『刻の悪魔のピラミッド』 ローグライクハーフd66シナリオ  作:火呂居美智  監修:紫隠ねこ、杉本=ヨハネ、水波流 --------------------------------------------------------------------------------- 1:ローグライクハーフd66シナリオ『刻の悪魔のピラミッド』 ---------------------------------------------------------------------------------  これは「ローグライクハーフ」のd66シナリオです。少し経験を積んだレベルの主人公1人と従者、または主人公2人での冒険に適しています。  GMが許可するなら、13レベルからゲームをはじめることが可能です(1人用プレイではあなたがGMです)。  その場合は、主人公の初期作成時に、通常の10点ではなく13点の経験点を振り分けてください。その場合、そのキャラクターには準備金として金貨20枚が(初期金貨に加えて)渡されます。  ・ゲームマスター:不要  ・プレイヤー数:1-2人  ・プレイ時間:20-40分  ・適正レベル:13-15  ・対象年齢:10-99歳 --------------------------------------------------------------------------------- 2:「ローグライクハーフ」を遊ぶにあたって --------------------------------------------------------------------------------- 「ローグライクハーフ」はルールを確認した後に遊ぶゲームです。新ジャンルではありますが、区分するなら「1人用TRPG」にもっとも近いといえます。ルールは下記アドレスで確認することができます(無料)。 https://ftbooks.xyz/ftnews/gamebook/RogueLikeHalf_BasicRuleSet.txt  PDF版は下記アドレスで入手可能です(要BOOTH会員登録)。  また、紙の書籍でのルールを入手したい場合にも、こちらから購入が可能です。紙の書籍には1stシナリオ『黄昏の騎士』が収録されています。 https://ftbooks.booth.pm/items/4671946 --------------------------------------------------------------------------------- 3:冒険の概要 ---------------------------------------------------------------------------------  アランツァ大陸の南東に位置する、ポロメイア小国家連合。灼熱の砂漠、奇怪な植物が群生する樹海、険しい山岳地帯。それらに国土の大半が覆われて、街道の整備すらままならず、旅人は常に危険と隣り合わせだった。アランツァの名だたる大国と比べれば歴史は浅く、いまだ地図に載らぬ未踏の地域も多い。  一帯が完全に統治されたことはなく、大陸に名を轟かせるような英雄も現れなかった。  国を出ざるを得なかった多くの種族が入植しては集落が興り、過酷な環境に敗れては廃れた。そして、その中で生き残った者たちは、知恵と忍耐に長け、簡単には屈しない気骨の持ち主ばかりだった。  その気質のせいか、国と呼べる体制から小さな村に至るまで、互いに牽制し合い、一つになることはなかった。複雑な地形と、異なる種族の多様な文化が混じり合うには、あまりに多くの障害があった。  しかし、それでも彼らが手を取り合い、なんとか共存共栄の道を探ってきたのには、この地方特有の忌むべき理由があった。  かつて砂漠は巨大な森であり、そこには大量のノードの溜まり場があったという。ノードは魔界から悪魔を呼び寄せ、入植してきた魂を餌食とした。  その悪魔の脅威に対抗するため、人々は手を結ばざるを得なかった。敵対する種族であっても、背中を預け合うしかなかった。    やがて長い努力の末、悪魔は次第に数を減らした。強力な悪魔を封印し、魔界へ追い返す術も確立された。完全ではないものの、脅威は遠ざかった。  だが、ひとたび平和が訪れようとすると、結ばれていた手は冷たく離された。  お互いが自国の利益を優先し始め、関係は再び軋み始めたのである。  そのことが、ふたたび悪魔が蔓延る原因になるとも気づかずに。  こうした時代、ポロメイア小国家連合に、二人の優れた指導者が現れた。  一人は、白の魔法使いの企みを退け、地域の危機を救ったポロメイア王国の若き賢王、エドガー=ガゼルハイデン。  もう一人は、砂漠の小国アルマシウダで皇帝を名乗り、魂吸いと呼ばれる悪魔から国を守り、その勢力拡大を図る野心に満ちた男、アルマである。 --------------------------------------------------------------------------------- 4:プロローグ --------------------------------------------------------------------------------    深緑の装束に身を包んだ一団が、砂の海を横断していた。容赦なく差し続ける熱波、足元に絡み粘りつく砂塵。そこは、生きては帰れないと呼ばれる、苛烈な環境の砂漠だ。  不意に、先頭を歩く男が立ち止まった。  虚空に腕を伸ばし、空気を撫でるように、上下左右に手のひらを動かす。そうして、乾涸びた声を震わせながら言った。 「シーリーン様……見つけました」  集団は色めき立った。中央にいた細い体つきの女性が、緊張した面持ちでゆっくりと前に歩き出すと、集団は彼女のために道を開けた。 「たしかに……」  シーリーンと呼ばれた女も、先頭の男と同じように虚空に手を翳し、そこにあるものを確認した。そうして一同を振り返り、高らかに宣言した。 「皆の者、我々はようやく見つけました。預言は真実だったのです。刻の神を封じたピラミッドは、今、確かに我らの目の前に存在します!」  声にならぬ歓喜が、一団を揺らした。死にかけていた顔に、生気が戻るようだった。  彼らは女に続いて前に進み、見えない壁を手探りでたどった。シーリーンを含む主だった者たちが、大きさを測るように手をかざして、四方に散る。そして、長い詠唱を始めた。  しばらくすると、空気がよじれ、まるで透明なカーテンが開かれるかのように、巨大なピラミッドが砂漠に出現した。  積み上げられた大理石には、古代の文字が刻まれている。魔法により隠されていたそれを、集団の詠唱が取り払ったのだ。頂点には、煌めくクリスタルが浮いている。  入り口が開き、深緑の一団はピラミッドに入る。  彼らは知っている。ここは、かつてビウレスの魔道士が、異能の神を封印した場所だ。歴史から姿を消した神、クロノヴァルス。  彼らは、その力を復活させ、世界の修正を図ろうとする「クロノシア教」の一団だった。            * 「この世界では、だいたい十歳を超えたら、一人の人間とみなされる。最低限、日々生きながらえるだけの食糧の確保をすることができる年齢だ。それが、たとえ盗みだろうと、殺しだろうとしても」  声は続ける。 「十五歳を超えて、一人前となれるかどうかが試される。すなわち自分以外の命を守れるか、だ」  そう伝えるのは、一国の主だった。誰よりも多くの命を守るべき存在だ。 「さらに歳を重ねると、より多くの人間を守らないといけなくなるだろう。責任が生まれる。そのとき彼は、もはや一人の人間ではない。社会の一員、いや、世界の一部となって生きることになる」  瞳の奥が、鋭く光る。その眼差しが、集った者たちがこれから担う、任務の重さを物語っていた。    さて、君は駆け出しの冒険者だろうか? あるいはまだ若者と呼ばれる年頃だろうか? それとも死線を潜り抜けてきた強者、または人生経験を積んだ大人といえる年齢だろうか?  それぞれのキャラクターの資質に見合った〈冒険の始まり〉を選ぶこと。複数主人公の場合、話し合いで決めて構わない。  若者なら、☆ポロメイアの冒険者として始めること。  大人なら、✴︎アルマシウダの冒険者として始めること。 --------------------------------------------------------------------------------- 5:ゲームの特徴 --------------------------------------------------------------------------------- 「ローグライクハーフ」へようこそ。このゲームは1人(または2人)で遊べるTRPGのようであり、ゲームブックのようでもあり、ダンジョンハック系の電源ゲームをアナログゲーム化したようでもあり……。ゲームマスター(GM)はいてもいなくても遊べます。つまり、1人から3人までで遊ぶゲームです。  プレイヤーとしてゲームに参加する場合、あなたは自分の分身である「主人公」を作成します。これは「冒険者」とも呼ばれる、万能ではないが十分に強いキャラクターです。プレイヤーが(つまり主人公が)1人の場合、7人前後の従者とともに冒険を開始します。プレイヤーが2人の場合、主人公2人を中心に冒険を行います。  冒険は「地図」上にある部屋や廊下に踏み込むたびに、対応したできごとを確認していくことで成立します。ある地点に到達するとイベントが発生して、物語が進行します。またある地点にたどり着くと、物語がクライマックスに突入します。 --------------------------------------------------------------------------------- 6:ゲームに必要なもの ---------------------------------------------------------------------------------  筆記用具と六面体サイコロ1個があれば、すぐにもゲームをはじめられます。「地図」と「冒険記録紙」をプリントアウトしておくと、手もとで情報を管理できて遊びやすいでしょう。 --------------------------------------------------------------------------------- 7:ゲームの準備 ---------------------------------------------------------------------------------   「ローグライクハーフ」のシナリオである本作をはじめる前に、あなたは主人公(と、必要なら従者)を準備してください。冒険を進めるためのルールを読むか、いつでも読めるように手もとに置いてからゲームを開始します。 --------------------------------------------------------------------------------- 8:ゲームの進行 ---------------------------------------------------------------------------------    本作は「一本道モード」で遊ぶことを前提にした、ピラミッドの探索する屋内での冒険です。  本文中に***で区切られた以降の文章がある場合、それは主人公たちが今いる場所の状況について語った文章です。読まなくとも物語の進行に影響はありませんが、読むとよりいっそう気持ちが入ることでしょう。  一本道モードについては、「9:一本道モード」を参照してください。   ------------------------------------------------------------- 9:一本道モード ---------------------------------------------------------------------------------  一本道モードでは、あなたは分岐を気にすることなく、d66によってマップを決定していきます。このモードでは、あなたはマップタイルを一定枚数めくることで次のイベントへと進みます。 『刻の悪魔のピラミッド』では、1枚目から3枚目のタイルをめくり、マップタイルに付随するできごとを体験した後に、4枚目の中間イベントのタイル(固定)に進みます。そこから先のマップタイルでは最終イベントが登場する確率が上がっていきます。d66の出目によって、通常のマップタイルの代わりに最終イベントが出現します。次の表を参照してください。 ・5枚目……通常どおり(最終イベントは出現しない) ・6枚目……出目が11~16なら最終イベントが出現 ・7枚目……出目が11~26なら最終イベントが出現 ・8枚目……出目が11~36なら最終イベントが出現 ・9枚目……出目が11~46なら最終イベントが出現 ・10枚目……出目が11~56なら最終イベントが出現 ・11枚目……必ず最終イベントが出現  一本道モードで遊ぶ場合、基本ルールの「42:逃走」を行なったさいには、めくったマップタイルは枚数にカウントしません。主人公たちはその場所には進まず、別の進路を選んだことになります。プレイヤーは改めてマップタイルをめくり、別の場所へと進んでください。 ※中間イベントおよび最終イベントでは、逃走を行うことができません。 --------------------------------------------------------------------------------- 10:冒険とゲームの勝利 ---------------------------------------------------------------------------------     このゲームの勝利とは、シナリオにおける使命を達成することです。『刻の悪魔のピラミッド』では、クロノシア教徒によって甦った〈刻の悪魔クロノヴァルス〉を再び封印することが使命です。 『刻の悪魔のピラミッド』は3回までの冒険を遊べるようにデザインされています。1回の「冒険」は探索を行い、帰ってくる(かゲームオーバーになる)ことを指します。   --------------------------------------------------------------------------------- 11:隊列について ---------------------------------------------------------------------------------  本作における戦闘には、隊列という概念はありません。主人公と「戦う従者」は、敵を好きなように攻撃できます。  敵側の攻撃は、主人公が2人の場合には均等に攻撃が分けられます。  主人公が1人の場合には、攻撃の半分を主人公が受けてください。残りの半分は従者が受けます。  いずれの場合でも、余った攻撃をどちらが受けるかは、プレイヤーが決めてください。 例:インプ7体が主人公と「戦う従者」である兵士3人を攻撃した。インプの攻撃は合計で7回である。プレイヤーは攻撃のうち3回分を主人公が、残りの4回分を従者が受けることに決める。従者である兵士は【防御ロール】に失敗するたびに1人ずつ死亡する。 --------------------------------------------------------------------------------- 12:「暗い場所」について ---------------------------------------------------------------------------------    この冒険にはランタンのような明かり(光源)が必要です。これがない場合、パーティ全員が【判定ロール】に-2の修正を得てしまいます。〈ランタン持ち〉のような、光源を持つ従者を連れていくことで、このペナルティを避けることができます。また、主人公がランタンを持つこともできます(ランタンは初期装備に含まれます)。   --------------------------------------------------------------------------------- 13:ゲームの終了 ---------------------------------------------------------------------------------    主人公が1人死亡したら、冒険は失敗で終了します。最終イベントを終えた場合にも、ゲームは終了します。そのときに条件を満たしていれば、冒険は成功に終わります。  冒険が成功した場合、主人公はそれぞれ1経験点を獲得します。冒険に失敗した場合には、これを得ることができません。   --------------------------------------------------------------------------------- 14:繰り返し遊ぶ --------------------------------------------------------------------------------- 『刻の悪魔のピラミッド』は、同じキャラクターで複数回遊ぶことができるゲームです。ただし、1人の主人公が挑戦できる回数には上限があります。『刻の悪魔のピラミッド』の場合には、同じ主人公で挑戦できる回数は3回までです。別の主人公に変更した場合には、この回数はリセットされます。  1回目に遊ぶときには、「冒険のはじまり(1回目)」と書かれたデータをご確認ください。2回目は「冒険のはじまり(2回目)」、3回目には「冒険のはじまり(3回目)」を読むことで、冒険の状況がさまざまに変化するさまを体験できるでしょう。 --------------------------------------------------------------------------------- 15:本作のみの特徴として ---------------------------------------------------------------------------------    プロローグで示された通り、本作の冒険のはじまりは2通りに分岐しています。(3回目の冒険で合流します。)  ☆で始まる文章はポロメイアの冒険者に関するテキストです。  ✴︎で始まる文章はアルマシウダの冒険者に関するテキストです。  記号なし、あるいは☆✴︎から始まるテキストはポロメイアの冒険者、アルマシウダの冒険者の共通のテキストになります。どちらを選んだプレイヤーもそのまま読み進めてください。 --------------------------------------------------------------------------------- 16:冒険のはじまり(1回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆ポロメイア 「お前たちに求めるのはマリノアに掛けられた呪いを解くことではない。異端者シーリーンの討伐だ」  そう語ったのは、ポロメイアの賢王エドガー=ガゼルハイデンその人だ。王の私室には、選ばれた者だけが集められていた。    兵士長のバーランドによって、詳細の説明があった。  数日前、生きては帰れない砂漠の西方に、巨大なピラミッドが出現した。過去のどの文献にも、そのピラミッドについての記述はなかった。王は、兵士長に現地調査を命じた。  その最初の一隊に、王女マリノアも加わっていた。彼女はセルウェーの信徒として充分な鍛錬を積んでおり、今回が初陣の良い機会と判断されたのだ。  選りすぐりの戦士たちが警護に当てられた。兵士長であるバーランドや、王女の師でもある神官長ベイリー、さらには王女と親しいコビットの女戦士ジル=メガも加わり、これ以上はない布陣のはずだった。しかし……。  ピラミッドで、待ち構えていたのは異端者と呼ばれる女司祭シーリーンだった。異端の神を信じる一派の長だ。  その魔術によって、マリノアは魂を抜かれた。覚えた奇跡や魔法を使うことも許されず、一瞬にして生きる屍のような状態となった。悲劇を前に、護衛たちは調査を断念し、王女を王宮へと連れ帰った。 「王女は、まるで過去をすべて消されたように、何を見ても聞いても反応せず、未来を奪われたかのように瞳は虚ろなままです。かろうじて水は飲んでくれますが、食べ物を口にすることはしません。このまま時が過ぎれば、いずれ衰弱死するでしょう」  エルフの神官長ベイリーが重々しく告げた。マリノアの出陣を後押ししたのが、ベイリーだった。彼はそのことを悔やんでも悔やみ切れない様子で、ずいぶんと憔悴していた。 「そのことはもう言うな」  王は眉根を吊り上げた。 「シーリーンの目的はなんだ?」  ベイリーは首を振った。 「わかりません。国家の転覆、信仰の拡散……あるいは新たな独立国家を打ち立てるつもりかもしれません。いずれにせよ、王女の命を人質にとろうとするような、手段を選ばぬやり方をする限り、邪悪な思想に取り憑かれているに違いありません」 「我らはそのような脅しには屈しない。