ドワーフがまだ土の妖精に近い存在だったころ、シャンクルー鉱山に大きな都市(鉱山都市シャンクルー)を造った。
彼らは鉱山を掘っては鉱物を売り、交易で大いに設けたが、数百年の支配の末に鉱山資源が枯れ果てて、ドワーフたちは街を捨てる。
新たな都市としてドワーフたちは、大陸中央にあるスォードヘイル山脈へと移住した。
山をくり抜き巨大な洞窟を準備して、そこに建てた新たな街。
それが、山中で暮らすドワーフたちの都市カザド・ディルノーである。
悪の種族によって陥落したが、新たな街の支配者になった闇エルフが周囲の都市との協調路線を選択したため、人間たちと混じり合って暮らしすようになった奇妙な街。
世界でもっとも治安が悪く、自分の身は自分で守らなければ生きられない。
大陸北西部に位置する「種族のるつぼ」ネルドはまとまりのない、政治的機能の遅れた無法地帯に近い都市である。
300年代のはじめに起こったカオス・ノードの活発化にともない、大量に溢れ出した混沌勢力により、大陸北西部の小都市や村落が種族を問わず大量に破壊され、半壊した比較的大きな街の跡地に生き残りが集まった。
それがネルドの原形であるため、ネルドの治安は極めて悪い。
統治者は歴史によって異なるが、政治のキャスティングボードを握っているのは闇エルフの王族で、耳や鼻、口もとなどに派手なピアスをいくつも着けているためそれと分かりやすい。
この地を統治する者にふさわしく性酷薄で頭がよく、種族差別主義者である。
それから400年近くが経過した今も、混沌の勢力の前線を押し下げるために日夜戦いを続けている。
混沌の軍勢と日々戦い続けているにも関わらず(いや、だからこそというべきか)、ネルドの地では混沌の血が流れているとしか思えない人間もどきや、出自の分からない生きものが生活している。
ネルドではありとあらゆる悪徳がはびこっている。
弱い者はさらに弱い者から奪うことで生き延びようとし、道徳と良識はこの地に根ざすことがない。
現在の統治者であるムエルティートは闇エルフで、不老の術の一端をかじっているらしく、齢200年を越えた今も衰えることなく都市を支配している。
性別は男。
ムエルティートは呪術と魔術にもっとも精通した闇エルフの一族で、そのまがまがしい力と、残忍だが合理的な支配力を発揮することで、この統治の難しいネルドの地の王に君臨し続けている。
「不夜城」という言葉があるが、ネルドは「不夜の街」そのものである。
街に住む悪の種族や一部の少数種族が夜行性であるため、夜になると彼ら向けの店が開く。
街なかでは魔法が日常的に犯罪に使われるため、うかつに出歩くことは危険である。
一部の(しかし、かなり多くの)住民は犯罪の被害者を見たら、最初の犯罪で被害者がどうにか守り抜いた財産を奪う「チャンス」とみなす。
そんな本物の悪党たちが揃った街である。