--------------------------------------------------------------------------------- 1:ローグライクハーフd33シナリオ「生霊姫♡狂騒曲」   作:火呂居美智   監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ、水波流 ---------------------------------------------------------------------------------  これは「ローグライクハーフ」のd33シナリオです。初級レベルの主人公1人と従者、または主人公2人での冒険に適しています。 ・ジャンル:ファンタジー ・難易度:普通 ・形式:シナリオ(d33) ・世界:共通世界(アランツァ) ・ゲームマスター:不要 ・プレイヤー数:1-2人 ・プレイ時間:10-15分 ・適正レベル:10-12 ・対象年齢:10-99歳   --------------------------------------------------------------------------------- 2:「ローグライクハーフ」を遊ぶにあたって --------------------------------------------------------------------------------- 「ローグライクハーフ」はルールを確認した後に遊ぶゲームです。新ジャンルではありますが、区分するなら「1人用TRPG」にもっとも近いといえます。ルールは下記アドレスで確認することができます(無料)。 ライセンスロゴ https://ftbooks.xyz/ftnews/article/RLH-100.jpg https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_BasicRuleSet.txt  PDF版は下記アドレスで入手可能です(要BOOTH会員登録)。  また、紙の書籍でのルールを入手したい場合も、こちらから購入が可能です。紙の書籍には1stシナリオ『黄昏の騎士』が収録されています。 https://ftbooks.booth.pm/items/4671946 --------------------------------------------------------------------------------- 3:プロローグ ---------------------------------------------------------------------------------  ビウレスは、不思議な構造をした街だ。  かつて魔法使いが建てた巨大な塔に、多様な種族が集まり、街は大いに栄えた。しかし人口が増え続けた結果、塔はその重さに耐えられなくなり、ついには倒壊した。人口の一割を失う大事故だったにもかかわらず、人々は倒れた塔の中で今も生活を続けている。  魔法によって守られていたはずの塔が、なぜ倒れたのか。  長い年月のうちに魔法の効力が切れたというのが一般的な見方だったが、一方で「大規模な地震が起きたのだ」と主張する学者もいた。周辺の山岳の形状や地面に走る亀裂に、その痕跡が残っていると彼らは主張する。  生存者の多くは、倒壊の直前に奇妙な形の雲を見たと語った。空気が震え、塔の外側の大地までもが鳴動するのを体感した。しかし、もしそれほどの地震が起きていたのなら、ポロメイアの都や周辺の集落にも記録が残っていなければおかしい。だが、そのような事実はどこにも見当たらなかった。やがて疑問は時の流れに埋もれ、人々は屍を乗り越えて生きていくことを選んだ。  塔の残骸を利用して住まいを立て直し、斜めに傾いた塔に水平に増築を重ねた結果、今では奇妙な形の街並みが山裾に広がり、訪れる者の目を奪う。  復興の過程で、鉄の鋳造、石の加工、カラクリの発明など、多くの技術が生み出され発展した。  この不思議な成り立ちの街に、多くの人々が流入を繰り返した。古の魔法や技術に詳しい者が多い一方で、統治はおおらかで、野心家やならず者も根城にしている。  塔街――ビウレス。  そう呼ばれるこの街は、今やポロメイア東部の要所として、人々の往来で賑わっている。 --------------------------------------------------------------------------------- 4:ゲームの概要 --------------------------------------------------------------------------------- 「ローグライクハーフ」へようこそ。このゲームは1人(または2人)で遊べるTRPGのようであり、ゲームブックのようでもあり、ダンジョンハック系の電源ゲームをアナログゲーム化したようでもあり……。ゲームマスター(GM)はいてもいなくても遊べます。つまり、1人から3人までで遊ぶゲームです。  プレイヤーとしてゲームに参加する場合、あなたは自分の分身である「主人公」を作成します。これは「冒険者」とも呼ばれる、万能ではないが十分に強いキャラクターです。プレイヤーが(つまり主人公が)1人の場合、7人前後の従者とともに冒険を開始します。プレイヤーが2人の場合、従者なしで冒険を行います。  冒険はd33を振り、出目に対応したできごとを確認していくことで成立します。ある地点に到達すると中間イベントや最終イベントが発生して、物語が進行します。 --------------------------------------------------------------------------------- 5:ゲームの特徴 --------------------------------------------------------------------------------- 「ローグライクハーフ」のシナリオは、短い時間でTRPGを遊んだような満足感を与えてくれます。部屋を探索し、ワナをかいくぐり、敵を蹴散らして、最終的な目的へと臨みます。  しかし、気をつけてください。冒険の一部はランダムで形成されているため、必ずしも成功するとは限りません。判断を誤り、運に見放されたとき、あなたの大切なキャラクターは冷たい墓石の下で、永い眠りにつくことになるでしょう。 --------------------------------------------------------------------------------- 6:ゲームに必要なもの ---------------------------------------------------------------------------------  筆記用具と六面体サイコロ1個があれば、すぐにもゲームをはじめられます。「冒険記録紙」をプリントアウトしておくと、手もとで情報を管理できて遊びやすいでしょう。 --------------------------------------------------------------------------------- 7:ゲームの準備 --------------------------------------------------------------------------------- 「ローグライクハーフ」のd33シナリオである本作『生霊姫♡狂騒曲』をはじめる前に、あなたは主人公(と、必要なら従者)を準備してください。  冒険を進めるためのルールを読むか、いつでも読めるように手もとに置いてからゲームを開始します。 --------------------------------------------------------------------------------- 8:ゲームの進行 ---------------------------------------------------------------------------------  『生霊姫♡狂騒曲』は「一本道モード」で遊びます。  本文中に{斜体}このような斜体{/斜体}で書かれた文字がある場合、それは主人公たちが今いる場所の状況について語った文章です。読まなくとも物語の進行に影響はありませんが、読むとよりいっそう気持ちが入ることでしょう。 --------------------------------------------------------------------------------- 9:一本道モード ---------------------------------------------------------------------------------  一本道モードでは、あなたは分岐を気にすることなく、d33によってマップを決定していきます。このモードでは、あなたは〈できごと〉を一定回数体験する(マップをめくる)行動の後に、中間イベントや最終イベントにたどり着きます。  1枚目から3枚目のタイルをめくり、マップタイルに付随するできごとを体験した後に、4枚目の中間イベントのタイル(固定)に進みます。5枚目から7枚目の体験の後に、最終イベントへと進みます。 ・1-3枚目……出目表に対応した〈できごと〉が発生 ・4枚目……〈中間イベント〉 ・5-7枚目……出目表に対応した〈できごと〉が発生 ・8枚目……〈最終イベント〉  一本道モードで遊ぶ場合、【逃走】を行った際には、めくったマップタイルは枚数にカウントしません。プレイヤーは改めてマップタイルをめくり、次の〈できごと〉へと進んでください。(本文中に別途指示があった場合は、この限りではありません。) --------------------------------------------------------------------------------- 10:冒険とゲームの勝利 ---------------------------------------------------------------------------------  このゲームの勝利とは、シナリオにおける使命を達成することです。  この作品は1回の冒険に対応しています。「冒険」は〈最終イベント〉までひととおりの〈できごと〉を体験する(かゲームオーバーになる)ことを指します。 --------------------------------------------------------------------------------- 11:隊列について ---------------------------------------------------------------------------------  本作における戦闘には、隊列という概念はありません。主人公と「戦う従者」は、敵を好きなように攻撃できます。  敵側の攻撃は、主人公が2人の場合には均等に攻撃が分けられます。  主人公が1人の場合には、攻撃の半分を主人公が受けてください。残りの半分は従者が受けます。  いずれの場合でも、余った攻撃をどちらが受けるかは、プレイヤーが決めてください。 例:インプ7体が主人公と「戦う従者」である兵士3人を攻撃した。インプの攻撃は合計で7回である。プレイヤーは攻撃のうち3回分を主人公が、残りの4回分を従者が受けることに決める。従者である兵士は【防御ロール】に失敗するたびに1人ずつ死亡する。 --------------------------------------------------------------------------------- 12:ゲームの終了 ---------------------------------------------------------------------------------  主人公が1人死亡したら、冒険は失敗で終了します。最終イベントを終えた場合にも、ゲームは終了します。そのときに条件を満たしていれば、冒険は成功に終わります。  冒険が成功した場合、主人公はそれぞれ1経験点を獲得します。冒険に失敗した場合には、これを得ることができません。死亡していない主人公は、改めて冒険に出ることができます。 --------------------------------------------------------------------------------- 13:『手がかり』について ---------------------------------------------------------------------------------  d33シナリオ『生霊姫♡狂騒曲』では、『手がかり』は、冒険を達成するために必要となる情報です。『手がかり』は名前のとおり、重さのある物品ではありません(装備品欄を圧迫しません)。  この『手がかり』は、今回の冒険だけに限られており、次の冒険へと引き継ぐことはできません。 --------------------------------------------------------------------------------- 14:ジャンプスケアについて(本作のみの特徴) ---------------------------------------------------------------------------------  本作に登場する人魂キャラクター 〈生霊姫〉 は、シナリオ中ずっと主人公と行動を共にします。彼女には〈生命点〉がなく、直接戦闘に参加することもないが、ただ一つだけ特別な技能を持っています。  それが、【ジャンプスケア】です。   ◆〈生霊姫〉の【ジャンプスケア】とは  〈生霊姫〉は霊的存在のため、普通の人間には見えません。しかし、自分の意思で一瞬だけ“生前の素顔”を出現させることができます。その姿は、相手にとってはあまりに突然で、あまりに強烈(なぜならその瞬間、彼女は決まって変顔をするのです)。多くの場合、敵は驚きのあまり悲鳴を上げたり、動きが止まってしまうでしょう。  戦闘中に【ジャンプスケア】を使う場合、〈生霊姫〉の技量点を1とし、【判定ロール】(目標値:敵レベル)を行います。成功の場合、敵の攻撃が 1回休みになります(つまり、そのラウンドの攻撃を完全に無効化します)。  失敗の場合、〈生霊姫〉は拗ねてしまうため、次回の戦闘では【ジャンプスケア】を使ってくれません。 --------------------------------------------------------------------------------- 15:冒険のはじまり --------------------------------------------------------------------------------- 「とにかくうるさくて敵わん。こいつを何とかしてくれ」  眉間に深いシワを寄せてぼやくのは、壮年のドワーフだった。ずんぐりとした体格に、よく手入れされた顎髭。名をスライダーという。塔街ビウレスの大通りで〈シュガーブーツ商会〉を構え、武具や防具、生活金物を一つひとつ手で仕上げる職人だ。王からの信頼も厚い。ポロメイアまでその名を轟かせる名工だった。  その工房へ、冒険者たちは呼び出された。 「どこかに本体がいるはずじゃ。さっさと戻してやってくれ」  スライダーは頭上を指差す。  そこには、薄く透けた湯気のような塊がふわふわと浮かんでいた。その塊は君を品定めするようにすぅーっと降りてきて、顔の前まで寄ってきた。陰影が湯気の中に揺らぎ、目や口と思われるものが不安定に大きさを変えていた。 「こんにちは。あら、アンタはアタシが見えるのね。やっとまともな相手が来たわ。ここの息子なんて全然ダメ。