マリノアのことは案ずるな。あれも王家の一員。国のために身を捧げる覚悟はできている。非情さをもって、異端者シーリーンの一派を討ち取って欲しい。まずは足がかりが欲しい。ピラミッドに潜入し、敵の急所を探り、持ち帰るのだ」  バーランドが前に進み出た。 「お任せください、陛下」  兵士長自ら、ふたたび異端者の討伐に向かうつもりだった。すぐ後ろにはベイリーとジル=メガの姿もある。  彼らは、王の冷徹な命令に覚悟を決めた顔つきをしていた。  集められた者たちは、準備を整えるために次々と部屋から出ていった。    最後に出て行こうとした君を、王が呼び止めた。  部屋には、王と君の二人しかいない。 「異端者の討伐は、彼らベテランに任せておけば大丈夫だ。お前は若い。その若さゆえ、頼みたい」  王の顔は苦渋に歪められた。先ほどまでの毅然とした態度とは、かけ離れた翳りがあった。 「マリノアを救う手立てを見つけてくれ。あれにはまだ未来がある。ああは言ったが、親として、それを完全に諦めることはできぬ。すまぬが、お前はそれを心の片隅に置いて探索にあたってくれ」  王は、君に『黄金虫のブローチ』を渡す。  これを身につけていると、副能力値が【器用点】でなくても『察知』を行うことができる。副能力値が【器用点】の場合は、判定ロールに+1の修正を加えることができる。2回の使用で、ブローチにはヒビが入り効果を失う。  また冒険が終わったとき残っていたら、王に返却すること。 ✴︎アルマシウダ  アルマシウダ皇帝アルマは、選りすぐった部下と冒険者たちを、広間に集めて語った。 「かつて辺境で生まれ、奇跡の子と呼ばれた異端者が、私に使いを寄こした。皇帝よ、永遠の命が欲しくはないか、と。刻の神を信奉し、その布教に力を貸せば、それを約束してくれるそうだ」  皇帝は笑みを浮かべていた。しかし、その場にいる者たちは、彼の表情から怒気が滲み出ているのを感じていた。アルマは荒々しい声で続ける。 「永遠の命? そんなものはクソ喰らえだ。おそらく生きる屍となり、刻の神とやらにこき使われるのだろう。罠というには笑いたくなるくらいの陳腐な発想の提案だ。だが、この誘いを使わぬ手はない。生きては帰れない砂漠の南端に現れたピラミッドは、我らにいずれ不利益をもたらす。使者を送るから、門を開けておくよう返事を出した。奴らの魂胆が現実となる前に、異端者を討ち取れ。そしてピラミッドに何があるのか、刻の神とは何者か突き止めてくるのだ」  アルマの治めるアルマシウダは、貧しく小さな国だった。砂漠に隣接し、大地も痩せている。かつては悪魔の配下となり、糊口をしのいだ時期もある。  だが、悪魔の支配から逃れると、王は多くの移民を受け入れ、富国強兵を急いだ。皇帝を名乗ることを選んだアルマは、二度と誰かの下につく気などなかった。それが、賢王と誉れ高いエドガー=ガゼルハイデンが治めるポロメイアであったとしても、許せることではなかった。 「まずは何か一つ持ち帰れ。ピラミッドの謎に関わるものを。それは若きお前たちの情熱にかかっている」  その場の熱気が高まった。  漆黒の装束に身を包んだ若者たちが、最前列で威勢のよい返事で応えた。黒蜘蛛隊と呼ばれる彼らは、隊長アランが各地から集めてきた精鋭たちである。 「ビウレスのホークよ!」 「はっ!」 「そなたには期待しているぞ。塔街でも敵う者がいない剛力だと聞いている」 「お任せください、皇帝閣下。必ずやピラミッドの秘宝を手に入れて帰ります!」  ホークは、ドワーフの若者だ。体つきは逞しいが、まだ満足に髭も蓄えていない。  そうやって、アルマは一人ひとりに声をかけた。  最後に、君に歩み寄る。そして、他の者たちとはちがう意味ありげな、低い声で囁いた。 「若者たちにとって、この任務はトロフィーを得るためのハントだ。国家のためであると同時に、自分の未来を切り開く命懸けの冒険だ。だが、お前は少しちがう。お前はその経験を活かし、宝を得られずとも必ず帰って来なければならない。お前の任務は宝探しではない。異端者シーリーンの思惑を探れ。あの女の目的を。先ほどはああ言ったが、永遠の命の秘密を手に入れることができるのならば、それに越したことはないのだからな」   --------------------------------------------------------------------------------- 17:冒険のはじまり(2回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆ポロメイア 「バーランドはまだ帰らぬのか?」 「はい。王からの使命を、必ず自分が果たすと言って聞かず……」  一足先に帰還したコビットの女戦士ジル=メガの答えに、エドガー王は焦りの色を浮かべた。 「シーリーンとバーランドはかつて婚約しておりました」  ベイリーが言った。 「そんなことは知っている」 「まさか裏切るとは思えませぬが……」 「そんなことは絶対にない。だが……」  王と神官長は互いに押し黙った。  ジル=メガはコビット村の出身で、兵士長の深い事情までは知らなかった。それでもバーランドに対して少なからず尊敬の念を持っていたため、驚きを隠せない様子だ。 「異端者と兵士長がそんな関係だったとは……」 「二人は同じ村の出身だった。幼馴染と言ってよい。シーリーンは子供の頃から特異な能力の持ち主だった。奇跡の子と呼ばれ、当時はポロメイア全土にその名を知られた存在だった」 「奇跡の子?」  ベイリーが説明を続けた。エルフである彼は、兵士長たちのことも子供の頃から知っていた。 「シーリーンは未来を見る力を持っていた。予見者だ。その力により、多くの危機を救った。将来は神官長になることを嘱望されていたし、我らもそれを望んでいた」 「それがなぜ?」 「いくら未来が見えても、変えられない、救えない未来があることに失望したのだ。セルウェーを捨て、忘れられた神の復活を唱え出した。塔街ビウレスの麓の荒野に伝わる、時を刻む悪魔。シーリーンはそれを時を操る神と信じ、自らを慕うものたちを連れ、砂漠に姿を消した」 「ケリをつけたいのだ」  王は独り言のように呟いた。 「何が王の使命を果たすだ。自らの過去を精算したいのだ、あの馬鹿は」 「エドガー王、一つ報告があります」  うつむく王にベイリーは呼びかけた。 「王女とコインの関係が少し分かりました。コインには銅貨、銀貨、金貨がありましたが、それらは奪われた魂の品格により決定されるようです」  エドガー王は顔を上げると、視線でベイリーをうながした。 「王女のコインは金貨のさらに上、おそらくプラチナのコインと思われます。それを見つければ、王女を元通りにすることができるでしょう」  エドガー王はうなずくと、冒険者を振り向いた。 「聞いていたか? またお前に頼むことになる。そのプラチナコインとやらを、見つけ出してくれ。それと……バーランドが無茶をせぬよう引き止めてくれ。あいつはこの国にとって必要な存在だ。私にとっても……」  ベイリーとジル=メガも旅立ちの準備を始める。  王はしばらく玉座に座り、黙り込んでいた。 ✴︎アルマシウダ 「ポロメイアの王女が眠り姫のように動かなくなったと聞く。それも異端者シーリーンの手によって」  アルマは、新たに得た情報をもとにシュラクと作戦を練る。 「このコインが鍵になるのではないか? エドガーは、こいつが喉から手が出るほど欲しいのでは?」 「左様でしょう。彼らもコインの正体に気がついているにちがいありません」 「あちらの重臣にもエルフがいたな」 「ベイリー神官長は知識に長けたお方です。これらを調べたら、王女には使えないことがわかるでしょう」 「だが、調べるまではわかるまい。これを与える代わりに、何を要求するのが我が国の利益になる?」  シュラクはしばらく考え込んだあと、じっと皇帝の表情を窺った。 「何も要求すべきではありません」 「なに?」  アルマは、不機嫌そうに片方の眉を吊り上げる。 「馬鹿を言うな。せっかくの手駒をただで差し出せというのか」 「そうです。マリノア王女の命に関わることです。結果、役に立たなかったとしても、エドガー王は大いに感謝するでしょう」 「感謝で国は豊かにならない。金か食糧か人材か、あるいはそれらを含めた都合の良い条件を引き出さねば、損であろう」 「皇帝閣下」  シュラクは一介の旅人でありながら、皇帝を前に意見を変えなかった。 「皇帝閣下は、いずれポロメイア小国家連合のすべてを、ご自身の領土にしたいとお見受けします。ゆえに皇帝を名乗っている。ならばマリノア王女を救い、いずれ婚姻を結ぶのです。さすれば戦はせずともポロメイア王の継承権を手に入れることでしょう」 「生ぬるいことを言う」 「私は長い間、大陸中を旅してきました。血を流して国を手に入れてもその統治は長くは続きません。野望は隠し、信頼を勝ち取るが、一番の利益と考えます」 「マリノア王女と、私の婚姻だと……」  アルマはしばらく黙り込み、指で玉座の肘掛けを叩いた。長い沈黙があった。 「まあいい。婚姻の件はともかく、エドガーに恩を売るのも一興だろう」 「コインは3種類、銅貨、銀貨、金貨がありました。それぞれ奪われた人間の資質によって決まると思われます。王女のコインはさらに格が高いものだと思われます」 「それが、まだピラミッドにあるのだな」  シュラクは黙ってうなずいた。  アルマは顎に手を置いて、部屋の隅で待機させていた冒険者を近くへと呼んだ。 「聞いていた通りだ。お前の次の任務が決まった。もう一度ピラミッドへ行け。そこで姫のものと思われるコインを見つけて持ち帰るのだ。重要な任務だぞ。なにせアルマシウダとポロメイアの、二つの国の未来がかかってるのだからな」 --------------------------------------------------------------------------------- 18:冒険のはじまり(3回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆✴︎  砂漠の果てに現れた悪魔の姿は、数日を経ても消えなかった。ピラミッドの頂に置かれたクリスタルに浮かび、憎々しげに周囲を睨みつけていた。  夜になると、空を切り裂き、大地を震わせる咆哮が轟いた。それは国境を越え、人々の恐怖を呼び起こし、闇に潜んでいた下級悪魔たちの活動を活発化させた。  ポロメイアのエドガー王が小国家連合に号令をかけ、その代表者が集められた。  アルマシウダ、塔街ビウレス、コビット村……その他、国の大小に関わらず多くの有志が円卓を囲んだ。彼らの中には、かつては反目し合い、お互いに刃を向け合った者同士も少なくなかった。  しかし、今は共闘をためらうときではなかった。集まった誰もが理解していた。あの悪魔がもたらす災厄は、一国で抗えるものではない。 「諸君」  緊張感を伴った、よく通る声でエドガー王は語りかけた。 「かつて我らの祖先は、かの悪魔により時間を奪われたという。春の芽吹きや秋の収穫、街の発展や技能の継承、それらは悪魔の術により掠め取られ、文明は停滞していた。そう、我々は培った時間を悪魔に食い物とされ、家畜のように進歩のない生を強いられていた。知恵や知識、経験が受け継がれず、多くの歴史が失われた。それに気がついても、悪魔は強大で防ぐ手立てはなかった」  しかし、と王は続けた。  先人たちは、二度にわたり悪魔を追い払った。  一度目は怪力王ヘラクレオスが、その両腕と引き換えにこの世界から追放した。二度目は、ビウレスのミロスが自らが作った英雄の彫像と共にピラミッドに封印した。 「しかし三度、悪魔は我らの前に現れた」  王の背後には、双角の塔を模した紋章が掲げられていた。魔界と繋がる門である死者の塔。そして、その死者の塔を監視する聖職者のための生者の塔。 「長い時をかけて、我らも進歩した。生者の塔を建て、死者の塔から悪魔を魔界に送り返す術を完成させた。悪魔の力はまだ完全ではない。このわずかな猶予に、我らは力を合わせるのだ」  円卓に座っていた一人が声を上げた。 「街中でも、たやすく下級悪魔の姿が見られるようになった。奴らは欲望が抑えられぬ者に、囁きかけているようだ。一年の時間と引き換えに、お前の望みを叶えよう、十年の時間と引き換えにその夢を、野望を実現しよう、と」 「取引された時間は、クロノヴァルスに捧げられているのです」  ベイリーが説明をする。 「刻の悪魔クロノヴァルスは、下級悪魔を使い時間を集め、力を蓄えているのです」  ベイリーが背後に控えていた若い神官たちに指示を出した。彼らは古代文字の描かれた壺を、円卓を囲んだ国の数だけ準備した。 「これらは封印の壺。今なら、この壺に悪魔を封じ込めることが可能でしょう。そうして、死者の塔から魔界へ送還し、二度とこの世界に現れなくするのです」  最初に、アルマシウダの龍人ライディンが立ち上がり、それを受け取った。各国の代表者たちも続いて壺を受け取ると、それぞれ帯同させていた冒険者に預けた。    コビット村の代表者として訪れていた若き相談役ラウ=バジルは、女戦士ジル=メガに壺を託した。 「実は、僕も夜な夜な悪魔に囁かれてだいぶ弱っている。今回は参戦を見送るよ。君に任せる」 「なるほど、女がらみの欲をつかれたか」 「違う」    ビウレスの代表者は恰幅のよいドワーフで、商店を営む職人だった。彼は後ろで待っていた二人の弟子に、渋々といった表情で壺を託す。 「頼んだぞ、サファイアヘッド、ピンクヘッド」 「スライダー親方、合点承知!」  青紫の頭髪をしたノームの少年が元気に答えた。 「本当は、ホークに頼みたかったんじゃが……」 「え、あの性格悪い息子に」  ピンクの髪をしたノームの少女がわざとらしく口に手を当てて、驚く素振りを見せる。 「たしか、俺は怪力王になる! とか言って出奔したんでしょ?」 「力だけのおバカだったよな。愛好会の会長に筋肉を褒められて、のこのこと付いていったんだよ。師匠の言いつけを何も理解していなかった」 「お前ら、言い過ぎだ。あんまり言うと、ご先祖がバチを当てるぞ」  困った顔をして、スライダーは天井を仰ぐ。口が悪い弟子たちはまだ若い。心配そうな面持ちだ。  さて、ビウレスのスライダーは一流の鍛冶師だ。もし、以下のアイテムを所持していれば、金貨を支払い、武具に加工してもらえる。(19:スライダー商会参照のこと。) ☆ポロメイア  エドガー=ガゼルハイデンも壺を一つを取ると、君に手渡した。 「重い任務だが、そなたなら、なんとかしてくれると信じている」  そのあと、王の部下が包みを抱えて差し出した。 「これは我が王家に伝わる家宝の一つだ。今回の任務の役に立つだろう」  包みを開くと、中には美しい兜が入っていた。  中央に太陽を模した紋章が入り、両耳を覆うように天使の羽の飾りが付いている。 『天使のヘルメット』を手に入れる。これは頭部に使用する装備品で、生命点に+1のボーナスがつく。また【悪魔】【アンデッド】から攻撃に対して【防御ロール】に+1のボーナスがつく。この『天使のヘルメット』は今回の冒険が終わった際に、王に返却するため、売ることはできない。 ✴︎アルマシウダ  ライディンは無言で君に近づいた。そして受け取った壺と、一振りの片手剣、それと一枚の護符を渡す。 「皇帝閣下は、お前に任すようにとお伝えになった。せっかく生きては帰れない砂漠に行くのだ。水晶の薔薇を一輪探し出し、持ち帰れとおっしゃっている」  ライディンはそれだけ伝えると円卓に戻った。  渡された黒光りの片手剣は『悪魔殺しの剣』だ。  この剣は【斬撃】の特徴を持ち、【悪魔】の属するクリーチャーに対して【攻撃ロール】+1、【ダメージ】に+1のボーナスが入る。金貨100枚の価値がある。  護符は、『天使の護符』と呼ばれる魔法の護符で、『水晶の薔薇』を運ぶ際に使用するようだ。もし使う機会がなければ、冒険の終わりに返却することになる。 --------------------------------------------------------------------------------- 19:スライダー商会 ---------------------------------------------------------------------------------  ビウレスから来たスライダー商会の本職は、鍛冶屋である。〈冒険のはじまり(3回目)〉で、以下のアイテムを所持していれば、彼らに金貨を支払うことで武具に加工できる。加工したアイテムは所持品から失われる。   ・『アダマンタイト』を所持  金貨70枚で『大地の大盾』1個を製作可能。  または1本金貨10枚で『溶岩の矢』を製作可能。この矢は最大5本まで製作可能。   ・『銀塊』を所持  金貨80枚で『シルバーダガー』を製作可能。  または1本金貨20枚で『白銀の矢』を製作可能。この矢は最大5本まで製作可能。   ・『水晶の薔薇』を所持  金貨50枚で『薔薇のイヤリング』1個を製作可能。  ◆『大地の大盾』  アダマンタイト製の大盾。金貨35枚の価値。【防御ロール】+1の修正。【かばう】+1の修正。戦う従者も装備できる。(主人公の装備品としてカウントすること。)    ◆『溶岩の矢』  1本金貨10枚の価値。先端がアダマンタイトで作られた矢。硬度があり、また空気による摩擦で熱を持ち、威力が高い。射撃による【攻撃ロール】に成功した場合、生命点に1点の追加ダメージを与えることができる(クリティカルによる連続攻撃に対しては効果がなく、最初の【攻撃ロール】のダメージだけが1点増える)。  一度放った矢は再利用できない。『溶岩の矢』は3本で装備品欄ひとつを必要とする。命中の成否に関わらず、使用した矢は消費される。  ◆『シルバーダガー』  金貨50枚の価値。これは「軽い武器」として扱われる。攻撃特性は【残撃】である。  【アンデッド】【悪魔】のタグを持つクリーチャーに対して、装備者は【攻撃ロール】に+1、命中した場合ダメージに+1の修正を得る。    ◆『白銀の矢』  1本金貨8枚の価値。全体を銀で作られた矢。射撃による【攻撃ロール】に成功した場合、【アンデッド】【悪魔】のタグを持つ〈クリーチャー〉に対して生命点に1点の追加ダメージを与えることができる(クリティカルによる連続攻撃に対しては効果がなく、最初の【攻撃ロール】のダメージだけが1点増える)。 『白銀の矢』は3本で装備品欄ひとつを必要とする。命中の成否に関わらず、使用した矢は消費される。    ◆『薔薇のイヤリング』  水晶の薔薇を壊れにくいように加工して作ったイヤリング。つけていると『幸運ロール+1』の修正が入る。兜など被り物と併用すると効力がなくなる。 --------------------------------------------------------------------------------- 20:マップ表 --------------------------------------------------------------------------------- 「ローグライクハーフ」は物語の部分とランダムの部分が存在する、何度も遊べる1人用TRPGです。プレイヤーの1人がサイコロ1個を2回振り、1回目の出目を十の位、2回目の出目を一の位として扱います(これを「d66を振る」といいます)。  このようにして決められたマップに応じて、できごとが起こります。 出目の十の位が1……○隠された何か 出目の十の位が2……◇中立または友好的な〈弱いクリーチャー〉 出目の十の位が3……□イベント 出目の十の位が4……◆トラップ 出目の十の位が5……◇〈弱いクリーチャー〉 出目の十の位が6……●〈強いクリーチャー〉   ○隠されたなにか 出目11〈ゴールデンポップコーン(Golden Popcorn)〉 出目12〈巨大な蜘蛛の巣(Giant Spider Web)〉 出目13〈彫刻家の石ノミ(Miros' Stone Chisel)〉 出目14〈ハヤブサのミサンガ(Misanga of the Falcon)〉 出目15〈水晶の薔薇(Crystal Rose)〉 出目16〈八百万のお札(Yaoyorozu Amulets)〉   ◇友好的または中立のクリーチャー 出目21〈ポロメイアの若きボロ(Polomeia's Warrior Boro)〉 出目22〈彷徨える商人(Wandering Merchant)〉 出目23〈三本傷のコビット(Cobbit with Three Wounds)〉 出目24〈修繕するアリ人(Ant Folk Repairer)〉 出目25〈隊長アランとアダマンタイト(Captain Alan and Adamantite)〉 出目26〈おしゃべりスフィンクス(Chatty Sphinx)〉 □イベント 出目31〈幻の庭園(Phantom Garden)〉 出目32〈怪力王の壁画(Mural of King of Power)〉 出目33〈砂掃きの骸骨(Sand Cleaning Skeleton)〉 出目34〈ゼブラの蝋燭と闇の壁画(Zebra Candle And Dark Mural)〉 出目35〈黄金風呂の浮遊体(Floating Body of the Golden Bath)〉 出目36〈時計塔の模型(Model of the Clock Tower)〉   ■トラップ 出目41〈流砂回廊(Quicksand Corridor)〉 出目42〈海獣の天秤(Sea Beast Scales)〉 出目43〈壁面パズル(Wall Puzzle)〉 出目44〈謎かけスフィンクス(Riddle Sphinx)〉 出目45〈宝箱と黄色い煙(Treasure Chest and Yellow Smoke)〉 出目46〈闇の祭壇(The Altar of Darkness)〉   ◆弱いクリーチャー 出目51〈黒く這うもの(Crawling Black)〉 出目52〈クロノシア教徒(The Believers of Chronosia)〉 出目53〈恐ろしき絵(Eldritch Painting)〉 出目54〈墓標の下に眠る者たち(Sleepers Beneath the Tombstones)〉 出目55〈木像兵団(Wooden Statue Soldiers)〉 出目56〈忍び寄る小恐竜(Creeping Compies)〉   ●強いクリーチャー 出目61〈ヘラクレオスの右腕(Right Arm of the Mighty King)〉 出目62〈ヘラクレオスの左腕(Left Arm of the Mighty King)〉 出目63〈寡黙なスフィンクス(Silent Sphinx)〉 出目64〈輝石の鱗鳥(Iridescent Archaeopteryx)〉 出目65〈白銀の守護者(Silver Guardian)〉 出目66〈オスクリードの巫女(Demon Shaman)〉 ---------------------------------------------------------------------------------   〇出目11 〈ゴールデンポップコーン(Golden Popcorn)〉  ◆『ゴールデンポップコーン』  長い時間と特殊な魔法で精製されたポップコーン。