨20枚を手渡す。  君の活躍によって、モフージャを見舞ったアンデッド騒ぎは解決された。  これで今回の冒険は終わりだ。おめでとう!