父親をバカにしてるくせに、アタシのことは見えないんだもの」 「余計なことを言うな」 「余計じゃないわよ。事実でしょ。だいたいアンタ、アタシを雑に扱いすぎなのよ。こっちは身体も名前も忘れてるってのに、もっと丁重に扱いなさいよね」 「丁重に扱う価値があると思っとるのか」 「当然でしょ。アタシ、絶対いいとこの娘よ。見ればわかるでしょ、この気品」  湯気の陰影は不気味に渦を巻くだけで、気品らしきものは一切感じられなかった。スライダーは何か言い返そうとしたが、そのとき工房の扉が開き、スライダーの息子ホークが入ってきた。肩幅が広く、濃い眉が印象的な若者だ。 「親父、どうして冒険者なんか雇うんだ? 俺に頼めばいいだろ」 「お前にはムリじゃ。それに、お前には見えとらんのじゃろうが」 「フン」  ホークは不満げに鼻を鳴らした。 「なんで親父は俺を認めないんだよ。戦士として腕も磨いてるし、力ならビウレスでも大抵の奴には負けないぜ」  そう言ったものの、スライダーが息子に依頼をする気がないのは明らかだった。  それがわかると、ホークは唇をへの字にして出ていった。 「まあ、見えたからと言ってあいつには頼まん。まだまだ考えが足りない。少し腕力あるだけでうぬぼれとる。息子は、ドワーフのくせに武器を持って戦わんワシをよく思っておらん。じゃが、ワシの手が潰れたら、街の戦士どもは誰が武具を作るんじゃ? あいつはまだ、その重みがわかっておらん」  そう言われてよく見ると、スライダーの指先は、金属を扱う者特有の節と厚みがありながら、細工師のようにしなやかだった。  その指先がふたたび空中を指す。 「知り合いのエルフの魔法使いに見てもらったら、こいつは死霊ではなく生霊らしい。つまり身体はどこかに存在する。何かのはずみで分離してしまったようじゃ。ついでに自分がどこの誰かも忘れておる。じゃが、このビウレスのどこかにいるはずじゃ。一週間ほど前からここに居着いて困っておる。礼はする。さっさと身体に戻してやってくれ」 「そうそう、さっさとお願いね。アタシ、こんな油臭いところに長居する趣味ないのよ」 「油臭いとはなんじゃ。ワシの工房は街一番の清潔さじゃぞ」 「へぇ? そうなの? じゃあ街の基準が低いのね」 「バカにするなら、お前もさっさと出ていけ」 「出ていけたら、とっくにそうしてるわよ! 気づいたらここに戻ってきちゃうんだから。ほんと不便な身体よ、まったく」  湯気のような身体がぷるぷると震えた。 「じゃあせめて黙っとれ」 「無理。退屈なんだもの。だいたいアンタの金槌の音の方がうるさいし」 「お前の声のほうがうるさいわ!」 「アタシの声のほうが可愛いだけまし」 「そうだ、この生霊女も連れていけ。声が聞こえるなら役に立つかもしれん。それに、街を巡るうちに何か思い出すじゃろう」 「生霊女とは失礼ね!」 「そのままじゃろうが」 「アタシはもっといい呼び名があるはずよ。そうね……生霊姫でいいわ。アタシにぴったりでしょ。ほら、呼んでみなさいよ」  どうやら自分でつけた呼び名が気に入ったらしい。生霊姫と名付けられた塊は、きゃっきゃと笑うように飛び跳ねると、君の頭上にやってきてふわふわと浮かんだ。 --------------------------------------------------------------------------------- 16:マップ表 ---------------------------------------------------------------------------------  この冒険における出目表は、十の位のために1d3を、一の位のために1d3を振って〈できごと〉を決定します。   〈できごと〉 出目11:〈礼拝堂の老女〉 出目12:〈願いの泉〉 出目13:〈可愛い逃亡者〉 出目21:〈禁断の提案〉 出目22:〈麗しの金色スカーフ〉 出目23:〈ヘラクレオス愛好会〉 出目31:〈ふれあいオルトロス〉 出目32:〈質屋の娘と美しき剣〉 出目33:〈刻の悪魔の思い出〉 --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目11 〈礼拝堂の老女〉  ビウレスの礼拝堂には、今日も多くの参拝者が訪れていた。  新しく建てられた建物で、唯一神セルウェー、知識神ソロンドオル、カラクリ神テクア――三柱の神々にそれぞれ専用の礼拝室がある。 「あれ、あの人見たことあるかも」  生霊姫は、床の掃除をしていた老女に近寄った。ゆっくりとした動作で箒を動かしていたが、違和感に気づいたのだろう、顔を上げた老女はあんぐりと口を開けて腰を抜かした。彼女には、浮かんだ生霊姫の白い姿が見えるらしい。  生霊姫は、老女の周りをぐるぐると回る。 「んー、やっぱりよく見るとちがうなぁ。こんなおばあちゃん、どこでもいるし」  と、すぐに興味を失ったように離れていく。  老女は〈ロデッサ〉。代々聖堂の掃除係を務めていた家系だったが、聖堂が〈ならず者たち〉に乗っ取られてからは、この礼拝堂で働いているという。  気難しい女性であるが、好物である〈クカのクッキー〉または〈金色のスカーフ〉を持っていて彼女にあげるか、【幸運ロール】(判定値:4)に成功すると機嫌が良くなり、声を潜めて内緒話をしてくれる。それは聖堂にある隠し倉庫についてだった。偶然にも、重要な『手がかり』を1つ手に入れることになる。  ***  ロデッサは次のように話してくれる。 「何年も前に、聖堂はならず者たちに襲われ、そのまま奴らのアジトになっちまったんだよ。当時の仲間は全員殺されて、残ったのは私一人さ。でも奴らは、聖堂にある本当に価値のある宝に気がついちゃいないんだ。隠し倉庫は簡単には見つからないように作られているからね。あんたにはこっそり教えてあげてもいいよ。もちろん、持ち出すにはあのならず者を退治する必要があるけどね。ところで、あの人魂はいったいなんだい? 聖堂の隠し倉庫にも、悪霊を封じた壺があったらしいけど……まさか、同じようなもんじゃないよね?」   --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目12 〈願いの泉〉 「わあ、願いの泉まだあるのね! 懐かしい」  ビウレスの大通り。その中央にある広場には、石造りのモニュメントを中心に水が満たされている。  旅人たちが集まり、金貨を投げ入れては願い事をしていた。ここは〈願いの泉〉として知られる観光名所だ。  泉に何か願うのなら、金貨1枚を減らして、【幸運ロール】(判定値:3)を行うこと。成功したら、次の3つのうちから1つの報酬が得られる(主人公が願ったものを選んで良い)。  ・【生命点】2点の回復  ・【副能力値】1点の回復  ・次に行く〈できごと〉をマップ表から選ぶことができる。  ***  モニュメントは知識神ソロンドオルと、かつて塔の主だった魔法使いを象徴したもの。作者ミロスは、ビウレスが誇る歴史的彫刻家である。 「アタシ、ここでずっと願っていたの。この美貌が永遠に続きますように、って」  生霊姫は懐かしむように語り始める。  君は、彼女の素性に関わる話かもしれないので、多少うんざりしつつも耳を傾けることにする。 「ん? なに、その顔。……まあいいわ、それでね。この泉には魔法がかけられているって噂だったの。だから期待してたんだけどね、さすがに永遠の美貌を叶えるような効力はないんだって」  そこで、生霊姫はくるりと向きを変えて、君に言葉を投げかける。 「あ、でもアンタのちっぽけな願いくらいは叶うかもよ。金貨1枚投げ入れてみたら?」   --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目13 〈可愛い逃亡者〉  白猫が君の横を通り去ろうとする。 【器用ロール】(判定値:3)を行うこと。成功すれば、白猫の捕獲に成功する。チャンスは一度きりだ。   ◆捕まえた白猫が持っていたもの  白猫は、魚の形をした投げナイフを咥えていた。  