『食料』として3食分まで持っていける。珍品であり、売れば1食あたり金貨10枚の価値がある。 【鳥類】が特に好み、使用することで、《反応表》を【友好的】として扱うことができる。 ***  部屋の隅に、麻袋が積まれている。調べてみると、中には黄金色の穀物が詰められていた。ゴールデンポップコーンと呼ばれる魔法の非常食だ。砂漠の暑さにも強く、虫も付いていない。かなり長い年月が経っているが、その一部は口にすることができそうだった。 --------------------------------------------------------------------------------- 〇出目12 〈巨大な蜘蛛の巣(Giant Spider Web)〉  天井に巨大な蜘蛛の巣が張り巡らされている。  巣には、いくつかの武器が獲物のように絡みついている。自らの「接近戦武器」を使って、それらを獲ろうと試みてもよい。(「接近戦武器を持っていれば何度でも行ってよいが、取得できる各武器はそれぞれ1つまで)  各武器を獲得するための【判定ロール】はそれぞれ以下の通りだ。判定に失敗すると、そのときに使った「接近戦武器」は逆に蜘蛛の巣に絡め取られて失ってしまう。  またファンブルするたびに、〈大グモ〉の群れがやって来て戦闘となる。(【幸運ロール】(判定値:3)に成功すれば、この不運から逃れることができる。)その際、手にしていた「接近戦武器」は蜘蛛の巣に絡めとられているので、第0ラウンドは武器を持たない状態から始まる。   ・片手武器(打撃)→【筋力ロール】(判定値:3) ・両手武器(斬撃)→【器用ロール】(判定値:3) ・円月刀→【器用ロール】(判定値:5) ・影縫いの矢(1本)→【幸運ロール】(判定値:6) ◆『円月刀』  金貨25枚の価値。これは片手武器として扱われる。攻撃特性は【斬撃】である。  攻撃対象となる敵が【斬撃】を弱点とする(【斬撃】による【攻撃ロール】にボーナスがある)場合、各ラウンドでの【攻撃ロール】におけるクリティカルは、通常の1つ下の数でも発生する(6面サイコロであれば、6だけでなく5もクリティカルとして扱う)。このボーナスは、クリティカルによる連続攻撃には適用されない。   ◆『影縫いの矢』  1本あたり金貨30枚の価値。これは弓矢に用いる矢として扱われる。射撃による【攻撃ロール】に成功した場合、対象の生命点にダメージを与えることができないが、次に行われる対象の行動を阻害することができる。(次のラウンドを行動不能にする。次のラウンドで攻撃対象にする場合、【攻撃ロール】に+3の修正がつく)ただし、この矢でクリティカルが発生しても、連続攻撃を行うことはできない。  この効果は【悪魔】【精霊】【神霊】のタグを持つクリーチャーに対してのみ発揮される。  『影縫いの矢』は、3本で装備品欄ひとつを必要とする。命中の成否に関わらず、使用した矢は消費される。  〈大グモ(Giant Spider)〉  出現数:1d3+1  レベル:4  宝物:なし  ≪反応表≫ 1-2は【劣勢なら逃走】 3-5は【中立】 6は【ワイロ】(1体につき食料1個)  これは【虫類】【騎乗生物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。 【ワイロ】で戦闘を回避した場合、1体の〈大グモ〉を【騎乗生物】として利用することができる(【ワイロ】が有効なのは今回の冒険のみであり、冒険が終わると〈大グモ〉は主人公の元から去っていく)。その場合、それは「戦わない従者(技量点:0、生命点:1)」として扱われ、【斬撃】の攻撃特性を持つ。このクリーチャーは【踏破力】を持っている。同行させるには、従者点を1点必要とする。従者の〈大グモ〉は、クモ糸をより集めたロープを作成することができる。この能力によって作られるロープは1本分である。   --------------------------------------------------------------------------------- 〇出目13 〈彫刻家の石ノミ(Miros' Stone Chisel)〉  一見、石材が積まれた倉庫のような部屋だが、実は隠し扉があり、彫刻家でもあったミロスの仕事道具が大事に納められている。  【器用ロール】(判定値:3)に成功すると、その隠し扉を発見できる。 ◆『彫刻家の石ノミ』  金貨30枚の価値。片手武器で攻撃特性は【斬撃】。攻撃がクリティカルで成功した場合、彫刻家ミロスが自ら製作した〈強いクリーチャー〉に限り、一撃で敵を粉砕し、生命点を0とすることができる。(本作に出てくる【ゴーレム】のタグを持つクリーチャーはすべてミロスの製作である。) --------------------------------------------------------------------------------- 〇出目14 〈ハヤブサのミサンガ(Misanga of the Falcon)〉  物置のような場所で、鳥の絵が描かれた小箱を見つける。中には『ハヤブサのミサンガ』が3つ入っている。 ◆『ハヤブサのミサンガ』  ハヤブサの羽で作られたミサンガ。魔法の掛けられた品である。1つが金貨10枚の価値。手首に巻いて念じると、体が軽くなり素早く動ける。【器用ロール】に+1のボーナスがつく。同時に3つまで使用することができる。使用したハヤブサのミサンガは切れてしまい、使えなくなる。3つで1つの所持品とするが、手首に巻いて使える状態にしている場合、荷物としてカウントしなくてもよい。 --------------------------------------------------------------------------------- 〇出目15 〈水晶の薔薇(Crystal Rose)〉 ◆『水晶の薔薇』  金貨50枚の価値。所持しているだけで、【幸運ロール】に+1のボーナスが得られる。 『水晶の薔薇』は繊細なため、ガラスケースが壊れるとすぐに枯れ果ててしまう。戦闘の際に【防御ロール】で、ファンブルをすると失われる。 『天使の護符』を所持している場合、不思議な力で守られるため、『水晶の薔薇』は壊れない。ただし冒険終了時には『天使の護符』と共に『水晶の薔薇』も返却される。   ***  ガラスケースに美しい薔薇が収められている。  茎と葉っぱ、花弁までもガラス細工のように透き通っている。しかし振動で、花弁は揺れた。よく近づいてみると、ガラスの中で薔薇は生きているのがわかる。  水晶の薔薇と呼ばれる幻の薔薇だった。 --------------------------------------------------------------------------------- 〇出目16 〈八百万のお札(Yaoyorozu Amulets)〉  ◆『八百万のお札』  金貨20枚の価値。所持品または所持金を差し出す際に、身代わりとして使える。差し出された者は、なぜか自分が欲しいものを貰ったと錯覚する。【ワイロ】としても代用でき、内容に関わらず1回分の【ワイロ】として使用できる。  あくまで所持する武器や品物の身代わりであり、従者、捕虜、家畜、騎乗生物の代わりとしては使えない。 ***  東方の文字が記された厚手の紙のお札。遥か東方の国のものだが、なぜこのようなところにあるのは謎だった。彫刻家としてのミロスが取り寄せたのかもしれない。 --------------------------------------------------------------------------------- ◇出目21 〈ポロメイアの若きボロ(Polomeia's Warrior Boro)〉  戦士が倒れている。彼はポロメイアの若き戦士。名をボロという。敵のリーダーである〈シーリーン〉と出会い、憔悴し、半ば戦意を失っている。  生命点1点以上を回復する措置を施すと、彼は『手がかり』を1つ与えてくれる。それは〈クロノシア〉教団に関する情報だ。 *** 「自分は非力で、臆病でした。王女の身を救うため、クロノシア教徒に挑みましたが、まったく役に立ちませんでした。彼らを率いるシーリーンは、すでに悪魔に魂を捧げています。その恐ろしい双眸から、死の視線が放たれます。決して直視しないことです」  ボロは優秀な戦士に違いなかった。だからこそ、危機を回避して逃げきれたに違いない。しかし、その彼も気力が萎え、シーリーンと再度、対峙する勇気は失われていた。 「彼女は少し先の未来を見ます。その能力でこちらの攻撃が読まれ、避けられてしまうのです。私は勝てる気はしない。もしあなたがその状況に陥ったら、なるべく相手の目を見ず戦うのです」 --------------------------------------------------------------------------------- ◇出目22 〈彷徨える商人(Wandering Merchant)〉  偶然、ピラミッドに迷い込んだ商人ワンダロスと出会う。彼は困った様子で自分も連れて行ってくれないかと頼み込んでくる。  従者点1点を使うのなら、彼を〈技0 戦わない従者〉として連れて行くことができる。従者点が残っていない場合、彼を連れて行こうとしても、方向音痴なワンダロスは再び途中ではぐれてしまう。  ワンダロスは『ランタン』1つと、『治療のポーション』『聖水』を1瓶ずつ所持している。連れて行くなら、このうち『ランタン』1つと『治療のポーション』は自由に使ってくれという。一度、ピラミッドから出たら、ワンダロスは従者から外れる。別れる前に、無事に帰れた謝礼として彼は『聖水』を渡してくれる。  同行しない場合でも、下記の金貨を払えば売ってくれる。このような状況でもワンダロスは商人根性を捨ててはいない。 ◆『ランタン』  街で売る場合価値はないが、ワンダロスからの購入価格は金貨5枚必要。暗い場所で光源となる。 ◆『治療のポーション』  金貨50枚の価値(ワンダロスから購入価格は、金貨70枚)。生命点を最大値まで回復。戦闘中であっても、1ラウンドのアクションを消費することで使うことができる。 ◆『聖水』  金貨10枚の価値(ワンダロスから購入価格は、金貨15枚)。  飛び道具として扱い、【器用ロール】に成功することで対象1体にぶつけることができます。対象が「強いクリーチャー」かつアンデッドだった場合、2点のダメージを与える。 「弱いクリーチャー」の場合にも、2点のダメージを与える(2体を倒します)。   *** 「ああ、やっと人と出会えた。ここはどこだ? 私はだれだ? いやいや私はワンダロス、旅する商人だ。なぜか何もなかったはずの砂漠から、突然、迷路のような石造りの建物に入り込んでしまったのだよ。本当に、私は昔から方向音痴なんだ。そもそもチャマイからナゴールに旅してたら、どこでどう道を間違ったのか、こんな砂漠に出てしまった……。とても自分一人じゃ、ここから出られそうにない。どうか私も一緒に連れてってくれないか? なんならこのランタンと治療のポーションを使ってくれていいから」 --------------------------------------------------------------------------------- ◇出目23 〈三本傷のコビット(Cobbit with Three Wounds)〉  通路で、顔に三本傷のある女コビットが、石で出来た猫型のクリーチャーと戦っている。コビットは、ジル=メガ。ポロメイア王の命を受け、ピラミッドを探索する冒険者の一人だ。俊敏で勇ましい女傑だが、狭い場所に加え、敵の数も多く苦戦しているように見えた。  手助けするなら、そのうちの数体(出現数の半数。端数切り上げ)を引き受ける。  とはいえ、彼女も歴戦の強者だ。ここは放っておいても大丈夫と判断し、先に進んでもいい。  〈キャットゴーレム〉  出現数:1d6+2  レベル:4  宝物:なし  ≪反応表≫ 1-4は【敵対的】 5-6は【死ぬまで戦う】  これは【ゴーレム】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーの攻撃は、大理石の鋭利な爪と牙で、【斬撃】の特性を持つ。  また、温度の変化には強いため【炎】や【氷】の攻撃特性を持つ攻撃は効果がない。 〈キャットゴーレム〉に対して【斬撃】の特性を持つ武器で攻撃した場合は、大理石の身体には効果が薄いので【攻撃ロール】に-1の修正を受けてしまう。 【打撃】の特性を持った武器で攻撃した場合は【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  無事に勝利すると、ジル=メガは「あたし一人でもなんとかなったけどね」と言いながらも、手助けの礼として、次のアイテムを授ける。  1回目の冒険なら、 ◆『剛力丸』  金貨15枚の価値。【筋力ロール】時に服用すると、+1のボーナスが受けられる。1回分。    2回目の冒険なら、 ◆『身代わりのアミュレット』(金貨30枚の価値。【打撃】により生命点1点を失う際、身代わりになってくれる。3回分。)    3回目の冒険なら、『封印の壺』を受け取る。  彼女は、消耗した今の自分の状態では、目的を達成できないと考えたようだ。いざという時に使ってくれと、君に託す。   *** 「このピラミッドには斬撃の通じない敵が多い。私の剣技は不向きのようだ。あのときもそうだった」  あのときとは、マリノア王女の意識がシーリーンによって奪われたときのことだった。ジル=メガは悔しさに顔を歪ませる。 「頑丈な石像に襲われた。私が苦戦していると、王女の前にシーリーンが現れた。言い訳がましいことは言いたくないが、兵士長が王女の側にいたから、大丈夫だと思ったんだ。だけど、なぜか彼は躊躇した。その隙に、マリノア様は……」 --------------------------------------------------------------------------------- ◇出目24 〈修繕するアリ人(Ant Folk Repairer)〉  ピラミッドの壁や床を〈アリ人〉が修繕している。彼らの一族は、かつてミロスと契約して、ピラミッドに巣を作る代わりに、内部のメンテナンスを行っている。  ≪反応表≫ が【中立】だった場合、修繕を手伝えと持ちかけてくる。  そうするなら、【器用ロール】(判定値:4)を行うこと。成功すれば御礼として、『ピラミッドのコンパス』か『ギ酸爆弾』のどちらかを得ることができる。(選んでよい。)  この【判定ロール】でファンブルした場合、あまりの出来上がりのひどさにアリ人たちは怒り出し、戦闘となる。  〈アリ人(Ant Folk)〉  出現数:1d6+3  レベル:4  宝物:なし  ≪反応表≫ 1-4は【中立】 5は【ワイロ】(2体つき食料1個) 6は【敵対的】  これは【少数種族】【人間型】に属するクリーチャーである。  戦闘が起きた場合、第0ラウンドにおいて〈アリ人〉の半分(端数切り捨て)は、ギ酸の唾を飛ばしてくる。 これは飛び道具による攻撃として扱われ、各キャラクターは【防御ロール】を行わなければならない(目標値:4)。  判定に失敗したなら、唾が目に入ったことで視界がかすむ。対象のキャラクターは、戦闘が終わるまでの間は【攻撃ロール】に-1の修正を受けてしまう。  ギ酸の唾は持ち前の武器であるため、唾を飛ばした〈アリ人〉は、第1ラウンドから槍で攻撃を仕掛けてくる。  ◆『ピラミッドのコンパス』  金貨3枚の価値。このコンパスはピラミッドの中で進む先を示してくれる。〈できごと〉を決める際に使用し、出目の〈できごと〉に不穏さを感じた場合、針は左右に揺れる。出目の十の位に+1もしくは-1した〈できごと〉に進むことができる。一度効果を発揮すると、魔力を失って使えなくなる。  ◆『ギ酸爆弾』  金貨5枚の価値。第0ラウンドで遠距離攻撃として投げつけることができる。命中したギ酸は拡散して敵全体に影響を与える。その戦闘中の【防御ロール】に+1の修正を得られる。1回分。 --------------------------------------------------------------------------------- ◇出目25 〈隊長アランとアダマンタイト(Captain Alan and Adamantite)〉  部屋の中央に、『アダマンタイト』と呼ばれる鉄鉱石の塊が置かれている。その前に、アルマシウダの戦士〈アラン〉がいる。君たちはほぼ同時に部屋に入り、その鈍い銀光を放つ鉄鉱石を見つけた。 〈反応表〉が【友好的】の場合、アランは君に『アダマンタイト』を譲ってくれる。 【敵対】の場合、戦闘が始まる。 【中立】の場合、アランは「これは私が持ち帰った方が有効に使える。あきらめろ」と言ってくる。『アダマンタイト』を手に入れたければ、アランと戦い勝利する必要がある。 戦闘になった場合、アランは主人公1人と1対1の勝負を持ちかける。この誘いを受けるかは任意で決めてよい。1対1の勝負を受けた場合、アランは「敵ながらあっぱれ」と主人公に【勇者へのエール】を贈ってくれる。【勇者へのエール】は一時的に主人公の気持ちを高揚させてくれる。第1ラウンドのみ、【攻撃ロール】+1のボーナスを与えられる。この戦闘で主人公が不利になった場合には、仲間が途中参加することは許される。このときアランは唇をぶるぶると震わせ、【愚者へのブーイング】を発する。【愚者へのブーイング】は一時的に主人公の心に暗い影を落とす。この次に行う1回の戦闘において【防御ロール】に-1のペナルティを受けてしまう。    『アダマンタイト』をあきらめるのなら、  ✴︎アルマシウダの冒険者なら、アランは「代わりにこれを持っていけ」と『食料』1回分を授けてくれる。  ☆ポロメイアの冒険者なら、当然に何もない。  〈黒蜘蛛隊隊長アラン(Captain Alan of the Black Spider)〉  レベル:5  生命点:5  攻撃数:1  宝物:修正+1  ≪反応表≫ 1-2【友好的】3-4【中立】5-6【敵対的】 【善の種族】【人間型】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。 〈アラン〉は鉄製の特殊なグローブで攻撃してくる。【防御ロール】に失敗すると、〈アラン〉はそのまま〈羽交締め〉の体勢に入る。【筋力ロール】を行い、失敗すると、さらに生命点1点を失う。〈羽交締め〉の効果は解かれない限り続く。次からのラウンドも【筋力ロール】を行い、失敗すれば生命点1点を失い続ける。(このときお互い攻撃はできない。)  羽交締めを解くには【筋力ロール】に成功するか、または味方が〈アラン〉に攻撃を成功させる必要がある。  主人公が負けを受け入れ、降参することでいつでもこの戦闘を終了できる。  ◆『アダマンタイト』  金貨20枚の価値。頑強な地下鉱物の原石。武具の素材として使われる。  原石のまま投擲武器としても使用できるが、大きく重いため【判定ロール】に−2の修正が入る。代わりに命中すればダメージに+1される。1回の戦闘で1度しか使用できない。戦闘に勝利すれば拾って持ち帰ることができるが、逃走した場合は失われる。 --------------------------------------------------------------------------------- ◇出目26 〈おしゃべりスフィンクス(Chatty Sphinx)〉  通路を通せんぼするように、〈スフィンクス〉が鎮座している。