持ち主である獣人に内緒でこれを持ち物に加えてもいいし、引き渡して報酬の魔法薬を受け取ってもいい。 ・〈フィッシュナイフ〉(金貨30枚分の価値。片手武器。【水中】の敵への【攻撃ロール】時+2のボーナスがある。投擲しても戦闘に勝利すれば回収してまた使用する事ができる。ただし命中した敵が逃走したり、自分が逃走した場合は回収できず失われてしまう。)   ・〈魔法薬〉(金貨50枚分の価値。生命点が最大値まで完全回復。1回分)  白猫の捕獲に失敗した場合でも、獣人からこの〈魔法薬〉を金貨50枚で購入することも可能である。  *** 「可愛いネコちゃん♡」  生霊姫が嬉しそうに声を上げた。  見ると、石造りの家々の屋根の上を、白い毛並みの猫が軽やかに走り抜けていく。 「待て〜、この泥棒ネコ〜!」  一方で、道沿いを魔法使い風の獣人が駆けてくる。  獣人もネコ科の顔をしており、豹柄の痩せた毛並みが特徴的だ。 「まあ、猫が猫を追っかけて。どっちも可愛いわ」  生霊姫が楽しそうに言う。  獣人は途中で諦めたように立ち止まり、肩で息をしながらこちらに声をかけてきた。 「くそう、店の品を盗みやがって……。アンタ、あの猫を捕まえてくれたら魔法薬を1本やるよ。どうだい、俺の代わりに捕まえてきてくれないか」  彼は、露店で魔法薬や魔法の品を売っているらしく、そのうちの1つを猫が咥えて逃げたらしい。 「アタシに任せて!」  それを聞くなり、生霊姫はビュン、と勢いよく飛び出していった。  しばらくすると、白猫が泣きそうな顔でこちらに駆けてくる。その後ろから、ジャンプスケアの形相で生霊姫が追いかけてくる。 「こら〜可愛いネコちゃん、待ちなさ〜い!」   --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目21 〈禁断の提案〉  ビウレスの地下には賭博場がある。昼間から、多くの種族が場内に入り混じり、怒号や歓喜の雄叫びがあちらこちらから聞こえてくる。  生霊姫はおそるおそる周囲を見回しながらも、興味津々といった様子で君を奥へと導いていく。 ■ルーレット賭博ルール • 掛け金は 金貨1枚から最大5枚まで。 • 当たり数字は d66で決定 • 1回の賭けにつき、【幸運ロール】(判定値:3)を1回だけ行える→ 成功すると1の位だけ振り直し が可能 ■当たり数字と報酬 • 出目11:掛け金に関係なく金貨1枚 • 出目22:掛け金に関係なく金貨2枚 • 出目33:掛け金の3倍 • 出目44:掛け金の4倍 • 出目55:掛け金の10倍 • 出目66:掛け金の20倍 ※それ以外はすべてハズレ。  さらに、当たりハズレに関係なく、合計で金貨10枚を賭けたら〈クカのクッキー〉(金貨1枚相当)をもらえる。  ルーレット賭博は何回行っても構わないが、出目66が3回出た時点で、イカサマを疑われて〈賭博場の用心棒〉が現れ戦闘になる。  〈賭博場の用心棒〉 レベル:5  生命点:8  攻撃数:2  宝物:無し ≪反応表≫ 1-2【ワイロ】(金貨30枚) 3-6【敵対的】   これは【少数種族】【人間型】に属するクリーチャーである。  〈賭博場の用心棒〉に勝利すれば最後の賭けの報酬もそのまま受け取れるが。【逃走】【ワイロ】の場合は最後の報酬は受け取れない。いずれにせよ、これ以上賭け事はできない。 ◆〈生霊姫〉の禁断の提案  3回連続でハズレが続くと、〈生霊姫〉がこっそり囁いてくる。 「アタシが協力しようか? 誰にも見えてないようだし……ね?」  この提案に乗るなら、〈生霊姫〉が金のボールを賭けた数字の方向に操作する。  十の位を6に固定し、1の位だけを振る。この場合も【幸運ロール】を1回だけ行える。  この提案は、3連続でハズレるたびに言ってくる。  *** 「賭け事なんてやったことないわ。あなたがやるなら見ててあげてもいいわよ。ほら、あのルーレットを使うやつにしましょ」  彼女が興味を示したのは、数字が刻まれた円盤と金のボールが回るルーレット台だった。当たりの数字にボールが落ちれば賞金がもらえる仕組みだ。 --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目22 〈麗しの金色スカーフ〉  生霊姫に〈金色のスカーフ〉が欲しいと、強くせがまれる。  金貨100枚を支払う気があれば、この〈金色のスカーフ〉を正規に購入できる。  また、【器用ロール】(判定値:4)を行い成功すれば、〈金色のスカーフ〉を盗むことができる。失敗したら、〈警備員〉が呼ばれる。  もちろん、生霊姫のこの我がままを無視しても良い。その場合、しばらく彼女は君のことを「臆病者の意気地なし」「最低のチキン野郎」と罵倒し続ける。  〈警備員〉 出現数:1d6+1  レベル:2  宝物:なし ≪反応表≫ 1-3【ワイロ】(1体につき金貨5枚) 4-6【敵対的】  これは【善の種族】【人間型】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  このクリーチャーは第3ラウンドまでに撃退できなかったら、次のラウンドで仲間を呼ぶ。1d3人の警備員が次のラウンドから戦闘に加わる。  【逃走】した場合でも、警戒をされるため、この〈できごと〉はめくったパネルとしてカウントすること。    盗みに成功した場合、続いて【幸運ロール】(判定値:3)を行う必要がある。これにも成功すれば、現場を誰にも見られず、しばらく店主も盗まれたことに気がつかない。無事にその場を離れることができる。失敗したら、やはり〈警備員〉が呼ばれる。 。  〈金色のスカーフ〉  ※本来は金貨100枚の価値だが、盗難品のためポロメイアで売ることはできない(ただし【ワイロ】としては有効)。他国で売る場合は、劣化によって価値が落ちている。100枚から1d6×20枚を引いた金貨の枚数が買い取り枚数となる。  *** 「今どきの流行りの服がみたいわ。ドレスとか、アタシの頃とだいぶ違うのかしら。武器や防具なんて興味ないの。服飾店に行きましょうよ」  多くの店が立ち並ぶ商店街を歩いていると、生霊姫が言った。 「ほら、あそこ。早く入りましょう!」  ドレスの仕立て屋だった。『優雅なラクダ』亭というのが店の名前だ。入ったはいいが、ドレスを仕立てる予定があるわけではない。古着屋もしていたので、なんとなくそちらに足を運ぶ。 「あ、あのスカーフが欲しい。絶対欲しい。買って。買いなさい。お金はないし、アタシは払えないけど絶対買って」  見ると、金箔の刺繍が入った高貴なスカーフだ。唯一神セルウェーを形取った紋様のようだ。  手に取ろうとすると、ラクダ人の店主は慌てて遮った。 「お客様、それは触っちゃダメな奴だよ。年代物でね、百年以上前に貴族が身につけていたものだ。昔の聖堂の寄贈品で、たしか有名な芸術家の妻が身につけていたものらしい。洗ったら価値が落ちそうで、手入れも慎重にしているんだよ。今日は陽に干すのが目的で展示してるだけだよ。買うとしても高いよ。とても冒険者風情じゃ手に入らない代物さ。危ないって? そのために高い金払って警備を雇ってんだよ」  ラクダ人の店主には生霊姫の声は聞こえていない。 「いやいやいや、欲しい欲しい欲しい、買って買って買って」  一応金額を聞くと、金貨100枚だという。 「わかったわ、アタシがジャンプスケアでそのラクダ人を気絶させるから、その隙に盗りなさい。お金がないならそうしましょ?」  生霊姫は君の耳元でそう囁いた。 「なんでそんなに欲しいのかって? だってあれはアタシのだもん。絶対アタシが巻いていたスカーフなんだから。他の人につけさせたくなんかないわ」  その提案にのるならば、生霊姫は早速ラクダ人の目の前に顔を出現させる。しかし叫び声をあげこそすれ、気絶はしない。 --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目23 〈ヘラクレオス愛好会〉 〈ヘラクレオス愛好会〉の会長〈アラン〉から、腕相撲勝負を挑まれる。【腕相撲】の勝負を受けるなら、以下のルールで行うこと。受けない場合は、ここを立ち去る。 ◆【腕相撲】のルール • 武具による修正は得られない • 【筋力ロール】(判定値:4)を行う。  成功で+1点、失敗で−1点とし、合計+3点で勝利。合計−3点で敗北。 • 10回の判定で決着がつかない場合は引き分け。引き分けの時、疲労で【生命点】1点を失う。 • この勝負で消費する【筋力点】は、【判定ロール】の回数に関係なく1点のみ。   ◆〈生霊姫〉の協力 「アタシも協力するわ」 〈生霊姫〉の協力を得るなら、彼女は勝負どころで〈アラン〉に【ジャンプスケア】を仕掛ける。驚いた〈アラン〉の力は緩み、自動的に1回の【判定ロール】は成功する。腕相撲勝負で+1点が付加される。   ◆勝利すると、〈ホーク〉はありがた迷惑な顔をする。「親父に頼まれたのか」と呟いて悔しそうにうつむく。  負けてしまったら、潔く武器を1つ置いてここから立ち去るしかない。 *** 「アタシ、お酒は飲みませんから。あの臭いも嫌いなの」  情報を集めようと酒場に入ろうとした瞬間、生霊姫は薄い陰影だけの顔を背けた。 「あら、ドワーフのお坊ちゃんがあんなところに」  見ると、酒場の隣のある二階建ての建物に、ホークが入るところだった。 「後をつけましょう」  人の意見などお構いなしで、先に建物へ入ってしまう。仕方なく後を追うと、どうやらそこは身体を鍛えるための施設だ。剣技や格闘技などの技術ではなく、純粋に筋肉を鍛える場所らしい。 『ヘラクレオス愛好会』と書かれた看板が掲げられている。  中では、数人の愛好家たちが鍛錬に励んでいた。ホークは、目の前に美女のスケッチを置いて、黙々と足腰を鍛える反復運動を続けている。 「ようこそヘラクレオス愛好会へ。初めての方ですか? 初めての方は特別に僕に腕相撲で勝ったら、入会金を無料にさせていただきますよ」  そう言いながら、上半身が異様に鍛えられた壮年の男が近づいてきた。おでこが広く、歳の割に艶々とした肌。しかし、貼り付いたような微笑みはどこか不気味さを感じさせる。ピチピチの服の胸元には、七本脚の蜘蛛が描かれている。 「ホークくんのお知り合いですか? 彼も僕に挑戦しましたが、残念ながら成功はしませんでした。入会金の金貨50枚を払っていただきましたとも。そして毎日ああやってメニューに励んでいる。素晴らしい青年です」  男性は愛好会の会長でアランと名乗った。武器や格闘術の鍛錬はないのかとたずねると、 「そんなものは必要ありません。僕たちに必要なのは誰にも負けないパワーと無駄のない美しい筋肉」  そう爽やかに答えた。 「良かったら、私の力を試してみませんか? そうですね。あなたが勝ったらホークくんの入会金50枚を返しましょう。私が勝ったら、あなたの持つ武器を1つ差し出してください。さあ、どうしますか?」  勝負は腕相撲だ。   --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目31 〈ふれあいオルトロス〉 〈火吹き獣〉 出現数:1d6+1  レベル:5  宝物:なし ≪反応表≫ 1-3【ワイロ】(1体につき1個の食料) 4-6【敵対的】  これは【動物】【龍族】【怪物】【騎乗生物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは、第0ラウンドと接近戦の両方において、口から吐く炎によって攻撃を行う。その攻撃特性は【炎】である。  〈火吹き獣〉は、炎への耐性を持っているため、【炎】を用いた攻撃によるダメージを受けることがない。 ◆勝利したら、次のうちから1頭を選んで、従者として連れて行っても良い。(いずれも【従者点】1点を必要とする。) ・〈闘犬〉(「戦う従者」 技量点:1 生命点:1 攻撃特性は【斬撃】) ・〈捜索犬〉 (「戦わない従者」 技量点:0 生命点:1 *この犬を帯同させていると、主人公の【器用ロール】に+1のボーナスが受けられる) ・〈しあわせ犬〉 (「戦わない従者」 技量点:0 生命点:1 *この犬を帯同させていると、主人公の【幸運ロール】に+1のボーナスが受けられる)    一頭を選ぶと生霊姫は次のように言ってくる。 「アタシは、何も悪くないわよ。むしろアタシのおかげよね。こんな役立ちそうな可愛いワンちゃんを連れて歩けるんだから。恩に着なさい」   *** 「あ、可愛いワンちゃんたちがいる!」  生霊姫は、勢いよく飛んでいった。  大通りから外れた場所に、大小さまざまな犬が柵に分けられて並んでいる。特に小型犬の柵には人だかりができていた。  看板には『ふれあいオルトロス』とあり、その下に『番犬養成所』の文字。中型犬や大型犬の鋭い眼光を見ると、確かに番犬という言葉が似つかわしい。 「あっちのは何かな? 見てきま〜す」  生霊姫はさらに奥へ進み、『特注犬』と書かれた柵へ向かった。数は少ないが、そこに入っている獣たちは、さらに大きな体躯をしていた。 『近寄るな危険』と注意書きがあるが、姫はまったく気にしていない。  特注犬たちはみな顔を伏せて眠っていたが、生霊姫が近づくとピクンと耳を立てた。 「あらあら、あなたたちはどんなお顔かしら? こっちを向いて。向かないの、失礼ね。こうしてやる」  生霊姫は特注犬に対して、ジャンプスケアを行った。すると、特注犬は勢いよく顔を上げた。驚きと怒りが混ざった表情。一頭が遠吠えをあげると、残りの犬たちも一斉に目覚め、口から炎を吐き出した。  慌てて逃げる生霊姫。追う特注犬の群れ。その正体は火吹き獣だ。犬の俊敏さ、馬の脚力、龍の鱗と口から吐き出す高熱の炎。魔法の力で作り出された混合生物だ。  生霊姫が柵の外へ出て一安心、と思ったのも束の間、火吹き獣の群れは次々と柵にぶつかり、壊して外へ出た。今度は周囲の人々が悲鳴を上げた。 「ちょっと、なんでアタシを追っかけてくるのよ! 失礼しちゃう! あ、あんた、早くなんとかして!」  被害が出る前に、火吹き獣を止めなければならない。  無事に倒したら、『ふれあいオルトロス』の店主は深く頭を垂れて平謝りする。幸い、彼にも生霊姫は見えていなかった。 「よろしければお詫びとして、うちの番犬を連れて行ってください。特注犬とは違って、躾は行き届いてますので……特注犬も充分に調教していたのですが……なぜ急にあんなことに……いや、失礼……こちらの失態であることに間違いございません……」 --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目32〈質屋の娘と美しき剣〉  〈下水ワニ〉 レベル:4  生命点:9  攻撃数:1  宝物:なし ≪反応≫ 1-3【ワイロ】(2個の食料 or 〈弱いクリーチャー〉1体) 4-6【敵対的】   これは【動物】【水中】に属するクリーチャーである。このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  〈下水ワニ〉に対する【防御ロール】でファンブルが発生した場合、対象のキャラクターの体に〈下水ワニ〉が噛みついたまま離れてくれない。次のラウンド以降、〈下水ワニ〉は獲物を食いちぎるために回転を始める。そのため、各ラウンドが終わるたびに、噛みつかれたキャラクターの【生命点】を2点減らさなければならない。その代わりに、この状態の〈下水ワニ〉の攻撃数は「なし」として扱うこと。 ◆勝利したら、ホークが質入れした〈白兎の銀剣〉 を半値の金貨25枚で買い戻すことができる。   〈白兎の銀剣〉 (金貨50枚の価値 攻撃ロールに+1の修正がつく。スライダーが鍛えた逸品)  *** 「騒がしいわね」  生霊姫がそう言ったので、騒がしいのはむしろ彼女の方では……と思わないでもなかったが、事態は急を要した。  一週間前の地震で地盤が緩んでいたらしい。突然、地面に大きな亀裂が走り、少女がその中へ落ちてしまったのだ。幸い、下には地下水が流れており、けがは軽いようだった。 