この〈スフィンクス〉はよく喋る。おしゃべり自体に害はないが、長い割に有益な情報を持っているわけでもない。 ≪反応表≫が【友好的】の場合は、話も丁寧で聞き取りやすい。【中立】の場合、言葉遣いは荒く、話もころころと変わり、理解するのが難解になる。最後まで聞いたときには、変な頭痛に襲われる。【生命ロール】(判定値:8)を行い、失敗すると生命点1点を失ってしまう。ファンブルの場合はさらに副能力値1点を失う。『サボテンの耳飾り』をつけていると、この災難を回避しながら、会話を聞くことができる。    しかし、最後まで話を聞くと、礼を言って、自分の兄弟のスフィンクスの弱点や、好きななぞなぞについて教えてくれる。『手がかり』を1つ手に入れる。  最後まで話を聞きたくない場合、このスフィンクスを倒さなくてはならない。  〈おしゃべりスフィンクス(Chatty Sphinx)〉  レベル:3  生命点:5  攻撃数:2  宝物:修正+1  ≪反応表≫ 1-2【友好的】3-5【中立】6【敵対的】  これは【怪物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。     *** 「おお、久しぶりの客人だ。やっと話し相手が見つかって、私は嬉しいぞ。私はスフィンクス三兄弟の末弟だ。兄弟といっても性格はそれぞれだ。私は温厚で友好的だ。ただ長いこと誰とも話さずにいたから、おしゃべりがしたくてたまらないんだ。聞いてくれるか? 聞いてくれるのなら、兄たちの弱みを教えてやってもいいぞ。別に仲は良くないからな。彼らの話もしてやろう。聞くか? 聞くだろう? 聞くに決まっているよな? そう答えは足跡だ。覚えておけ」 --------------------------------------------------------------------------------- □出目31 〈幻の庭園(Phantom Garden)〉  この部屋で『幻投石』を見つける。  それは、魔道士ミロスが愛するものを懐かしむために設置した魔法の石のようだ。ミロスと、彼の愛する女性が過ごす一場面が、白い壁に映し出され、何度も繰り返されている。  この幻影を終わらせて、『幻投石』を持っていってもいい。あるいは、このままピラミッドが崩れ落ちる日まで、この幻影を流れるままにしてもよい。そうする場合、庭園の不思議な力が作用して、副能力値が1点回復する。    ◆『幻投石』  金貨50枚の価値。戦闘前にこの石を使うと、主人公、あるいは従者の幻影を1体作り出せる。  対象者が敵に狙われたとき、サイコロを振る。「奇数」の場合、敵は幻影を攻撃したことになり、攻撃は自動的に失敗となる。「偶数」の場合は、本人が狙われたことになり、通常の【判定ロール】を行う。敵の攻撃が味方全員に及ぶ性質のものに対してはこの効果はない。  幻影が攻撃されてもすぐに消えることはない。戦闘が終わるまでこの効果は続く。ただし使えるのは一度きりだ。『幻投石』は魔力を失い、ただの石に戻る。     ***  瑞々しい草花に彩られた庭園が、切り取られた絵画のように目の前に現れる。青空、降り注ぐ陽光。とても砂漠の只中にあるピラミッドの一角とは思えない。  花を愛でていた、金色のスカーフを首に巻いたドワーフの娘が、こちらの気配を察したように振り返る。  屈託のない微笑みを浮かべていた。絹のような黒髪に、小麦色の健康な肌をしている。体躯からして、ドワーフであるのは確かだが、その美貌はエルフにも引けを取らない魅力を備えていた。 「ミロス、待ってたわ。何その石? もうプレゼントなんていらないわよ。アタシに必要なのはそんなのじゃないんだって」  そう言う彼女に対して、男の声が答えた。 「ナーヴィス、残念だけどこの石はプレゼントじゃないよ。この石は幻投石と言って、魔法の石さ。君の今の姿を、いつまでも永遠に閉じ込めておくものさ。僕だけの、動く肖像画みたいなものだよ」 「そうなの。ねえミロス、ワタシ動けなくてもいいから、未来まで美しい姿のままで存在したいの。故郷であるビウレスの皆にそれを見てもらいたいわ。あなたならそれ叶えることができるでしょ? だって、世界一の彫刻家で、魔法使い。それに、ワタシの旦那さんになる人なんですもの」  石の持ち主がうなずいた途端、すべてが消えた。部屋が闇に包まれる。と思うと、再び壁に青空の庭園が浮かび上がり、二人は同じ会話を繰り返す。  それは、魔法の石によって作り出される幻影だった。ミロスが、自分の愛する女性を懐かしむために、設置したものなのだろう。しかし今は、見るものはいないはずの場所で、何度も何度も繰り返される。 --------------------------------------------------------------------------------- □出目32 〈怪力王の壁画(Mural of King of Power)〉  長い廊下に沿って、壁画が描かれている。そこには、ある男性の一生、いや、ある英雄の生涯を追うように、次々と場面が描かれている。〈怪力王ヘラクレオス〉の伝説だ。  怪力王ヘラクレオスは、多くの逸話を残していた。  若い頃、ヘラクレオスは町で家畜を襲っていた大猿を倒して有頂天となり、傲慢になった。力を自慢するために、森の木を一本残らず引き抜き、大雨災害の原因を作った。村人たちから見向きもされなくなったヘラクレオスだったが、〈刻の悪魔クロノヴァルス〉によって季節が狂わされたときに村を守るために立ち上がった。  悪魔は強敵だった。だが、ヘラクレオスは一度つかんだその手を離さなかった。悪魔が魔界に逃げても、彼の両腕はその首根っこを捕まえたまま、一緒に消えてしまったのだ。  彼は、両腕を失っても動じなかった。 「大丈夫。俺はあの手を決して離さない」  地域の人々は、それを若さの右手、熟練者の左手と呼び、永くヘラクレオスを讃えている。  しかし、どうやらヘラクレオスの死後、悪魔はそれを振り解いたようだ。その両腕は変質し、怪物となった。  最後に、壁画に次のように刻まれ、魔法石がはめ込まれている。 「しかし、その両腕に英雄の心は宿っているはずだ。それを取り戻すために、セルウェーの聖石をここに置く」  ⭐︎ポロメイアの冒険者なら、その聖石の色は青い。  ✴︎アルマシウダの冒険者なら、その色は赤い。  『青の聖石』あるいは、『赤の聖石』のいずれかを持っていってもよい。  ◆『青の聖石』または『赤の聖石』(効果は同じ)  いずれも金貨10枚の価値。ミロスが置いたと思われるヘラクレオスに関わる石。魔法石として使用すると、副能力値が筋力点の場合は最大値まで回復し、それ以外のなら1点を回復する。1回の効果で石は割れ、崩れ去る。 --------------------------------------------------------------------------------- □出目33 〈砂掃きの骸骨(Sand Cleaning Skeleton)〉  骸骨が箒を持って、ピラミッドの床を掃除している。  見つからぬようにして、立ち去ることも可能だ。  接触を試みるなら、反応表を確認する。    〈砂掃きの骸骨(Sand Cleaning Skeleton)〉  レベル:3  生命点:3  攻撃数:1  宝物:修正-1  ≪反応表≫ 1-3【友好的】 4-5【中立】 6【逃走】   【友好的】であれば、骸骨は自分がミロスとの契約で、ピラミッドの掃除をしていることを教えてくれる。ピラミッドの内部にも熟知しているため、次に行くアドバイスをくれる。次に振る〈できごと〉の出目の十の位を自由に決めてよい。 【友好的】または【中立】だったなら、骸骨はあなたの持つ武器の1つに興味を持つ。彼が言うには、ピラミッドの石壁に隙間があり、そこから絶えず砂ぼこりが入ってきて困っているのだそうだ。 「それでね、あなたがぶら下げているそれ、あの隙間にしっくり収まりそうな気がするんだよ」  もしも特性が【斬撃】の「片手武器」を持っていれば、彼に差し出すことができる。それは、隙間にちょうどぴったり入り、骸骨を喜ばせる。 「これはすごい、ちょうどピッタリ! これ使わしてくださいな、代わりにこちらを差し上げますから!」  生き物の骨でできた、幅が太い「片手武器」を渡される。「古竜の肋骨」で作られた武器だという。交換しても断っても良い。  ◆『古竜の肋骨剣』  金貨25枚の価値。攻撃特性は【打撃】。弱いクリーチャーとの戦闘の際、クリティカルが出ると、空気の波動が拡散し、追加で1d3体を殲滅できる。ただしこの武器は耐久性に問題がある。【攻撃ロール】で通算5回のファンブルを出すと骨は砕け、使い物にならなくなる。(もしも回数をカウントし忘れた場合、次のファンブルで壊れる) ---------------------------------------------------------------------------------   □出目34 〈ゼブラの蝋燭と闇の壁画(Zebra Candle and Dark Mural)〉  この部屋では、ランタンなどの光源があったとしても奥まで届かない。  壁際に沿って、白黒のゼブラ模様のロウソクが立っている。全部で6本だ。  すべてに火を灯せば、壁に描かれている壁画を見ることができる。そこには〈刻の悪魔クロノヴァルス〉に関する事柄が刻まれている。  しかし、このロウソクは魔界のロウソクだ。火を灯すたびに不穏な何かが起こる。壁画を見たければ、2つ火を灯すごとにサイコロをふり、以下の出目にそって、不穏な何かを体験しなくてはならない。幸運点を1点消費することで、サイコロの目から−2してもよい。 ・出目1…闇から不気味な囁き声が聞こえる。しかし実害はないようだ。 ・出目2……闇が見えない手となって、荷物に伸びる。所持品が1つ失われる。(任意で決めてよい) ・出目3……闇が刃となって、肌を切り裂く。【防御ロール】(判定値:3)を行い、失敗すると生命点1点を失う。 ・出目4……闇が振動し、魂を揺さぶる。【対魔法ロール】(判定値:4)を行い、失敗すると副能力値が1点失われる。 ・出目5……空間が歪む。もう一度サイコロを振ること。それを1の位、5を十の位としたマップタイルの敵が現れ、問答無用の戦闘となる。すでに登場したことのあるクリーチャーも対象であるが、一度倒している場合、その出現数は半減する。(端数切捨て。最低1体) ・出目6……空間が歪む。もう一度サイコロを振ること。それを1の位、6を十の位としたマップタイルの敵が現れ、問答無用の戦闘となる。すでに登場したことのあるクリーチャーも対象であるが、一度倒している場合、その生命点は半減する。(端数切捨て)  6本すべてのロウソクに火を灯したなら、壁画を見ることができる。それは悪魔の崇拝者たちが、描いたものだ。  壁画には刻の悪魔クロノヴァルスが使う〈刻喰いの咆哮〉について記されている。今後、この攻撃を与えられるとき、【判定ロール】に+2のボーナスを得る。 --------------------------------------------------------------------------------- □出目35 〈黄金風呂の浮遊体(Floating Body of the Golden Bath)〉  部屋には黄金で造られた広い浴槽があり、壁には獅子の顔の黄金像が設置されている。その口からは、勢いよく温水が吐き出されている。  湯温は人肌に近い。冒険の最中とはいえ、浴槽にゆっくり浸かれば、疲れも取れることだろう。  しかし、浴槽には、立ち昇る湯気の間から、人の影が見えた。それは、あまり動く様子もなく、湯舟に浮いている。  よく見てみようと近づくのなら、1d6を振ること。その際、幸運点を1点消費することで、出目に+1の修正を加えられる。 ・出目1〜2……浴槽に〈ゾンビ〉が入っていた。元は実力のある剣士だったのだろう、青銅の鎧を着て、背中には大剣を背負っている。入浴の邪魔をされたゾンビ剣士は、大剣を抜いて襲いかかってくる。     〈ゾンビ剣士〉  レベル:4  生命点:2  攻撃回数:3  宝物:通常  ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  これは【人間型】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。 ・出目3〜4……浮いているのは、〈剣士の遺体〉だった。声をかけ、体を揺すっても、ぴくりとも動かない。鎧や大剣には劣化はない。むしろ黄金浴槽の中で、余分な汚れが洗浄されたようで、おろしたての武具のような輝きに満ちている。死体が持っていても無駄なものと考えるなら、それらの武具を持っていくこともできる。    ◆『両手武器』……金額15枚の価値。特性は斬撃。  ◆『板金鎧』……金額50枚の価値。着用者の生命点の最大値に+2の修正を与えます。また、【防御ロール】に+1の修正を与えます(防御力+1)。 ・出目5〜6……浴槽に浮いていたのは、〈異国の剣士〉だった。  君の姿を見ると慌てて顔を上げる。全裸だ。胸板が厚く、黒い剛毛に覆われている。 「ああ、俺は敵じゃない。いいお湯加減なものだから、ついついリラックスしてしまったのだ」  剣士は、砂漠の旅をしている途中で、このピラミッドに迷い込んだのだという。一時はゾンビに噛まれ、命が危うかったが、この浴槽に入ることで傷は癒え、体力が回復したのだそうだ。 「運が良かった。少し遅ければ服を脱ぐ余裕もなく風呂に入り、効果を得られなかったかもしれない。不思議な効果がある浴槽だ。黄金に魔法が掛けられているのかもしれない。どうだい、君も防具を脱いで、一緒に入らないかい?」  彼の誘いを受け、黄金浴槽に入るのなら、生命点を全快させて良い。 --------------------------------------------------------------------------------- □出目36 〈時計塔の模型(Model of the Clock Twer)〉  部屋には、時計塔の模型がある。  ミロスが建設を考えていた建物の模型なのか、それとも、もしかしたら悪魔の企ての一部なのだろうか?  三階層の建物で、真正面に円形の大きな時計が設置されている。針は動いていないが、背後にネジがあった。回せば、時計も動く仕掛けのようだ。  左右どちらかに一度だけ回すことが可能だ。一度動かすと、ネジはもう回せなくなる。  ネジを回した者は、その代償として、全身に電流が走ったかのような強いショックを受け、生命点を1点失うことになる。  左へ動かせば、時計は順回りに動き出す。このとき、一瞬だけ未来に起こるできごとが頭をよぎる。『手がかり』を1つ手に入れる。さらに次に移動すべき〈できごと〉を自由に選べる。  右に動かせば、時計は逆回りに動き出す。過去の苦難や後悔が走馬灯となって主人公の脳裏を駆け巡る。  それは〈クリーチャー〉という形となって襲いかかる。過去の幻影を倒さない限り、この場所から先へと進めない。  〈過去の幻影〉  出現数:1d6+2  レベル:3  宝物:なし  ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  これは【精霊】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーによる攻撃は【闇】の特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーには【闇】の特性を持つ攻撃や魔法の効果がない。    過去の幻影を倒すと、不思議と心と体が軽くなる。各主人公の生命点、副能力値が共に全快する。 --------------------------------------------------------------------------------- ■出目41 〈流砂回廊(Quicksand Corridor)〉  突然、通路の天井が外れ、そこから大量の砂が溢れてくる。せまい通路を、数十メートル先まで一気に埋め尽くすほどの圧倒的な量だ。流れ出す勢いも圧力がすごかった。呑み込まれたら、自力で脱出するのは難しいだろう。  これを回避するのには、2つの方法がある。  1つは、手前の左右の壁際に立っている〈グリフォン像〉を横倒しにすることだ。成功すれば〈グリフォン像〉が壁となり、流砂の勢いは止まる。ただし、迫り来る大量の砂に向かって駆けていくことになる。間に合わなければ、全員が砂に埋もれてダメージを負ってしまうだろう。  もう1つは、通路を反対方向に全力で駆け出す方法だ。主人公一人ならそれほど危なげなく逃げ出せるだろう。しかし、【従者】を率いていれば、能力値の低い彼らにとっては生死に関わる賭けになる。  とはいえ、迷っている時間はない。すぐに、どちらにするか決めなくてはならない。  ◆前進して〈グリフォン像〉を横倒しにするなら、【筋力ロール】を行う(判定値:4)。このとき、〈戦う従者〉が最大2人まで力を貸すことができる。そうできるなら、1人につき+1の修正が入る。この【判定ロール】に成功すれば、全員が助かる。失敗すれば主人公と従者の全員が生命点1点のダメージを負う。  ◆反対方向に駆け出すなら、全員がそれぞれ【器用ロール】を行う(判定値:3)。失敗した者は、生命点1点を失う。このとき、「かばう」特殊技能をそなえた主人公は、最大1人まで失敗したダメージを肩代わりすることができる。 ---------------------------------------------------------------------------------   ■出目42 〈海獣の天秤(Sea Beast Scales)〉  部屋に天秤が置かれている。  その傍に、蛸の頭をした獣人が立っている。彼は、銀色の厳かな衣服を身にまとう〈蛸の神官〉だ。〈蛸の神官〉は、この世の生き物ではない。実態がなく、すべての攻撃を受け付けない。 「ここは生と死の混ざり合う場所。もしこのピラミッドで仲間を亡くしているのなら、その魂はすべてここに運ばれる。その者の人生が徳を積んだものであったのならば、この〈海獣の鱗〉と同じ重さになるだろう。復活のチャンスが与えられる。ただし不徳を重ねた人生であれば、〈飽食のくじら〉がすべてを呑み込む」  このピラミッドで【従者】を亡くしていれば、その形見を一方の天秤に置く。それが〈蛸の神官〉の置く〈海獣の鱗〉と釣り合えば、不思議なことにその【従者】はここで復活を遂げる。亡くした従者の数だけ、【幸運ロール】(判定値:4)を行うことができる。成功した人数だけ、【従者】が生き返る(誰が復活するかは任意で決めてよい)。  ただし一度でも判定に失敗していたら、天井から巨大な漆黒の海獣が現れる。海獣は、すべてを飲み込もうと大きな口を開く。その向こうは真っ暗な深淵だ。  〈飽食のクジラ(Void Whale)〉  レベル:4  生命点:6  攻撃数:2回 宝物:修正+1  ≪反応表≫1-6【死ぬまで戦う】  これは【怪物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーによる攻撃は【氷】の特性を持つ。  このクリーチャーには【氷】の特性を持つ攻撃や魔法の効果がない。 【従者】が攻撃を受けた場合、〈飽食のくじら〉の巨大な口の中に吸い込まれる。次の戦闘から参加できないが、すぐに死んではいない。吸い込まれてから3ラウンド以内に〈飽食のくじら〉を倒せば、命からがら吐き出され救出される。3ラウンド以内に倒せなければ、すでにこの世から影も形も無くなっている。 〈飽食のクジラ〉を倒すと、すべてが幻であったかのように、天秤と〈蛸の神官〉も部屋から消えている。 --------------------------------------------------------------------------------- ■出目43 〈壁面パズル(Wall Puzzle)〉  壁に複数のパネルが埋め込まれており、動かすことが出来る。完成したら一枚の絵になるようだ。一定の回数動かして完成させたら、〈隠し通路〉が現れる。  この〈壁面パズル〉は完成させるには、『手がかり』を1つ消費するか、【器用ロール】(判定値:4)を成功させる必要がある。  成功したら、〈隠し通路〉は〈出目45〉へと繋がっている。まだそうしていなければ、〈出目45〉の〈宝箱〉を開けることができる。  失敗すると、反対の壁の隠し部屋が開き、腹を空かせた猛獣が現れる。  一度壁面パズルに失敗すると、パネルは二度と動かない。再挑戦することはできない。  〈トラ(Tiger)〉  レベル:5  生命点:5  攻撃数:2  宝物:なし  ≪反応表≫ 1-3は【ワイロ】(1d3個の食料)4-6【敵対的】   これは【動物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  〈トラ〉と遭遇した際には、主人公で【器用ロール】を行うこと(目標値はクリーチャーのレベルに等しい)。  判定に成功したなら、普通に〈トラ〉と顔を合わせただけだ。攻撃を仕掛けるか、反応表を振るかは、自由に選んでよい。  