だが、そこには凶暴な怪物が棲んでいた。下水ワニだ。 「だ、誰か! 俺の娘を助けてくれ!」  父親が必死に叫んでいる。  無事に娘を救い上げることができると、 「おとーちゃん、ごめんなさい……」 「バカやろう。勝手に店の品物を持ち出して、重かっただろう? だから落ちたんだ」 「ごめんなさい……どうしても欲しくなっちゃって……」  娘の手には、丁寧な装飾が施された一本の剣が握られていた。素人目にも、それはただの剣ではないとわかる美しさだ。 「これはスライダー商会の親方が打った逸品。実は、あの親方の息子が質に出してきたんです。おかしいと思って親方に伝えたんですが……そのままでいいと言われましてね。娘はそれが欲しくなって、勝手に持ち出してしまったんです」 --------------------------------------------------------------------------------- ◯出目33 〈刻の悪魔の思い出〉 〈下級悪魔〉 出現数:1d6  レベル:4  宝物:修正-1 ≪反応表≫ 1【劣勢であれば逃走】 2-6は【敵対的】  これは【悪魔】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーによる攻撃は【炎】の特性を持つ。 〈下級悪魔〉に生霊姫の【ジャンプスケア】は通用しない。 *** 「ねえアナタ、ポロメイアにはまだ悪魔が蔓延っているの?」  裏路地に入った途端、生霊姫がそんなことを言い出した。 「私の頃はね、刻の悪魔っていう邪悪なのがいたのよ。そいつのせいで塔が倒れるほどの大地震が起きて、ビウレスの人々の『時間』を奪っていたの。もう街はめちゃくちゃ。新しい人が入ってきても、そのたびにまた利用されて……ずっと刻の悪魔の巣みたいになってたわ。あの人が立ち上がるまではね」  生霊姫は宙空で立ち止まり、首を傾げるように身を捩る。 「なんでこんなこと思い出すのかしら? あ、きっとあれね。ほら、あそこ。あれって悪魔のコスプレじゃない? 何かお祭りでもあるの?」  指差した先には、ヤギの角、トカゲの尾、コウモリの羽根。妙にリアルな装飾をつけた黒い姿があった。君も先ほどから気になっていた。リアルすぎる。 「手に鉤爪がついてるのに、なんであんな曲がりくねった槍や剣まで持ってるの? 目もギラギラしちゃって……わお、口から火まで吐いちゃった。えーと、もしかしてホンモノ?」  下級悪魔がこちらへ歩み寄ってきた。昼間から、街中を堂々と歩いている。  彼らは生霊姫を見ると、舌なめずりをした。 「こんなところに人魂が浮いているとはな」 「オレたちの大好物だ」  生霊姫は青ざめて、慌てて君の後ろに隠れる。 「ちょ、ちょっと! 絶対にアタシに近づけないでよ!」 --------------------------------------------------------------------------------- 17:宝物表 ---------------------------------------------------------------------------------   【宝物表】 出目【1以下】 金貨1枚 出目【2】   1d6枚の金貨 出目【3】   2d6枚の金貨(下限は金貨5枚) 出目【4】   1個のアクセサリー(1d6×1d6枚の金貨と同等の価値) 出目【5】   1個の宝石・小(1d6×5枚の金貨と同等の価値。下限は金貨15枚の価値) 出目【6】   1個の宝石・大(2d6×5枚の金貨と同等の価値。下限は金貨30枚の価値) 出目【7以上】 【魔法の宝物表】でダイスロールを行う。   【魔法の宝物表】 出目【1】 〈火消しの腕輪〉 出目【2】 〈白兎の兜〉 出目【3】 〈瑠璃色の魔法薬〉 --------------------------------------------------------------------------------- 18:魔法の宝物表 --------------------------------------------------------------------------------- ●【1】〈火消しの腕輪〉  敵から【炎】の属性の攻撃を受けたとき、【判定ロール】に+2修正が受けられる。ただし本人も敵に対して【炎】の属性による攻撃を行うことはできない。3回の戦闘で効力が失われる。 ------------------------------------------------------------ ●【2】〈白兎の兜〉  スライダー製作の小ぶりな兜。これは「頭部に身につける装備品」で、生命点に+1のボーナスがつく。ただし標準より大きな体型では使えない(プレイヤーの判断による)。白銀の兜の上に、白く可愛い長耳がついているが、これはただの飾りではなく魔法のアンテナであり、【察知】をする際、+1のボーナスがつく。 ------------------------------------------------------------ ●【3】〈瑠璃色の魔法薬〉  古の魔法使いが作ったと思しき魔法薬。複数の色が混ざった不思議な色をしている。3回で使い切るが、効果が違う。サイコロを振ってその時の効果を決めなくてはならない。1回目で出た効果は、2回目3回目では現れない。2回目で出た効果は3回目では現れない。つまり1回目2回目で出なかったものが、3回目の効果だ。  以下が、混成魔法薬の3回の効果である。  ・生命点が最大値まで回復  ・副能力値が最大値まで回復  ・バーサーク化。このシナリオが終わるまで【攻撃ロール】+1、【防御ロール】−1の修正が入る。 --------------------------------------------------------------------------------- 19:中間イベント ---------------------------------------------------------------------------------  一旦、〈シュガーブーツ商会〉へ帰ると、壮絶な親子喧嘩が始まっていた。 「人の物を勝手に触るな!」 「店の掃除をしてただけじゃ。ついでにお前の部屋も片付けてやったんじゃ。いい大人がくだらんガラクタばかり集めおって」  工房には、多様な物が並んでいた。大半はホークの私物らしい。どこから手に入れたのか、子供っぽい品が目立つ。その中で特に目を引くのは、英雄ヘラクレオスのレプリカ像だった。   ◆【筋力ロール】を成功するまで繰り返し行うこと(目標値:6)。成功すると親子喧嘩の仲裁を成功したことになる。何回目の【筋力ロール】で成功したかによって、後述のボーナスが変動するので、カウントしておくこと。    無事に喧嘩の仲裁が終わると、ホークは誇らしげに語った。 「俺は親父とは違う。多くの魔物を倒して、いつか怪力王ヘラクレオスのように伝説になるんだ」  怪力王ヘラクレオスとは、ビウレスの近隣の村で生まれた大昔の英雄だ。魔法使いの塔が立っていた頃に活躍し、幾多の冒険を達成した。ホークに限らず、心酔する者は多い。 「あ、これアタシ!」  と、突然、生霊姫が声を上げた。  壁に立てかけられていたのは、古いスケッチだった。半裸の美女が描かれている。  急に皆の視線がスケッチに向けられたため、ホークは顔を赤らめた。 「これは俺の宝物だ! 親父め、おれの初恋の女性のスケッチまで持ち出しやがって……絶対に許せない!」  そう言って、ホークはスケッチを抱きかかえ、慌てて部屋から出て行った。 「あれがアタシよ。絶対そう、間違いない」  生霊姫の呟きに、スライダーが付け加える。 「あの絵はミロスのナーヴィス……ワシの曾祖父さんが描いたスケッチじゃ。無くなったと思ったら、ホークが持っていたのか」 「ミロス……なんだか胸がざわつく名前」  スライダーが語るには、彼の曾祖父ミロスは彫刻家で、作品のモデルをよくスケッチしていた。『ミロスのナーヴィス像』はそんな彼の代表作の一つで、その彫像はかつてビウレスの聖堂に寄贈されたという。 「だが、聖堂はならず者たちに荒らされた。今やミロスのナーヴィス像は行方が知れない」 「思い出した! そう、アタシはナーヴィス。アタシはポロメイア一の美女だった。だから、ミロスに頼まれてモデルになったの。それには他の理由もあった。ミロスは彫刻家であり、魔道士でもあった。彼は自分の作った彫像に魂を宿らせる魔法を研究していた。アタシは永遠に美しいままでいたいから、それをお願いしたの」  ミロスがスライダーの曾祖父であるなら、それは相当昔の話だ。 「身体? そんなのもう、とっくにお墓の中で朽ち果てているわ。でもいいの。今のアタシの体は彫刻の方なんだから」  ならば、その彫刻を探し出せば、生霊姫は身体にもどることができる。……はずだ。  出かけ間際に、スライダーに呼び止められる。 「親子喧嘩の仲裁なんかしてもらってすまんかったのう。ほれ、ここから好きな物を一つ持っていけ」   ◆何回目の【判定ロール】で喧嘩を止めたかによって、もらえる物が違う。下記の内容に従って、1つを選ぶこと。  ・1回目→〈魔法の宝物表〉から欲しい物を1つ選ぶ。  ・2回目→〈魔法の宝物表〉から1d3によってランダムに決める。  ・3回目→片手武器(金貨5枚の価値。攻撃特性は【打撃】)、スリング(金貨3枚の価値)、薬草(金貨5枚の価値。生命点2点回復効果。1回分)のいずれか1つ。  ・4回目以上→片手武器(金貨5枚の価値。攻撃特性は【打撃】)薬草(金貨5枚の価値。生命点2点回復効果。1回分)のいずれか1つ。 --------------------------------------------------------------------------------- 20:最終イベント① ---------------------------------------------------------------------------------  〈聖堂の盗賊団〉 出現数:1d6+3  レベル:3  宝物:修正-1 ≪反応表≫ 1-3【ワイロ】(金貨100枚(宝石やアクセサリーも含む)) 4-6【敵対的】   これは【善の種族】【人間型】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  この戦闘は「狭い場所」で行われる。 ◆〈聖堂の盗賊団〉を撃退できたら、聖堂を探索する。 『手がかり』を所持していれば、〈隠し倉庫〉を見つけることができる。または〈金色のスカーフ〉を所持し、かつ捜索犬を連れていれば、スカーフにかすかに染み付いた匂いをたどることで、〈隠し倉庫〉の発見に成功する。  どちらもない場合、【器用ロール】または【幸運ロール】のいずれかに成功する必要がある(判定値はいずれも5)。この【判定ロール】を失敗するたびに、1d6人の盗賊団の追っ手が来るので、その度に戦闘を行い、追い払わねばならない(能力値は〈聖堂の盗賊団〉と同じ)。  〈隠し倉庫〉を見つけたら、〈最終イベント②〉へ進むこと。  ***  聖堂の司祭は、頬に切り傷がある、目つきの鋭い男性だ。  礼服を着ていなければ、盗賊にしか見えない。 「ここにはミロスの彫像なんてないよ。何年も前にあった火事ですべて焼けてしまった」 「そう火事があった……でもアタシは助かった。それで、地下の隠し倉庫に保管されたの。厳重な鍵をされて」  頭の上で生霊姫が呟いた。少しずつ思い出したようだ。聖堂にあったのは間違いない。  その話を司祭にすると、彼は目の色を変えて、 「へえ、火事で焼けた? そんな話は聞いたことねえが。ではその鍵はどこだ?」  と迫ってきた。 「鍵? そんな物アタシ知らないわよ。大事に保管されてたのはこっちなんだから」 「俺たちもずっと探してたんだ。鍵の在処を知っているのなら、早く吐かないと仲間を呼ぶぜ」  どうやら司祭は偽物のようだ。ビウレスの聖堂はならず者たちに乗っ取られている。  牧師や礼拝に来たと思われていた人々は服を脱いだ。その正体は武装している盗賊団だ。 --------------------------------------------------------------------------------- 21:最終イベント② ---------------------------------------------------------------------------------  〈人喰い猿モンザの悪霊〉 レベル:5 生命点:8 攻撃回数:3 宝物:修正+1 ≪反応表≫ 【死ぬまで戦う】  これは【怪物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーの攻撃は【打撃】の特性を持つ。  温度の変化には強いため【炎】や【氷】の攻撃特性を持つ攻撃は効果がない。 【斬撃】の特性を持つ武器で攻撃した場合は、大理石の身体には効果が薄いので【攻撃ロール】に−1の修正を受けてしまう。 【打撃】の特性を持った武器で攻撃した場合は【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  この戦闘は「狭い場所」で行われる。  倒したら、〈冒険の終わり〉へとすすむ。  *** 「ここ、この埃っぽい空気、何年も陽に当たっていない暗闇、覚えている。ここよ、ここがアタシのいた場所!」  光で隠し倉庫を照らすと、中はひどい有様だった。  長い年月のあいだに、地震や天災にも幾度となく見舞われていたのだろう。収められてある古い機械や宝が収められているはずだが、劣化したり壊れたりしている。  中央にあったナーヴィスの彫像は台座ごと床に倒れ、両手が肩からぽきりと折れている。 「ああ、なんてこと!」  生霊姫は大袈裟に嘆いた。それでも自分の身体に戻ろうと、倒れた彫像に駆けていく。すると、それを遮るように、黒い塊が邪魔をした。それは霧のような形状をしていて、どこか生霊姫と似ていたが、禍々しさが数段上だ。悪意が渦を巻き、そこだけ空気がより冷たく重く感じられる。  黒い塊は、生霊姫を跳ね飛ばすようにして、自らが彫像へと吸い込まれていく。  倒れた台座が、音を立てながら動いた。巨大な指のような形の触手が、台座の横から生えている。それは力強く床を突き、身を起こした。彫像の肩の断面から、肉が盛り上がり、新しい腕が伸びた。それは野生の猿のような剛毛で、鋭利な爪を光らせている。 「ヒッヒッヒ。壺から出られたというのに、こんな暗闇でどうしようかと困っていたところだ。よくぞ光を届けてくれた。久方ぶりの光、心地よいのう」  顔は美しい女性のはずだが、表情は狂った歓喜に歪んでいた。 「あなた誰よ! それはアタシの体よ、なに勝手に入ってんよ、すぐに返しなさい!」 「ワシは石喰い猿のモンザ。大昔ヘラクレオスに倒された大猿よ。ワシは刻の悪魔と契約し、死後も長いあいだ悪霊となって石ばかり喰っておった。しかしそれも魔道士ミロスによって壺に閉じ込められてしまった。地震で壺が割れて自由にはなったが、真っ暗な空間が広くなっただけで、なにも見えぬ。どこにも行けぬ。依代となる体もなく困っていたのだ」  モンザと名乗る悪魔は、笑いが堪えきれぬ様子で言った。 「光が当たり視界が晴れると、ちょうど良い体が転がっていた。今日からこれを我が肉体として使わしてもらう」 「ダメに決まってるじゃない! ああもう!」 「無駄無駄、このモンザ、元は怪力自慢の大猿、人間なぞ蹴散らしてやるわ」  美しかったであろうミロスのナーヴィス像は、今やグロテスクな怪物と化していた。 「ほら、あんたしかいないんだから、アタシの体を取り返して! 頼むわよ!」  生霊姫は君をけし掛ける。 --------------------------------------------------------------------------------- 22:冒険の終わり --------------------------------------------------------------------------------- 「ああ身体が壊れてる……これじゃあ戻れないわ」  悪霊は撃退したが、依代であった彫像は無惨な有様だった。隠し倉庫から持ち出すのも一苦労だったが、シュガーブーツ商会からホークが来てくれて、運んでくれた。 「フン、普段から鍛えていればこのくらい……」  そう強がっていたが、工房に辿り着いたとき、ホークはどっと膝から座り込んだ。心底力を出し切ったのか、顔も青ざめている。それでも無理して頑張ったのは、彫像のモデルであるナーヴィスへの憧れであったようだ。 「親父、なんとかしてくれ……」 「ちょっと待っておれ」  スライダーは息子にやれやれといった視線を送ると、彫像を点検していく。 「ひい爺さんほどの腕はないが、このくらいならワシにも修繕ができそうだ」  生霊姫は宙を飛び回って喜んだ。 「親父、治ったら俺にくれ」 「バカをいうな。彫刻家ミロスの傑作じゃ。ビウレスにとって観光価値がある。治ったら、礼拝堂に祀ってもらうこととしよう。生霊女もそれが良いじゃろう? 自らの美貌を多くの者に見てもらえるんじゃ」 「腕もちゃんとくっつくの?」 「もちろんじゃ」 「やったー」 「彫像に戻れば、もう話すこともできないじゃろう。わしも静かに仕事にうちこめるわい」 「そうなのか」  ホークは寂しそうに呟く。  見えてこそいないが、何者かの魂がそこに存在することを、ホークも感じとっていた。 「おい、最後に曾祖父さんのことを聞かせてくれ」  作業を開始しながら、スライダーは生霊姫にたずねた。ミロスはビウレスでは名高い彫刻家だったが、晩年は魔道を極め、街を出たという。その最期の消息は不明だった。 「彼は、最後にピラミッドを作った」 「ピラミッド? そんなものはこの付近にはないぞ」 「私は嘘はつかないわ。愛しき我が夫は、私に永遠の身体を授けた後、消えたの」 「そうか、そなたも妻として、辛い想いをしたのじゃな」  ホークが驚いて声をあげた。 「妻? どういうことだよ」 「そのままよ。ミロスとアタシは夫婦だった。彫像として永遠の魂を残そうとしたのも、私への愛ゆえよ」  スライダーは、生霊姫の言葉をそのまま息子に伝えた。 「ということは……あなたは、もしかしてオレのひい、ひい、ばあさん……?」 「そうなるかな?」 「そうなるのう」 「えええ!」  ホークは両目と口を大きく開き、そのあと脱力して崩れ落ちた。 「お、俺の初恋が……」  生霊姫は、そんな子孫の様子など気にも止めずに、話を続けた。 「ミロスは、刻の悪魔を倒すために奔走した。でもそれができないとわかると、今度はピラミッドを作り、封じたの。そして、その封印が解けないよう、『生きては帰れない砂漠』に隠した。自らの命とひきかえに」 「そうか、曾祖父さんはそんな大仕事をしていたのか……わしも負けてはいられんのう」  そう言ったきり、スライダーは黙り込んで粛々と彫像の修繕を続けた。生霊姫ナーヴィスも過去の思い出に浸っているのか、もう何も言わなかった。  そのようなピラミッドが存在するという噂は、塔街ビウレスどころかポロメイア小国家連合のいずれにも、この時点ではまだ伝わっていなかった。事情通の冒険者だって知らない。  さて、それから数日たったある日のことである。  遠方の仕事から帰って来た二人の弟子が、師匠であるスライダーの元を訪れた。青紫の髪の少年サファイアヘッドと、ピンクの髪の少女ピンクヘッド。二人に血のつながりはないが、双子のような背格好のノームで、性格も明るく健やかだ。 「親方、どうしたんだい?」  サファイアヘッドが、不思議そうに師匠であるスライダーにたずねる。 「お前らには聞こえんのか? このやかましい女の声が」 「さあ、親方がなにを言ってるか、まったく意味がわからないわ。頭がおかしくなった?」 「くそっ、急いで冒険者を呼んでくれ。どこでもいいからこの生霊女を外へ連れ出してもらってくれ」  スライダーの工房の天井に、湯気のような白い塊が浮いている。 「あら、ご先祖様に向かって、その言い草はなに? 彫像として祀られるのは、まあ、ありがたいし気持ちがいいものだわ。だけど、退屈。ミロスはそんなアタシの性格をよく知っていたから、月に一度はこうして魂だけ自由に動けるようにしてくれたってわけ。満月の夜だけよ、ここに来て世間話をするのは。ひ孫なんだから、そのくらいアタシに付き合いなさいよ。じっとして、見られるだけって、ホント退屈なんだから」 「うるさいわ!」  頭を抱えるドワーフの師匠の姿に、二人の弟子は不思議そうにして顔を見合わせる。    一方、息子のホークは、礼拝堂に寄贈された魂の宿っていないナーヴィス像の前で、誓っていた。 「ひいひいばあちゃん……俺は心を入れ替えた。これからは、ひいひいばあちゃんも惚れるくらいの逞しい冒険者になる。あと親父にも胸を張れるくらいのな。見ててくれ。俺は、ヘラクレオスを超える怪力王になる。絶対に」 ◆冒険の報酬として、スライダーから金貨30枚と「白兎の盾」(金貨40枚の価値 生命点+1点ボーナス 【打撃】の【防御ロール】に+1点のボーナス)を獲得する。 また、出目23〈ヘラクレオス愛好会〉の腕相撲勝負に勝利してれば、返金の礼として、金貨10枚が報酬に追加される。  各主人公は経験点1点を獲得する。   --------------------------------------------------------------------------------- 23:and more…… ---------------------------------------------------------------------------------  深緑の装束に身を包んだ一団が、砂の海を横断していた。容赦なく刺し続ける熱波、足元に絡み粘りつく砂塵。そこは、生きては帰れないと呼ばれる、苛烈な環境の砂漠だ。  不意に、先頭を歩く男が立ち止まった。  虚空に腕を伸ばし、空気を撫でるように、上下左右に手のひらを動かす。そうして、乾涸びた声を震わせながら言った。 「シーリーン様……見つけました」  集団は色めき立った。中央にいた細い体つきの女性が、緊張した面持ちでゆっくりと前に歩き出すと、彼女のために、集団は道を開けた。 「たしかに……」  シーリーンと呼ばれた女も、先頭の男と同じように虚空に手を翳し、そこにあるものを確認した。そうして一同を振り返り、高らかに宣言した。 「皆の者、我々はようやく見つけました。予見は真実だったのです。刻の神を封じたピラミッドは、今、確かに我らの目の前に存在します!」  声にならぬ歓喜が、一団を揺らした。死にかけていた顔に、生気が戻るようだった。  彼らは女に続いて前に進み、見えない壁を手探りで辿った。シーリーンを含む主だった者たちが、大きさを測るように手をかざして、四方に散る。そして、長い詠唱を始めた。  しばらくすると、空気がよじれ、まるで透明なカーテンが開かれるかのように、砂漠に巨大なピラミッドが出現した。  積み上げられた大理石には、古代の文字が刻まれている。魔法により隠されていたのを、集団の詠唱で取り払ったのだ。頂点には、煌めくクリスタルが浮いている。  入り口が開き、深緑の一団はピラミッドに入る。  彼らは知っている。ここは、かつてビウレスの魔道士が異能の神を封印した場所だ。歴史から姿を消した神クロノヴァルス。  彼らはその力を復活させ、世界の修正を図ろうとする「クロノシア教」の一団だった。  To be continued...[ローグライクハーフd66シナリオ〈刻の悪魔のピラミッド〉] ---------------------------------------------------------------------------------