判定に失敗したなら、〈トラ〉はパーティに【不意打ち】を仕掛けてくる。この場合、第1ラウンドから戦闘が開始されることになり、〈トラ〉が先に攻撃を行う。     ***  時間が狂った部屋に閉じ込められた猛獣は、どのくらいそこで獲物を待っていたのだろう? その双眸は尋常ではない欲望にギラギラと燃え、口の端からが大量の涎を垂らしている。死ぬことも許されず、ここで長い間、空腹に苦しめ続けられてきたのだろう。牙を見せ、爪を立て、荒々しい息遣いで近づいて来る。 --------------------------------------------------------------------------------- ■出目44 〈謎かけスフィンクス(Riddle Sphinx)〉  通路に、金箔の顔をした〈スフィンクス〉が鎮座している。彼は、「私の出すなぞなぞを解いたら、先へ進むことを許す」と言っている。  このなぞなぞを解くには、【幸運ロール】(判定値:5)に成功する必要がある。『手がかり』を1つ消費する毎に+1のボーナスを加えてよい。この謎解きは何度挑戦してもよいが、一度目で成功したときのみ、スフィンクスは「素晴らしい」と褒め称え、「これを持っていくがよい。知恵者に相応しい宝だ」と言って、懐からアクセサリーを取り出して与えてくれる。これは『サボテンの耳飾り』だ。  謎解きが面倒であれば、力づくで倒すしかない。その場合、『サボテンの耳飾り』は壊れてしまうので、入手することはできない。  ◆『サボテンの耳飾り』  金貨15枚の価値。サボテンの樹皮と棘で作られた耳飾り。種族がちがう相手でも、会話がスムーズに聞き取れる。≪反応表≫を振る際、−1することができる。兜を着用する場合、この効果を得られない。説教や愚痴を聞き流したいときにも便利に使える。   〈謎かけスフィンクス(Riddle Sphinx)〉  レベル:4  生命点:7 攻撃数:2  宝物:通常  ≪反応表≫ 1-6【中立】  これは【怪物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  このクリーチャーは第0ラウンドで、なぞなぞを問いかける。【対魔法ロール】を行い、それに失敗すると謎を考えてしまい、攻撃に集中できない。戦闘中の【判定ロール】すべてに−1の修正がついてしまう。『手がかり』を1つ消費すると、なぞなぞの回答にもすぐ気がつくので【対魔法ロール】の必要はない。さらに〈スフィンクス〉の弱点もひらめくため、【攻撃ロール】に+1の修正が入る。  このクリーチャーに対する【防御ロール】にファンブルした場合、このクリーチャーはもう一度攻撃を行う。キャラクターを1体選んで、そのキャラクターがもう一度【防御ロール】を行うこと。       *** 「私は、前へ進めば進むほど、後ろに増えていく。走れば急ぎ、止まれば留まる。誰もがそれを持って生まれるが、振り返らなければ見ることはできない。私は何だ?」 --------------------------------------------------------------------------------- ■出目45 〈宝箱と黄色い煙(Treasure Chest and Yellow Smoke)〉  部屋の奥に〈宝箱〉が置いてある。 〈宝箱〉を開けるために部屋の奥に進むのなら、1d6を振って〈宝物表〉のアイテムを見つける。このとき、+2の修正をしてよい。  しかし、これは罠だ。  部屋に入ると、壁や天井の隙間から黄色い煙が噴出し、すぐに充満する。浴びれば、武器、防具、身体が次々と石化していく。  幸運ロール(判定値:4)を行い、以下の指示に従うこと。  成功の場合、武器あるいは防具が1つ石化しただけで済む。もはや使い物にならないので捨てていくしかない。任意で1つを選ぶこと。  失敗の場合、武器または防具が1つ石化するのに加え、体の1部が石化する。これにより行動に制限が生じる。街に戻れば石化解除して貰え元に戻るが、ここでは副能力値を1点失うことになる。ファンブルで失敗した場合、失う副能力値は2点となる。  石化防御のアイテムや石化を回復させるアイテムを持っていてすぐに使う場合は判定の必要はない。 〈宝箱〉をあきらめ部屋の奥に行かないのなら、罠は発動しない。  また〈出目43 壁面パズル〉を解いてこの部屋に入った場合も、この罠は発動しない。ただし一度〈宝箱〉を開けていれば、中には何も入っていない。      ***  部屋の奥に、装飾の施された宝箱が置かれている。台座に置かれ、見るからに他の調度品とは違う輝きを放っている。しかし、あきらかにあやしい。石造りの壁や天井には、ところどころに隙間が空いていて、かすかな異臭を漏らしていた。反対の壁にも入口のようなドアが見える。あちらから入れば宝箱に近く、危険は少ないように思える。とはいえ複雑なピラミッドの迷宮をめぐり、あちらのドアにたどり着けるかはわからない。   ---------------------------------------------------------------------------------   ■出目46 〈闇の祭壇(The Altar Of Darkness)〉  この部屋の中央には鉄の祭壇があり、王冠を被った骸骨のレリーフが飾られている。  それは、〈闇の神オスクリード〉を示す印だ。  ミロスはオスクリードの信者だったのだろうか? もしかしたら、悪魔を封じるピラミッドを完成させるために、あえて禁断の契約をしたのかもしれない。  長居をしていると、床から〈怨霊〉が這い出してくる。  悶え苦しむ亡者だ。怨霊は足を引っ張り、オスクリードの贄にしようと、部屋を訪れた者を引きずりこもうとする。   『聖水』を持っていれば、彼らを追い払うことができる。  また〈炎〉の効果は怨霊を混乱におちいらせる。〈炎球〉または同様の効果のアイテムを使用すれば、直ぐに部屋から出ることができる。  上記の方法がなければ、通常攻撃で倒しても怨霊は無尽蔵に現れ、きりがない。  この状況から逃れるには、合計で5回の防御ロール(判定値:4)行う必要がある。どのキャラクターが何回判定するかは任意で決めてよい。失敗するごとに、判定したキャラクターは1点のダメージを受ける。生きていれば部屋から逃げ出せる。〈炎〉の特性がある武具を装備していれば、この判定に+1の修正ができる。 ---------------------------------------------------------------------------------   ◆出目51 〈黒く這うもの(Crawling Black)〉  〈大グモ(Giant Spider)〉  出現数:1d3+1  レベル:4  宝物:なし  ≪反応表≫ 1-2は【劣勢なら逃走】 3-5は【中立】 6は【ワイロ】(1体につき食料1個)  これは【虫類】【騎乗生物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。 【ワイロ】で戦闘を回避した場合、1体の〈大グモ〉を【騎乗生物】として利用することができる(【ワイロ】が有効なのは今回の冒険のみであり、冒険が終わると〈大グモ〉は主人公の元から去っていく)。その場合、それは「戦わない従者(技量点:0、生命点:1)」として扱われ、【斬撃】の攻撃特性を持つ。このクリーチャーは【踏破力】を持っている。同行させるには、従者点を1点必要とする。従者の〈大グモ〉は、クモ糸をより集めたロープを作成することができる。この能力によって作られるロープは1本分である。   〈大グモ〉が這ってきた壁には、糸の残滓が張り付いている。まだ行ったことがなければ、ここからそれを辿って〈出目12〉へ進むことができる。もちろん無視しても良い。     ***  暗い天井や壁に身を潜めるように、黒いシミのような物体が這って来る。八本足が規則的に動き、訓練された兵士のように複雑な隊列で陣を張る。大グモの集団だ。  かつてポロメイアには、〈魂吸い〉と呼ばれる蜘蛛の姿をした悪魔がいた。不気味な黒い姿は、まるでその末裔のようだった。彼らはピラミッドに迷い込む者を獲物としている。  素早く壁を動き、糸を垂らし絡め取ろうとする。これほどの数だ。どこかに巣があるに違いない。 --------------------------------------------------------------------------------- ◆出目52 〈クロノシア教徒(The Believers of Chronosia)〉   〈クロノシア教徒(The Believers of Chronosia)〉  出現数:1d3+2  レベル:3  宝物:通常  ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【悪の種族】【人間型】に属する。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。 〈クロノシア教徒〉たちは仲間の死によって奮起する。〈クロノシア教徒〉が1人以上死亡した場合、【防御ロール】に−1の修正を受ける。     ***  灯のない広間に、深緑の装束を着た男女が集まっている。彼らはフードをかぶっているが、その奥の顔には、いずれも両眼がなかった。 「我らは瞳をシーリーン様に捧げた。悲惨な我らの過去は消え、代わりに、シーリーン様が輝ける未来を見る。偉大なるクロノヴァルス様の力で、間違った時は修正されみなが祝福されるのだ」  教徒たちは口々にいう。 「私は戦さで子供を失った」 「俺は盗賊に家族を皆殺しにされた」 「罪を被り、ひどい拷問にあった。やってもいない罪で」 「すべての過去は修正される」 「我らは心の目で、修正された過去を見る。辛い過去は消え、輝ける幸せを得たのだ」 --------------------------------------------------------------------------------- ◆出目53 〈恐ろしき絵(Eldritch Painting)〉  祭壇があり、獅子の顔、鴉の翼、蛇の尾を持った歪な獣の絵画が飾られている。その前には、深緑の衣服をまとった僧侶が佇み、祈りを捧げている。  祈りを見届けていると、絵画は雨に濡れたように色彩が溶けていき、その内側から悪魔が現れる。 【幸運ロール】(判定値:4)に成功すれば、僧侶の企みに気がつき、遠距離攻撃を行うことができる(判定値:3)。命中すれば、僧侶は絶命し悪魔は現れない。  〈下級悪魔(LowLevel Devil)〉  出現数:1d6  レベル:4  宝物:修正-1  ≪反応表≫1【劣勢であれば逃走】 2-6は【敵対的】  これは【悪魔】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーによる攻撃は【炎】の特性を持つ。     ***  その絵に描かれているのは、異形の神、いや異形の悪魔の姿だった。魔神と呼ぶ方がふさわしいかもしれない。  鶏冠を備えた獅子の顔は怒りに歪み、黒い翼、蛇の頭部が着いた尾が何本も伸びている。 「この絵画こそ、神の国の扉。クロノヴァルス様の敵を排除するために、僕たちよ、ここに来たれ」  深緑の装束の男が祈りを唱え、何かを召喚しようとしていた。クロノシア教徒の司祭だ。 「ミロスは、闇に魂を売った悪魔の使徒。しかし、封印は我らが解いた。その軍勢の力を思い知るがいい」  血走った目をした司祭は、自らが呼び出した悪魔によって殺され、その血を啜られる。それすらも儀式の一部であるとしたら、恐ろしい狂信者だった。  悪魔は、矛先を君たちに向ける。 --------------------------------------------------------------------------------- ◆出目54 〈墓標の下に眠る者たち(Sleepers Beneath the Tombstones)〉  〈ツルハシを持つがい骨(Skeleton With A Pickaxe)〉  出現数:1d6+3  レベル:3  宝物:通常  ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】  これは【アンデッド】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。 「弓矢」で攻撃した場合は、硬い骨には効果が薄いので【攻撃ロール】に-1の修正を受けてしまう。  また【打撃】の特性を持った「接近戦の武器」で攻撃した場合は【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。     ***  広い部屋があり、多くの名も亡き墓標が立っている。  侵入者に気がついたように、いくつかの墓標がガタガタと揺れる。  魔道士ミロスは秘密裏にピラミッドを建てたとはいえ、そこには多くの人夫がかり出されていたに違いない。しかし彼らは故郷へ帰ることはなかった。ということは、砂漠の砂の下に埋もれたか、ミロスと心中するように、このピラミッドで終生を過ごしたことになる。となると、彼らを埋葬するための場所があるはずだ。ここがその墓所なのだろう。  そして、ミロスは死後も彼らに仕事を与えた。  忠誠心の厚い彼らは、侵入者の気配を察知すると、骸骨の戦士となって土の下から現れる。岩をも砕く丈夫なツルハシを手にして。 --------------------------------------------------------------------------------- ◆出目55 〈木像兵団(Wooden Statue Soldiers)〉  通路の壁沿いに戦士像が立ち並ぶ。それは武具を身にまとった木ゴーレムの兵士の集団だった。  〈木像兵団(Wooden Statue Soldiers)〉  出現数:1d3+2  レベル:5  宝物:修正-1  ≪反応表≫ 1は【機能を停止している】(※逃走と同様) 2-6は【死ぬまで戦う】  これは【ゴーレム】【人間型】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーは、手に持った棍棒を振り下ろすだけの単調な戦術を取るため、攻撃は比較的かわしやすい。そのため各キャラクターは【防御ロール】に+1の修正を得る。  〈木ゴーレム〉に対して、飛び道具で攻撃した場合、硬い木材には効果が薄い攻撃のため、【攻撃ロール】に-1の修正を受けてしまう(魔法がかけられた射出体であれば、このペナルティを無視してよい)。  また炎を用いた攻撃をしたときは【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  キャラクターが【炎球】の魔術を使った場合、〈木ゴーレム〉は、炎に弱い材質で作られているため、「狭い場所」で魔術を唱えたものとして処理すること。   --------------------------------------------------------- ◆出目56 〈忍び寄る小恐竜(Creeping Compies)〉  〈コンピー(Compsognathus)〉  出現数:1d6+4  レベル:4  宝物:なし  ≪反応表≫ 1-2【ワイロ】(2体につき食料1個)3-6【敵対的】  これは【動物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。 〈コンピー〉は素早く動き回るため、接近戦の攻撃が当てづらい。  接近戦を行うキャラクターが「両手武器」で攻撃するさい、【攻撃ロール】に-2の修正を受けてしまう。「軽い武器」で攻撃するさい、【攻撃ロール】に+2の修正が得られる。    ***  暗闇から気配を感じる。  気がつくと、小柄な恐竜に囲まれている。灰緑色の鱗に、足先の鋭い鉤爪。彼らコンピーは、空腹をしのぐためなら、自分たちよりも一回り大きい生き物にでも平気で襲いかかる。恐竜ではあるが、スピードを重視した体の作りをしているため、骨格は強固ではない。一体一体なら大した敵ではないが、今取り囲んでいる彼らの数は多かった。目をぎらつかせ、涎を垂らしている。腹を空かせているのは明らかだ。 --------------------------------------------------------------------------------- ●出目61 〈ヘラクレオスの右腕(Right Arm of the Mighty King)〉  悪魔を捕らえたまま、魔界まで行った〈ヘラクレオスの右腕〉は、見るもおぞましい怪物と化していた。 『青の聖石』を使用すると、右腕はヘラクレオスの本来の魂を取り戻す。右腕に宿った怪力王の魂は、「我が力を使え」と語りかけてくる。受け入れるのなら、各主人公は【悪魔】のタグのあるクリーチャーに対して【攻撃ロール】が成功した場合、ダメージに+1のボーナスがつく。この効果は、このピラミッドを冒険している間続く。〈ヘラクレオスの右腕〉は元のまたたく間に肉を失い、骨だけとなり、それもさらさらと砂のように朽ちて大地に還る。ここではもう何も起こらない。次の〈できごと〉へ進むこと。   『青の聖石』を所持していない場合、右腕には、ヘラクレオスの未来への絶望が充満している。それは、若い⭐︎ポロメイアの冒険者に悪い影響を与える。【呪い】だ。ここで〈ヘラクレオスの右腕〉を倒さない限り、今回の冒険が終わるまで、【防御ロール】に−1のペナルティがつく。  〈ヘラクレオスの右腕(Right Arm of the Mighty King)〉  レベル:5 生命点:7 攻撃数:2 宝物:修正+1   ≪反応表≫ 1-3【無視】 4-6【死ぬまで戦う】  これは【ゴーレム】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  また、温度の変化には強いため【炎】や【氷】の攻撃特性を持つ攻撃は効果がない。  表面は鋼鉄のように固いため、【斬撃】の特性を持つ武器で攻撃した場合は、【攻撃ロール】に-1の修正を受けてしまう。 【打撃】の特性を持った武器で攻撃した場合は【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。 〈ヘラクレオスの右腕〉に対して、主人公が【斬撃】の特性を持つ「接近戦の武器」で攻撃したときに、ファンブルが発生した場合は、武器が刃こぼれを起こしてしまう。その武器が「魔法の武器」でない限り、【攻撃ロール】の修正が1減ってしまう(0以下であれば、修正はマイナスとなる。このペナルティは累積する)。 ≪反応表≫が【無視】だった場合、腕だけの存在であるクリーチャーは主人公たちに気が付いていない。こちらから仕掛けない限り、ここでは何も起こらない。こちらも無視するなら、体験していない〈できごと〉として進むことができる(【察知】と同じ)。    ***  これは、かつて刻の悪魔の首を絞めたという、怪力王ヘラクレオスの右腕だ。悪魔を捕らえたまま、魔界まで行った右腕は、醜く怪物化していた。  右腕には、怪力王の未来への不安と恐怖が影となって降りかかっている。それは、若い冒険者に影響を与える。未来への不安は、一度脳裏にこびり付くと瞬く間に膨れ上がり、焦燥を煽る。   --------------------------------------------------------------------------------- ●出目62 〈ヘラクレオスの左腕(Left Arm of the Mighty King)〉  悪魔を捕らえたまま、魔界まで行った〈ヘラクレオスの左腕〉は、見るもおぞましい怪物と化していた。   『赤の聖石』を所持していて使用すると、左腕はヘラクレオスの本来の魂を取り戻す。左腕に宿った怪力王の魂は、「我が力を使え」と語りかけてくる。受け入れるのなら、各主人公は【悪魔】のタグのあるクリーチャーに対して【防御ロール】を行う際、+1のボーナスがつく。この効果は、このピラミッドを冒険している時に限る。〈ヘラクレオスの左腕〉は元のまたたく間に肉を失い、骨だけとなり、それもさらさらと砂のように朽ちて大地に還る。ここではもう何も起こらない。次の〈できごと〉へ進むこと。 『赤の聖石』を所持していない場合、左腕には、ヘラクレオスの過去への悔恨が充満している。それは、経験を積んだ✴︎アルマシウダの冒険者にトラウマを思い出させる。この【呪い】は、ここで〈ヘラクレオスの左腕〉を倒さない限り、今回の冒険が終わるまで、【防御ロール】に−1のペナルティを発生させる。    〈ヘラクレオスの左腕(Left Arm of the Mighty King)〉  レベル:4  生命点:7  攻撃回数:1  宝物:なし  ≪反応表≫ 1-3【無視】 4-6【死ぬまで戦う】  これは【ゴーレム】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーの攻撃は【打撃】の特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。 「弓矢」で攻撃した場合は、硬い骨には効果が薄いので【攻撃ロール】に-1の修正を受けてしまう。  また【打撃】の特性を持った「接近戦の武器」で攻撃した場合は【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  生命点が半分以下になると、このクリーチャーは【逃走】せず、複数の小さな〈ヘラクレオスの指〉に分裂する。その場合、次の〈弱いクリーチャー〉となる。新たに第0ラウンドは行わず、戦闘状態は継続される。 ≪反応表≫が【無視】だった場合、腕だけの存在であるクリーチャーは主人公たちに気が付いていない。こちらから仕掛けない限り、ここでは何も起こらない。こちらも無視するなら、体験していない〈できごと〉として進むことができる(【察知】と同じ)。  〈ヘラクレオスの左指(Left Finger of the Mighty King)〉  出現数:分裂前に残っていた生命点に等しい  レベル:3  宝物:なし  ≪反応表≫ 1‐6【死ぬまで戦う】  これは【怪物】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。     ***  これは、かつて刻の悪魔の首を絞めたという、怪力王ヘラクレオスの左腕だ。悪魔を捕らえたまま、魔界まで行った左腕は、醜く怪物化していた。  左腕には、怪力王の過去への後悔と懺悔が充満している。それは、経験を積んだ冒険者に影響を与える。過去の苦しみは、一度脳裏に蘇るとなかなか消えてくれない。 --------------------------------------------------------------------------------- ●出目63 〈寡黙なスフィンクス(Silent Sphinx)〉  〈寡黙なスフィンクス(Silent Sphinx)〉  レベル:5  生命点:5  攻撃数:2  宝物:+2  ≪反応表≫ 1-2【中立】3-4【敵対的】5-6【死ぬまで戦う】    このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  このクリーチャーに対する【防御ロール】にファンブルした場合、このクリーチャーはもう一度攻撃を行う。キャラクターを1体選んで、そのキャラクターがもう一度【防御ロール】を行うこと。 『手がかり』を1つ消費すると、スフィンクスの弱点に気がつく。それは意外に笑い上戸なことで、ちょっとした悪ふざけを言うだけですぐに笑ってしまうことだ。味方全員に【攻撃ロール】+1、【防御ロール】+1の修正をしても良い。       ***  通路に、翼の生えた獅子が鎮座している。  顔は、古代の王がつける仮面のようだ。銅像のように表情は硬く、沈黙したまま微動だにしない。話しかけても、何も答えない。  その四つの脚は太く、筋肉質だった。寡黙なスフィンクスは、何も言葉を発さず、その表情は敵意に満ちている。だが、その表情の硬さに何かひっかかりを覚えるのも事実だ。   --------------------------------------------------------------------------------- ●出目64 〈輝石の鱗鳥(Iridescent Archaeopteryx)〉  〈輝石の鱗鳥(Iridescent Archaeopteryx)〉  レベル:6  生命点:3  攻撃数:2  宝物:特殊(※後述を参照)  ≪反応表≫ 1【逃走】 2-6【ワイロ】(2個の食料 or 〈弱いクリーチャー〉1体)  これは【鳥類】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。 〈輝石の鱗鳥〉の大きな翼は狙いやすいため、飛び道具で攻撃する場合は【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。  クリーチャーを倒した場合、1d3-1個の『鱗鳥の卵』を発見する。(結果が0個だった場合は、何も発見できない)  この卵は、1個につき金貨25枚の価値を持ち、また1人の【捕虜】として扱える(従者点は増やさなくていい)。つまり、〈弱いクリーチャー〉として、ワイロに使うことができる。  非常にかさばるため、1個の『鱗鳥の卵』を所持するには、装備欄を1つ必要とする。     ***  通路の壁に欠落した部分があり、そこから光が差し込んでいた。  くぐり抜けると、ピラミッドの外壁に出た。石段は高くそびえており、さすがにここから地上まで降りるのは不可能だ。回りには砂漠が広がっているだけで、風も強く、街の影も見えない。  ふと横を見ると、石段の影になった場所で、けばけばしい色をした巨鳥が、乾涸びた爬虫類の死体を啄んでいた。虹色の羽毛が陽の光を受け輝き、鳥のようであるが嘴はなく、トカゲのような鋭利な牙がはえている。巨鳥は顔をあげ、爬虫類の死体を啄むのをやめた。どうやら、ピラミッドの壁から現れたものを、新たな獲物にすることに決めたようだ。 --------------------------------------------------------------------------------- ●出目65 〈白銀の守護者(Silver Guardian)〉  〈シルバー・ゴーレム(Silver Golem)〉  レベル:5 生命点:10 攻撃数:1  宝物:後述  ≪反応表≫ 1【機能を停止している】(※逃走と同様) 2-6【死ぬまで戦う】  これは【ゴーレム】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーの攻撃特性は【打撃】である。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーに【雷】の特性を持つ攻撃が命中した場合、ただちに【幸運ロール】を行うこと(目標値はクリーチャーのレベル+1)。判定に成功したなら、その攻撃でゴーレムが機能を停止するため、戦闘に勝利したことになる。  主人公が【防御ロール】に失敗した場合、拳の一撃が直撃するため、生命点を2点減らさなければならない。  このクリーチャーの攻撃が主人公に3回目の命中をした場合、〈シルバー・ゴーレム〉は床を踏み抜いてしまい、遥か下の階に落下する。その場合、戦闘は終了する(この場合、宝物は入手できない)。 〈シルバー・ゴーレム〉を倒した場合、金貨50枚の価値を持つ『銀塊』を1個獲得する。これを所持するには、装備品欄ひとつを必要とする(反応表の出目が1だった場合も『銀塊』は入手できる)。    ***  待ち構えていたのは、銀色の巨人だった。白銀に光る打撃武器を寄せ集めて作られたようなゴーレムで、特に手脚はハンマーのように太い。まともに食らえば、ただではすまないだろう。侵入者に気がつくと、シルバー・ゴーレムは、眼光鋭く動き出す。 --------------------------------------------------------------------------------- ●出目66 〈オスクリードの巫女(Demon Shaman)〉  〈オスクリードの巫女(Demon Shaman)〉  レベル:6 生命点:10 攻撃数:3 宝物:魔法の宝物  ≪反応表≫ 1~2【無視】(【中立】と同様) 3~6【敵対的】    これは【アンデッド】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは魔法で攻撃する。  3回攻撃のうち、気絶、氷槍を一度ずつ唱え、残り1回は長く伸びた爪による【斬撃】である。  【気絶】の対象はプレイヤーが決定する。【対魔法ロール】を行い、オスクリードの巫女のレベル(6)以上を出せなければその場に倒れて、戦闘が終了するまで起き上がらない。結果が4か5であれば1体、2か3であれば最大2体、1以下であれば最大3体の従者が【気絶】する。主人公が気絶した場合、そこで戦闘は終了する。生命点は半減する(端数は切り上げ)。気がついたときには、魔法のアイテムを1つ奪われている(プレイヤーが任意で決めてよい)。  【氷槍】の対象はプレイヤーが決定する。【対魔法ロール】を行い、オスクリードの巫女のレベル(6)以上を出せなければ2点のダメージを受ける。  【斬撃】で防御ロールに失敗したら、1点のダメージを受け、さらに【生命点ロール】を行う必要がある。失敗したら、全身が麻痺して動けなくなる。回復する前に、オスクリードの巫女は去っていく。魔法のアイテムを1つ奪われている(プレイヤーが任意で決めてよい)。  オスクリードの巫女には魔法の武器、または銀の武器は非常に有効で、【攻撃ロール】に+1の修正を得る。  敵の生命点が5以下になるまで戦闘を行うこと。生命点が半減すると、女は霧のように空気に溶け、姿を消す。  生きていれば、『魔法の宝物』を1つ見つけることになる。     ***  この部屋の中央に、漆黒の衣を着た女が立っている。  妖艶な美女だが、首筋と額に火傷の跡があり、よく見ると右の額に銀剣が突き刺さったままである。  女は君を見つめると驚き半分、愉しさ半分といった表情で話しはじめる。 「こんなところまで来たのなら、教えてあげる。魔道士ミロスは我が主人と契約して、このピラミッドを作った。彼はオスクリードの力を借りて、悪魔を閉じ込めたヘラクレオスの彫像に誰も近づけぬよう、迷路を複雑にし、罠を仕掛け、クリーチャーを配置した。悪魔から人を守るために闇の神の力を借りたのさ。そしてそれを打ち破るため、司祭シーリーンもまた、我が主人と契約をした。しかし、それだけでは足りなかった。クロノシア教徒には、シーリーンを含め、彫像を倒せる実力者はいなかったようだ。両腕を折ることに成功したが、最後の一撃が足りなかった。それを成し遂げるために、つまりヘラクレオスの彫像を破壊するために、ポロメイアやアルマシウダから戦士を招き入れたのだ」  正体を問うと、彼女は衣の胸元を勢いよく開いた。火傷は全身を蝕んでいた。溶けた肉から、胸骨が剥き出しになっている。しかし痛みなど感じていないのだろう。彼女は高位の悪霊だ。 「私はオスクリードの巫女。主の力を欲する人間に力を貸し、死を与える。少しだけ遊んでやろう」 --------------------------------------------------------------------------------- 21:宝物表 -------------------------------------------------------------------------------- --------------------------------------------------------------------------------  ○宝物表(Treasure Table) ≪1d6で決定≫ --------------------------------------------------------------------------------- 出目【1以下】 金貨1枚 出目【2】   1d6枚の金貨 出目【3】   2d6枚の金貨(下限は金貨5枚) 出目【4】   1個のアクセサリー(1d6×1d6枚の金貨と同等の価値) 出目【5】   1個の宝石・小(1d6×5枚の金貨と同等の価値。下限は金貨15枚の価値) 出目【6】   1個の宝石・大(2d6×5枚の金貨と同等の価値。下限は金貨30枚の価値) 出目【7以上】 【魔法の宝物表】でダイスロールを行う。   ●魔法の宝物表(Magic Treasure Table) ≪1d6で決定≫ 出目【1】 〈【祝福】のスクロール(Scroll of Bless Spell)〉 出目【2】 〈【速撃】のクスロール(Scroll of Quick Attack〉 出目【3】 〈魔法の大盾(Magical Knight Shield)〉 出目【4】 〈水晶の薔薇(Crystal Rose)〉 出目【5】 〈初歩の魔法帖(Basic Spell Book)〉 出目【6】 〈壊れかけのクロック・ドール(Broken Clock Doll)〉 ---------------------------------------------------------------------------------    ●魔法の宝物表(Magic Treasure Table) ≪1d6で決定≫ --------------------------------------------------------------------------------- ●【1】〈【祝福】のスクロール(Scroll of Bless Spell)〉  このスクロールは、キャラクター1体にかけられた【呪い】【石化】【麻痺】の効果を、即座にひとつだけ取り除くことができる。  1個の〈【祝福】のスクロール〉につき、1回分だけ使用できる。また、使用のさいには副能力値を必要としない。 ------------------------------------------------------------ ●【2】〈【速撃】のスクロール(Scroll of Quick Attack)〉  このスクロールは【速撃】の効果を発揮する。いつでも使うことができ、行動に数えない(唱えた直後に【攻撃ロール】のような、他の行動が可能)。 【反応表】を確認した後であっても、主人公側から攻撃をはじめることができる。 ------------------------------------------------------------ ●【3】〈魔法の大盾(Magical Knight Shield)〉  これは「戦う従者」専用の装備であるが、主人公の持ち物として扱う。  この大盾を装備している間、部屋で「弱いクリーチャー」と戦うさいには、飛び道具に対する【防御ロール】に+1の修正を得ることができる。 この盾によって守られるのは従者1人のみである。 『魔法の大盾』によるボーナスは、【防衛】の奇跡の効果と累積してもいい。 ------------------------------------------------------------ ●【4】〈水晶の薔薇(Crystal Rose)〉  金貨50枚の価値。所持しているだけで、【幸運ロール】に+1のボーナスが得られる。 「水晶の薔薇」は繊細なため、ガラスケースが壊れるとすぐに枯れ果ててしまう。戦闘の際に【防御ロール】で、ファンブルをすると失われる。〈天使の護符〉または〈八百万のお札〉を所持している場合、身代わりにすることができ、失われることはない。   ------------------------------------------------------------ ●【5】〈初歩の魔法帖(Basic Spell Book)〉  これは基本ルールに記されている「基本的な魔術」と「基本的な奇跡」を行使できる。魔法帖に記された呪文を行使するさい、それに対応する副能力値を使用者が持っていない場合は、【技量点】を基準に判定を行うこと。『初歩の魔法帖』は3回だけ使用可能である。  これは「魔法の宝物」として扱われるため、未使用の状態であれば、金貨60枚で売却することができる。 ------------------------------------------------------------ ●【6】〈壊れかけのクロック・ドール(Broken Clock Doll)〉  〈壊れかけのクロック・ドール〉は、主人の命令に忠実な魔法の人形であり、主人公の経験点を1点消費することによって起動する(起動してからは装備品欄から従者欄に移動し、主人公の従者点を1点増やす)。  これは【ゴーレム】に属するクリーチャーで、「戦う従者(技量点0、生命点1)」として扱われる。攻撃特性は【打撃】である。 〈壊れかけのクロック・ドール〉は、生命点が0になったタイミングで勢いよく時計の針が回る。それは、時空に影響を与え、その戦闘時の主人公の動きを倍速にする。  その戦闘に限り、主人公だけは2回攻撃を続けることができる。  各ラウンドにおいて、ドールを戦闘に参加させるかどうかは、君が自由に選択することができる。  なお一度破壊されたら、二度と起動させることはできない。     ***  カタカタと音を立てながら、人型のからくり人形が動き出す。風変わりな姿のドールだった。胴体から上は縦長の壁時計の形をしており、顔の部分は丸い円盤となっており、そこには1から12までの数字が描かれ、中心から長針と短針が周っている。しかし、時計自体はほとんど動いておらず、指し示す時刻もあっていない。自分でそれに気が付いていて、いつも自らで修正している。 「ええ。わかっております。私はもう長くはありません。しかし、最期の時には、必ずご主人様の役に立ちますので、この針が完全に動かなくなるまで、どうかお供させてください」   --------------------------------------------------------------------------------- 22:中間イベント(1回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆✴︎  階段の踊り場で、冒険者たちは鉢合わせした。  一方はアルマシウダの黒蜘蛛隊、一方はポロメイアのバーランド率いる兵士団だ。そこに、君も偶然通りかかる。  一触即発になりかけた事態を、年長者のベイリーが冷静に諫めていた。 「その紋章はアルマシウダの方とお見受けする。目的はわからぬが、戦うべき相手を間違ってはいないか?」  お互いに手の内は見せないながらも、異端者シーリーンが共通の敵として、鞘を納め、情報を交換する。 「ずいぶんと迷っている様子だが、シーリーンは皇帝の使いを出迎えてはくれなかったのか?」 「ええ、そのつもりはなかったようです。罠や怪物に仲間たちも散っていきました。しかし多くの収穫もありました。あと何か陛下にお見せできる品が手に入れば、一度退却するつもりです」  バーランドの問いに、黒蜘蛛隊の隊長アランが答えた。 「そちらこそ、一度失態をしているのですね。マリノア王女はいかにして、魂を盗られたのですか?」  黒蜘蛛隊の若者ホークが尋ねた。体格の良いドワーフだ。失礼な口ぶりだったが、バーランドは気に留めていなかった。 「ピラミッドに侵入した調査隊は、そこで、怪力王ヘラクレオスの像と相まみえた。恐ろしい強敵だった。全員で倒しにかかったが、その隙を狙われたのだ。シーリーンが現れ王女に何かした。動かなくなった王女を守りながら、我らは退散するしかなかった」  バーランドはぐっと奥歯を噛み締める。 「おい、まさかヘラクレオスの像とはあれのことか?」  階段を上り切ると、広い場所に出た。  いくつもの背の高い影が待ち構えていた。 「あれだ……だが、前はあんなにいなかった」  さすがに両国の精鋭たちだった。像が動き出すのを待つことなく、すぐに武器を抜いて戦闘に入る。  ヘラクレオスの像は目を光らせ、侵入者を排除しようと両手を広げる。そのうちの一体を、君も相手にしなくてはならない。 〈ヘラクレオス像〉 レベル:5  生命点:6  攻撃数:2  宝物:修正+1 ≪反応表≫ 1‐6【死ぬまで戦う】   これは【ゴーレム】【人間型】に属するクリーチャーである。戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。 〈ヘラクレオス像〉に対して、【斬撃】の特性を持つ武器で攻撃した場合は【攻撃ロール】に-2の修正を受けてしまう。    君が敵を倒した頃、バーランドの一行と黒蜘蛛隊の手によって、残りの〈ヘラクレオス像〉はすべて粉砕されていた。  広間の奥に進むと、通路が熊手状に伸びていた。  両国の精鋭たちは無言で袂を分かち、それぞれの進路を決めて先へ進む。  君は最後に残り、一度広間を振り返った。  すると、そこには魔道士のローブをまとったドワーフが立っていた。 「先へは行くな。至高のヘラクレオスに取り憑いた悪魔はそのままにしておくのだ。戻れなくなるぞ。誰も時を操る者には勝てない」  まるで幽鬼のように立ち尽くしていた。そう思った次の瞬間、ドワーフの姿は静かに消えた。 --------------------------------------------------------------------------------- 23:最終イベント(1回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆✴︎  背後の扉が音を立てて閉まると、動かなくなった。  廊下が伸びて、その先に、影から現れるように、細身のドワーフが立っていた。 「私がこのピラミッドを造った。そして誰にも見つからぬようにピラミッドを隠し、歴史からも消した。もう私はこの世にはいない」  ドワーフは魔法使いのローブを着ていた。頬はこけ、目は窪み、疲れ切った顔をしている。 「私の魔法の力が尽きたのか、それとも偶然ピラミッドを見つけて突破してきたのかは知らないが、できればここから引き返してほしい」  ドワーフの存在は希薄だった。言葉通り、よく見るとその姿は透けていた。  そのとき、突然足元のタイルが消えた。落とし穴の先には剣山が敷かれている。  主人公1人が【器用ロール】を行うこと(判定値:3)。失敗すると落とし穴に落ちるのはかろうじて免れるが、【生命点】1点を失う。 「怪力王の伝説は知っているか? ビウレスがまだ魔法使いの塔として高くそびえていた頃、その麓の荒野で生まれた若者の伝説だ。生まれつきの大男で怪力自慢の彼は、ヘラクレオスと名付けられ、数多くの逸話を残した。家畜を攫って食べる大猿を退治し、森の木々を一つ残らず引っこ抜き、百人の食糧を一日で食べ尽くした。拍手喝采を浴びる活躍もあれば、目も当てられない失態をすることもあった。ヘラクレオスは有り余る力を制御できない若者だったのだ。しかしそんな彼も、最後には自分の村を救った。いや、今思えば救ったのはこの世界だったかもしれない。時を刻む悪魔が現れ、村人たちが一年かけて作った作物の収穫をすべてなかったものにした。人々の努力や積み重ねを無にした。困った人々を助けようと思ったヘラクレオスは、時を刻む悪魔をなんとか捕まえて、その首を絞めた。懲りた悪魔は自分の世界へ逃げ帰ったが、ヘラクレオスはその手を離さなかった。だから、彼の両腕は根本から消えてなくなった。本当になくなったわけではない。悪魔がどこへ逃げようとその首を絞め続けているのだ。二度と悪さをしないようにとな」  ドワーフは一方的に喋り続ける。こちらが問いかけても、いっさい反応はしない。  再び、足元のタイルが消える。  主人公1人が【器用ロール】を行い(判定値:3)、失敗すればここでも【生命点】1点を失う。 「私は、それから数百年後の世界に生まれた。ビウレスが傾き、塔街となって久しくなった時期だ。時を刻む悪魔が再び現れた。彫刻家であった私はヘラクレオスの像を掘っていた。生涯最高の傑作、至高の作品だった。魔法の力で、その像にヘラクレオスの魂を宿そうと考えた。そうして、もう一度時を刻む悪魔を懲らしめてもらおうと思ったのだ。幸い、麓の村にヘラクレオスの魂は祀られていた。私は魔法の鍛錬を積んだ」  ドワーフの姿が、次第に明滅し始めた。どんどん透けてきている。そこで、ようやく君は確信する。このドワーフは、魔法で浮かび上がった過去の残像だ。  ここまで来た者には、自動的に視える仕掛けが施されているのだろう。 「だが、失敗に終わった。ヘラクレオスの魂を宿すつもりの彫像に、時を刻む悪魔自身が乗り移ってしまった。私は両腕を折り、悪魔を像に封じ込めた。しかしそれは一時的なものに過ぎなかった。いずれ悪魔は彫像から出てくる。もっと確実に封じるために、私は長い年月を掛けてピラミッドを造った。その建造物が人の目には触れないよう魔法のカーテンで覆い、手伝ってくれた者たちの記憶もすべて消した。そうして、世界を守ったはずだった」  残像の声は小さくなっていく。最後は聞き取るのも難しかった。  三度、足元のタイルが消えた。どのタイルが消えるかなど予想できない。気をつけていても避けるのは難しい。  主人公1人が【器用ロール】を行い(判定値:4)、失敗した場合、【生命点】1点を失う。 「しかし、この声を聞いている者がいるのなら、それが破られたのだろう。ピラミッドは蘇った。断言するが、悪魔を打ち破る方法はない。私を信じてくれるのなら、この場所に誰も近寄らせず入らぬようにするしかない。奥に行けば悪魔はその者の刻を奪い、自らの力に変える」  やがてドワーフの姿は完全に消えた。祈りのような囁きだけがわずかに残った。 「しかし、私は別の未来にも期待する。時が流れ、のちの世の人々が、悪魔をこの世界から追放する方法を見つけていることを」  タイルを飛び越えた先の壁に、隠し扉があった。  開くと、皮の袋が置いてあり、見たことのない種類のコインが大量に入っていた。またその奥にトンネル状のスロープがあり、抜けると一面の砂漠だった。背後にピラミッドが壁となってそびえている。トンネルは出口だったようだ。 --------------------------------------------------------------------------------- 24:冒険の終わり(1回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆ポロメイア 「このコイン……これがあれば王女を救えるかもしれません」  そう、一縷の希望を見出しかのように目を輝かせたのは、神官長ベイリーだった。 「どこかの国の通貨ではないのか?」 「どこにも流通していないでしょう。なぜなら、これは異端者あるいは彼女が信奉する悪魔が作り出したものだからです」  神官長は重々しい声で答えた。 「この中のいくつかに、人の魂の力を感じます。おそらく、悪魔は人間から奪った生命力をコインに変えたのです」 「これをどうすれば、マリノアは元に戻る?」 「まだわかりません。ただ王女の生命力もコインに変えられたとすれば、それを戻せば良いはずです。この中にあるのかは、不明ですし、どうすればコインの生命力を生体に還元できるかもわかりません。これからは時間との戦いになりましょう。しかし、必ず我らで突き止めてみせます」  ベイリーは高位の神官たちを招集し、コインの分析を始めることにした。  エドガー王は、コインを持ち帰った冒険者を自室に招き、礼を伝える。 「そなたの働きで、マリノアの未来にわずかながら光が差した。礼を言う。だが、まだ予断を許さない状況に変わりはない。すぐに次の任務を頼むことになるだろう。準備を整え、待機をしていてくれ」  そう告げられると、君は、王から今回の冒険の報酬を直々に手渡された。  各主人公は、金貨20枚を受け取る。  経験点1点を獲得する。 ✴︎アルマシウダ 「それぞれ金、銀、銅で鋳造されていますが、我々の知る限り、この大陸のどの国の通貨でもありません」  皮袋に入ったコインの山を見て、アルマシウダの学者たちは頭を悩ませていた。アルマシウダはその発展の過程であらゆる国の出身者を受け入れた。その中には人間が支配する社会ではとうてい受け入れ難い姿の獣人や亜人もいたが、皇帝アルマは意に返さなかった。素行の悪い者でもその多くを受け入れ、結果、アルマシウダは他国とは違う、独自の情報網を築いていた。 「シュラク、お前はどう考える? このコインに価値はあるか?」  アルマは、旅人としてアルマシウダを訪れていたエルフを呼び出し、尋ねた。アルマとシュラクは旧知の仲だった。彼は世界中を旅し、伝承や神話に詳しい。 「これは、神あるいは悪魔が生み出したコインではないかと考えます」  シュラクはコインを一枚つまみ、虫眼鏡のような器具で丁寧に観察してから答えた。 「悪魔が? ならば、危険なものか?」 「いえ……コイン自体に危険はありません。おそらく人から奪った何か、精神を形作っているエネルギーのようなものをコインに変えているのです」 「なるほど。それは仮に神だったとしても愉快な存在ではないな。やはり悪魔と呼ぶ方が相応しそうだ。では、それは我が国にとって価値があるものか?」 「価値はあるでしょう。このコインを欲しがる者は、いくらでも大金を積むでしょうから」  皇帝は満足そうに頷いてから、冒険者を呼び出した。 「よくやった。お前の今回の任務は成功だ。報酬を受け取るがいい」  アルマは部屋に置いてある宝箱に歩み寄り、金貨を何度か鷲掴みにして、乱暴に皮袋に入れた。  各主人公は、10+3d6枚の金貨を報酬として獲得する。経験点1点を獲得する。 「とはいえ、まだピラミッドの秘密が解き明かされたわけではない。お前の任務はこんなものではない。いつ呼び出されてもいいように、準備しておくがいい」  そう付け加えるのを忘れなかった。 --------------------------------------------------------------------------------- 25:中間イベント(2回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆✴︎共通  ピラミッドの入り組んだ迷宮の一画に、ポロメイアの兵士長が立っていた。  長剣を握り、殺気立った眼をしている。数人の若者たちに囲まれていた。彼らも興奮状態だった。彼らは、アルマシウダの黒蜘蛛隊だ。 「そいつを渡せ」  黒蜘蛛隊の若者の一人、ビウレスのホークが叫んだ。 「渡すものか。これは異端者に会うために必要なプラチナコイン、お前ら田舎者には必要のないもの」 「貴様、悪魔に魂を売ったのか!?」 「売ったのではない。買ったのだ。俺は未来を買った。自分の過去と引き換えに。そして力を手に入れた。もうお前たちが敵うような相手ではない」 「その言葉、後悔させてやる」  黒蜘蛛隊が一斉に、バーランドに挑んだ。 「お前らの相手などする暇はない。俺の目的はシーリーンただ一人。あの女を殺すのみ」  バーランドは床に白い粉を撒いた。すると、辺りに凍えるような冷たい霧が立ち上り、それが人の形を成して黒蜘蛛隊の若者たちの前に立ち塞がった。  冷たい霧の怪物は、バーランドを追おうとした君のことも見逃さなかった。 〈氷霧の精霊(Ice Mist Elemental)〉  レベル:3 生命点:6  攻撃数:全体(後述)  宝物:+2  ≪反応表≫ 1‐6【死ぬまで戦う】    これは【精霊】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【氷】の攻撃特性を持つ。  戦闘では、常に【死ぬまで戦う】。  このクリーチャーには【氷】の特性を持つ攻撃や魔法の効果がない。  冷たい水蒸気で全体に攻撃を行うため、すべてのキャラクターは毎ラウンド1回ずつ【防御ロール】を行わなければならない。(目標値:3) 「くそっ、やっとお宝を手に入れたと思ったのにポロメイアの野郎に奪われちまった」 「あいつ、最初会ったときと違っていたな」 「ああ、顔つきがおかしかった。ずいぶん老けたように見えた」 「必ず見つけ出して、奪い返してやる」  黒蜘蛛隊の若者たちは、口々にそう言った後、ポロメイアの兵士長を追って、迷宮を駆けていった。 --------------------------------------------------------------------------------- 26:最終イベント(2回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆✴︎共通  巨大な彫像が立つ大広間で、男女が対峙していた。  男はポロメイアの兵士長バーランドだ。王宮で見かけたときと比べ、白髪が増え、身体つきは細くなっていた。まるで時間だけ彼を追い越してしまったようだ。余計なものが削ぎ落とされた影があった。  元々武人としての佇まいは眼を見張るものがあったが、今はさらに洗練された印象を受けた。仙人めいた幽玄さを感じた。  女は深緑の装束に身を包んでいた。フードにより口元しか見えていない。色のない乾いた唇。声だけが湿っていた。 「あなたが、わざわざこんなところまで来るとはね。いったい何の用かしら?」 「未来が見えるのだろう? わかっているはずだシーリーン。お前を殺しにきた」 「クロノヴァルス様と取引をしたのでしょう? その姿を見ればわかる。もう、あなたもクロノシア教徒だわ。争う必要なんてなくてよ」 「過去を消して、お前に会う必要があった。お前が最初、マリノア王女の前に現れたとき俺は斬れなかった。過去が邪魔をしたのだ。お前がまだ普通だった頃の記憶が頭を掠めた。失態だ。俺の迷いのせいでマリノア王女を、王を、窮地に陥れてしまった」 「あら、そうだったの」 「そうだ。そして代わりに未来を手に入れた。二十年分の過去を消して、二十年分の未来を手にいれた。するとどうだ。体力は衰えたが、剣技はさらに磨きがかかった。お前を殺すには充分過ぎるほどにな」 「私には未来が見えるの」  シーリーンはフードを外す。顔中に瞳があった。  バーランドの体が、少しだけぴくりと震えた。  かつての婚約者に、今の自分を見て欲しいとでも思ったのだろうか、そのあと彼女は深緑の装束も脱いで、生まれたままの姿を披露する。  病的に痩せ細り、皮膚のあらゆる場所に、古い刻印のような乾いた傷があった。その黒い線の内側にも、全てに眼球が潜んでいる。それらは、まるで一瞬の未来をも見逃すつもりがないように瞬きをしない。 「あなたの攻撃、全部避けてみせるわ」 「おぞましい怪物に成り下がったか」  二人の勝負が始まろうとしたそのとき、床石が揺れ、砂が跳ねた。  シーリーンの背後に立っていた彫像が動き出したのだ。両腕のないヘラクレオスの巨像だった。細部に渡り精巧に作られ、経年劣化を感じさせぬ生々しい光沢を放っていた。  ミロスの最高傑作と伝わる、〈至高のヘラクレオス〉に違いなかった。 「あら、彼も戦いに参加したいようね。そちらは一人で大丈夫?」 〈至高のヘラクレオス〉はバーランドに向けて、巨大な足を踏み出した。空気が押し出される迫力があった。バーランドは慌てずに後ろへ退いたが、シーリーンの姿は、その分遠ざかった。 「ふふふ、王女のプラチナコインは我が手にある。欲しければ、奪ってみなさい」  君は、急いでその場に駆けつける。 〈至高のヘラクレオス〉の相手をし、バーランドにシーリーンを倒してもらうか、このまま〈至高のヘラクレオス〉を引き受けてもらい、シーリーンに戦いを挑むか、選ぶ必要がある。どちらか一方と戦闘を行うこと。  〈至高のヘラクレオス〉  レベル:5  生命点:12  攻撃数:1  宝物:修正+1  ≪反応表≫ 1‐6【死ぬまで戦う】  これは【ゴーレム】【人間型】に属するクリーチャーである。このクリーチャーは【打撃】の攻撃特性を持つ。  戦闘では常に【死ぬまで戦う】。 〈ヘラクレオス像〉に対して、【斬撃】の特性を持つ武器で攻撃した場合は【攻撃ロール】に-2の修正を受けてしまう。【打撃】の特性を持った武器で攻撃した場合は【攻撃ロール】に+1の修正が得られる。    〈異端者シーリーン〉  レベル:5  生命点:5  攻撃数:3  宝物:修正+1  ≪反応表≫ 1‐6【死ぬまで戦う】  このクリーチャーは【悪の種族】【人間型】に属する。  戦闘では常に【死ぬまで戦う】。  彼女は未来を垣間見る。魔法の武器による攻撃か、偶然の要素のある〈クリティカル〉でないと、攻撃は当たらない。しかしここで『手がかり』を一つ消費すれば、その術を打ち破ることができる。(戦闘が終わるまで、通常武器での【攻撃ロール】を成功すればダメージを与えられる。)    シーリーンの攻撃は、【邪視】【斬視】【狂視】という視線による特殊な攻撃が一度ずつ行われる。  ◆【邪視】には誘惑の魔力がある。【対魔法ロール】に失敗したら、〈シーリーン〉が崇高な教祖として映り、攻撃にためらいが生じる。【攻撃ロール】に−2の修正が入る。従者が失敗した場合は、この戦いにおいて敵に寝返り、味方に攻撃するようになる。「技量点+4」の値をクリーチャーレベルと扱うこと。(シーリーンを倒せば正気に戻る。)  ◆【斬視】は視線のみで、敵の肉を切り裂く術である。斬撃の攻撃特性を持つ。通常の防具を装備している者が【防御ロール】に失敗した場合、続いて【対魔法ロール】を行う必要がある。これに失敗すると防具の1つが破壊される。  ◆【狂視】は血走った悍ましい視線である。これと目が合った者は、【対魔法ロール】を行う必要がある。失敗すれば1d6を振り、次のラウンドは下記の出目に応じた行動をとってしまう。 ・出目1……行動不能に陥り、何もできない。 ・出目2……味方のランタンの火を消してしまう。 ・出目3……味方の所持品を1つ破壊してしまう。(任意で選ぶこと) ・出目4……味方の1人に抱きつき、攻撃の邪魔をする。味方は【判定ロール】に−2のペナルティを受ける。主人公が優先的に抱きつかれる対象となる。主人公が【狂視】を受けた場合、相棒または従者から任意で選ぶこと。 ・出目5……自分を攻撃する。(判定ロールなしで、生命点1点を失う) ・出目6……半狂乱となり、シーリーンに向かっていき攻撃をする。+2の攻撃修正してよい。しかし、次のラウンドで必ずシーリーンの【斬視】の対象となる。このとき、【防御ロール】で−2のペナルティを受ける。  勝利すれば、敵は同時に倒れる。バーランドも意識を失い、武器を手にしたまま動かなくなる。 「これでいい。これで、クロノヴァルス様の封印は全て解ける。皆が、刻の神の偉大さを思い出すことになる」  倒れる最中、シーリーンは最後にそう言い残した。  次の瞬間、壊れた〈至高のヘラクレオス〉から、黒い塊が弾けるように飛び出した。それはピラミッドの頂点に向けて高く昇っていく。空気が鳴動した。耳鳴りがする。天井が音を立てて崩れ始める。 「バーランド、大丈夫か!」  ベイリーとジル=メガが、瀕死のバーランドを抱えていた。二人もようやく追いついたようだ。君はシーリーンの手からプラチナコインを奪う。  ベイリーの後を続くと、壁に亀裂が入っていて、そこから砂漠の光景が広がっていた。急いで脱出する。    ピラミッドを外から見ると、その頂上に禍々しい影が浮かんでいた。鳥の鶏冠を持ち、獅子の顔、蛇の鱗。漆黒の翼は、鴉のそれとよく似ている。  憎悪で顔を歪めて、獅子が吠えた。それは空気を揺るがし、遥か遠くまで届いた。  咆哮を聞いた長寿の種族たちは身を震わせた。彼らが忘れていたはずの恐怖が、何の前触れもなく急に思い出された。  かつて、ポロメイアを恐怖に陥れた悪魔がいた。  刻の悪魔クロノヴァルス。ビウレスにあった魔法使いの塔を倒した張本人だ。今、その災厄が砂漠の果てで甦った。 --------------------------------------------------------------------------------- 27:冒険の終わり(2回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆ポロメイア 「よくぞ手に入れてくれた」  王は深々と頭を垂れた。 「お前がいなかったら、シーリーンと至高のヘラクレオスを倒すことはできなかったと聞く。大した活躍だ。気にせずに報酬を受け取るがいい」  王の言葉をありがたく頂戴する。君は金貨30枚を獲得する。  アルマシウダから使者が着いたのは、それからまもなくのことだった。その使者はエドガー王の友人で竜の頭を持つ戦士だった。寡黙で、必要最低限のことしか口にしない。  その贈り物に、ベイリーが珍しく破顔して喜んだ。 「アルマシウダがやってくれました。もう一枚のプラチナコインを届けてくれました。おそらくバーランドのものと思われます。それと一緒に、シュラクという者が記した書簡が同封されており、アルマシウダでのコインの調査と分析内容、その考察が事細かに書かれていました。これが随分と的を得たものばかりで、驚く限りです。私たちが行き詰まっていた箇所を埋めるものばかりで、うまく組み合わせれば、マリノア王女だけでなく、バーランド兵士長も元の姿に戻せるでしょう。これから、総力を上げて取り掛かります!」 「待て」  王が、気が早る神官長を遮った。 「総力をそちらに注いでもらっては困る」  エドガー王は冷静だった。 「そなたが言ったのだぞベイリー、かつてポロメイアを恐怖に陥れた悪魔が甦ったのだと。双角の塔の責任者として、そなたはその対策に当たらねばならぬのではないか?」 「ああ……たしかに」  ベイリーは恥じるように顔を赤らめた。 「ルチア様を呼び、王女の方は彼女に任せましょう。私は悪魔を封じる封印の壺を準備致します」  ルチアはマリノアの従姉に当たり、砦の一つを任された領主であり、また一流の司祭でもあった。  王宮はいっときの歓喜に包まれたが、それはほんの束の間だった。まだ終わっていない。これから、本当の戦いが始まるのだ。  エドガー王は、小国家連合のリーダーたちに遣いを送り、改めて呼びかけた。  返事は早かった。その知らせは各国に根付いていたわだかまりを、一時的にでも捨てさせた。どの国にも、かの悪魔を思い出した者はいたらしい。  日頃は多くを反目し合い、けっして協調性のある国々とは言えなかったが、手を取り合い戦うときだった。災厄を再び封じるために。  各主人公は金貨30枚分の報酬を受け取る。  また経験点1点を獲得する。 ✴︎アルマシウダ 「手に入れたか?」  脱出の際、シーリーンから入手したプラチナコインをアルマに差し出した。 「これか……なるほど輝きが違う」  薄い笑みを浮かべていたが、アルマは浮かない顔をしていた。 「では、早速これをポロメイアのエドガーに送り届けるとしよう。無論、見返りはいらないと付け足してな。お前が行くのだ。心配するな、その前に今回の報酬もくれてやる」  アルマは前回と同じように、宝箱の金貨を鷲掴みにすると、皮袋に詰めた。 「前回よりだいぶ色をつけてある」  各主人公は、3d6+20枚の金貨を獲得する。また経験点1点を獲得する。 「ライディン、案内するがいい」  アルマは部下の龍人を手招き、君に紹介した。  首から上は竜そのもので、背中には硬質の翼が生えていた。ライディンは、全身が鱗に覆われた長身の戦士だ。ポロメイア王とも面識があり、アルマからの信頼も厚かった。 「古い悪魔が復活したらしい。総力戦になれば、アルマシウダも手を貸さないわけにはいかないだろう。そのときは、お前も奴らに協力するがいい。だが、ポロメイアに行っても、アルマシウダに仕える身だということを忘れるな」  アルマは、シュラクから刻の悪魔クロノヴァルスの恐ろしさをさんざん聞かされたらしい。どこかうんざりした様子だった。シュラク自身も、悪魔の存在を思い出した途端、すぐに次の旅に出かけたらしい。  ライディンは寡黙な男だった。道中、会話らしい会話は一つもできなかった。そうして、君たちはポロメイア王宮へと辿り着く。 --------------------------------------------------------------------------------- 28:中間イベント(3回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆✴︎共通  その部屋の床は、落とし穴になっていた。  君よりひと足先に辿り着いた者がいて、物の見事にその罠の餌食となっていた。  床は真っ二つに割れ、底には無数の巨大な針が待ち構えている。  しかし獲物となるはずだった先客は、なんとか腕力で持ち堪えていた。剣を天井の柱に突き刺し、二本の腕でぶら下がっている。とはいえ、出口まではだいぶ離れており、落ちるのは時間の問題と思われた。 「おお、ホークの坊ちゃんじゃないか」  すると、反対側の入り口から、ノームの少年が呼びかけた。青紫の髪をしたサファイアヘッドだ。 「こんなところで何してんの?」  その隣にピンクヘッドも立っている。 「何をしてるもない! さっさと助けろ!」  天井にぶら下がっているのは、黒蜘蛛隊のホークだった。彼らは知り合いのようだ。 「あら、どうしようサファイアヘッド? あんなふうに言ってるよ?」 「そうだな、俺たちの目的は悪魔の封印。坊ちゃんは関係ないしな」  そう意地悪に答えるノームたちに、ホークも素直には応じなかった。 「フン、俺の力なら、いつまでだってぶら下がってられる。お前らの助けなど必要ないわ! え? あ、なに?」  ホークは驚きに目を見開いた。言い終えた途端、剣先が刺さった柱に亀裂が走り、柱がポキリと折れる。  次の瞬間、ホークの太い体を、長い槍が絡め取っていた。  ノームの二人が素早く差し出した、伸縮性のある槍だった。先端は長い三本指のようになっていて、ホークの体を掴んでいる。  サファイアヘッドとピンクヘッドは二人がかりでその槍を支えていた。柄の部分は最大限に引き伸ばされて、しなっている。 「でもまあ、親方の息子とあらば」 「嫌な奴でも助けなきゃね……てか重い……」  ところが、二人とはいえ、体格の小さなノームでは引き上げるのに苦労していた。槍は釣り竿のように下方に曲がり、その角度は次第に大きくなっていく。 「お、おい早くしろ、変なのが登ってくる!」  ホークは焦りの声を上げた。 「あれはワニ? 砂漠にワニなんているのか?」  サファイアヘッドは驚いて、手を滑らせそうになる。 「おい馬鹿、ちゃんとつかんどけ!」 「ああ、そっちのあなた、見てるだけでなくて、なんとかしてくれません?」  ピンクヘッドが、ようやく君に気がついた。  ここから攻撃を仕掛ければ、砂漠ワニは君の方に向かってくるだろう。その間に、二人はホークを救助できる。  〈砂漠ワニ(Desert Crocodile)〉  レベル:4  生命点:9  攻撃数:1  宝物:なし  ≪反応≫ 1-3【ワイロ】(2個の食料 or 〈弱いクリーチャー〉1体) 4-6【敵対的】   これは【動物】【水中】に属するクリーチャーである。  このクリーチャーは【斬撃】の攻撃特性を持つ。  〈砂漠ワニ〉に対する【防御ロール】でファンブルが発生した場合、対象のキャラクターの体に〈砂漠ワニ〉が噛みついたまま離れてくれない。次のラウンド以降、〈砂漠ワニ〉は獲物を食いちぎるために回転を始めるため、各ラウンドが終わるたびに、噛みつかれたキャラクターの生命点を2点減らさなければならない。その代わりに、この状態の〈砂漠ワニ〉の攻撃数は「なし」として扱うこと。    ◆勝利すると、 「ありがとう。こっちの道は何にもなかったから、引き返して他を探索した方がいいよ」 「素敵。好きになってしまう。また会いましょうね」 「ほら、坊ちゃんも御礼を言わないと」 「助かったよ……」 「え?」  ピンクヘッドがその頭をこづく。 「いえ、助けていただき、ありがとうございました」 「それでいいのよ」 「だが、腕が疲れたわけじゃねぇ」 「知ってる。柱の方が先に音を上げてたね」  ホークの言い分を、サファイアヘッドは認めた。 「そういえば師匠はこんなこと言ってたよ。あんたの努力は大したものだって。ワシの息子があんな立派な戦士になるとは思わなかったって」  ピンクヘッドがそう言った。 「いや、俺はまだまだ未熟だった……親父の作った剣や防具がなかったら、何度やられていたことか……」  ノームたちは顔を見合わせ、ニンマリと笑う。 「ありがとう、そこのあなた。私たちはこの馬鹿息子を連れて帰るから、どうぞこの壺も使ってね」  二人のノームから〈封印の壺〉を預かる。    ◆「生霊姫」を知っていれば  帰りながら、ホークはぶつぶつとつぶやいた。 「だが、本当にまだやれたんだ。それが、突然目の前にご先祖様の顔が浮かんで……あまりに驚いたもんだから」 「失礼ね、元気づけようと思っただけじゃないの」 「ピンク、なんか言った?」 「……私じゃないわ」 「え? じゃ、だれ?」  三人はキョロキョロと辺りを見回すが、誰の姿も見当たらない。 --------------------------------------------------------------------------------- 29:最終イベント(3回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆✴︎共通  ピラミッド最上階。  異形の悪魔が浮かんでいた真下あたりだった。だが、ここからその姿は見えない。  天井に浮かぶ巨大なクリスタルは、まるで心臓のように脈動し、君が近づくと、そこから黒い影がぽたりと落ちてきた。  黒い影は、淡い空気をまとったドワーフの姿となった。ここには存在しない、亡霊だ。 「クリスタルは、刻の悪魔を繋ぐ最後の鎖。ピラミッドエネルギーの集積点。至高のヘラクレオスが破壊されても、クリスタルの光がある限り、悪魔は完全に解放はされない。だが……」  亡霊はビウレスのミロス。このピラミッドを作ったその人だ。 「悪魔が力を集めれば、それもいつまで続くかわからない。クロノヴァルスは人の時を、その過去や未来をコインに変えて食べる。自分が満たされれば、他の悪魔に売り捌き私腹を肥やす。それは人の記憶、経験、知識、大切な想い出。あるいはそれらの継承。私のこの声を聞いたのなら、もう少しでクリスタルの光は消える。早くここから逃げ出せ。そうしてこの地方で一番の魔法使いたちに知らせるのだ。彼らの記憶や知識が食われる前に」  その直後、ドワーフの亡霊は、巨大な足に踏み潰されて消えた。  刻の悪魔が、クリスタルを潜り抜けて、上空から降りてきた。  鳥の鶏冠、獅子の顔、爬虫類の鱗、鴉の黒翼。  異形の悪魔は、部屋の天井まで届くほど巨大だ。 「……使徒よ、コインを集めてきたのか?」  直接、頭に聞こえてくるような声だった。皮膚を通り抜け、骨の髄まで響く。  瞳は泥水のように濁っていた。目の前にいる者を、シーリーンたち、クロノシア教の教徒と間違っているらしい。 「違うのか? まさかミロスの末裔か? こざかしい、ここから去れ」  〈刻の悪魔クロノヴァルス(Chronovals, The Demon Of Time)〉  レベル:5  生命点:12  攻撃数:2  宝物:修正+1  ≪反応表≫ 1-6【死ぬまで戦う】    このクリーチャーは【悪魔】に属する。このクリーチャーの攻撃特性は【斬撃】である。  このクリーチャーは翼を持っているため、飛び道具による【攻撃ロール】に+1の修正を(主人公側が)得る。 ◆第0ラウンドで、クロノヴァルスは、〈時喰いの咆哮〉を放つ。空間が歪み、床も壁も、君自身の影さえも揺らぎ始める。【対魔法ロール】を行うこと。  失敗すると、時が巻き戻される。最終イベントに来る直前の〈できごと〉に戻り、なかったものとして、体験し直さなくてはならない。この判定がファンブルだった場合、直前に体験した二つの〈できごと〉まで巻き戻される。二つの〈できごと〉をなかったものとしてやり直すこと。ただし、やり直した〈できごと〉で得たアイテムやボーナスを二重に獲得することはない。また、この攻撃は戦闘の最後にも行われるため、戦闘を始める前に、主人公たちの冒険の記録を残しておくことをおすすめする(ファイルのコピーや画像を撮影しておくなど)。 『水晶の薔薇』を所持している、または『天使のヘルメット』を装備していれば、この〈時喰いの咆哮〉の【判定ロール】に+2のボーナスをそれぞれつけることができる(このボーナスは加算される)。   ◆攻撃のうち1回は 〈時空牙〉という技だ。クロノヴァルスが左右の腕を広げ、空間そのものを引き裂くと、それは1回の攻撃で2人に傷を負わせる。主人公と【従者】1人がそれぞれ【防御ロール】を行い、失敗すると生命点1点を失う。1人で戦っている場合、主人公が2回とも【防御ロール】を行うこと。   ◆攻撃のうち1回は、鴉の黒翼が空気を震わせる〈斬撃風〉。【防御ロール】を失敗すると、生命点1点を失い、さらに体勢が崩れ次の【攻撃ロールに】−1の修正を受けてしまう。またこのとき、さらに【幸運ロール】か【器用ロール】を行わなくてはならない。判定でファンブルを出すと『封印の壺』が1つ割れてしまう。割れた壺は、悪魔の封印に使用できない。 『天使の護符』を持ち、かつ『水晶の薔薇』を所持していなければ、『天使の護符』の恩恵を受けられる。このとき、『封印の壺』は壊れない。 また『八百万のお札』を所持していれば、割れるはずだった壺の身代わりにすることもできる。 ◆生命点が0になっても、クロノヴァルスは死んではいない。そのとき、悪魔は再び〈時喰いの咆哮〉を放つ。ふたたび【対魔法ロール】を行うこと。  失敗すれば、空間が巻き戻り、君の積み重ねた時間が再び奪われる。 「無駄だ……どれほど抗おうと、お前の努力は、私の糧となるだけ……!」  第0ラウンドと同じ効果だが、この戦闘中に失われた能力値や装備品、持ち物は元に戻る。殺されてしまった従者も復活する。割れていた〈封印の壺〉も元通りとなるため、あえて【対魔法ロール】を行わず、この効果を受けることも可能だ。(ただしファンブル判定のためにサイコロを振ること)。〈できごと〉をふたたび体験し、この最終イベントに来たとき、クロノヴァルスの生命点は元に戻っている。   ◆ 〈時喰いの咆哮〉を回避し、『封印の壺』を所持していれば、壺の表面の古代文字が光り、白い塔の紋章が浮かび上がる。悪魔の身体が引き伸ばされ、断末魔と共に壺の中へと吸い込まれていく。 「やめろ……! 我は……まだ……お前の未来を……喰らって……!」  最後の叫びを言い残すことなく、悪魔は壺へ封じ込められる。しばらくして、天井で明滅していたクリスタルは、完全に光を失う。〈冒険の終わり(3回目)〉へ。    もしもクロノヴァルスの生命点は0になったが、『封印の壺』が割れ残っていなかった場合、クロノヴァルスは時をおいてふたたび復活する。刻の悪魔の力で、これまでの冒険の時間がすべて消されてしまう。〈冒険の終わり(Another)〉へ。   --------------------------------------------------------------------------------- 30:冒険の終わり(3回目) --------------------------------------------------------------------------------- ☆✴︎共通 〈封印の壺〉は死者の塔へ運ばれ、ベイリー率いる神官たちによって、悪魔は無事に魔界へと送還された。その一週間後、王女マリノアの意識は戻った。従姉であるルチアの必死の看病が実ったのだ。  人々は大いに喜び、街は歓喜で溢れた。  王女の復帰を待って、王宮で祝宴が開かれた。  痩せこけた王女は、エドガー王を初め、各国の代表者たちが集まる席で、次のように語った。 「私は夢を見ました。その中で、異端者シーリーンがなぜこのようなことをしたのか、その人生を追体験しました。あの女性は、幼い頃、奇跡の子と呼ばれていました。遠い過去と少し先の未来を、その場にいたかのように見る能力を持って、生まれてきました。その力で、多くの危機を予見し、多くの人々を救いました。だけど、限界もあった。危機が予見できても、自分の力では防ぐことができない。避けられない現実に、自分の非力を痛感し、彼女は打ち砕かれた。だから、もっと大きな力で過去や未来そのものを変える必要があると考えたのです。そして、刻の悪魔クロノヴァルスを見つけてしまった。神と崇めれば、悪魔でも願いを叶えてくれる神になると信じてしまった。そして、その力によって世界を良き方向に修正しようと考えたのです。自らの思想に傾倒した彼女は、有志を募ってクロノシア教を立ち上げた。より多くの信者が増えれば、より多くを救えると、固く信じて」  マリノアは、少し疲れたのか、うつむいて息を整えた。心配そうに、従姉のルチアが寄り添う。 「夢の中で、私はそれは間違いだと思いました。間違った過去があったとして、それを修正する必要はない。悲惨な過去や失敗は人々をどん底に追い落とすでしょう。しかし、そこから這い上がったとき、人は以前よりも強くなれる。今回の勝利も、皆さんが、皆さんの祖先の強さを受け継ぎ、以前より逞しくなったからではないでしょうか? 私は、父とお集まりいただいているリーダーの皆様に期待しています。これからのポロメイア小国家連合が、無駄な争いをやめて、お互いのために手を取り合い、平和的に成長していくことを」  散発的な拍手が、会場から起こった。  感動している者もいれば、微笑ましく手を叩く者もいた。綺麗事と鼻白らむ者も、興味なさそうにしている者もいた。エドガー王は、真剣な眼差しで、じっと娘を見ていた。そこまで語り終えるとマリノアは退席した。          *  黒いローブをまとったエルフと、茶色のマントを羽織った男が、宴の会場の隅に、隠れるように立っていた。  男は砂漠の民らしい肌の色をしていて、口元をスカーフで覆っていた。黒く大きな瞳には、野心的な輝きが宿っている。 「どうですか、彼女?」  エルフが男に聞く。  男が答える前に、別のエルフが近づいてきた。神官長の正装をした彼は、珍しく少し酔っている。 「シュラク殿ではないですか? こちらに来てらっしゃったんですね」 「神官長、お久しぶりです」  シュラクは頭を下げた。 「そちらは?」 「こちらは……」  シュラクは男に目配せをする。 「私は吟遊詩人のディーン。お初にお目にかかります」  男は平然とした顔で言った。  遠くからベイリー神官長を呼ぶ声がした。彼はそちらを振り向いてから、 「すみません。本当はもっとあなたとお話をしたいのですが。あのときのアルマシウダからの手紙もあなただったのですね。名前を見てまさかとは思っていましたが……どうぞ、祝宴をお楽しみください」  と言って、その場から去っていく。 「皇帝も人が悪い」 「お忍びで来ている身だ。ポロメイアの様子を我が目で見るのも悪くない」 「で、彼女はどうでしたか?」 「ああ、水晶の薔薇を手配させている。国に帰ったら、回復の祝いとして王女に贈らせよう」 「水晶の薔薇……確か花言葉は?」 「知らんな」  ディーンと名乗った男は、シュラクから顔を背けた。           *   「で、今度はどの娘だ?」  ジル=メガはラウ=バジルに絡んでいた。頬が赤く、ニヤニヤしている。王女の回復した姿を見て安堵し、緊張が緩んでいる様子だ。 「いや、だからそんなのじゃないって」  ラウ=バジルは迷惑そうに首に回されたジル=メガの手を離そうとして、だいぶ苦労していた。 「ええい、皆の皆様、聴いてください」  気合いを入れてジル=メガの拘束を解くと、ラウ=バジルは逃げるように舞台上に駆け上がった。 「僕は、少し前に、夜な夜な悪魔から誘惑されていました。それは事実です。でも、それは女絡みなんかじゃない。悪魔は僕にこう囁いていた。一年分の時間を捧げれば、お前の歌声を、アランツァ一の素晴らしいものにしてやると。なんと悩ましい誘惑でしょうか」  会場の一部は彼に耳を貸したようだ。少しだけ、ざわめきが減った。 「しかし、僕は悟った。たった一年の時間でそのような素晴らしい歌声を手に入れられるなら、この一年精いっぱい努力すればいいのではないか。自分自身が一年間頑張って、大陸一の歌い手になってみせよう。そう誓って、悪魔を追い払ったのです! では、その初めの一歩です。一曲聞いてください」  歓声があがった。そのあと場は静まり返り、楽器隊が演奏を始める。ラウ=バジルが心を込めて唄う。これには、ジル=メガもうっとりと目を細めている。        *   「親父……」 「ホーク……無事だったか」 「まあな」 「どれ、武器を見せてみろ」 「なんだよ、急に」 「フム、手入れは怠っておらんようじゃな」 「それは……小さい頃から厳しく躾けられていたからな。クセみたいなもんだよ」 「いいクセだ。怠らずに続けるんだぞ」 「ああ」  その後ろで、弟子のノームたちは話を聞くわけでもなく、骨付き肉の取り合いをしている。       * 「そなたの活躍がなければ、今回の危機は防げなかった。王として、父として感謝してもしきれない。そなたは稀代の冒険者であり、救国の英雄だ。その名前は末代まで語り継がれるだろう」  そう言ったエドガー王も酒が入っていた。君の肩に手を回してくる。 「だが、それには一つ条件がある」  耳元で囁くように、王はいった。 「兵士長の回復には長い時間が必要だろう。その間だけでもいい。ポロメイアに残り、力になって欲しい。もちろん相応しい職位も準備する。そなたが望むのであれば、マリノアの、娘の夫として迎え入れる気持ちさえある」  酔っているせいか、王の申し出は破格だった。  周りの目も気になる。今のところ、王の言葉には誰も気がついていない。王女の夫となること……それはつまり……。いやいやいや、と君は首を横に振る。一介の冒険者に対して、冗談にしても、無理が過ぎる。しかし、光栄なことだった。  コビットの美しい歌声が会場に響いていた。  料理の香ばしい匂い。人々の笑い声。一時にせよ、平和がこの国に到来していた。 「どうだ?」  王が、もう一度、顔を寄せて聞いてきた。  このとき、刻の悪魔を倒した英雄がなんと答えたかは、王と本人のみが知る。 ⭐︎ポロメイア  各主人公は金貨30枚の報酬を獲得する。また経験点1点を獲得する。『天使のヘルメット』『黄金虫のブローチ』は返却すること。 ✴︎アルマシウダ  金貨3d6+20枚を獲得する。また経験点1点を獲得する。『水晶の薔薇』を所持していれば、さらに金貨2d6+50枚の報酬を受け取ることができる。『天使の護符』を所持していれば、返却すること。 --------------------------------------------------------------------------------- 冒険の終わり(Another) --------------------------------------------------------------------------------- 「この世界では、だいたい十歳を超えたら、一人の人間とみなされる。最低限、日々生きながらえるだけの食糧の確保をすることができる年齢だ。それが、たとえ盗みだろうと、殺しだろうとしても」  一国の主がそんな話をしている。  部屋には、選抜された勇者たちが集まっている。  君も、呼ばれた1人だった。だが……。 「十五歳を超えて、一人前となれるかどうかが試される。すなわち自分以外の命を守れるか、だ」  暗い気持ちで、この光景に既視感を覚えていた。それは、なぜか絶望に似た暗い感情を伴っている。 「さらに歳を重ねると、より多くの人間を守らないといけなくなるだろう。責任が生まれる。そのとき彼は、もはや一人の人間ではない。社会の一員、いや、世界の一部となって生きることになる」  王の言う、その責任を自分は果たせない。なぜかそう感じていた。この冒険に出ることを考えても、敗北の未来しか思い浮かばない。君の体の全細胞が、この任務に対する拒否感を訴えている。  だから、君は王の依頼を辞退した。  王は、去りたい奴は去れとばかりに何も言わなかったが、部屋を出るとき、彼の参謀であるエルフは残念そうに首を振った。  通路に出たとき、ふと、君は自分の荷物が重くなっていることに気がついた。  そこでは、まったく思い出すことはできないが、それらはピラミッドで手に入れた品々だ。  悪魔の魔力も弱っていたのだろう。すべてを巻き戻すことは、できなかったのだ。  君がそれらを持ち帰ったところで、次の冒険の役に立つかどうかはわからない。もしそうしたいのなら、君はそのいくつかを、次の任務に向かう冒険者に渡してもよい。  しかし残念ながら、今回の君自身の冒険はここで幕を閉じる。  経験点1点を獲得する。 ---------------------------------------------------------------------------------